限界を引き出さずとも 真髄を味わえる一台 SS (スーパースポーツ) モデルの歴史は、1974年に登場した 750SS からはじまった。 通称 イモラ・レプリカ というプロトタイプを市販化したそれは大ヒットし、翌1975年には 900SS もラインナップすることになる。 その後、大まかに分けると3世代 (ベベル、パンタ系、テルブランチ系) のあいだ続いたこの SS というイニシャルは、レースでの勝利をとことん目指したわけでもなく、根っからのビジネス戦略でもなく、ただ単にスポーツというだけでなく、まさに「スーパースポーツ」と呼ぶことしかできないモデルのことを指していた。 と同時に、初代 SS は今日のドゥカティの礎となったモデルでもある。 そうした歴史を受け継ぐドゥカティの SS シリーズであるが、今回取り上げた 91~97年の空油冷エンジンを搭載する 900SS は、ハンドリング、パワー、デザインすべてが高次元でバランスした SS モデルの完成系といえる。 いわば、ドゥカティが考えるスーパースポーツを理想的な形に仕上げたのが、空油冷エンジンを搭載する 900SS なのである。 今でもそのバランスの良さに対するファンが世界中に数多く、ドゥカティらしさ、SS らしさの完成形といって差し支えない。 ちなみに、次期 SS である FI 化された SS900 (イニシャルが排気量の後ろから前になった) は、そのハンドリングがややグランドツーリング (GT) 的であり、900SS と比べると軽快なスポーツライディング性能に大きな陰りを見せた。 ユーザーもそのあたりには敏感で、ハンドリングのみならず、デザイン的にも不評であった。 その証拠とも言えるのがアフターパーツの種類や数の豊富さだ。 空油冷 900SS には数多くのアフターパーツやチューニングパーツが揃っていた。 そして、それらのアフターパーツを組み込むことにより、走りが激変する。 それも 900SS の、いや、ひいてはドゥカティそのものの魅力と言えるものだ。 現在、ドゥカティのモデルレンジに「スーパースポーツ」はラインナップされていない。 この 900SS のように、ドゥカティバイクの軸となり、そのドゥカティらしさによって世界中のライダーを魅了するモデルが存在しないのは大問題だ。 一般的なライダーであっても、限界を引き出さずとも、その走りを存分に楽しめ、ライディングに夢中になれるドゥカティ……。 そんな 900SS を今一度見つめなおして欲しい。
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もちろん、そのあたりは実際のユーザーにとっては百も承知の話で、今回の取材でお世話になったパワーハウスモータークラブには、現在でも900SSを愛用しているライダーが数多く存在する。 まず客観的な事実で言うと、900SSはドゥカティの歴史で初めて、レースとは関係がないところで大成功したモデルなんです。 それまでのドゥカティはビッグレースで名声を得て、その名声を武器に商売をしてきましたけど、900SSはそういったバックボーンがないのに世界中で売れた。 もっともこれはいじる側の視点ですけど、従来のベベルやパンタの場合、ウチでは基本的に日本車に追いつき追い越せという姿勢で手を入れてきました。 でも900SSがデビューしたときは、すでに水冷+インジェクションの851がありましたから、絶対的な性能ではなく、乗り手の個性をいかにして表現するかという作業に集中できた。 そして900SSというバイクは、各人各様の個性に対応できる、幅広くて懐の深い資質を持っていたんです」 そう語る中野さんではあるものの、当時のパワーハウスはレースにも積極的で、筑波で開催されるBOTTやエコー・デカトルに加えて鈴鹿8耐にも参戦していた。 となれば、900SSより851系に力が入りそうだが……。 でも同時に、Lツインならではのスリムさと軽快さが希薄になったこと、カウルを外してエンジンを見たときに向こう側の景色がまったく見えないことに、僕はちょっとした違和感を覚えました。 速いことは速いけど、この方向性でいいんだろうかって。 だから2年後に900SSが発表されたときは、すごくうれしかったですよ。 車体がシンプルでエンジンが空冷2バルブ、吸気系がキャブレターだと知ったときは、やっぱりドゥカティは分かっているなと思った」.
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もちろん、そのあたりは実際のユーザーにとっては百も承知の話で、今回の取材でお世話になったパワーハウスモータークラブには、現在でも900SSを愛用しているライダーが数多く存在する。 まず客観的な事実で言うと、900SSはドゥカティの歴史で初めて、レースとは関係がないところで大成功したモデルなんです。 それまでのドゥカティはビッグレースで名声を得て、その名声を武器に商売をしてきましたけど、900SSはそういったバックボーンがないのに世界中で売れた。 もっともこれはいじる側の視点ですけど、従来のベベルやパンタの場合、ウチでは基本的に日本車に追いつき追い越せという姿勢で手を入れてきました。 でも900SSがデビューしたときは、すでに水冷+インジェクションの851がありましたから、絶対的な性能ではなく、乗り手の個性をいかにして表現するかという作業に集中できた。 そして900SSというバイクは、各人各様の個性に対応できる、幅広くて懐の深い資質を持っていたんです」 そう語る中野さんではあるものの、当時のパワーハウスはレースにも積極的で、筑波で開催されるBOTTやエコー・デカトルに加えて鈴鹿8耐にも参戦していた。 となれば、900SSより851系に力が入りそうだが……。 でも同時に、Lツインならではのスリムさと軽快さが希薄になったこと、カウルを外してエンジンを見たときに向こう側の景色がまったく見えないことに、僕はちょっとした違和感を覚えました。 速いことは速いけど、この方向性でいいんだろうかって。 だから2年後に900SSが発表されたときは、すごくうれしかったですよ。 車体がシンプルでエンジンが空冷2バルブ、吸気系がキャブレターだと知ったときは、やっぱりドゥカティは分かっているなと思った」.
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