(写真は資料写真) 専門家らはその理由について、貧困に関連した基礎疾患からくる過度な影響、医療における差別、さらに黒人の多くが自宅以外で仕事をせざるを得ない点を指摘している。 ジェローム・アダムス米公衆衛生局長官は7日、CBSニュースに出演し、「黒人の方が糖尿病、心臓疾患、肺疾患にかかりやすいことはみんな知っている」と語った。 これら慢性疾患は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を引き起こしやすい。 アダムス氏自身も黒人で、さらに高血圧やぜんそくがあり、「米国で貧しく育った黒人が引き継ぐものを私自身が表している」「そして、私やほかの多くの黒人は、COVID-19のリスクが高い」と語った。 シカゴではアフリカ系米国人の全市民に対する割合はわずか3割ほどだが、新型コロナウイルスによる死者の68%はアフリカ系米国人が占めている。 この傾向はノースカロライナ、ルイジアナ、ミシガン、ウィスコンシン州のほか、首都ワシントンでも同様だ。 米公衆衛生協会の理事を務めるジョージス・ベンジャミン医師はAFPの取材に応じ、この問題が社会的な階級とも関連しており、また黒人の多くが感染の可能性が高い環境に身をさらさねばならない仕事に就いていると指摘した。 ベンジャミン氏は黒人に「バス運転手や通勤に公共交通機関を利用する人、また老人ホームで働く人や食料品店で働く人が多い」と述べ、黒人の方が他人と接する機会が多いとの見解を示した。 アフリカ系米国人向けの大学として有名なテネシー州ナッシュビルのメハリー医科大学の総長、ジェームズ・ヒルドレス医師は「住んでいるコミュニティーはどこか、そして保険に入っているかどうかで、診察を受ける機会がずっと少なくなってしまう」と指摘する。 また、バージニア大学医療センターの麻酔専門医であるエボニー・ヒルトン氏によると、黒人が治療を求めても症状を信じてもらえなかったり、適切な治療を受けさせてもらえなかったりすることが多いのは、論文などでも裏付けられているという。 人権団体「法の下の公民権を求める弁護士委員会」は今週、アレックス・アザー厚生長官に書簡を送り、「新型コロナウイルス感染症の検査や疾病負担、治療の結果に関する人種・民族の人口統計学的データを毎日発表する」よう求めた。 同委員会は、米疾病対策センター(CDC)はすでにデータを収集しているが、意図的に公表を控えていると主張している。 一方、罹患(りかん)率の高い心臓疾患やがんとは違い、新型コロナウイルスのアフリカ系やヒスパニック系への感染拡大は最終的にすべての人に影響を及ぼすことを理由に、先のヒルトン氏は、この問題に取り組むことはすべての米国人に利益になると指摘している。 「社会的・経済的地位の低い人々が医療システムからはみ出すと、彼らは検査を受けられず、家に帰されコミュニティーに感染を広める」「感染した人々が食料品店で働くと、食料を求めに来たより高い階層の人々にも感染が広まるだろう」【翻訳編集AFPBBNews】 〔AFP=時事〕.
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アンドリュー・クオモ州知事は先月、定例記者会見でこのように話した。 「我々は1人あたりの検査数を全米のほかのどの州より、そしてどの国よりも多く行っている。 検査を多くの人が受ければ受けるほど、陽性結果が増えるのは当然だ」 現在も1人あたりのテスト数は他国より多い。 クオモ知事の4月18日の会見より。 世界中から人々が集まる観光地 またクオモ知事は会見で「あくまでも個人的な見解だが」と前置きし、このようにも述べている。 「世界中から大勢の観光客が集まるというこの街の特性も、感染拡大の要因になっているのではないか」 アメリカが過去2週間中国滞在歴のある外国人の入国を禁止したのは1月31日、そして中国からは2月2日、ヨーロッパからは1ヵ月以上も遅れ3月13日(UKは16日)にそれぞれ入国を禁止した。 特にヨーロッパからは今年1月以降に約220万人が訪れるなど、規制措置まで実に多くの人々が入国した。 礼拝所、葬儀、老人ホーム、介護施設でのクラスター ニューヨーク州で初めて感染者が確認されたのが3月1日だが、それからすぐに問題になったのは、郊外のニューロシェル市にあるシナゴーグ(礼拝所)での集団感染だった。 自宅待機が始まってからも、ユダヤ教などの葬儀に参加した大勢の人の間でソーシャルディスタンシング(社会的距離)が保たれていないことが確認されている。 また州内には老人や身体障害者を受け入れている特別介護施設が600以上あり、ここでの集団感染や死者数増加も深刻だ。 満員電車? 最近、マサチューセッツ工科大学のジェフリー・ハリス教授の調査をもとに、混み合った地下鉄が原因ではないかというニュースが報じられた。 では、3月中旬まで平日の地下鉄利用は1日500万人だったとある。 確かに3月22日に自宅待機令が出るまで、ラッシュアワーの地下鉄車両は混んでいた。 しかし満員電車が要因なら混雑がもっとひどい東京での感染者数が、より早い時期から急増していそうだがそうではない。 初動体制の遅れ? トランプ大統領は当初「恐れることは何もない」と、新型コロナウイルスの封じ込めに自信を持っていた。 イタリアでは2月にすでにウイルスが大流行していたが、ヨーロッパからの入国禁止措置に踏み切ったのは3月13日のことだ。 記者会見を見ながら、筆者も高を括っていた。 政治家の発言を鵜呑みにした多くの人が自分事と捉えなかったことで油断し、ソーシャルディスタンシングの意識が遅れたのではないだろうか。 実際のところ、人々はつい4週間までリラックスしていた。 しかし「このウイルス、本当にヤバイかも」と自分事として誰もが危機感を持つようになったのは、3月半ば以降だ。 道ゆく人々がマスクを着け始め、お互いをあからさまに避けるようになり、1日中救急車の音が聞こえ、崩壊しつつある医療現場の惨状がソーシャルメディアで流れ、「全米で100、200万人規模の死者が出る」可能性を大統領自らが言及したあたりだ。 マスクの習慣がないから? 実際のところ、3月末までマスクを着けている人はそれほど多くなかった。 今でこそ政府主導でマスクもしくはバンダナによる顔のカバーが指導されるようになったが、この国ではこれまで「健康であればマスクは不要」と言われてきたのだ。 人々が自宅待機し、避けられない外出時にマスクを着用してソーシャルディスタンシングを保つようになってから、入院患者数を表す曲線が平坦になってきた事実がある。 人口密度の高い街で人々がこれまでマスクを着けていなかったことは、もしかすると感染拡大の要因と結びつくかもしれない。 貧困や移民の多さが関係? 高所得者は早くから在宅勤務にシフト、もしくは郊外の別荘へ避難している。 一方いくつかのデータで、感染者は移民や低所得者が多く住むエリアに多いことがわかってきた。 またそのような人々はエッセンシャルワーク(スーパーや薬局など)従事者であることも多く、日々の顧客対応や地下鉄出勤により感染の危険に晒される機会が多い。 医療現場で優先を決める選別。 例えば、救急医療で誰を先に診察するかや、人工呼吸器が1器のみで2人の患者が必要とする場合に行われる。 医療崩壊? 医療崩壊は当初から恐れられていたが、最悪の事態は回避できた。 州では常に、CDCやホワイトハウスのタスクフォースが発表した感染者数や死者の予想数値をもとに、大型展示会場を仮設病棟にしたり、連邦政府からを派遣してもらったりしながら、病床や人工呼吸器を事前に確保し準備を重ねてきた。 また州内の全医療機関を提携させ合い、ある病院で足りない医療用具がある場合にほかの病院から調達できるシステムを構築した。 この結果4月半ばになり、入院患者数やICU患者数は予想数値より大きく下回ったため、病床に空きができたり余った人工呼吸器を必要とする他州に提供するなどしている。 これらは医療従事者が防護具が不足する中、身を削る思いで働いてくれているおかげだ。 無保険や医療費が関係? 日本の報道やソーシャルメディアでは「アメリカは健康保険未加入者が多く、医療費が高いから受診できないのでは」という憶測があるが、それについては筆者は疑問だ。 クオモ知事は「健康保険未加入を理由に新型コロナの検査や治療を受けられない事態は避けるべき」と、早くからサポート体制を整えた。 またあまり知られていないが、通称オバマケアでおなじみの収入額に応じて無料もしくは低額で健康保険に加入できるシステムがまだ残っている。 仕事もやることもない人ほど平日の朝から近所の診療所に来て井戸端会議をしているものだ。 また数年前、筆者はER(救急センター)を利用したことがあるが、ものすごい混みようで、待合室では明らかに暇つぶしに来た人が立ったままテレビを観ていて憤りを感じたことがある。 (その結果、筆者は4時間も待たされた) もちろん、低所得者が病院で暇つぶしができるのは「健康保険の申請手続きをしていれば」の話である。 以上が在ニューヨーク視点を盛り込んだ、「世界最多の新型コロナ感染都市になった」考えられる要因だ。 なぜこの街で感染が拡大したのかについて、答えはおそらく1つではなく、ニューヨークという大都市ならではのさまざまな要因が重なり合ったものによるのではないかと考えている。 死者数の多さについても同様に。
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一部の病院では医療用マスクが不足し、本来は患者ごとに交換すべきところを、何度も同じマスクを利用する事態にも陥った。 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告によると4月上旬時点で全米の医療従事者の9000人以上が感染していたという。 ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)によると今月、アメリカの多くの州でコロナ死者数がピークを迎えている。 感染拡大の中心地ニューヨークでは社会的距離戦略(social distancing)が功を奏したのか、死者の増加ペースは鈍化傾向となり、同州のアンドリュー・クオモ知事は「最悪期を脱した」と語った。 だが、西海岸、東海岸で拡大した感染は、現在、医療施設が十分に整っていないアメリカ内陸で急速に広まりつつある。 したがって、まだアメリカはコロナ戦争の真っただ中にある。 とはいえ、全米で約3万人の死者が出ており、コロナ戦争の死者はすでに9. 11同時多発テロ事件の死者の10倍以上に達した。 コロナ危機が沈静化すれば、9. 11委員会のように議会で本件の政府の対策を事後評価するレポート(After Action Report)が作成されるのは必至だ。 だが、コロナ戦争で危機に陥った責任は誰にあるのか、その追及はすでに始まっている。 トランプ政権は前政権、議会民主党、中国、州知事、WHO(世界保健機関)などに責任転嫁しようと試みているが、現政権のパンデミック対策には大きな問題があったことが明らかとなりつつある。 トランプ政権の不十分な備え、感染拡大時の対応の遅れ、そして非常時に欠かせない大統領のリーダーシップの欠如の3点が事態を悪化させた。 オバマ前政権による警告は無視された 1918年のスペイン風邪以来の甚大な被害をもたらしているこのパンデミックは、誰がアメリカの大統領であっても万全の準備は不可能であったであろう。 パンデミック発生自体の責任は当然、トランプ政権にはない。 しかし、政権発足時からパンデミックに備えるべきといった注意喚起は幾度もあったにもかかわらず、政権はその機会を見逃してきた。 最初の警告はトランプ政権発足直前である。 2017年1月13日、ホワイトハウスの隣、副大統領執務室のあるアイゼンハワー行政府ビルでオバマ前政権からトランプ政権に国土安全保障に関わる引き継ぎが2時間弱行われた。 そこには国土安全保障省のジェー・ジョンソン長官(当時)とジョン・ケリー次期長官(当時)を筆頭に新旧政権の高官が出席したが、パンデミックも議題に含まれていたという。
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