峰 宗太郎 京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。 国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。 国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。 医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。 専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。 予防医療普及協会顧問。 ニューノーマルに備える重要トピック解説 ニューノーマル時代には、どのような前提でビジネスを構築し、遂行していけばいいのか。 さまざまな識者のインタビュー、寄稿からコロナと共存しながら事業を継続する鍵を探る。 峰 宗太郎(みね・そうたろう) 京都大学薬学部卒業、名古屋大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。 国立国際医療研究センター病院、国立感染症研究所、獨協医大埼玉医療センター勤務等を経て2018年より現職。 国内外で得たスタンダードな医療知見の元、SNSやブログで正しい医療情報を発信している。 医師(病理専門医)、薬剤師、医学博士。 専門は病理学・血液悪性腫瘍・感染症の病理診断、ウイルス学、免疫学。 (一社)予防医療普及協会顧問。 現在、新規感染者数が落ち着いて流行状況が一時的に収まっており、医療施設の占有率、特にICU病棟に余裕が生まれてきているのは事実だ。 ところが、緊急事態宣言解除前と比べて、基本的な状況は何も変わっていない。 つまりウイルス(に感染した人)は社会に存在し続けており、もし感染が起きてしまっても広げないことが重要で、専門家会議も述べている「新しい生活様式」のような感染予防が常に必要になる。 それぞれが距離を取る、手をしっかり洗う、マスクをしっかり着ける。 一般生活に取り入れられる行動の変化によって、感染を抑えなければならない。 では、これが大前提にある上で、何を指標にし、どんな情報に企業や個人が注目すべきか。 まず、流行状況だ。 新規感染者数、感染が起きている地域、クラスターが発生している場所、これらに注視して、リスクを低減する行動に結び付けていただきたい。 例えば、東京で再び感染が増えている中で、夜の接待を伴う飲食店などで発生しているとの情報がある。 それ以外に注目すべきなのが、1人の感染者が平均何人に感染させるかを示す「実効再生産数」だ。 その他、街の混雑度、医療機関の占有度(特にICU病床)、いろんな公的なチャネルから情報を拾い、東京アラートのような指標も基準にするといい。 さらに個別には、感染症コンサルタントなどとともに、具体的なガイドラインを策定するのが望ましい。 例えば、会社として夜の接待は自粛するなどといった具体的な内容を決めるのも重要だ。 職場における感染対策について、厚生労働省や産業医による日本産業衛生学会が指針を出し、オフィスや通勤時での注意点を示している。 身近な軍師として、産業医を活用いただきたい。
次のPCR検査を国民全員に受けさせるということの意味を考えてみよう。 提言は、今の日本の問題は、ウイルス禍に対するに「命か経済か」の二者択一から離れられないでいるところにあるとする。 だから、ここで大きな経済資源を投じて国民全体を検査する体制を整備し感染者を完全に隔離する体制を整えれば、非感染とされた人は安心して経済活動にいそしめるはずだ。 つまり「命も経済も」という出口があるはずだ、そう主張するのである。 だが、すでに反論として書いたように(『「自由」を危機にさらす「全員PCR検査論」の罠』)、筆者はこれに反対である。 理由は、検査と隔離だけでは感染爆発を止められないだけでなく、こうした提言が実施されたときに生じる自由あるいは人権への危機を予感せざるをえないからである。 今回は、やや具体的に説明しよう。 個々人がどう動くか考えてみよう あなたが、何かのきっけで新型ウイルスへの感染を心配する状況に至ったとする。 すでにウイルス感染症への特効薬のようなものが開発されていて、それを処方してもらえばウイルスが完治する、あるいは、完治とまで行かなくても軽症化すると知っていたら、ぜひ検査を受けたいと望むだろう。 検査結果が陰性なら安心するだろうし、陽性なら薬を処方してもらえるはずだからだ。 しかし、特効薬がなく陽性と出ても「隔離」されるだけとわかっていたら、あなたは検査を受けることを躊躇するのではないだろうか。 決定的な治療薬がない状況での隔離は、あなたの命を守るためのものではなく、あなた以外の人の命を守るためのものでしかないからだ。 もちろん、家族や親密な友人たちがいて、あなたが彼らの命を守りたいと思えば、進んで検査を受けようとするかもしれない。 しかし残念ながら、国民全員検査論者が頼りとするPCR検査の精度はあまり高くない。 PCR検査が感染してしまっている人を非感染つまり陰性としてしまう確率は、検査を受けるタイミングにもよるが、20%とか30%もあるとされる。
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新型コロナウイルス感染症は、感染者・死亡者数の増加という公衆衛生への影響だけでなく、感染を食い止めるためのさまざまな措置が経済へ与える負の影響も大きな課題となっている。 アジア諸国よりも遅れて感染が発生した欧米諸国は、死亡者数などの指標ではアジアを上回っているが、そこでの議論も「感染拡大をどう抑制するか」から「感染の再燃を最小限にしつつ、どのような形で経済活動を再開していくか」に移りつつある。 あわせて、潜在的患者の存在も問題となる。 感染しても無症状のままの患者が存在すること クルーズ船でのデータからの推計では17. さらに、日本でも話題になっているようにPCR検査の件数は限られており、発症していても見逃しが発生しうる。 そのため、「検査されていない潜在的患者はどのくらいいるのか」を見積もることは、現状を把握するためにも、将来の戦略を設定するためにも重要である。 潜在的な患者を含めた状況の把握に有効なのが、今回紹介する抗体検査である。 抗体検査の有用性や、あちこちで行われた結果がすでに話題になっているケースもあるが、「ともかくPCRよりも正確な検査である」、「抗体検査で陽性ならば、もう感染しない」のような誤解も見られる。 この項では、抗体検査の役割と、さまざまな場での抗体検査の結果の解釈の仕方を考えていきたい。 2つの検査は、得意分野が全く異なる。 PCR検査は、のどや鼻の奥にいるウイルスそのもの(より正確には、ウイルスの遺伝子)を直接検出するものである。 感染初期 発症の前後)でも見つけられる反面、症状が治まってくればウイルスの量は減少してくるため、発症から数週間経てば検出できなくなる(注2)。 抗体検査は、ウイルスそのものではなく、ウイルスを退治するために体内で作られる武器 抗体 を血液の中から検出するものである。 抗体にはさまざまな種類があるが、最も早い抗体 IgM でも、作られるのは発症から4~5日後。 十分に検出されるようになるのは、発症から2週間後である。 新型コロナウイルス感染症に関しては、実際の検査で十分に陽性になるタイミングはどちらの抗体でも2~3週間程度かかることが報告されている。 抗体検査で「無敵のパスポート」が得られる? 抗体は、人体がもともと持っている異物を排除する=病気をやっつける機構、「免疫」のはたらきで作られるものである。 このことから、「抗体検査で陽性ならば、コロナウイルス感染症への免疫がある」「抗体検査で陽性ならば、もう二度と感染しない」のように早合点されることもある。 抗体検査の結果を、いわゆる免疫証明書(免疫パスポート)のように使う動きは、国レベル ドイツ・チリなど)でもあった。 しかし、新型コロナウイルスに対する抗体があった(抗体検査で陽性になった)としても、「もう感染しない」ことが証明されたわけではない。 4月25日のWHOの発表(注3)がやや話題になったが、WHOだけでなく、抗体検査の結果を発表した多くの研究で、同じことが「釘を刺されて」いる。 抗体があっても再感染のリスクはゼロではないし、抗体がいつまで長持ちするかのデータもまだ明らかではない。 さらにこの後述べるような、キットの性能の問題もある。 現状把握には非常に有用な検査だが、個々人の結果を「無敵の証」のように使うことは、やや問題がある。 国内外での抗体検査結果(筆者作成) 表に、国内外での抗体検査の結果をまとめた。 なお、オーストリアや慶應義塾大学病院など、PCR検査によって潜在的な発症率を求めた研究も含めている。 どの研究でも、公式に確定した患者数の数倍~数十倍の潜在的患者数が報告されている。 なお、5月15日に厚生労働省から結果が公表された「献血血液での抗体検査」(注4)の結果は、後ほど別項で述べる。 ドイツの感染多発地Gangeltでの研究(注5)では、人口構成などを考慮した致命率は0. カリフォルニア・サンタクララ(注6)での研究では、感染から発症までの期間などを考慮した上での致命率は0. もちろん正しい値を出すためには潜在的患者数だけでなく潜在的死亡者も求める必要があるし、感染症の影響を致命率のみで評価することは問題があろう。
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