吉海 直人 日本語日本文学科 教授 人間の生活と深く関わっている動物といったら、真っ先に「犬」と「猫」があげられます。 もちろん最初からペットだったわけではありません。 犬は狩猟に役立つものとして飼いならされたのだし、猫は鼠の害を防ぐためにお寺や養蚕場で飼われました。 それが長い期間人間の側にいたことで、「猫」にまつわる言葉がたくさん醸成されてきました。 みなさんはいくつくらいあげられますか。 一番身近なのは「招き猫」の置物でしょうか。 これは猫が福を招くと信じられていることによります(右手は金、左手は人を招く)。 生活に密着したことわざもたくさん作られました。 「いろはかるた」には「猫に小判」があります。 類似表現として「猫に石仏」「猫に経」もあるし、動物を変えれば「犬に論語」・「馬の耳に念仏」・「牛に麝香」・「豚に真珠」(聖書由来)などもあります。 もちろん犬との比較もされており、「犬は人につき猫は家につく」があります。 そのためでしょうか、「猫は三年飼っても三日で恩を忘れる」ともいわれています。 ただし猫は化けるらしく、「猫を殺せば七代祟る」と恐れられています。 「猫に小判」の反対語として、「猫にまたたび」・「猫に鰹節」もあります。 それに関連して「猫を追うより鰹節を隠せ」とか「猫を追うより魚を除 の けよ」・「猫叱るより猫を囲え」ともいわれています。 そこから「泥棒猫」も出てきますが、これは男を奪いとった女性に浴びせかけられる言葉(比喩)に偏っています。 猫は女性に、犬は男性に喩えられているからでしょう。 もともと猫は鼠を捕るのが役目ですから、「鼠取る猫は爪を隠す」だし、反対に「鳴く猫は鼠を取らぬ」ともいわれています。 猫が役に立たない時には「猫いらず」(殺鼠剤)が使われます。 そこから比喩的に「猫と庄屋に取らぬはない」ともあります。 この場合、猫は鼠を捕り庄屋は賄賂 わいろ を受け取ることになっています。 「窮鼠 きゅうそ 猫を嚙む」というのは鼠の方が主役ですね。 鼠との関係では「猫に鈴をつける」もあります。 食べ物では「猫まんま(飯)」が有名ですね。 「猫の食い残し」というのは食べ散らかすことですが、猫も食べない「猫跨 また ぎ」もあります。 また女性とのかかわりで、「女の怖がると猫の寒がるは嘘」ともいわれています。 「猫ばば」というのは拾得物を自分のものにしてしまうことですが、元は「猫がばばを踏む」でした。 「ばば」というのは糞のことで、猫は排便後に後足で砂をかけて隠すことから、悪事をしても知らん顔をしていることの譬えに用いられるようになりました。 猫にとってはちょっと気の毒な気がします。 「猫も杓子 しゃくし も」というのは何もかもという意味ですが、これは古く一休禅師が、 生まれては死ぬるなりけりおしなべて釈迦も達磨も猫も杓子も(一休咄) という歌に詠じています。 必ずしも猫と杓子に深い関わりがあるわけではないようです。 猫の体にまつわるものも多く、狭いものは「猫の額」、冷たいのは「猫の鼻」、変りやすいのは「猫の目」ですね。 熱いものが苦手なのが「猫舌」、背中が丸くなっているのが「猫背」、媚びを含んだ声は「猫撫で声」です。 忙しい時は「猫の手も借りたい」といいますが、もちろん役には立ちません。 「猫足」は忍び足のこと、「猫の尻尾」はなくてもいいことの譬えです。 なお長崎の猫は尻尾の骨が曲がっていることで有名です。 「猫の恋」は俳句の季語(初春)になっていますが、最近はシーズンレスですね。 「借りてきた猫」はおとなしいものの喩えですが、それは「猫を被」っているからです。 「猫に傘」は傘を開く音で猫が驚くことです。 ちょっと卑怯な「猫だまし」は、相撲の決まり手にもなっています。 「猫かわいがり」は溺愛すること、簡単に貰うのが「猫の子をもらうよう」で、誰もいないことが「猫の子一匹いない」です。 「猫に紙袋」は紙袋に入った猫がそのまま後ずさりすること(尻込みすること)です。 探せばまだあると思いますが、これだけでも十分猫と人間の深いつながりはわかりますね。
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【あいうえお順】• あきのあめがふればねこのかおがさんじゃくになる• あってもなくてもねこのしっぽ• いぬにねんぶつねこにきょう• いぬねこにもなじめばおもう• いぬねこはみっかふちすればおんをわすれず• いぬねこもみっかかえばおんをわすれず• いぬはみっかのおんをさんねんわすれず、ねこはさんねんのおんをみっかでわすれる• いぬはひとにつき、ねこはいえにつく• うおをねこにあずける• おんなのこころはねこのめ• おんなのこしとねこのはなはいつもつめたい• おんなのしりとねこのはなはどようみっかあたたかい• かつおぶしをねこにあずける• かりてきたねこ• きゅうそねこをかむ• けいせいにはねこがなる• けいせいはねこ• こどももねこよりまし• さけのせきにはちん、ねこ、ばばあ• さらなめたねこがとがをおう• さんねんになるねずみをことしうまれのねこのこがとらえる• じょうずのねこがつめをかくす• すずめのうえのたか、ねこのしたのねずみ• せっきしわすにはねこのてもかりたい• たくらだねこのとなりありき• とらをえがきてねこにるいす• なくねこねずみとらず• ねこがこえればかつおぶしがやせる• ねこがねずみをとるようなもの• ねこがばばをふむ• ねこかぶり• ねことしょうやにとらぬはない• ねこなでごえにゆだんをするな• ねこなでごえにゆだんができぬ• ねこにあったねずみ• ねこにいしぼとけ• ねこにおわれたねずみ• ねこにかつおぶし(かつぶし)• ねこにかつおぶしのばん• ねこにかんぶくろ• ねこにきゅうしょうあり• ねこにこばん• ねこにさかなのばん• ねこにねんぶつ• ねこにまたたび• ねこにまたたびおじょろうにこばん• ねこにまたたびなくこにちぶさ• ねこにもなればとらにもなる• ねこのうお(さかな)じたい• ねこのかんごい• ねこのくびにすず• ねこのくびにすずをつける• ねこのこいっぴきいない• ねこのこのもらいがけよめのとりがけ• ねこのこもただはもらえぬ• ねこのこをもらうよう• ねこのこをもらったよう• ねこのてもかりたい• ねこのねずみをうかがうよう• ねこのはだをねらうごとし• ねこのはなさきのものをねずみがねらう• ねこのはなとおんなのしりはたいしょみっかのほかはつめたい• ねこのはにのみ• ねこのひたい• ねこのひたいのものをねずみのうかがう• ねこのまえにこばん• ねこのまえのねずみ• ねこのまえのねずみのひるね• ねこのめ• ねこのめのよう• ねこはおやまのうまれかわり• ねこはけいせいのうまれかわり• ねこはさんねんかってもみっかでおんをわすれる• ねこはさんねんのおんをみっかでわすれる• ねこはちょうじゃのうまれかわり• ねこはどようにみっかはなあつし• ねこはとらのこころをしらず• ねこばば• ねこははげてもねこ• ねこばばする• ねこばばをきめこむ• ねこばばをきめる• ねこまたぎ• ねこもしゃくしも• ねこもまたいでとおる• ねこよりまし• ねこをおうよりさかなをのけよ• ねこをおうよりさらをひけ• ねこをかぶる• ねこをころせばしちだいたたる• ねずみきゅうしてねこをかみ、ひとまずしゅうしてぬすみす• ねずみとらずがかけあるく• ねずみとるねこはつめをかくす• ねずみなきをもってとらざるのねこをやしなうべからず• ぶたにねんぶつねこにきょう• ふゆのあめがみっかふればねこのかおがさんじゃくのびる• りょうあるねこはつめをかくす• りょうよしねこつめをかくす シニア猫達の猫団子。
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猫に小判 【意味】 人間にとって貴重な小判も、猫にとっては何の価値もない。 どんなに価値のあるものでも、その価値を知らない者・使う術を持たない者にとっては何の役にも立たないということ。 【わが家では?】 『うちの猫にロイヤルカナン』 どんなに高級で良質なフードでも、その価値を知らないウチの猫たちは『なんか匂いが好きじゃない…』と思えば全然食べない。 借りて来た猫 【意味】 普段と違って大人しい様。 猫は縄張り意識が強いため、ねずみ狩りによそのお宅へ連れて行っても普段のようには働けない事から。 【わが家では?】 『来客時のなると』 普段はヤクザのようにうるさく要求するくせに、来客時には嘘のようにおとなしく引っ込むなるとの様子。 猫の手も借りたい 【意味】 とても忙しく、ネズミを獲るくらいしか役に立たない猫の手でさえ借りたいほど、という状況。 【わが家では?】 『猫の手は貸してくれなくていいからいたずらヤメテ…』 粗相の始末をしていたらコップをひっくり返され、それを片付けているとキッチンを荒らす。。 バタバタと動く私に手を貸してくれとは言いません、そのいたずらをやめてさえくれればいいのです・・・。 猫を 被 かぶる 【意味】 本性を隠し、人前では大人しく振舞う様。 猫は何を考えているのか表情で読み取りにくいので、うわべだけ柔和でも本心は貪欲で陰険だと思われていたようです。 【わが家では?】 『猫を被ってる?』 アビーは意外と食いしん坊というか、机の上に美味しそうなものがあると上がってこっそり舐めたりします。 普段とてもいい子なので油断しがちなんですが、それもアビーの作戦なのかも!? 窮鼠 きゅうそ猫を噛む 【意味】 ネズミでも追いつめられると猫に噛みつく事があるように、弱い者でも窮地に立たされると強者を負かす事もあるということ。 【わが家では?】 『窮猫ヒトを噛んでも歯磨きはします!』 歯みがきが大っ嫌いな猫たちは、捕まるまいと必死で抵抗し、時には爪や牙が出る事もあるけど、結局歯磨きは執行されるので諦めてください。 猫の首に鈴を付ける 【意味】 名案に思えても、実際には誰も出来ないような難しいこと。 仲間が狩られるのを恐れたネズミ達が、猫が近づくと分かるように鈴を付けようと考えたが誰も実行できなかった、というフランスの寓話が元だとか。 【わが家では?】 『猫にひとり遊びグッズを与える』 猫の要求通り遊んであげられない事もあるので、動くおもちゃなどひとり遊びできるグッズを色々取り揃えてもことごとく不発に終わり、結局人間が相手をするより術はない。 猫の子一匹いない 【意味】 生きて動いているものが何もいない様子。 昔の日本の村は猫がとてもたくさんいたので、猫が一匹もいない状態はとても不気味に映ったようです。 【わが家では?】 『つみれさえいない』 いつも見える範囲にいるつみれさえもどこかに引っ込んでしまっているととても寂しい。。 猫の 額 ひたい 【意味】 土地などの面積がとても小さいこと。 猫の額はどこかよく分からないので、あるのかないのか分からないほど狭い土地、ということ。 【わが家では?】 『つみれが寝る本棚の上』 つみれも猫なので高いところや狭いところが好きですが、本棚の上は大きなつみれには狭すぎてお腹がはみ出します。 そしてたま~に落ちます💦 猫糞 ねこばば 【意味】 猫が糞をした後に砂をかけて隠す様子から、拾ったものやお金をこっそり自分のものにしたり、悪事を隠して素知らぬ顔をすること。 【わが家では?】 『猫糞は明るみに出る』 猫は悪事を隠さないし、ババもうまく隠せません! 猫跨 ねこまたぎ 【意味】 魚好きな猫でさえまたいで通るほどマズイ魚、またはきれいに食べられて骨だけになった魚を表わす。 誰も取り合わないものの例え。 【わが家では?】 『ドームクッション』 これ。 誰も中に入らないばかりか、クッション類にはことごとくオシッコするちくわにオシッコされる事さえない悲しい存在。 猫を追うより魚を 除 のけよ 【意味】 魚を盗られないように付きっきりで猫の番をするより、魚を隠してしまう方が簡単で確実だということ。 何か問題が起きたら、その場しのぎをするのではなく、根本から解決すべきということ。 【わが家では?】 『ちくわ対策するよりモノをしまえ』 ちくわはあらゆるものを落としたり、噛んで食べたりします。 対策するのは大変なので、モノを出しっ放しにしないようにするのが確実。 知っている言葉だけでもまだいくつかありますし、あまり馴染みのない言葉もまだまだあります。 それだけ猫が人間にとって身近な存在だという事ですね。 今回わが家での例えを付け加えましたが、例えというよりムリヤリ関連付けたおふざけ感があるのはご勘弁を💦 元々あることわざに関係なく、ウチの中だけで通じる猫に関する事柄に慣用句風の呼び名を付けると、家族での会話が楽しくなるかもしれませんね😊.
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