私は自分のブログ『永谷正樹のなごやめし生活』でチャーハンとラーメンのセット、「チャーラー」を食べ歩き、「チャーラーの旅。 」というタイトルでレポートを公開している。 すでに30回近くも続いていて、近所にある中華店はほとんど食べに行った。 その中で気がついたことがある。 エリアでは、でブームとなっている「町中華」が極端に少ないのだ。 私の住む郊外ではとくに。 子供の頃は町の至るところにあったのだが、店主の高齢化や後継者がいないことから閉店を余儀なくされたのだろう。 郊外では今や町中華よりも大陸系中華の方が多いのではないかと思われる。 大陸系中華の多くは、中国の国旗、五星紅旗を思わせる赤と黄のど派手な色使いなのである。 中には、中国でしか使われていない漢字が店名に用いられていたりする。 日本人は読めないので看板として意味があるのかとツッコミたくなる。 店内に入ると、もっと驚く。 どの店もメニューがほとんど同じなのである。 昼が750円くらいで、夜は900円くらい。 また、夜には選べる料理1~2品に生ビール1杯が付くセット。 これがだいたい1,000円くらい。 いずれも安くてボリューム満点。 これらのセットはどのお店にも必ずあるので、店名こそ違うものの、実は中国の巨大企業が経営しているのではないかとさえ錯覚してしまう(笑)。 における大陸中華のルーツとは ほぼ中国一色になりつつあるの大衆中華事情。 大陸系中華は、いつ、誰がはじめたのだろうか。 雲をつかむような作業になりそうだが、少し前に一通のメールが私のもとに届いた。 その内容は以下の通り。 私は市内にて『中国料理 龍美(りゅうみ)』を経営しております、斎藤隼と申します。 この度、雑誌関係の取材を依頼したく、お問い合わせさせていただきました。 お時間ございましたら、一度お話をさせていただきたく思います。 宜しくお願い致します。 ライターという職業柄か、ときどきこのような依頼メールが自分の元へも舞い込んでくるが、「取材してほしい」と言われてホイホイと行くようなことはしない。 それが読者のみなさんにとって興味がそそられる内容とは限らないからだ。 だから普段は気にとめないことが多いのだが、『中国料理 龍美』という店名に引っかかった。 お店には行ったことがないものの、の栄や伏見など繁華街のほか、自宅の近くでも見かけたことがある。 たしかここも大陸系中華だったと思うが、メールの差出人は斎藤、とある。 何はともあれ、大陸系中華の謎を解くカギとなるかもしれない。 メールを返信し、電話で連絡を取り合った。 そこで驚愕の事実が明らかになったのである。 斎藤さんは開口一番、こう語った。 「私の父が1999年に開店させた『中国料理 龍美』が、での中国人経営の中華料理店の第一号だと聞いています」 もっと話を聞いてみたいと思い、市中区錦2丁目にある『中国料理 龍美』長者町店へ向かった。 生まれは中国だが、4歳から日本で暮らしている。 蔡さんとはいったい、どんな人物だったのか。 来日したのは1992年、27歳のときです。 ビザには2年という期限がありました。 一緒に来日した人はほとんど帰国しましたが、父は残りました。 日本のことが大好きで、料理や文化などいろんなものを吸収したかったからだと思います。 「夜のセットメニュー」が町中華界に革命を起こした 蔡さんは来日して5年が経った頃、市内の千種区覚王山にあった『眞弓苑』という中華料理店で働きはじめた。 そこで料理長の渡邊長生さんに出会い、蔡さんは本場中国の味を、渡邊さんは日本人が好む町中華の味を互いに教え合い親交を深めた。 当時、蔡さんは32歳で渡邊さんは59歳。 ちょうど親子のような関係だった。 この出会いが蔡さんの人生を大きく変えていった。 2018年に惜しまれつつ閉店した(写真提供:斎藤隼氏) 『眞弓苑』は覚王山のほか、池下と東山、栄に4店舗展開していた。 営業時間は夕方6時から翌朝4時。 にもかかわらず、連日大盛況。 その秘密は、当時の町中華としては画期的なメニューにあり、訪れたお客さんの大半が注文していた。 当時の中華料理店は夜のメニューにセットはなく、単品だけしかありませんでした。 あれもこれもと注文すると、どうしても金額が高くなります。 割安なセット、それも食事だけではなく生ビールが付くものも用意していたので、お客さんのさまざまなニーズに応えることができたのだと思います。 斎藤さんの話を伺っていて頭に浮かんだのは、コーヒーなどのドリンク代のみでトーストやゆで卵、サラダなどが付くの喫茶店のモーニングサービスだ。 最近ではドリンク代に100円~200円をプラスするのが主流になりつつあるが、おトク感はハンパない。 『眞弓苑』は深夜まで営業するお店だったので、割安なセットどころか割増にしてもおかしくはない。 実際、セットを用意する前もかなりの賑わいだったという。 そんな中でセットメニューを提供したのでさらにお客さんが増えたのは言うまでもない。 蔡さんが千種区神田町に『中国料理 龍美』の一号店を創業したのは、それから5年後。 渡邊さんも蔡さんも『眞弓苑』で好評を博したセットをメニューに取り入れた。 以来、セットメニューはにおける大陸中華のマストアイテムとなっていく。 これは『龍美』の「生ビールセット」(1,080円、写真下参照)。 上の写真は「唐揚げ(4個)」と「焼き餃子(6個)」の組み合わせだが、ほかにも「麻婆豆腐」や「ニラレバ炒め」など全18種類あり、その中から好みのものを2品選べる。 さらに、プラス380円でラーメン(醤油味または台湾ラーメン)もしくはチャーハンが付く。 1,460円で料理2品を肴に生ビールを飲み、ラーメンかチャーハンで締めくくることができるのだ。 そりゃ評判になるのは当たり前だろう。 こちらは「ニラレバ定食」(980円、写真下参照)。 定食は、メイン料理と日替わりの小皿料理、ミニラーメン、ご飯、漬物という内容。 「ニラレバ炒め」以外に「青椒肉」や「油淋鶏」、「肉団子」など全10種類を用意している。 メイン料理が日替わりとなる「日替わり定食」は800円と激安。 注目すべきは、このボリュームだ。 山盛りのご飯はまさにマンガ飯。 量が多くて安いのも大陸系中華の特徴でもある。 斎藤さん:これは中国ならではの「足りないより残してほしい」というおもてなしの文化なんです。 セットに限らず、一品料理もかなりボリュームがあります。 それはのご当地麺。 そう、台湾ラーメンである。 台湾ラーメン自体は、千種区今池にある『台湾料理 味仙』が昭和40年代に台湾料理の坦仔(タンツー)麺を激辛にアレンジしたのがはじまりとされる。 そのことについては、以前「メシ通」でも私が触れたとおり。 『眞弓苑』が好評を博していた90年代には、すでに多くの中華料理店やラーメン店が台湾ラーメンを出していた。 斎藤さん:父が『眞弓苑』で働いていた頃、というか今でもそうですが、『味仙』さんがすごく繁盛していたんです。 で、『味仙』さんの人気メニューをお店で出せないかということになって、父と渡邊さんは何度も足を運んで研究したそうです。 とくに台湾ラーメンは、いろんなお店に食べに行き、試作と試食を繰り返して『眞弓苑』の味に仕上げました。 『龍美』の「台湾ラーメン」(600円、上下の写真参照)は、豚挽肉とニンニク、唐辛子などを煮込んだ自家製の台湾ミンチが味の決め手。 もともとは豚挽肉ではなく、鶏ミンチを使っていた。 これは覚王山にあった屋台で食べて美味しいと思った台湾ラーメンを参考にしたという。 斎藤さん:当初は鶏ミンチでした。 ある日、仕入れるのを忘れてしまい、豚挽き肉を代わりに使ったんです。 豚挽肉は他のメニューにも使っていますし、仕入れコストも安いのでそのまま使うことにしました。 『千龍』では今でも鶏ミンチを使っていますよ。 『龍美』の台湾ラーメンのベースは、丁寧に下処理をした豚骨と鶏ガラをじっくりと煮込んだ澄んだスープ。 しっかりと旨みが抽出されているので、ピリ辛の台湾ミンチを合わせても、辛みよりも旨みの方が強く感じる。 それがここの台湾ラーメンの特徴だ。 完成した台湾ラーメンを見て、気がついたことがある。 私も含めて地元の人にとって、台湾ラーメンと聞いて思い浮かべるビジュアルがまさにこれなのだ。 では、元祖である『味仙』はどうなのか? しいて言うなら、こちらのでは「『味仙』の台湾ラーメン」となる。 やはり、発祥の店であり、他店と比べて激辛である『味仙』の台湾ラーメンは地元でもどこか特別感があるのだ。 それに対して、『龍美』の、いや、大陸系中華の台湾ラーメンは、いつでもどこでも食べられるという日常感がある。 台湾ラーメンはチャーハンや天飯、麻婆飯などのご飯ものと組み合わせた「麺・飯セット」(写真上参照)も好評だ。 昼は800円、夜は980円とこちらも安くてボリューム満点。 また、台湾ラーメンのほか、醤油、味噌、豚骨から選ぶこともできる。 斎藤さん:台湾ラーメンと同様に、手羽先の辛口煮や青菜炒め、小袋、台湾風辛口酢豚(880円、写真上参照)など『味仙』さんの人気メニューも研究して取り入れました。 今では中国人の経営するお店には必ずと言っていいほどある定番メニューになっています。 世代を超えて受け継がれるワザと味 2002年、蔡さんは西区上小田井に二号店を開店させた。 郊外ではあったものの、ここもたちまち繁盛店に。 以降、次々と店舗を展開していった。 以前と比べてビザの発行が容易になり、中国人スタッフを招きやすくなった事情もある。 斎藤さん:その頃、父のもとにはでお店を開きたいという中国人が多く訪れました。 父はメニューのレシピなどすべてのノウハウを包み隠すことなく伝えました。 そこには『龍美』の名物であるセットメニューや台湾ラーメンがきっと含まれていたはず。 中国人が経営する中華料理店がどこも同じようなメニューになっているのは、父が教えたメニューがベースになっていると思います。 『眞弓苑』で料理長を務めた渡邊長生さんは2011年にこの世を去り、『中国料理 千龍』は現在、息子さんたちが後を継いでいる。 渡邊さんと蔡さん。 日中2人の料理人が作り上げたセットメニューと、味仙とは一線を画す台湾ラーメンは、今もの多くの人々の胃袋とハートを満たしているのだ。 店舗情報 中国料理 龍美 長者町店 住所:県市中区錦2-12-30 電話番号:052-222-8788 営業時間:11:00~15:00(14:45L. )、17:00~翌1:00(翌24:45L. ) 定休日:土曜日、日曜日.
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和歌山ラーメンならココ!本当に美味しいおすすめ9店を厳選! 2018. 25 今では全国にたくさんあるご当地ラーメン。 その中でも老舗的存在が「和歌山ラーメン」です。 地元では「中華そば」と言われるのが一般的なラーメンは、豚骨醤油ベースと醤油ベース、それ以外の新興勢力の3種類があります。 ラーメンを待つ間、早寿司(鯖寿司)を食べるのも和歌山ラーメン独特の風習です。 今回は和歌山市を中心に、県内にある行列必死の有名店からちょっと穴場的なお店までピックアップ。 和歌山にいって食べる価値あり!な中華そばを味わってみてください! 中華そば専門店 井出商店 和歌山ラーメンを代表する名店 JR和歌山駅から徒歩10分くらいにある和歌山ラーメンを代表する名店。 テレビや雑誌で紹介されたことが多々あるため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。 ややとろみがある豚骨スープは水と油が乳化するまで長時間煮込んだもの。 濃厚だがしつこくなく、あっさりとした中に奥行きのある味です。 この味に魅せられ1日に何度も食べに来てしまう人が続出。 県外から来られる方も多くいます。 中華そば700円(税込) 見た目はこってりしていそうなスープですが、意外とあっさりしています。 阪和道「有田IC」から車で3分。 おいしいラーメン店が多い和歌山の中でも評判がいいのがここ「麺ダイニング 月乃家」です。 濃厚な豚骨醤油スープでありながら、あっさりとしていている味は「新和歌山ラーメン」と呼ばれています。 麺の量が選べるのは、女性や家族連れの方にはうれしいですよね。 地元特産のシラスにプリップリのイカと、ほのかに甘いイカ墨を加えた「釜揚げしらすかけごはん」はラーメンとセットで注文するファンも多く、コスパはバツグン! 特濃ラーメンやつけ麺、焼めしなど、豊富なメニューの中から、自分好みの組み合わせを見つけてくださいね! 豚骨醤油ラーメン650円(税込)。 細めんがスープに絡みます。 和歌山ラーメンを代表するひとつの味の発祥がこの丸高です。 見た目よりも重くなく、すっきりとしたスープが特徴。 早寿司やおでんをつまみながら締めに中華そばを食べるという、和歌山のラーメン文化を堪能することができます。 店名にある「アロチ」は和歌山の繁華街「新内(あろち)」のこと。 ランチタイムはもちろん、深夜まで多くの方が訪れ、にぎわっています。 醤油豚骨スープの旨味は程よく濃厚でコクがある味ながら、あっさりとしているので飲み口がスッキリとしているスープ。 幅広い層から支持され、店内は家族連れの姿も多くあります。 中華そばはもちろんのこと、常連さんの間で絶品といわれているのがゆで卵。 絶妙な茹で加減の濃厚な黄身がオレンジ色の半熟玉子は、塩をつけて食べたり、ラーメンのトッピングにもでき、コストパフォーマンスがバツグン! この卵を使った濃厚なたまごめし(250円/税込)も好評で、何回来ても満足できると評判です。 お店の入口と出口を分けるなど、混雑していても導線がスムーズです。 「昔ながらの昭和の中華そば」をコンセプトに中央にテーブル席、壁側にカウンター席があり、椅子は丸椅子という昔ながらの中華そば店という雰囲気です。 野菜・果物の他、鶏がらを基本にしたスープは、コクがありまろやかながら胡椒のパンチがビシッときいた味。 豚骨ベースが多い和歌山ラーメンとはまた違ったオリジナリティがあります。 もう一度食べたいと思ってしまうラーメンです。 サイドメニューも評判で、味噌の風味たっぷりのどて焼きもオススメ! 中華そばと早寿司(100円・税込)、巻き寿司(150円・税込)、ゆで卵(50円・税込) 様々な種類のどて焼きがあります。 オープン日には無鉄砲の代表自らが応援に和歌山まで駆けつけ、厨房に立ったラーメン店です。 大量の豚骨を炊き込んで作るどろっと、とろみのあるスープは濃厚で豚骨の旨味たっぷり。 太ちぢれ麺を合わせた奥深い味わいの中華そばです。 店長がダイナミックに羽釜を混ぜながら作る姿は迫力があると評判なので、注目してみてください。 いくつかの店舗が面案っているビルの一角にあります。 有田にある名店「和 dining 清乃 本店」。 行列ができる店としても有名な同店の2号店がJR和歌山駅すぐにある近鉄百貨店のフードコートにあります。 「こってり和歌山ラーメン(750円・税込)」は粘度が高いものの醤油の風味もしっかりと残したスープで、濃厚と思わせつつ意外とサクッと飲み干せる逸品。 和歌山市内で気軽に食べられると大評判です。 近鉄百貨店和歌山店限定メニューの「煮干ブラック(750円・税込)」もおいしいと話題になっています。 住宅街の真ん中にある和歌山ラーメンの名店として名高い「山為食堂」。 店内は昔ながらの食堂という雰囲気で、創業以来50年間、地元に愛され続けたお店です。 素材にこだわった中華そばはすべて国産の材料を使用。 特に自家製焼豚は宮崎産か鹿児島産の豚に限定し、冷凍した肉は一切使わないこだわりぶりです。 その焼豚は醤油風の味付けがよく染みていて、特に脂身あたりはとろけてしまうくらいの柔らかさ。 クセがないのでご飯に乗せてもおいしく食べられます。 まろやかさの中に力強さを感じられる一杯です。 中華そば850円(税込)。 ライス(100円・税込)と一緒に注文する方が多くいます。 山為食堂 和歌山市駅の駅前通りを抜ければすぐにあるので、歩いてくることもできます。 芸能人や著名人が通うお店です。 ラーメンはこってり見えるが、食べると意外とあっさりしているので、子どもからお年寄りまで幅広い方が食べられる味です。 子どもを連れたファミリー層の方も多く来店されます。 2018年の春移転したばかりのため、キレイで明るい店内。 一人で来ても家族で来ても、ゆっくりできるお店です。 左:特中華そば800円(税込) 右:中華そば700円(税込) 中華そば専門店 正善 サバ早すし150円(税込) 中華そば専門店 正善.
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博多に家系ラーメンの嫡流が登場 博多駅前にオープンした「ラーメン内田家」。 家系総本山直系の文字が誇らしげに掲げられている。 2020年4月6日、豚骨ラーメンの街「博多」の街に新たなラーメン店がオープンし、初日から多くのラーメンファンが殺到した。 店の名前は『ラーメン内田家』(福岡県福岡市博多区博多駅前3-9-12)。 真っ赤な看板には店名と共に「横浜家系総本山 吉村家直系店」の文字が掲げられている。 その名の通り『ラーメン内田家』は、「家系ラーメン」の創始であり、総本山である『ラーメン吉村家』(神奈川県横浜市西区南幸2-12-6)の直系店。 直系を名乗れる店は吉村家で修業して許しを得た者の店のみで、内田家は九州初、全国で9軒目の総本山直系店となる。 1974年、今から半世紀近く前に横浜で生まれた「家系ラーメン」。 豚骨と鶏ガラベースのスープは、醤油がキリリと立った味わいで、もっちりとした太麺が泳ぐ。 具はチャーシュー、ホウレンソウ、大判の海苔が三枚。 『ラーメン吉村家』という一軒の店から生まれた独創的なラーメンは、その味を愛した多くの弟子たちによって広められ、どの店にも店名に「家」がついたことからいつしか「家系ラーメン」と称されるようになった。 そして今ではラーメンの一ジャンルとして、日本国内はおろか海外にまでその名を轟かせるほどになっている。 一般的な豚骨ラーメンの場合は、大量の骨を寸胴で炊いて旨味を徹底的に抽出して骨を抜く。 それに対して、家系ラーメンは常に寸胴の中の骨を入れ替えながら、火加減や旨味の出方を見極めながらスープを作る。 客の入り方によってスープの状態は刻一刻と変化する。 そのスープコントロールが家系ラーメンの肝であり、職人の腕の見せ所だ。 その製法が難しい家系ラーメン店が急激に増えた背景には、スープ工場で大量生産されたスープを配送するシステムが出来上がったからだ。 もちろん工場であっても骨から炊いて作っているのは同じだが、店舗でスープの状態を常に見ながら骨を抜き差しして作る、吉村家が創り出した家系本来のスープとは別物であることは間違いない。 ラーメン作りが覆された総本山での修業 『ラーメン内田家』店主の内田陽介さん。 本物の家系ラーメンを伝えることが自分の使命だと語る。 『ラーメン内田家』店主の内田陽介さんは、20代の時に当時博多のラーメン施設に出店していた『ラーメン六角家』で家系ラーメンと出会った。 今までに食べたことのない味に衝撃を受けた内田さんは六角家へ修業に入った。 その後、いくつもの人気店で経験を積み、家系ラーメン以外も学んでいった内田さんだったが、自分で独立するならやはり家系ラーメンしかないと確信。 その時に海外出店の話が持ち上がり、2012年に独立してタイで家系ラーメン店『ラーメン内田家』を開業、人気店へと育て上げた。 タイで成功を収めた内田さんは、地元である九州に本物の家系ラーメンを伝えたいという当初の夢を叶えるべく帰国。 家系ラーメンを作る職人としての仁義を通すべく、内田さんは家系総本山『ラーメン吉村家』の創業者である、吉村実さんのもとへ挨拶に向かった。 「やはり家系ラーメンと名乗らせて頂く以上、吉村さんにご挨拶するのは筋だと思い、業者さんを通じて会う機会を作って頂きました。 僕の熱い想いをお話をしている中で、思いもよらず吉村家で勉強させて頂けることになったんです」(内田家店主 内田陽介さん) 骨を入れ替えながら作るスープに、家系の特徴でもある黄金色の鶏油。 吉村家で学んだ製法を守る。 すでに家系ラーメン店を経営している内田さんに、吉村さんが自らラーメン作りを伝授するというのは異例中の異例と言っていい。 家系を誰も知らないタイの地で、愚直なまでに家系本来の作り方を貫き支持された内田さん。 工場から配送されたスープを温めて出す家系ラーメン店が乱立する状況を危惧する内田さんの思いは、当然家系ラーメン創始者である吉村さんも同じだった。 そこから開業に向けて早朝から吉村さんによるマンツーマンの特訓が始まった。 「吉村さんは73歳になられるのに、今でも深夜2時半から一人で仕込みされるのですが、その時間に手取り足取り教えて頂きました。 僕が今まで教わってきたことの全てが覆され、そこから僕のラーメンの作り方も変わりましたし、このラーメンを多くの人に正しく伝えて行きたいという使命感がより強くなりました」(内田さん) 「本物の家系ラーメンを伝えたい」 直系ならではの燻製チャーシューがたっぷり乗る「チャーシュー麺」は人気の一品。 晴れて九州初となる吉村家直系のお墨付きを貰った内田さん。 開店日には多くのラーメンファンが家系総本山の味を求めて長い列を作った。 豚骨と鶏ガラのフレッシュな旨味だけを抽出したスープに、無添加醤油を使ったキレのある醤油ダレ。 甘みと香りをスープに加える黄金色の鶏油。 幅広の太麺は吉村家と同じ東京の『酒井製麺』の直系専用麺。 具には燻製したしっとり柔らかなチャーシューにほうれん草、大判の海苔が3枚。 博多ラーメンとは全く異なるラーメンながら、家系総本山直系の味は大人気となり、オープンから3ヶ月経った今もその人気は高まるばかりだ。 オープン以来休むことなく厨房に立ち続ける内田さん。 今も師匠である吉村さんや、直系店の先輩たちに電話でアドバイスを貰いながら毎日吉村家の味に近づけるべく奮闘している。 「家系ラーメンが増えた今だからこそ、本物の味をしっかりと守って作っていくことが大事だと思っています。 まずはこの店をしっかりと育て上げて、ここから違う場所でも本物の味をしっかりと伝えて広めていきたい。 それが僕の使命だと思います」(内田さん) (写真は全て筆者によるものです).
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