紫式部日記 現代語訳。 楽天ブックス: 和泉式部日記 現代語訳付き

紫式部日記『若宮誕生』現代語訳(1)(2)

紫式部日記 現代語訳

秋の けはひ 【注1】 入りたつ 【注2】ままに、 土御門殿 【注3】のありさま、 言はむ 【注4】 かた 【注5】 なく 【注6】 をかし 【注7】。 池のわたりの梢ども、 遣水 【注8】のほとりのくさむら、 おのがじし 【注9】色づきわたりつつ、 おほかた 【注10】の空も 艶なる 【注11】に、 もてはやされ 【注12】て、 不断 【注13】の 御読経 【注14】の声々、 あはれ 【注15】 まさりけり 【注16】。 やうやう 【注17】 涼しき 【注18】風の けはひ 【注19】に、 例の 【注20】 絶えせぬ 【注21】水の おとなひ 【注22】、 夜もすがら 【注23】 聞きまがはさる 【注24】。 重要な品詞と語句の解説 語句【注】 品詞と意味 1 けはひ 名詞。 意味は「雰囲気・様子」。 2 入りたつ タ行四段動詞「入りたつ」の連体形。 意味は「深く入る」。 3 土御門殿 名詞。 藤原道長の邸のこと。 4 言はむ ハ行四段動詞「言ふ」の未然形+婉曲の助動詞「む」の連体形。 意味は「言うような」。 「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 5 かた 名詞。 意味は「手段・方法」。 6 なく ク活用の形容詞「なし」の連用形。 7 をかし シク活用の形容詞「をかし」の終止形。 意味は「趣がある・風情がある」。 8 遣水 名詞。 寝殿造りなどで、庭に水を引き入れ、小川のようにしたもののこと。 9 おのがじし 副詞。 意味は「それぞれ」。 10 おほかた 名詞。 意味は「大部分・ほとんど」。 11 艶なる ナリ活用の形容動詞「艶(えん)なり」の連体形。 意味は「あでやか・優美なさまである」。 12 もてはやされ サ行四段動詞「もてはやす」の未然形+受身の助動詞「る」の連用形。 意味は「引き立てられる」。 13 不断 名詞。 意味は「物事が絶えないこと・絶え間なく続くこと」。 14 御読経 名詞。 ここでは、藤原道長の長女の彰子の安産祈願のため僧たちが読経をしている。 15 あはれ 名詞。 意味は「しみじみとした感慨」。 16 まさりけり ラ行四段動詞「まさる」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。 意味は「つのった・強まった」。 17 やうやう 副詞。 意味は「しだいに」。 18 涼しき シク活用の形容詞「涼し」の連体形。 19 けはひ 名詞。 意味は「音・様子」。 20 例の 連語。 意味は「いつもの」。 21 絶えせぬ サ変動詞「絶えす」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。 意味は「絶えない」。 22 おとなひ 名詞。 意味は「音」。 23 夜もすがら 副詞。 意味は「一晩中・夜通し」。 24 聞きまがはさる サ行四段動詞「聞きまがはす」の未然形+自発の助動詞「る」の終止形。 意味は「区別がつかないように聞こえさせる」。 秋の雰囲気が深くなるにつれて、藤原道長様邸の様子は、言うような手段がないほど趣がある。 池のあたりの梢や、遣水のほとりの草むらは、それぞれ色づき渡り、空全体も優美なのに引き立てられて、絶え間ない安産祈願の読経の声は、しみじみとした感慨を強ませた。 しだいに涼しく感じさせる風の音に、いつもの絶えない遣水の音が、夜どおし(読経の声と入り交じって、)区別がつかないように聞こえさせる。 いかがでしたでしょうか。 この箇所は、藤原道長邸の秋の情景を述べた文章で、難しい文法事項はありません。 あえて、言うなら、助動詞の「む」や「る」の意味が分かるようしておけば、よいでしょう。 次の文章からは、敬語表現が出てきますので、そちら方を集中的に勉強するのがよいでしょう。 続きは以下のリンクからどうぞ。 【市場通笑作鳥居清長画『虚言弥二郎傾城誠』(安永八年刊)を参考に挿入画を作成】.

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『紫式部日記』彰子中宮のサロンがつまらないのは中宮のご気性ゆえ

紫式部日記 現代語訳

紫式部日記「若宮誕生」 現代語訳 紫式部日記「若宮誕生」 現代語訳 十月十日余りまでも、(中宮様はお産の後も)御帳(台の床)からお出になりません。 (私どもは)西側の傍らにある御座に、夜も昼も控えてお仕えする。 殿(道長様)が、夜中にも明け方にもお伺いになさっては、御乳母の懐をお探りに(なって皇子をおかわいがりに)なるので、(乳母が)くつろいで眠っているときなどは、何やらわからないで寝ぼけて目を覚ますのも、とても気の毒に思える。 皇子は)まだ頼りないご様子なのを、(道長様が)よいご気分で、高い高いをしてかわいがりなさるのも、当然のことながら結構なことである。 あるときは、(皇子が)とんでもないことをしかけ申し上げなさったのを、(道長様は)濡れた御直衣の)御紐を解いて、御几帳の奥であぶりなさいます。 「ああ、この皇子のおしっこで濡れるのは、うれしいことだなあ。 この濡れたのを、あぶるのは、願っていたとおりという気分だよ。 」とおっしゃって、お喜びになる。 中務の宮に関する御ことを、(道長様は ご熱心になさって、(私を 中務の宮家に心を傾けている人とお思いになって、ご相談になるにつけても、本当に(私の)心の中は、思案にくれていることが多い。 帝の行幸が近くなったというので、 道長様は)お邸の内をますます美しく造作し手入れをなさる。 実に美しい菊を見いだしては、根から掘って(人々が持って)参上する。 菊のいろいろな色に変色しているのも、黄色で見どころのあるのも、さまざまな様子に植え並べてあるのも、朝霧のかかる切れ目にずっと見通しているのは、ほんとうに老いもなくなるにちがいないという気がするのに、どうしてだろうか。 まして、もの思いが少しでも世間並みな人間であったとしたら、(このような折には 風流好みにも振る舞い、若い気分になって、無常のこの世をも過ごすことであろうに。 すばらしいことや、興味を引かれることを見たり聞いたりするにつけても、ただ思いつめた憂愁が引きつける面ばかりが強くて、憂鬱で、思いに任せずに、嘆かわしいことが多くなるのは、とてもつらいことだ。 なんとかして、今はやはり、もの忘れしてしまおう、思ってもしようがない、(思い悩むことは)罪深いことだというなどと、夜が明けてくると思いにふけりながら外を眺めて、水鳥たちが何のもの思いもない様子で遊び合っているのを見る。 水鳥を水の上に浮かんでいる、自分に関係ないものと見ることができようか、いや、できない。 この私も、水鳥のように浮いている不安定な生活を送っているのだ。 あの水鳥も、あのように気ままに遊んでいると見えるけれど、それ自身は(水面下で懸命に足掻きをして)たいそうつらい生き方をしているようだと、わが身に思い比べられる。 advanced Q. 1 懐をひき探させ給ふとあるが、何のためにそのようなことをするのか。 一〇字以内(句読点は含まない)で簡潔に答えよ。 advanced Q. 2 罪も深かなりと考えるのはなぜか、簡潔に説明しなさい。

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紫式部日記 現代語訳

行幸近くなりぬとて、殿のうちをいよいよつくろひみがかせ給ふ。 世におもしろき菊の根をたづねつつ、掘りてまゐる。 いろいろ移ろひたるも、黄なるが見どころあるも、さまざまに植ゑたてたるも、朝霧の絶え間に見わたしたるは、げに老いも退ぞきぬべき心地するに、なぞや。 まして、思ふことの少しもなのめなる身ならましかば、すきずきしくももてなし、若やぎて、常なき世も過ぐしてまし。 めでたきこと、おもしろきことを見聞くにつけても、ただ、思ひかけたりし心の引く方のみ強くて物憂く、思はずに、嘆かしきことの増さるぞ、いと苦しき。 「いかで今は物忘れしなむ。 思ふ甲斐もなし。 罪も深かるなり」など、明けたてばうちながめて、水鳥どもの思ふこと無げに遊び合へるを見る。 水鳥を水の上とやよそに見む 我も浮きたる世を過ぐしつつ 「彼もさこそ心をやりて遊ぶと見ゆれど、身はいと苦しかるなり」と思ひよそへらる。 一条天皇が道長様のところをお訪ねになる行幸の日も迫ってきたということで、道長様は邸内をますます手入れさせ、立派に整えさせなさる。 人々は、実に素晴らしい菊の株を探し回り、掘り出して献上する。 様々に色変りしている菊も、黄色いので見どころがある菊も、様々に植えつけている様子も、朝霧の絶え間に見渡したときには、延命長寿の花といわれる菊だけあって、本当に老いも退いてしまいそうな気持ちがするけれど、どうしてだろうか、そんなに晴れやかな気持ちにはなれない。 まして悩みが少しでも人並みの身であったなら、この菊を目の当たりにすれば、うきうきもして、若々しい様子で無常の世も暮らしたでしょうに。 素晴らしいこと、素敵なことを見たり聞いたりするにつけても、ひたすらに、気掛かりなことを抱える気持ちに引きずられる面ばかりが強くて、憂鬱で、意図しないところで嘆かわしいことが募っていくのが、とても苦しい。 「何とかして今は悩みをすっかり忘れてしまいたい。 悩んだところで甲斐がない。 こうして拘泥していることは、罪も深いことであるようだし」などと考えていると、空が白んできたので、ぼんやりと物思いにふけり、水鳥などが悩みなどなさそうに遊び合っているのを見る。 水鳥を水の上のものとしてよそごとに見るだろうか、いや、見ない。 私も水鳥が水に浮いているように、私もふわふわと辛い世の中を過ごすばかりなのだ 「水鳥もそうして気晴らしのように遊んでいるように見えるけれど、実際その身はとても苦しいようだ」と、自分と重ねて見つめずにはいられない。

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