西村 あさひ。 西村あさひ法律事務所の評判総合情報

MSワラントを用いた資金調達、再び増加、その設計は?

西村 あさひ

新型コロナウイルス感染症の拡大で生じ得る「法務問題」とは? 2. 契約上の義務の不履行 (1)不可抗力条項 納期に売買の目的物を引き渡すことができなかったり、受託業務を契約通り実施できない場合、債務者は履行遅滞や履行不能による債務不履行責任を負います。 しかし、債務不履行が天変地異など当事者のコントロールの及ばない事由によるものである場合、不可抗力による免責が認められるのではないかが問題になります。 何が「不可抗力」とされているかは、契約書によって様々であり、不可抗力の効果(債務者の免責範囲や解除権の有無等)も様々ですので、それぞれの契約書ごとに内容を検討する必要があります。 実務上、「天変地異、戦争、暴動…その他…」といくつか不可抗力事由を列記した上で、キャッチオールを設ける条項がよく見られますが、「感染症」が明確には例示列挙された事由にあたらないときに新型コロナウイルス感染症による影響は不可抗力事由にあたるか、例示列挙されていたとして、感染症に起因する原料の調達不能等の二次的影響は不可抗力事由に含まれるのかなど、不可抗力条項の解釈として、個々の事案に適用があるのかどうか難しい判断となる場面も多くあります。 最終的に両当事者の損害を最小化するために何ができるか相互に解決策を模索し、協議で解決することとなるとしても、協議に臨むにあたり、自社の契約上のポジションを把握しておくことは重要です。 当該債務者に帰責事由があるのか、どの範囲の損害まで法的に請求可能と判断されるか等は、個別事案ごとに論点になります。 この点、2020年4月1日から施行される改正民法の下では、債務者の帰責事由の有無を問わず債務不履行に基づく契約解除が認められるようになります(改正民法541条以下参照)。 また、履行不能について当事者双方に帰責事由がない場合、危険負担が問題となりますが、その効果も、反対給付債務の消滅(民法536条1項)から、反対給付の履行拒絶に改められます(改正民法536条1項)。 新法と旧法のいずれが適用されるかによって法的効果に違いが生じ得ますので、改正民法の経過措置規定の適用関係も踏まえて契約関係を確認することが必要です。 金銭債務については、帰責事由の不存在や不可抗力は免責事由とはなりません(民法419条3項)。 なお、政府の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(平成29年9月12日〔変更〕)では、金銭債務の支払猶予等について、「国は、新型インフルエンザ等緊急事態において、経済の秩序が混乱するおそれがある場合には、その対応策を速やかに検討する」とされています(新型インフルエンザ等対策特別措置法58条参照)。 受領遅滞 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、受入体制が整わない、予定していたイベントが中止された等により、債権者が債務の履行を受けられないこともあります。 また、下請法上の問題については、下記4をご参照ください。 受領遅滞の効果について、現行民法では、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う」とのみ定められており(413条)、具体的な定めはありません。 改正民法では現行法下での判例や一般的な解釈に従い、受領遅滞の効果(目的物保存義務の軽減、増加費用の債権者負担、受領遅滞中の履行不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなすこと等)が明文化されています。 硫黄鉱石売買契約において、信義則上、買主の引取義務を肯定した最判昭和46・12・16民集25巻9号1472頁参照。 下請取引における留意点 新型コロナウイルス感染症は企業のサプライチェーンにも影響を与えます。 上記要請文では、新型コロナウイルス感染症に関連する事象との関係でも、その問題に対する基本的な考え方は同様であるとされています。 例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により下請事業者のコストが通常の発注に比べて大幅に増加するため、下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず、下請事業者と十分に協議することなく、通常の発注をした場合の単価と同一の単価に一方的に据え置くことは、買いたたきとして下請法上問題となるおそれがありますし(問11)、部品AとBで商品Cを製造している場合に、部品Aが手に入らなくなったことを受けて下請事業者に発注していた部品Bの受領を拒否することも、下請事業者に責任がない場合には下請法違反になると考えられます(問9)。 親事業者も事業場の閉鎖等で受領能力がない場合もあり得ますが、その場合も、代替的な事業場での受領の可能性も含め、親事業者は可能な限り受領する手段を講ずる必要があると考えられます。 但し、客観的にみて当初定めた納期に受領することが不可能であると認められる場合に、両者間で十分協議の上、相当期間納期を延ばすこととなったときは、そのような事情は十分考慮されますので、親事業者としては、このような特別な事情や経緯について、事後的にも分かるような記録を残しておくことが望ましいとされます(問4)。 このような状況下、多くのイベント等が中止又は延期されています。 既に支払われた参加費やチケット代の取扱いについて、詳しくは、矢嶋雅子=森田多恵子をご参照ください。 労務関係 (1)テレワーク等 企業では、在宅勤務や時差出勤が広がっています。 在宅勤務は、情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)の一つですが、テレワークを行う労働者にも、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等は適用されます。 テレワークを行う場合の課題の一つに、労働時間の適正な把握があります。 また、労働者が使用者と離れた場所で勤務するため、相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。 今回の新型コロナウイルス対策として、急遽大半の従業員が在宅勤務となった企業も多いと思われます。 始業・終業の時間、事業場外みなし労働時間制の導入、テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止や許可制、賃金体系、情報通信機器・作業用品等の負担、テレワークを行う労働者の社内教育・研修等、就業規則で定めておくべき事項は多くあります。 一度自社のテレワークに係る制度・ルールを見直すことが望ましいと考えられます。 その具体的な要件について、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」5頁以下参照。 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」9頁以下。 (2)労働者の休業手当 労働者の休業には、労働者が新型コロナウイルスに感染したり、その疑いがある場合だけでなく、新型コロナウイルスの影響で事業そのものを休止せざるを得ず、休業する場合もあります。 使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする、いわゆる安全配慮義務(労働契約法5条)を負っていますので、事業場・職場での感染拡大を防止するべく、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者に対して休業を命ずるなどの対応も検討する必要があると思われます。 労働基準法26条は、使用者が、使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させたときは、休業期間中、当該労働者の平均賃金の6割以上の手当を支給しなければならないとしています。 これによると、新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限(感染症法18条)により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当せず、休業手当を支払う必要はないと考えられます(3-問2)。 就業制限がない場合、「帰国者・接触者相談センター」での相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である労働者を、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります(3-問3)。 年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものであるため、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いはできません(3-問6)。 なお、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱うことになります(3-問4)。 最判昭和62・7・17民集41巻5号1283頁。 例えば、親会社の経営難による資金・資材の入手困難による休業(昭和23・6・11基収1998号)や業務を受注できなかったことによる休業(東京地判平成11・5・21労判776号85頁)が挙げられます。 」とされています。 株主総会 大規模なイベントの自粛が求められる中、会社法上、株式会社は毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を招集しなければならないとされており 会社法296条1項 、3月に定時株主総会を予定している12月決算会社も多くあります。 (1)来場者数の抑制 患者・感染者との接触を減らし、感染症を予防する観点からは、招集通知や自社ウェブサイト等で、株主総会当日に会場に来場することに代えて、事前の議決権行使(書面投票、電子投票。 会社法298条1項3号・4号)を行うことを促す、あるいは呼びかけることが考えられます。 また、対応が可能な場合には、インターネット等を利用したハイブリッド型バーチャル株主総会の活用も検討することが考えられます。 インターネットを用いて会場に来なかった株主に対する情報開示の充実を図るという観点からは、自社ホームページなどで、質疑応答の要旨を掲載する、オンデマンド方式での動画配信を行う等の取り組みを行うことも考えられます。 顕著な症状が見られる株主の入場を拒否し、又は退場を命じることができるのかどうかは論点になります。 新型コロナウイルスの感染拡大防止が社会的な問題となっている今日においては、発熱や咳き込むなどの症状が顕著に見られる株主に、当該株主が実際に新型コロナウイルスに感染しているかどうかを確認しなくとも、他の株主への感染防止や、他の株主が感染の恐怖を感じず平穏に議事に参加できるようにする観点から、入場を控えるよう要請し、要請に応じない場合は入場を拒み、又は退場を命じることも、議長の秩序維持権限(会社法315条)の行使として認められるのではないかと考えられます。 また、株主の出席を拒否するのではなく別室等に誘導することにより他の株主から隔離した上で株主総会に参加させることが可能かどうかについても検討を要します。 (3)開催日時の変更 予定の日時に株主総会を開催することができない事態に至った場合、招集の撤回や開催日時の変更、基準日の再設定を検討することになるため、それぞれの場合に必要な法的手続について確認しておく必要があります。 新たな開催日の目途が立っていない場合には、招集手続を撤回し、目途が立った段階で招集手続をやり直すことになります。 招集の撤回は、招集手続に準じ、取締役会で決議した上で、株主に書面をもって通知すべきであり、当初の招集日より前に当該通知が株主に到達することが望ましいものの、時間的余裕がない場合でも、広告やウェブサイト上の告知等により可能な限り株主への周知を図る必要があると考えられています。 変更後の日程が決まっている場合には、開催日時を変更することになります。 日時の変更も、取締役会決議を経て、株主に変更前の開催日かつ変更後の開催日の2週間前までに通知が到達していることが原則的な方法と考えられます。 「定時株主総会の開催について」 ( ) 8. 「いつも通り」とはいかない状況下では、多くの法的論点が生じます。 このような時こそ、企業法務担当者としては、正確な情報把握と冷静な法的分析を行うことが重要になるといえるでしょう。 なお、金融商品取引法に基づく開示書類(有価証券報告書及び内部統制報告書、四半期報告書、半期報告書)について、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、中国子会社への監査業務が継続できないなど、やむを得ない理由により期限までに提出できない場合は、財務(支)局長の承認により提出期限を延長することが認められている旨のお知らせが金融庁から出されています。 また、証券取引所からも、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱いが公表されています。 森田 多恵子 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 ニューヨーク州弁護士 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 ニューヨーク州弁護士 2003年、京都大学法学部卒業、2010年、ペンシルベニア大学ロースクール卒業(LL. 2011年~2013年、三菱商事株式会社法務部出向。 2017年~、コスモ石油株式会社社外監査役。 【第6回】 新型コロナウィルス感染症の拡大と企業法務における留意事項•

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西村 あさひ

倒産件数の減少は企業再生の証左ではない 地方経済の綱渡り状態が続いている。 人口の減少基調のなかで、とくに若年人口の減少に伴って地元中小企業が衰退し、つれて一蓮托生の関係にある第一地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合も混迷を強いられているのだ。 金融機関への公的資金の投入や、中小企業向け融資の返済保証などによる延命策はいつまでもつのだろうか。 「中小企業金融円滑化法の適用で30~40万社が返済の先延ばしで救われたが、そのうち5~6万社が危ないと言われている。 5~6万社のうち10%は何とか再生できたが、90%は再生計画案を作れない状態で、体力が落ちてきている。 私は、30~40万社のなかで、5~6万社に該当しない企業も本当に存続できるのか疑問に思っている」 西村あさひ法律事務所パートナーで弁護士の松嶋英機は、そう危惧を示す。 松嶋は企業再生の第一人者として知られ、日本航空などを再建した官民ファンドの地域経済活性化支援機構の社外取締役、および機構の地域経済活性化支援委員長に就任している。 社外取締役とはいえ、支援委員長は常勤である。 松嶋は毎日8時50分に機構に出勤して再生業務に携わり、午後3~4時に法律事務所に戻って弁護士業務に入るというスケジュールだ。 中小企業再生の真っただ中で指揮を執る松嶋は、現況に最も知悉している専門家の一人である。 その危惧とは裏腹に倒産件数が減少傾向にあるのは、政権の意向が反映されているという。 東京商工リサーチの調査によると、2013年の全国企業倒産(負債総額1000万円以上)は1万855件。 倒産件数は前年比10・4%減で5年連続で前年を下回り、22年ぶりに1万1000件を下回る低水準となった。 負債総額は2兆7823億4700万円で2年ぶりに前年を下回り、23年ぶりに3兆円を下回った。 中小企業浮上のカギはチャレンジと決断 このデータに対して、松嶋は異を唱えるのだ。 現実は何ら上向いていない。 地域金融機関は引当金不足のため損失を出せず、融資先を倒産させられないのが実情である」 円滑化法終了後のフォロー策として3年間の暫定リスケが施行されたが、3年間で再生計画を作成できなければ破綻処理が下される。 これが金融庁の示した方針だ。 もはや延命策に限界が見えつつあるなかで、打つべき施策は何か。 松嶋は企業の新陳代謝を提言する。 「存続の難しい企業は清算して、存続できる企業を強化して人材や設備を引き継いでもらう。 あるいは起業する若者を支援する。 この新陳代謝が必要で、政府が新陳代謝にどのように関わるかが問われている」 こうした渦中で中小企業が浮上するには、チャレンジと決断、この2つの要素が欠かせないというのが松嶋の見解である。 多くの中小企業は従来からの事業を従来通りの方法で営み、コストダウンを繰り返しながら存続してきた。 しかし、それも限界に達している。 そこには成長力が芽生えず、新たなチャレンジが喫緊の課題になっているが、はたして踏み出せるかどうか。 さらに問題を先延ばしせずに、たとえば腕を切り落としてでも心臓を残すような決断を下せるかどうか。 経営アドバイザーとして弁護士を生かすポイント 「誰かが経営者にアドバイスしてあげないといけない」(松嶋)というが、弁護士にアドバイスを求める場合、起用のポイントは主に2つあると松嶋は指摘する。 第一に起用の時期である。 資金繰りの悪化や訴訟など問題が発生してからではなく、ホームドクターとの関係のように常日頃から関係を築いておくこと。 問題点を早めに把握して、事前に手を打っておくためである。 「お茶を飲むような関係になれば、ちょっとしたことでも相談しやすくなってアドバイスしてもらえるようになる」(松嶋)という。 第二に弁護士の選定である。 経済や経営に精通した弁護士は決して多くはなく、まして地方では、企業の分割や譲渡、私的再生などを処理できる弁護士は限られてくる。 適任の弁護士を選ぶには、銀行や商工会議所、地元の経営者団体などで評判を確認することが大切である。 ただし、松嶋はこう釘を刺す。 「企業再生を手がける弁護士に関しては、あの案件は自分が担当したというような自慢話をする弁護士は、実力があるとは限らない。 本を出版すると世間では評価される風潮があるが、出版と弁護士としての実力は関係がない」 一方で、弁護士もまた依頼者を選ぶのである。 松嶋が心から力を尽くしてあげたいと思う経営者は、誠実で懸命に努力をする人だ。 そうでない場合は、報酬を請求せずに依頼を断わるケースもある。 過去の依頼者には、松嶋の名刺を持参して銀行を訪問し、松嶋の知名度を利用して、嘘を並べ立てた経営者もいたという。 こうした弊害を防ぐために、松嶋は信頼のできる知人を介した依頼でなければ受けない方針を固めている。 顧問契約の締結についても、弁護士の立場から判断している。 よほどの依頼者でも締結していないのだ。 ひとたび顧問契約を結ぶと、依頼者によっては「弁護士を使い放題にできる」という姿勢になって、些細な用件でも呼びつけるようになりがちだからだ。 松嶋には、同業の弁護士や司法修習生に講義をする機会も多い。 「同じ依頼者に同じ助言を述べても説得できる弁護士と説得できない弁護士がいるが、その違いは人間性にある。 依頼者が安心して相談できる人間性を磨くことが大切だ」と説いている。

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新型コロナウイルス感染症の拡大で生じ得る「法務問題」とは? 2. 契約上の義務の不履行 (1)不可抗力条項 納期に売買の目的物を引き渡すことができなかったり、受託業務を契約通り実施できない場合、債務者は履行遅滞や履行不能による債務不履行責任を負います。 しかし、債務不履行が天変地異など当事者のコントロールの及ばない事由によるものである場合、不可抗力による免責が認められるのではないかが問題になります。 何が「不可抗力」とされているかは、契約書によって様々であり、不可抗力の効果(債務者の免責範囲や解除権の有無等)も様々ですので、それぞれの契約書ごとに内容を検討する必要があります。 実務上、「天変地異、戦争、暴動…その他…」といくつか不可抗力事由を列記した上で、キャッチオールを設ける条項がよく見られますが、「感染症」が明確には例示列挙された事由にあたらないときに新型コロナウイルス感染症による影響は不可抗力事由にあたるか、例示列挙されていたとして、感染症に起因する原料の調達不能等の二次的影響は不可抗力事由に含まれるのかなど、不可抗力条項の解釈として、個々の事案に適用があるのかどうか難しい判断となる場面も多くあります。 最終的に両当事者の損害を最小化するために何ができるか相互に解決策を模索し、協議で解決することとなるとしても、協議に臨むにあたり、自社の契約上のポジションを把握しておくことは重要です。 当該債務者に帰責事由があるのか、どの範囲の損害まで法的に請求可能と判断されるか等は、個別事案ごとに論点になります。 この点、2020年4月1日から施行される改正民法の下では、債務者の帰責事由の有無を問わず債務不履行に基づく契約解除が認められるようになります(改正民法541条以下参照)。 また、履行不能について当事者双方に帰責事由がない場合、危険負担が問題となりますが、その効果も、反対給付債務の消滅(民法536条1項)から、反対給付の履行拒絶に改められます(改正民法536条1項)。 新法と旧法のいずれが適用されるかによって法的効果に違いが生じ得ますので、改正民法の経過措置規定の適用関係も踏まえて契約関係を確認することが必要です。 金銭債務については、帰責事由の不存在や不可抗力は免責事由とはなりません(民法419条3項)。 なお、政府の「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(平成29年9月12日〔変更〕)では、金銭債務の支払猶予等について、「国は、新型インフルエンザ等緊急事態において、経済の秩序が混乱するおそれがある場合には、その対応策を速やかに検討する」とされています(新型インフルエンザ等対策特別措置法58条参照)。 受領遅滞 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、受入体制が整わない、予定していたイベントが中止された等により、債権者が債務の履行を受けられないこともあります。 また、下請法上の問題については、下記4をご参照ください。 受領遅滞の効果について、現行民法では、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う」とのみ定められており(413条)、具体的な定めはありません。 改正民法では現行法下での判例や一般的な解釈に従い、受領遅滞の効果(目的物保存義務の軽減、増加費用の債権者負担、受領遅滞中の履行不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなすこと等)が明文化されています。 硫黄鉱石売買契約において、信義則上、買主の引取義務を肯定した最判昭和46・12・16民集25巻9号1472頁参照。 下請取引における留意点 新型コロナウイルス感染症は企業のサプライチェーンにも影響を与えます。 上記要請文では、新型コロナウイルス感染症に関連する事象との関係でも、その問題に対する基本的な考え方は同様であるとされています。 例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により下請事業者のコストが通常の発注に比べて大幅に増加するため、下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず、下請事業者と十分に協議することなく、通常の発注をした場合の単価と同一の単価に一方的に据え置くことは、買いたたきとして下請法上問題となるおそれがありますし(問11)、部品AとBで商品Cを製造している場合に、部品Aが手に入らなくなったことを受けて下請事業者に発注していた部品Bの受領を拒否することも、下請事業者に責任がない場合には下請法違反になると考えられます(問9)。 親事業者も事業場の閉鎖等で受領能力がない場合もあり得ますが、その場合も、代替的な事業場での受領の可能性も含め、親事業者は可能な限り受領する手段を講ずる必要があると考えられます。 但し、客観的にみて当初定めた納期に受領することが不可能であると認められる場合に、両者間で十分協議の上、相当期間納期を延ばすこととなったときは、そのような事情は十分考慮されますので、親事業者としては、このような特別な事情や経緯について、事後的にも分かるような記録を残しておくことが望ましいとされます(問4)。 このような状況下、多くのイベント等が中止又は延期されています。 既に支払われた参加費やチケット代の取扱いについて、詳しくは、矢嶋雅子=森田多恵子をご参照ください。 労務関係 (1)テレワーク等 企業では、在宅勤務や時差出勤が広がっています。 在宅勤務は、情報通信技術を利用して行う事業場外勤務(テレワーク)の一つですが、テレワークを行う労働者にも、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等は適用されます。 テレワークを行う場合の課題の一つに、労働時間の適正な把握があります。 また、労働者が使用者と離れた場所で勤務するため、相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。 今回の新型コロナウイルス対策として、急遽大半の従業員が在宅勤務となった企業も多いと思われます。 始業・終業の時間、事業場外みなし労働時間制の導入、テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止や許可制、賃金体系、情報通信機器・作業用品等の負担、テレワークを行う労働者の社内教育・研修等、就業規則で定めておくべき事項は多くあります。 一度自社のテレワークに係る制度・ルールを見直すことが望ましいと考えられます。 その具体的な要件について、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」5頁以下参照。 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」9頁以下。 (2)労働者の休業手当 労働者の休業には、労働者が新型コロナウイルスに感染したり、その疑いがある場合だけでなく、新型コロナウイルスの影響で事業そのものを休止せざるを得ず、休業する場合もあります。 使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする、いわゆる安全配慮義務(労働契約法5条)を負っていますので、事業場・職場での感染拡大を防止するべく、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者に対して休業を命ずるなどの対応も検討する必要があると思われます。 労働基準法26条は、使用者が、使用者の責めに帰すべき事由により労働者を休業させたときは、休業期間中、当該労働者の平均賃金の6割以上の手当を支給しなければならないとしています。 これによると、新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限(感染症法18条)により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当せず、休業手当を支払う必要はないと考えられます(3-問2)。 就業制限がない場合、「帰国者・接触者相談センター」での相談の結果を踏まえても、職務の継続が可能である労働者を、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります(3-問3)。 年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものであるため、新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取り扱いはできません(3-問6)。 なお、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱うことになります(3-問4)。 最判昭和62・7・17民集41巻5号1283頁。 例えば、親会社の経営難による資金・資材の入手困難による休業(昭和23・6・11基収1998号)や業務を受注できなかったことによる休業(東京地判平成11・5・21労判776号85頁)が挙げられます。 」とされています。 株主総会 大規模なイベントの自粛が求められる中、会社法上、株式会社は毎事業年度の終了後一定の時期に定時株主総会を招集しなければならないとされており 会社法296条1項 、3月に定時株主総会を予定している12月決算会社も多くあります。 (1)来場者数の抑制 患者・感染者との接触を減らし、感染症を予防する観点からは、招集通知や自社ウェブサイト等で、株主総会当日に会場に来場することに代えて、事前の議決権行使(書面投票、電子投票。 会社法298条1項3号・4号)を行うことを促す、あるいは呼びかけることが考えられます。 また、対応が可能な場合には、インターネット等を利用したハイブリッド型バーチャル株主総会の活用も検討することが考えられます。 インターネットを用いて会場に来なかった株主に対する情報開示の充実を図るという観点からは、自社ホームページなどで、質疑応答の要旨を掲載する、オンデマンド方式での動画配信を行う等の取り組みを行うことも考えられます。 顕著な症状が見られる株主の入場を拒否し、又は退場を命じることができるのかどうかは論点になります。 新型コロナウイルスの感染拡大防止が社会的な問題となっている今日においては、発熱や咳き込むなどの症状が顕著に見られる株主に、当該株主が実際に新型コロナウイルスに感染しているかどうかを確認しなくとも、他の株主への感染防止や、他の株主が感染の恐怖を感じず平穏に議事に参加できるようにする観点から、入場を控えるよう要請し、要請に応じない場合は入場を拒み、又は退場を命じることも、議長の秩序維持権限(会社法315条)の行使として認められるのではないかと考えられます。 また、株主の出席を拒否するのではなく別室等に誘導することにより他の株主から隔離した上で株主総会に参加させることが可能かどうかについても検討を要します。 (3)開催日時の変更 予定の日時に株主総会を開催することができない事態に至った場合、招集の撤回や開催日時の変更、基準日の再設定を検討することになるため、それぞれの場合に必要な法的手続について確認しておく必要があります。 新たな開催日の目途が立っていない場合には、招集手続を撤回し、目途が立った段階で招集手続をやり直すことになります。 招集の撤回は、招集手続に準じ、取締役会で決議した上で、株主に書面をもって通知すべきであり、当初の招集日より前に当該通知が株主に到達することが望ましいものの、時間的余裕がない場合でも、広告やウェブサイト上の告知等により可能な限り株主への周知を図る必要があると考えられています。 変更後の日程が決まっている場合には、開催日時を変更することになります。 日時の変更も、取締役会決議を経て、株主に変更前の開催日かつ変更後の開催日の2週間前までに通知が到達していることが原則的な方法と考えられます。 「定時株主総会の開催について」 ( ) 8. 「いつも通り」とはいかない状況下では、多くの法的論点が生じます。 このような時こそ、企業法務担当者としては、正確な情報把握と冷静な法的分析を行うことが重要になるといえるでしょう。 なお、金融商品取引法に基づく開示書類(有価証券報告書及び内部統制報告書、四半期報告書、半期報告書)について、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、中国子会社への監査業務が継続できないなど、やむを得ない理由により期限までに提出できない場合は、財務(支)局長の承認により提出期限を延長することが認められている旨のお知らせが金融庁から出されています。 また、証券取引所からも、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱いが公表されています。 森田 多恵子 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 ニューヨーク州弁護士 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 ニューヨーク州弁護士 2003年、京都大学法学部卒業、2010年、ペンシルベニア大学ロースクール卒業(LL. 2011年~2013年、三菱商事株式会社法務部出向。 2017年~、コスモ石油株式会社社外監査役。 【第6回】 新型コロナウィルス感染症の拡大と企業法務における留意事項•

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