トクヤマは15日、トヨタ自動車と、燃料電池自動車(FCV)の燃料電池システム(FCシステム)を活用した定置式の燃料電池発電機(FC発電機)を山口県周南市のトクヤマ徳山製造所内に設置して、電解による副生水素を利用した実証運転を開始したと発表した。 実証運転は、2022年3月末までを予定している。 FC発電機の外観 FC発電機は、FCV「MIRAI」に搭載されているFCスタック、パワーコントロールユニット(PCU)、2次電池などのFCシステムを活用することにより、高性能で安価な機器の製造を目指して、トヨタとトヨタエナジーソリューションズが共同で開発している。 今回導入したFC発電機は、昨年9月より、愛知県豊田市のトヨタ本社工場内で実証運転中の定格出力100kWのFC発電機をベースに、定格出力を50kWに変更し、部品レイアウトの見直しなどによりメンテナンス性向上などの改良を加えた。 実証運転は、トクヤマが食塩電解法でカセイソーダを製造する際に副次的に発生する副生水素をFC発電機の燃料として活用する。 トクヤマは、副生水素を安定供給する役割を担い、FC発電機で発電した電力は、定格出力50kWで徳山製造所内へ供給する。 トヨタは、水素使用量当たりの発電量などのエネルギー効率、発電出力の安定性、耐久性、メンテナンス性、海風による塩害の影響などの検証・評価を行う。 さらに、副生水素活用による発電性能への影響や水素を外部購入した場合と比べた燃料代などの経済性を試算する。 今後、トクヤマは、国内有数の高純度な副生水素供給能力を持つ総合化学メーカーとして、副生水素を活用した地域貢献モデル事業の検討を進める。 トヨタは、FC発電機の普及に向けて出力ラインナップの拡大、エネルギー効率や耐久性向上・コンパクト化・コスト低減などの商品力強化に向けた研究・開発とビジネスモデルの検討を行う。 両社は、今回の実証を通じて水素社会の実現を目指した取り組みをさらに進めていく考えだ。 新着ニュース一覧•
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省エネルギー効果 -35% CO 2削減効果 -48% 地球温暖化防止のためには、民生部門のCO 2削減が急務となっています。 そのための革新的な技術の一つとして、従来の省エネ機器のようにエネルギーを使う側ではなく、まるで"農園"のように自宅でお湯や電気を生み出す家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」が2009年5月世界に先駆けて販売されました。 これまでは排熱として利用されていなかった熱エネルギーをお湯として利用することで、省エネやCO 2削減を発揮することができます。 2009年の販売開始以来、日本全国で1万台以上が活躍しています。 燃料電池は排出されるのが水だけであるため、宇宙船の電源として使用され、それと併行して工場、事業所用電源などとして使われていましたが、これを家庭で手軽に用いるためには法規制を見直したり、徹底的なコストダウンをはかったりする必要がありました。 実際にエネファームを作る電機メーカーもさることながら、エネファームに都市ガスなどの燃料を供給するエネルギー事業者である東京ガスでも、NEDOプロジェクトを通じて、燃料電池の開発と普及のために、この課題に取り組み続けてきました。 「エネファーム」(ENE FARM)は、都市ガスなどから水素をつくり、これを燃料として電気と熱をつくりだすシステムです。 燃料電池の中では、いわゆる水の電気分解と逆の現象が起こっています。 電気分解では水(H 2O)に電気を流すと水素(H 2)と酸素 O 2 が生まれます。 燃料電池ではその逆、つまり、水素と酸素を反応させることで電気が生まれる反応が起きているのです。 また、電気エネルギーを生みだすと、熱も生まれます。 エネファームの場合、酸素は空気中のものをそのまま用いますが、水素は天然には存在しないものなので、都市ガスなどの化石燃料から取り出します。 東京ガスなどのエネルギー供給関連企業が発売を担い、電機メーカーが製造を担うという体制で、2009年に「エネファーム」という統一名称のもと各社から発売されました。 理論上のエネルギー利用率は、従来の火力発電システムの37%にくらべて、熱も利用するため81%と高効率です。 そのため、火力発電と従来型給湯器による従来方式に比べて、理想的な場合、35%のエネルギー消費削減につながります。 また、発電時に発生するのは水のみで、環境面でも優れています。 従来方式より48%、二酸化炭素の発生を削減できます。 また、化学反応による発電のため、静粛性が高い(作動音が静か)という、家庭や災害時使用に向いた特長もあります。 日本の家庭では4分の1以上のエネルギーが給湯用に使われるため、電気だけでなく熱も利用できる燃料電池は、家庭用のエネルギー供給に適していると考えたからでした。 しかし、当時、実用化に至っていたりん酸形燃料電池(PAFC)は工場や業務用で、家庭用として利用するためには、燃料電池の技術開発もさることながら、どんな製品とするか、その機能や仕様を新たに決める必要がありました。 また、家庭で使用するために、安全性を確立し、様々な規制を改定する必要もありました。 そこで、東京ガスなどのエネルギー事業者が、ユーザーとの接点をもつ立場から仕様検討、規制見直しのための試験などを担い、メーカーが機器や部材の開発製造を、そして大学や国立研究所が基礎研究を担うという連携体制で、燃料電池を家電並みに扱いやすくするための研究開発が進められました。 様々な選択肢から最適コンセプトを検討 東京ガスPEFC開発グループマネジャーの西崎邦博さんは、「1998年ごろから、家庭用燃料電池にどのような方式がよいかの検討を始めました」と話します。 様々ある選択肢のなかから、技術動向や市場ニーズを見極めながら最適なものを選んでいきました。 都市ガスを水素に改質する方式では、燃料に空気を混合して部分的に燃焼させて水素と一酸化炭素を生成する部分酸化改質などの方法もある中で、高温下で水蒸気と反応させることで水素や一酸化炭素を含むガスをつくる水蒸気改質の方法を採用しました。 また、電気と熱の、どちらのエネルギー出力を"中心"に考えて運転させるかの検討もありました。 結果、家庭で使う熱をつくり出すことを中心に発電するという「熱主電従」にして、不足分は電力会社の電気で補うことが、全体的な効率を高めると判断しました。 普及には規制の見直しも不可欠 燃料電池を家庭で使えるようにするためには、様々な規制見直しも不可欠でした。 家庭で電気を発電して使用するというコンセプト自体がなかったため、一般の家庭で燃料電池を使うには、規制の壁が高すぎて、事実上不可能だったのです。 例えば、家庭に燃料電池を設置するには、その運転管理に大型発電所と同じ電気主任技術者の資格が必要でした。 また、「窒素パージの義務」という技術面での規制もありました。 窒素パージとは、窒素を使って、都市ガスを水素に変える燃料処理装置のなかの余計な一酸化炭素などのガスを置き換える機能です。 すでに使われていた業務用りん酸形燃料電池など大型の燃料電池を前提とした規制でした。 こうした規制が、家庭用燃料電池には必要ないことを示して規制の見直しにつなげるため、東京ガスなどのエネルギー事業者や燃料電池機器メーカーなどは、NEDOの「固体高分子形燃料電池システム普及基盤整備事業」で、家庭用燃料電池の安全性の評価技術を確立し、規制の見直しへとつなげました。 まず、ユーザーが電気主任技術者の資格をもたなくても家庭用燃料電池を運転できるようにするため、家庭用燃料電池において考えられる危険をすべて抽出し、それぞれに対して試験を行って安全であることを確かめる必要がありました。 通常運転時の不具合、起動中や停止中の停電や故障、セルスタックの破損などを想定して、一つひとつの安全性を評価していきました。 また、窒素パージを不要にするため、窒素を使わなくとも安全に停止することができることを証明する必要がありました。 例えば、窒素ではなく都市ガスで燃料処理装置を満たした場合でも、エネファームの10倍の出力装置で、残留ガスの熱量は100円ライター2本分ほどにしかならないことを証明しました。 こうした取り組みの結果、出力10kw未満のPEFCは、太陽光発電設備同様に「一般用電気工作物」として認められ、電気主任技術者の資格も、窒素パージ装置の設置も不要となりました。 そして、一般家庭に実際に設置して運転する大規模実証試験へと大きく歩み出すことができました。 同事業では、2005年度の480台(うち東京ガスは150台)からはじまり、2008年度には1120台(同276台)となり、4年間では総計3307台(同796台)で、実証試験が行われました。 西崎さんは、「多くの台数が使われ、使用状況も様々になったため、初めて見えてくる課題もありました」と当時のことを振り返ります。 「10台程度の試作機規模のときは不具合が起きなかったとしても、100台や1000台規模のように母数が増えることで不具合が現れることもありました」 大規模実証試験の経過で、燃料電池の主要部である、電気をつくりだすセルや、セルを積み重ねたスタックなどは、大きな問題はありませんでしたが、その周辺にあるポンプやセンサなどの機器では、使い方により不具合が出るような傾向も見えてきました。 参考 東京ガスなどの実証事業者は、実証試験の協力者の家庭にこまめに出向き、使用状況や不具合の状況などのデータを集め、燃料電池機器メーカーに伝えていきました。 たとえば、各家庭に設置した燃料電池には、学習制御機能をもたせていました。 その家庭でのこれまでの各時間帯のエネルギーの使い方を燃料電池の制御装置自体が学習して、電気の作りかたを変えていくためのものです。 例えば、過去の3か月について、同じ曜日、同じ時刻における電気の使われ方をコンピュータが記録します。 その結果から"現在"の時間帯の電気の作り方を求めるといった方法です。 大規模実証試験では、実際の家庭に学習制御機能を入れてみることで、実際の生活と電気の作り方のズレが生じる場合もあることがわかりました。 そこで、ユーザー自身が調節する機能を付けることになり、より効率的な運転を支援できるようにしました。 「実証実験で起きた様々なことに対する経験を、次のモデルの設計に反映させ、システムの改善につながっていきました」と西崎さんは言います。 4万時間の耐久性を追求 実際のユーザーに家庭用燃料電池を使ってもらうとともに、燃料電池の耐久性を評価することも、一般販売には必要でした。 家庭用燃料電池の耐久性は運転時間4万時間ほどに設定されています。 これは日数で言えば1666日、つまり約4年半ということになります。 もし、実際に家庭用燃料電池の試験機を作動させて耐久性を実証しようとすれば、4万時間以上の時間が必要になるわけです。 しかし、発売まで4年半の歳月を待つというのは、販売する企業にとってあまりに長すぎます。 そこで、東京ガスは「実際の耐久時間よりも短時間で耐久性を検証するための方法」を考えることになりました。 これは「加速評価」とよばれています。 東京ガスは、昔から培ってきたガス製造の技術をベースに、都市ガスを改質して水素をつくる燃料処理装置の開発に取り組んできており、その中で、燃料処理装置の耐久性評価にも取り組みました。 都市ガスを水素に改質をするとき、複数の触媒が使われています。 また、これらの触媒が劣化する原因も起動停止に伴う温度変化や使用環境変化、都市ガスに微量含まれる硫黄成分の蓄積など複数あります。 「そこで、各触媒に対して、劣化の要因をわけて、それぞれ通常より厳し目の条件をあたえて確認していきました」と、西崎さんは話します。 「また、各触媒自体の耐久性だけでなく、所定の耐久時間経過後の各触媒の劣化状態を推定し、同様の劣化状態の触媒を作製し、その触媒を用いた燃料電池処理装置が問題なく所定の性能を示すかという実験も行ないました。 個々の触媒だけでなく、それらを統合した燃料処理装置としての耐久性を評価するためです。 」(西崎さん)。 このような加速評価を行なうからには「この評価法であれば、実際の条件下で作動したのと同様の試験結果を得ることができる」ということがわかっていなければなりません。 まだ開発されたばかりのものについて加速評価手法を検討するにあたり、東京ガスが培ってきた触媒の技術や、燃料処理装置開発の経験が大いに役立てられました。 大規模実証試験を経て、2009年に「エネファーム」は一般発売が開始されました。 本格普及への第一歩です。 2011年3月現在で、全メーカー・エネルギー事業者での合計普及台数は1万台を超えています。 また、東京ガスでは、2011年4月に、発電効率を従来の37%から40%へと高めた新型機種の販売を開始しています。 西崎さんは、「エネファームの開発に着手した当初は、うまくいくかどうか自信はありませんでした。 規制見直しが実現し、大規模実証試験も行なえ、商品化することができたのは、私にとっては驚きでもありました」と振り返ります。 「エネルギーの新しい利用法を全国規模で普及させるという事業は、成功すれば大きな社会的成果につながりますが、企業にとっては大きなリスクも伴います。 また、技術的な各役割をもつ企業や大学が結集して、普及という目標に取り組む必要があります。 リスクをともなうチャレンジングな技術開発、実証研究、規制見直しなどをNEDOに支援してもらってきました。 多くのNEDOプロジェクトの成果がいまの製品に取り込まれています」 異業種垂直連携のプロジェクトも 一方、課題への挑戦は続いています。 西崎さんは「コストダウンには、今後も挑みつづける必要があります」と話します。 例えば、PEFCの本体であるセルスタックでは、耐久性をもたせるために、供給する空気や水素に十分な湿度が必要です。 そのための加湿機能がコストダウンの足かせの一つです。 「現在は、湿度を低くしたガスでも、十分な耐久性を得るための技術をNEDOのプロジェクトに参加して研究開発しています」。 東京ガスが参画していたNEDOの燃料電池関連事業のうち「ロバストプロジェクト」と呼ばれるものがありました。 ロバストは「丈夫な」という意味。 より家庭用燃料電池を低コスト化、また高性能化するための、燃料電池スタック主要部分の研究開発が、エネルギー事業者、燃料電池メーカー、そして電解質膜などの部材メーカーなどが協力して研究開発を進める"異業種垂直連携"といったスタイルで進められ、加湿の少ない条件でも耐久性を有するセルの開発において大きな成果が得られました。 その後、加湿を全く不要とするセルの開発を、現在のプロジェクトにおいて実施しています。 「家庭用の燃料電池を商品化しているのは今のところ世界でも日本だけです。 NEDOプロジェクトを中心として、日本では家庭用のPEFCに限らずさまざまな燃料電池の技術開発プログラムがありました。 日本の燃料電池業界にそれらの経験があってこそ、いまのエネファームがあるのだと思います」(西崎さん) 街なかの住宅にエネファームが当たりまえのように見られる日々を目指して、挑戦はこれからも続いていきます。 (2011年3月取材) 時代とともに、燃料電池には様々なタイプが生まれました。 水素を燃料極から空気極へと移動させる電解質の種類により、「りん酸形」(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、「溶融炭酸塩形」(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、セラミックスを使う「固体酸化物形」(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、そして高分子膜を使う「固体高分子形」(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)に分けられます。 宇宙開発ではPEFCなどが使われる一方、地上用の開発も米日などでPAFCを中心に業務用の大型燃料電池として進みました。 東京ガスは、各種の燃料電池の開発を手掛けるなか、家庭用燃料電池向けとしてPEFCに注目しました。 PEFCには、作動温度が低いため開始・停止をこまめにできる利点があります。 当初、都市ガスを水素に改質するときに副生する一酸化炭素が作動温度の低いPEFCの電極触媒の性能を著しく下げるため、一酸化炭素の混じりけない純水素をつくる必要があると考えられていました。 しかし、1980年代になると、触媒を変えることである程度の一酸化炭素にも対応できることがわかるなど技術が進み、家庭用としての開発が本格化していきました。 いま、家庭用燃料電池の主流はPEFCで、今後はSOFCも実用化すべく開発が進められています。
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水素を燃料に発電する試験設備が神戸市のポートアイランド内に完成し、報道陣らに10日公開された。 病院や国際展示場など周辺4施設に、電気と熱を供給する実験を来年2月上旬から3月末まで行う。 施設は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、約20億円かけて川崎重工業と大林組が建てた。 工場の自家発電などに使われている既存品のガスタービン発電設備をベースに開発した。 中核の設備は長さ6・7メートル、奥行き3・1メートル、高さ4・7メートル。 25立方メートルのタンクを備え、満タンなら約6時間発電できる。 天然ガスを混ぜても運転でき、稼働中も調整できる。 水素は堺市の工場から液化して専用車で運ぶ。 川重などによると、市街地の複数の施設に電気を供給する水素発電施設は世界初だという。 水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しない。 温暖化ガスの削減につながると、国などが活用を促すが、燃料費の高さが課題となっている。 (伊沢友之).
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