子供の喉が腫れて真っ赤になって、しかも痛いと言っている・・・。 それってもしかすると溶連菌の症状かもしれません。 子供も大人も罹患したときに体にあらわれる異常はほぼ同じです。 大人が溶連菌感染症にかかったときの症状は、38度から39度の熱、喉の痛み、首のリンパ節の腫れ(しこりのようになる)、 画像のように手足に赤い発疹ができる、写真のように舌に赤いブツブツができる、落屑(皮膚がむける)、咳などです。 普通の風邪にかかると咳や鼻水が出ますが、溶連菌感染症に罹患しただけの場合は風邪とは違う症状がでます。 大人から子供にうつることもありますし、大人から大人にうつることもあります。 出席停止期間は何日? 溶連菌は学校保健安全法によると第三種に該当しますので、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学など全ての学校において治療開始から24時間の出席停止となります。 出席停止期間としては、例えば幼稚園なら何日休むことになるかというと、 病院に行って治療した日とその翌日の2日間が出席停止期間となります。 他の子供にうつさないためにも登園は2日間控えましょう。 会社で仕事を休む場合も同じように2日間の出席停止が望ましいです。 なぜなら 抗生剤による治療を開始してから24時間を経過すると感染力は急激に低下してうつる確率がぐんと下がるからです。 感染力は強く、 家族間でうつる確率は25%前後と言われています。 潜伏期間は2日から5日間です。 わかりやすくいうと、そこらじゅうに存在している悪いばい菌です。 この細菌は人の口の中や皮膚の上、鼻の中、喉などにいる常在菌であり、一定の感染力を保持しているうちは発病に至りません。 しかし、 免疫力が弱い妊婦や子供は感染してしまうのです。 妊婦や子供でなくても、風邪をひいているときなど常在菌に対する抵抗力が落ちているときなどはうつることが多いといえます。 治療に使う薬は抗生剤 溶連菌の治療に使う薬は、ほとんどのケースでペニシリンという抗生物質が使われます。 ペニシリン系の中でもアモキシシリンという薬が最も処方されています。 インターネットのサイトを見ると薬なしで治るという情報もありますが、抗生剤を飲めば2日程度で症状は治りますので、我慢しないで病院に行きましょう。 市販の薬では効かないこともありますが、抗生物質は1回飲み忘れても大丈夫なほど効きます。 ペニシリンによる治療期間は10日間です。 小児科では子供用にフロモックスが処方されることがあります。 他には、セフェム系抗生物質やマクロライド系抗生物質がありますが、それぞれメリットとデメリットが存在します。 セフェム系抗生物質は治療期間が5日間に短縮できますが、合併症を予防する明確なデータが不足しています。 また、マクロライド系抗生物質はペニシリンにアレルギーがある人でも服用でき、副作用も少ないのですが、耐性菌が多く存在しているという問題があります。 発疹が顔にできてかゆみがあり、いつまでたっても治らないという場合は、抗生剤の種類を変えるなどの対処がなされます。 感染経路は主に2通り 溶連菌の感染経路は、飛沫感染か接触感染がほとんどです。 飛沫感染は患者のくしゃみや咳、話をするときに飛び散ったつばの粒子を吸い込んでしまうことで成立します。 接触感染は菌が付いた手で口などの粘膜に触ってしまうことで成立します。 この他にも、保育園や幼稚園に通っている 子供がいるご家庭は感染経路に要注意です。 他のお子さんが舐めたおもちゃを子供がなめてしまい、感染するということがあるからです。 予防のためには、マスクをかけておく、人ごみに近付かない、外から帰ったら薬用石鹸で手洗いをしてうがい薬を使ってうがいをしっかりする、部屋に殺菌効果のある空気清浄機を置くなどの対策が有効です。 また、予防のために規則正しい生活をして免疫力を低下させないようにしたり、バランスのとれた食事をとって栄養をしっかりとることも重要です。 大人が溶連菌に感染したときの症状は、画像みたいな発疹、つばを飲み込むときの嚥下時痛や咽頭痛(喉の痛み)など子供と比較すると軽いですが、重症になると嘔吐や下痢、湿疹になります。 かゆいからといって皮膚をはがしてしまうとあとに残ることがあるのでやめましょう。 発疹は爪で引っ掻いてしまうと他の場所にうつることがあり、とびひのようになってしまうことがあります。 発疹が治るまでの期間は2週間程度かかります。 合併症と検査について 溶連菌感染症は 治療しなくても5日程度で自然治癒する病気ですが、糸球体腎炎(Glomerulonephritis)やリウマチ熱、猩紅熱(読み方:しょうこうねつ、Scarlet fever)といった合併症を予防するためにもちゃんと抗生剤で治した方がベターです。 手足口病と溶連菌感染症を併発するケースも報告されています。 大人がかかると微熱で済んでしまうことがありますが、きちんと治療した方がよいのです。 罹患しているかどうかの検査は15分程度で分かるうえに非常に簡単です。 綿棒で喉を軽くこするだけで溶連菌に感染しているかどうかの判定が可能です。 咽頭培養検査では他の病原菌まで検査することが可能ですが、診断結果が出るまでに数日かかってしまうため、あまり実施されません。 抗生剤を服用して3日経過しても効かない(熱が下がらない)場合は、咽頭培養検査をすすめられることがあります。 その結果、風邪を引き起こすアデノウイルスが原因であったというケースもあります。 また、エンテロウイルス(enterovirus)が見つかって誤診が判明し、実際はヘルパンギーナであったというケースもあるようです。 溶連菌に子供がかかって、完治してから3週間後ぐらいに 医師から尿検査をすすめられることがあります。 この場合の尿検査は何のためにするのかというと、腎炎などの合併症を発症していないかチェックするためのものです。 潜血がないか、蛋白尿や高血圧になっていないかなどの判断基準があり、急性糸球体腎炎になっていないかを確認します。 猩紅熱 38度以上の発熱と同時に喉が腫れて、発疹または湿疹があらわれた場合、猩紅熱といいます。 猩紅熱の症状は、首や胸のあたりにできるかゆみのある発疹、赤くぶつぶつとしたイチゴ舌、2週間ぐらいで回復しはじめると発疹のあとの皮膚がポロポロとむける膜様落屑(まくようらくせつ)、筋肉痛、関節痛、中耳炎などです。 発疹は太ももや脇の下などの部位から現れますので注意してチェックしましょう。 検査は血液検査による抗体の確認が必要になり、時間もかかるために、多くの場合で症状から診断をつけます。 猩紅熱にかかると体のあちこちに湿疹ができますが、口のまわりにだけは現れない口囲蒼白(こういそうはく)という症状がでるため、診断の手がかりとなります。 皮膚のかゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬(Antihistamine)が処方されることがあります。 なお、約1%の確率で肺炎や髄膜炎、敗血症といった重大な合併症が起こります。 リウマチ熱 咽頭炎または扁桃炎の治療がしっかりしていなかった場合や完治していないケースでは、治ったように感じられてから2週間後ぐらいに、関節痛を伴ってリウマチ熱を発症することがあります。 患者の約50%が心炎になり、 治療しないと心弁膜症という心臓の病気になることがあります。 5歳から15歳の子供に多く、原因は体質や免疫バランスの悪化によるものと考えられています。 ひざやひじ、手首、足などあちこち痛みが移動する移動性関節炎という症状があらわれます。 心炎の初期症状はありませんが、悪化するにしたがって、だるさ、倦怠感、頻脈などの心不全症状が出てきます。 心不全になると、心電図の検査では不整脈が確認でき、心エコー検査(心臓超音波検査)では弁膜症といって弁膜に異常がみられます。 初期症状に対しては、解熱・鎮痛作用のあるアスピリンで対処し、心炎にはステロイドを使用します。 一度でも リウマチ熱に罹患した子供はその後も再発しやすいといわれており、弁膜症を予防するためにもペニシリンの長期服用がすすめられています。 ペニシリンを飲み続けていれば85%は再発を予防できますが、飲まないと35%前後の確率で再発します。 糸球体腎炎 腎臓の糸球体に炎症が発生する糸球体腎炎(Glomerulonephritis)は、溶連菌に感染して 咽頭炎や扁桃炎を発症してから2週間後から4週間後に発病する可能性のある病気です。 損傷した糸球体から赤血球や白血球、タンパク質などが尿に漏れだします。 頭痛、悪心(おしん)、嘔吐、下痢などの症状が現れたあとに、浮腫(全身のむくみ)、血尿(おしっこに血が混じる)、高血圧、視覚障害になります。 朝起床したとき、子供のまぶたが腫れていたら要注意です。 その確率は、子供(小児)では1%、大人では10%程度です。 急性糸球体腎炎は特別な治療法というものがなく、タンパク質と塩分を制限した食事療法を実施することになります。
次の*溶連菌感染症と猩紅熱 (しょうこうねつ)の呼び名の違いは? かつては死亡率が高かったために、法定伝染病に指定されて猩紅熱 (しょうこうねつ)と呼ばれていました。 最近は抗生物質による治療により症状が3~4日で消え、見かけ上は治ったようになります。 このため、猩紅熱 (しょうこうねつ)という診断名の使用を避けて、法的な規制を受けない溶連菌感染症という病名で治療することが多くなっています。 溶連菌感染症の感染と免疫 溶連菌感染症や咽頭炎は飛沫感染、家族内、教室内感染により起こります。 汚染された食品を通じて咽頭炎の集団発生をみることがあります。 皮膚感染は接触で起こり、虫刺・湿疹・外傷などで皮膚が損傷されていると膿痂疹(とびひ)が起りやすくなります。 潜伏期間は咽頭炎では2~3日、膿痴疹(とびひ)では7~10日程度です。 治療しなければ,抗体は感染後3週目に出現し長年持続します。 発病初期に抗生物質が投与され溶連菌が早期に治療されると、十分な抗体産生(免疫)が得られないとされています。 つまり再感染することがあります。 溶連菌感染症の流行と診断 好発年齢は2~10歳、ピークは4~6歳です。 発生は年間通じて認められますが、流行のピークは初冬の11~12月で、次いで1月中旬から3月中旬、5~6月に山があります。 発熱と咽頭痛を生じて来院されます。 臨床診断の要点は次の3つです。 1 扁桃・咽頭・口蓋垂の発赤や浸出物 2 口蓋垂を中心とした点状のろ胞状紅斑や出血斑 3 猩紅熱 (しょうこうねつ)様発疹 主訴に 1 を認めた時,溶連菌である可能性は15~30%といわれます。 70~85%を占めるその他の病原体は、アデノウイルスを筆頭に、コクサッキー、エコー、バラインフルエンザ、インフルエンザ、単純へルペス,EBなどのウイルスが挙げられています。 浸出物は,溶連菌性咽頭炎の70%、ウイルス性咽頭炎の65%に認められるといわれます。 1 に 2 が加われば溶連菌の確率は90%に達します。 1 2 に 3 の発疹が加わったケースでは95%に溶連菌症と診断できます。 発疹は発病1~2日日に出現します。 体や下腹部・大腿上部内側に始まり、やがて全身に直径1~2mmの発疹の集合した紅斑様の、いわゆる猩紅熱 (しょうこうねつ)様発疹がびまん性に広がります。 近年は典型的な発疹を全身的に示す例が少なくなり、初発部位のみの局所的発疹にとどまる例が多くなる傾向が年々強くなるように思われます。 いわゆる発赤毒素に対する免疫の獲得によるものと思われます。 典型的な例では中毒症状が強く発現し、高熱、おう吐、腹痛をきたします。 発病3~4日日にはイチゴ状舌や口角炎、急性期が過ぎると、手足の指先から始まる落屑(らくせつ:皮膚が日焼けの後のようにむけていくこと)が認められます。 発疹の他に頸部リンパ節の有痛性腫脹がしばしば認められます。 1~3歳では、微熱、鼻炎、咽頭炎、副鼻腔炎、中耳炎の症状しか示さないこともあり、注意を要します。 最近は発熱1~2日で、症状が定型的でない時期に来院することが多くなっていますが、抗原迅速検査の普及で診断が容易になっています。 a)抗原迅速試験 咽頭ぬぐい液を採取して5~10分で診断できるキットが数社から市販されています。 感度は85~95%、特異性は90%以上、偽陽性2%と評価されています。 偽陰性が10%前後あるので、結果が陰性でも臨床症状から本症が疑われる場合には、必ず咽頭培養を行うべきです。 b)咽頭培養 血液寒天培地を使っての咽頭培養は溶連菌感染を確定する最も満足な方法です。 ただし健康保菌者がウイルス性咽頭炎を起こした時の偽陽性例や、抗体上昇で確認された溶連菌症でも初回の培養が(-)であったという偽陰性例もときに存在します(10%以内)。 c)抗体検査 急性期と回復期のASO値、ASK値、抗DNase B抗体は最近の溶連菌感染を確かめることができますが、発病初期診断には向きません。 溶連菌感染症の予防 a)家族内: 家族内に発生をみた時、家族内の咽頭培養が望まれますが、症状が軽いと応じる家族は少ないのが実際です。 家族の一人に溶連菌感染症が明らかになったら、他の家族にも咽頭培養や抗原迅速試験を行い、陽性の時には10日間治療すべきという考えもあります。 その理由として、非流行期でも兄弟姉妹の感染率は25%と親より高いこと、流行期には親の20%、兄弟姉妹の50%は感染し、その半数以上は発症すること、感染して無症状であっても、その後、腎炎やリウマチ熱などの合併症を惹起する可能性が残されていることなどによります。 b)登校萱園の時期: 治療によって下熱が確められるまで禁じます。 ふつう1~2日後に下熟することが多いです。 本症が多発した時は、その状況に応じて予防服薬がすすめられます。 C)反復感染者: 発病初期治療により抗体産生が得られないためと、抗原迅速検査や咽頭培養の普及により、反復感染例がしばしば観察されるようになっています。 リウマチ熱や腎炎が発生している地域には、合併症の二次予防のための投薬がすすめられることもありますが、合併症の発生が10年以上認められないところでは、必ずしも必要でないと考えられます。 溶連菌感染症の合併症 わが国の医療レベルからみて治療不十分による合併症はまれです。 腎炎は、咽頭炎、猩紅熱(しょうこうねつ)ばかりでなく、膿皮症、膿痴疹(とびひ)からも流行的に発生することが広く知られています。 近年,血管性紫斑病との関連や、感染30日以内の一過性血尿も報告されているので注意しなければなりません。 そのため、発病2~4週後の尿検査が求められます。 *劇症A群レンサ球菌感染症(人食いバクテリア感染症) 1980年代半ばに、軟部組織の壊死、ショック、腎不全、凝固異常(DIC)を示し、致死率30~40%に達する疾患が欧米で報告されました。 A群溶連菌症は軽い疾患で抗菌剤が有効であり先進国ではもはや問題ではない、と考えられていたところに落し穴があったと警告されています。 溶連菌毒素による敗血症性ショックを呈するので、これまでのA群溶連菌感染症の概念とはかなり異なったものと考えられています。 劇症型A群レンサ球菌感染症(劇症型溶連菌感染症)は、急速に進行し、敗血症性のショックから多臓器不全を生じる重篤な感染症です。 国内では年間100~200人の患者が確認され、うち約30~40%が死亡しています。 マスコミなどで人食いバクテリアと報道されたことで、広く知れわたるようになりました。 劇症型型溶連菌感染症の大部分はA群レンサ球菌によって生じます。 侵入経路は約35%が皮膚、約20%が粘膜で、残りの約45%は部位不明です。 患者は糖尿病や心疾患などの基礎疾患のある高齢者が多く、若年者では外傷や針刺し事故がきっかけで発症する例がみられます。 咽頭炎や扁桃炎などの起炎菌であるA群レンザ球菌が、なぜ重篤な劇症型の感染症を引き起こすのか、これまで詳細は不明でした。 最近の研究からA群レンサ球菌の遺伝子に変異が生じることで、劇症型溶連菌感染症が引き起こされることが明らかになりました。 そして菌の遺伝子変異は一定の割合で起こるため、劇症型溶連菌感染症を起こす菌は常に発生している可能性が指摘されています。 ただし変異を生じた菌に接触したら、ただちに発症するわけではありません。 変異により菌の繁殖力は低下していることから、菌の侵入を助ける外傷や免疫力の低下などの条件がそろわないと、劇症型溶連菌感染症は発症しないと考えられます。 患者教育 完治と合併症予防のために抗菌剤の10日間服用と、服用後と2~3週後の検尿が必要であることを、パンフレットなどを使ってコンプライアンスを得ることが大切です。
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成人における溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症の臨床症状について;第三報 (2019年5月7日掲載) 成人の溶連菌感染症が増加していることは、当院による学会報告や論文によってかなり認知されるようになってきました。 が、咽頭発赤を呈する症例が30%程度、38度を超える発熱を呈する症例も30%程度であることから、まだまだ診断されずに「カゼ」として放置されている症例が多いと推量しています。 今回は、16歳以上の溶連菌感染症の臨床症状をまとめてみました。 有名なCentor score(センタースコア;米国のセンター先生が溶連菌感染症の早期診断に開発したスコア)が、却って溶連菌感染症の診断を見逃していることが良く分かります。 成人の溶連菌感染症は、特に初感染の場合、重症化することが多いので、ただの「カゼ」ではない、と感じた場合には、その旨を医療者に伝えて頂くことも重要と考えています。 その一方で患者さんの訴えを上手に受け入れてくれる医療者が増えることを願っています。 咽頭痛 62. 9% 頭痛 43. 9% 鼻汁・くしゃみ 45. 3% 咳嗽・喀痰(せきや痰) 58. 9% 関節痛 9. 3% 悪寒 10. 7% 全身倦怠感(だるさ) 38. 3% 腹痛 17. 3% 悪心・嘔吐 13. 1% 下痢 17. 8% 15歳以下と比較してみると、16歳以上では咽頭痛、頭痛、関節痛、悪寒、全身倦怠感は有意に頻度が高く、逆に鼻汁・くしゃみは15歳以下で有意に頻度が高くなっていました。 不思議なことに、腹痛、悪心・嘔吐、下痢は20%前後の頻度で、年齢による差は認めませんでした。 消化器症状を呈する溶連菌感染症は、成人も小児も20%程度の頻度で年齢差を認めないことが分かりました。 以前にも報告しましたが、インフルエンザ抗原陰性でインフルエンザ様の症状がある場合には溶連菌感染症の疑いが高いこと、特に片頭痛様の特徴的な頭痛であることが決め手になると感じています。 胃腸炎症状で頭痛を伴う場合にも、かなりの頻度で溶連菌感染症であることが多く、吐いて下痢をしているから胃腸炎と短絡的に考えるのは危険と考えます。 詳細な問診聴取と丁寧な診察によってのみ正しい診断に到達できる、と言うのが当院での取り組みです。 溶連菌感染症の臨床症状と診察所見の詳細;第二報 (2018年3月3日掲載) 溶血性連鎖球菌感染症(以下、溶連菌と略します)が小児だけではなく大人にも数多く流行していることは、少しずつ認知されるようになってきました。 が、一般的に考えられているよりもずっと多くの溶連菌が見逃されていることを、日本内科学会、日本感染症学会などで報告し警鐘を鳴らしてきました。 溶連菌は扁桃腺が腫れて高熱があり、激しい咽頭痛がある、と教科書にも書いてありますし、医者も患者さんもそう思っている方が多いのが現状です。 今回、当院で溶連菌と診断を受けた637名、対象年齢0歳から80歳(中央値9歳)の症状と診察所見をまとめ、2018年5月31日から6月2日まで岡山で開催される、第92回日本感染症学会で口演発表する内容をお知らせします。 8% 咽頭痛 41. 0% 頭痛 34. 4% 全身倦怠感 24. 2% 悪寒 6. 0% 関節痛 4. 4% 腹痛 20. 9% はきけ・嘔吐 15. 7% 下痢 17. 0% 咽頭所見では、著明な発赤・扁桃腫大は7. 7%、咽頭発赤は20. 2%で、残る72. 1%は全く正常範囲内でした。 上記を見ると、「インフルエンザ」や「急性胃腸炎」と間違えられてしまう理由が良く分かると思います。 のどが痛くない、のどが赤くない溶連菌感染症はたくさん存在します。 吐いて下痢をする溶連菌もあり、溶連菌による集団食中毒の報告もあります。 ここで私が注目しているのは、咽頭痛に次いで頭痛が多いと言うことで、大人に限ると45%の症例で強い頭痛を感染初期に訴えます。 この頭痛は片頭痛と同じ頭痛であることを漢方薬治療を用いて証明し、2017年の国際頭痛学会と日本頭痛学会で発表しました。 咽頭痛に加え激しい頭痛を伴うときには、大人の溶連菌の可能性が高いと感じています。 インフルエンザ検査が陰性、のどが赤くないから「カゼ」、と決めつけるのは避けたいものです。 溶連菌は「人喰いバクテリア」としても有名です。 重症化するのはごく一部の患者さんですが、致死率が非常に高いことが知られています。 当院でも昨年2名の患者さんを早期発見して病院紹介し、一例は筋膜切除術で、もう一例は入院での抗生剤点滴でお元気になられ、ご本人、ご家族にも喜んでいただけました。 大人の溶連菌は放置しても治る、抗生物質をむやみに使用するのは良くないと言う考え方もあるようですが、重症化した症例を見ると、決して侮れない感染症だと思います。 カゼ症状は放置で治るとは限らない。 カゼは万病のもと。 いつものカゼとは違うと思った時には、病院受診をお勧めします。 感冒症状の初期には漢方薬治療が良く効くのですが、その話はまたの機会に。 溶血性連鎖球菌感染症は気管支喘息を誘発する (2016年3月25日掲載) はじめに 成人(大人)における溶血性連鎖球菌感染症(以下、溶連菌と略します)の増加と診断率の低さを各種学会で報告しています。 症状が多彩でインフルエンザ或いは急性胃腸炎に酷似することに加え、咽頭発赤や発熱を伴わないケースが多いことがその原因と考えています。 溶連菌は急性上気道炎(かぜ)であり通常咳は出ないと考えられています。 しかしながら、3人に一人は溶連菌感染前後に顕著な咳嗽(せき)を訴え、そのまま気管支喘息(以下、喘息と略します)に移行する例を目にすることが多くなり、それらの症例をまとめて、今年の日米の呼吸器学会で発表しました。 2016年に開催された米国の呼吸器学会(ATS;米国胸部疾患学会)と日本呼吸器学会総会で発表した内容を以下にまとめてみました。 対象・方法 対象は平成26年9月から平成27年6月までに当院を受診し、溶連菌迅速検査陽性で喘息の既往がなく溶連菌感染後に咳嗽が残存した238例。 平均年齢は40. 2日(1日から30日)後に、喘息の状態を確認できるモストグラフによる呼吸抵抗値(Rrs)と呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を同時測定し、病態を確認しました。 結果 モストグラフでRrsが高い症例は216例(90. 8%)にも達し、FeNOが高い症例も108例(45. 4%)と、溶連菌後に咳嗽が残っている症例の多くは喘息に似た病態であることが確認できました。 さらに驚くことに、238例中65例(27. 3%)が喘息の治療を現在も継続しており、溶連菌によって喘息が発症することが証明されました。 さいごに 上気道炎後の喘息発症の多くはウィルスによるものと言われていますが、溶連菌感染後の喘息発症リスクは予想以上に高いことが判明しました。 今後も、一家庭医としてそのメカニズムを追究し、喘息発症リスクの低減を目指してゆきたいと思っています。 成人 大人 及び小児の溶血性連鎖球菌感染症 溶連菌 多発について (2015年7月21日掲載) はじめに 平成25年7月から溶連菌感染症が多発しており、保育園、幼稚園、小・中学校内だけではなく家族・地域に拡散している。 成人 大人 も数多く罹患しており、最高齢は91歳。 この状況を平成27年4月の第112回日本内科学会総会で報告している(成人における溶血性連鎖球菌感染症のunderdiagnosisについて;p280, vol. 104, 日本内科学会雑誌, 2015)。 溶連菌を疑わせる症状• 38度以上の発熱を呈する者は30%程度、それも持続するのではなく一過性(一晩だけなど)のことも多い。 咽頭発赤を認めるのは、小児では30-40%程度、成人 大人 では10%未満• 成人 大人 の場合、咽頭痛に加え 激しい頭痛、 関節痛、 倦怠感などインフルエンザに似た症状が主体のことが多く、インフルエンザ検査陰性ゆえに「カゼ」と診断されるケースが多い• 現状多い症状は、 吐き気、 嘔吐、 腹痛、 下痢などの胃腸炎症状。 他院で胃腸炎と診断され病状悪化し受診するケースが後を絶たない。 一見おたふくかぜの様に、頬や首のリンパ腺が腫れることもある• 気管支喘息の患者さんは 咳の悪化を認める。 成人 大人 では溶連菌がきっかけでそのまま喘息に移行する例もある(いずれもマイコプラズマ肺炎との鑑別が重要)• 溶連菌感染症の発症前に 急激に多量の鼻水が出て、一見花粉症の様な初発症状もある• じんましんが初発症状のこともある(しょう紅熱の発疹とは異なる) 溶連菌の拡散を防ぐために• 周囲に溶連菌罹患者がいて、潜伏期(1-5日間、平均3日間)内に何らかの症状が出たらその旨を医師に伝え、咽頭発赤がなくても溶連菌迅速検査を実施してもらうこと• 家族内に溶連菌感染症の症状がある場合には、家族全員が受診をすること(ピンポン現象を防ぐため)• 最も重要なことは溶連菌感染症で 処方された抗生剤は 7-10日間最後まできちんと内服すること(5日間では足りません).
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