「おい…これはどういうことだ?」 不機嫌そうな表情が目に入るものの、私はそっとそれから顔を逸らしてええと、と口籠ることしかできなかった。 「そ、その、わざとでは…ないんですよ…?」 「わざとなら今頃テメェの喉を噛みちぎってる」 ハァ、と大きなため息をつくレオナ先輩の頭に生えた耳は、心なしか元気がないように見える。 何故こんなにも彼が不機嫌かというと、錬金術の授業で作った魔法薬を持ったグリムが「オレサマ天才なんだゾー!」と叫びながら突っ走るものだから慌てて追いかけたはいいものの、グリムがその先にいたレオナ先輩と見事激突し、薬が彼にかかってしまう。 そして効能も忘れて慌てて拭こうと思った私が彼の濡れた制服に触れた瞬間。 バチンッ 「あ"?」 「え"ッ」 大きな音と同時に、私の体とレオナ先輩の体はひっついてしまったというわけだ。 しかも何をどうすればそうなるのか、私の体はくっついたと同時に地から足を浮かせており、レオナ先輩に全体重をかけるようになってしまった。 体幹もよければ私のようなチビを支えられないほど力が無いわけでもないレオナ先輩は、反射的にではあるが私のお尻に腕を回して片腕で抱え込んでくれた。 「チッ…なんの薬作ってやがった?」 「ええと、"接着薬"です。 グリムと一緒に、成功したのがうれしかったみたいで」 「あー…それなら"はがし薬"も一緒に作ったろ。 どこにある」 「へ?え、えーと…」 はがし薬。 怠そうに聞いてくるレオナ先輩に、私は視線を合わせることができない。 それを訝しげに感じたらしい彼は、おい、まさかとは思うが…なんて言葉を続ける。 「その、時間が足りなくて…」 「…作れてねぇんだな」 「…すみません」 しおしお、としょぼくれる私を見て、レオナ先輩はあーくそ、と言いながら頭をかく。 材料は、と聞かれたがもちろん持っていないので首を横に振った。 「…たしか効能が切れんのは10時間後だったか」 「エッそんなに!?」 「最初に説明されんだろ、聞いてねぇのかアホが」 10時間ってことは明日の朝までこのままということだ。 時間に驚けば眉間に寄せられたシワと鋭い眼光に思わず身を竦める。 レオナ先輩はそれについては気にする様子もなく、仕方ねぇ、と呟いた。 「…あぁ、そうか。 俺とその間は一緒にいるしかねぇなぁ?草食動物」 さっきまでの苛立ちはどこへやら。 突然機嫌が良くなった彼のニヤリと笑う顔に、私はサッと顔が青ざめたのだった。 …ちなみに、グリムは私とレオナ先輩がやりとりをしている間に1人 1匹 だけ勝手に逃げている。 後でギューって絞めてやるからな…っ! 「あっあのう、もしかしなくてもこれサバナクロー寮に向かってます?」 「ふあぁ…ちげえから安心しろ」 眠そうにあくびをする先輩に、私は担がれているので連れられているまま鏡の間へと辿り着く。 しかし私の不安を他所に、レオナ先輩が向かったのは私の寮であるオンボロ寮だった。 少しホッとしつつも、我が物顔で寮内に入り、私の部屋に一直線で向かうのでギョッとする。 「レオナ先輩なんで私の部屋知って…」 「お前の匂いが一番強いところに向かってるだけだ」 「な、なるほど…?」 イマイチわからないがレオナ先輩がそういうならそうなのだろう。 獣人というだけあってやはり鼻はいいのか。 ばたん、と鍵もかかっていない部屋のドアを開け放つと、特にしめもせずそのままベッドへと直行して私を抱えたまま寝転がる。 「わぶっ」 「はっ、受け身くらいちゃんととれよ」 「いたた…もうっ取れるわけないじゃないですか!」 くっついているから落ちないのはわかっているが、だからといって背の高いレオナ先輩に抱えられて移動していたのだ。 腕はしっかりと彼に回していたし、そもそもの話されるがままの私は動けるはずもなかった。 「ところで、だ」 「…?レオナせんぱ、わっ!」 支えられていた腕に力が入り、グッと密着している体がさらにくっつく。 なんなのだと顔を見れば、彼はニヤニヤとしながら私の腰をゆっくり撫でた。 「肉食獣を目の前に、随分と無防備すぎやしねぇか、なぁ…?」 「ヒッ!?」 つつ、と指先で腰をなぞられ、ぞくりとしたものが全身を駆け巡る。 思わず体を退け反らせようとしたが、薬のせいでぴったりくっついたまま離れることはなかった。 「ちょっ…レオナせんぱい!?」 「クク、もちっと色気のある声出せよ」 非難の声を上げれば、彼の手はパッと離れていく。 くつくつと笑うレオナ先輩に、揶揄われていたのだと顔が真っ赤になった。 変な声は出たし本当恥ずかしすぎる…。 火照った顔を冷やすようにもぞもぞと動いて手を顔に当てる。 レオナ先輩にずっと抱きついていたせいであまり冷たくはなかったが、気休めでもそうしたかった。 「………」 「ひゃわ!?ちょ、えっも、からかうのやめ、ンッ」 意識がはなれていたレオナ先輩の手が、再び動き始める。 しかもその動きは先ほどよりもなんだかいやらしさが増していて、私は自由になっている手でどうにか止めようと手探りで彼の腕を掴み止めようとした。 しかしレオナ先輩の手は止まることなく、腰より下にある、私のお尻をするりと撫でる。 「…煽ったのはてめぇだ」 「あお…っ、なんの話で、っ!」 むにゅりと尻タブを鷲掴みにされ、目を見開いた。 何をしているんですかとキッと睨み訴えたものの、ギラついた彼の瞳はそんな私の訴えなどものともせずにスゥと細められる。 「好きな女に好きなこと出来る状況で煽られて、喰わねぇなんて雄じゃねぇよなぁ?」 「へっ…?」 すり、と太もも辺りに何かが巻きつく。 ふさふさとした肌触りが、彼の尻尾だと気づかせた。 そのくすぐったさと、彼からの思わぬ告白に、私の頭はキャパオーバーを迎えてしまった。 ぼふん!と音を立てるように顔どころか全身が真っ赤になり、じわぁと目に水が溜まる。 それにギョッとした顔をしたレオナ先輩は、慌てた様子で私ごと起き上がった。 「ぉ、おい…何泣いてんだお前…っ」 お尻に回っていた手は私の頬を優しく包みつつも、力が入ってぐ、と上にむかされる。 もう片手はあわあわと何をすればいいのかと困ったように宙を彷徨っていて。 太ももを撫でていた尻尾も、くるんと丸め込まれていた。 上にむかされたことで彼の耳が視界に入る。 その耳はいつものようにピンと立ってはおらず、横に寝てピルピルと震えていた。 「…っ、」 「おい、黙ってたらわかんねぇぞ…って、何笑ってやがるてめぇ…」 その光景があまりにも、普段のレオナ・キングスカラー先輩からは想像出来なくて。 気が付けば私はふ、と笑いをこぼしてしまっていた。 「…っふふ、ごめんなさ、だってっ…ふふふっレオナ先輩、叱られたグリムみたいで…かわいくてつい…っ」 「あぁ?」 そう。 本当にそうなのだ。 グリムを前にめちゃくちゃ叱った時にまさにこんな感じだったのを思い出してしまう。 まるまった尻尾も垂れ下がった耳もそのもので。 ライオンは猫科の動物なのだと思い出して尚更込み上げてくる。 ぴく、とレオナ先輩のこめかみが動いたのに気付き、あ、やばいと慌てて口を開こうとしたその瞬間だった。 ぼすん! 「ッ、た…」 「…俺が、なんだって?」 「や、あの、普段はかっこよくて素敵なレオナ先輩がたまにある可愛い一面を見てギャップがあって好きだなって思っただけです!!!」 再びベッドに戻って、さっきよりも身動きが取れない状況になった私は、思わずイデア先輩に負けないくらいの早口で捲し立て、怒られると思いギュッと目を瞑っていた。 しかしレオナ先輩からの雷は一向に落ちてこない。 恐る恐る目を開いて、そのままぽかんとしてしまう。 「れ、おな先輩…?」 「っ、るせぇこっちみんな…!」 見上げた彼の顔は真っ赤になっていて、視線は全く合うことなく彼の大きな掌に視界が遮られる。 大きすぎるそれは私に顔をしっかりと覆うものだから息ができなくてもごもごとしていると、開けた口から出た舌が彼に手を少し舐めてしまう。 大袈裟なほどびくりと揺れた先輩の体に、私は青ざめる。 あっこれ死んだ。 「…やっぱ俺のこと煽ってんだろ、お前」 遮られた視界のまま、耳元で低く囁かれた言葉。 びくっと肩を揺らした私の太ももには、再び彼の尻尾が巻きついていた。 バクバクと心臓が死ぬほど動く音がする。 それは私からも、くっついたままの彼からもしているような気がして。 青くなっていたはずの私は、また真っ赤に染まるのだった。
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「おい…これはどういうことだ?」 不機嫌そうな表情が目に入るものの、私はそっとそれから顔を逸らしてええと、と口籠ることしかできなかった。 「そ、その、わざとでは…ないんですよ…?」 「わざとなら今頃テメェの喉を噛みちぎってる」 ハァ、と大きなため息をつくレオナ先輩の頭に生えた耳は、心なしか元気がないように見える。 何故こんなにも彼が不機嫌かというと、錬金術の授業で作った魔法薬を持ったグリムが「オレサマ天才なんだゾー!」と叫びながら突っ走るものだから慌てて追いかけたはいいものの、グリムがその先にいたレオナ先輩と見事激突し、薬が彼にかかってしまう。 そして効能も忘れて慌てて拭こうと思った私が彼の濡れた制服に触れた瞬間。 バチンッ 「あ"?」 「え"ッ」 大きな音と同時に、私の体とレオナ先輩の体はひっついてしまったというわけだ。 しかも何をどうすればそうなるのか、私の体はくっついたと同時に地から足を浮かせており、レオナ先輩に全体重をかけるようになってしまった。 体幹もよければ私のようなチビを支えられないほど力が無いわけでもないレオナ先輩は、反射的にではあるが私のお尻に腕を回して片腕で抱え込んでくれた。 「チッ…なんの薬作ってやがった?」 「ええと、"接着薬"です。 グリムと一緒に、成功したのがうれしかったみたいで」 「あー…それなら"はがし薬"も一緒に作ったろ。 どこにある」 「へ?え、えーと…」 はがし薬。 怠そうに聞いてくるレオナ先輩に、私は視線を合わせることができない。 それを訝しげに感じたらしい彼は、おい、まさかとは思うが…なんて言葉を続ける。 「その、時間が足りなくて…」 「…作れてねぇんだな」 「…すみません」 しおしお、としょぼくれる私を見て、レオナ先輩はあーくそ、と言いながら頭をかく。 材料は、と聞かれたがもちろん持っていないので首を横に振った。 「…たしか効能が切れんのは10時間後だったか」 「エッそんなに!?」 「最初に説明されんだろ、聞いてねぇのかアホが」 10時間ってことは明日の朝までこのままということだ。 時間に驚けば眉間に寄せられたシワと鋭い眼光に思わず身を竦める。 レオナ先輩はそれについては気にする様子もなく、仕方ねぇ、と呟いた。 「…あぁ、そうか。 俺とその間は一緒にいるしかねぇなぁ?草食動物」 さっきまでの苛立ちはどこへやら。 突然機嫌が良くなった彼のニヤリと笑う顔に、私はサッと顔が青ざめたのだった。 …ちなみに、グリムは私とレオナ先輩がやりとりをしている間に1人 1匹 だけ勝手に逃げている。 後でギューって絞めてやるからな…っ! 「あっあのう、もしかしなくてもこれサバナクロー寮に向かってます?」 「ふあぁ…ちげえから安心しろ」 眠そうにあくびをする先輩に、私は担がれているので連れられているまま鏡の間へと辿り着く。 しかし私の不安を他所に、レオナ先輩が向かったのは私の寮であるオンボロ寮だった。 少しホッとしつつも、我が物顔で寮内に入り、私の部屋に一直線で向かうのでギョッとする。 「レオナ先輩なんで私の部屋知って…」 「お前の匂いが一番強いところに向かってるだけだ」 「な、なるほど…?」 イマイチわからないがレオナ先輩がそういうならそうなのだろう。 獣人というだけあってやはり鼻はいいのか。 ばたん、と鍵もかかっていない部屋のドアを開け放つと、特にしめもせずそのままベッドへと直行して私を抱えたまま寝転がる。 「わぶっ」 「はっ、受け身くらいちゃんととれよ」 「いたた…もうっ取れるわけないじゃないですか!」 くっついているから落ちないのはわかっているが、だからといって背の高いレオナ先輩に抱えられて移動していたのだ。 腕はしっかりと彼に回していたし、そもそもの話されるがままの私は動けるはずもなかった。 「ところで、だ」 「…?レオナせんぱ、わっ!」 支えられていた腕に力が入り、グッと密着している体がさらにくっつく。 なんなのだと顔を見れば、彼はニヤニヤとしながら私の腰をゆっくり撫でた。 「肉食獣を目の前に、随分と無防備すぎやしねぇか、なぁ…?」 「ヒッ!?」 つつ、と指先で腰をなぞられ、ぞくりとしたものが全身を駆け巡る。 思わず体を退け反らせようとしたが、薬のせいでぴったりくっついたまま離れることはなかった。 「ちょっ…レオナせんぱい!?」 「クク、もちっと色気のある声出せよ」 非難の声を上げれば、彼の手はパッと離れていく。 くつくつと笑うレオナ先輩に、揶揄われていたのだと顔が真っ赤になった。 変な声は出たし本当恥ずかしすぎる…。 火照った顔を冷やすようにもぞもぞと動いて手を顔に当てる。 レオナ先輩にずっと抱きついていたせいであまり冷たくはなかったが、気休めでもそうしたかった。 「………」 「ひゃわ!?ちょ、えっも、からかうのやめ、ンッ」 意識がはなれていたレオナ先輩の手が、再び動き始める。 しかもその動きは先ほどよりもなんだかいやらしさが増していて、私は自由になっている手でどうにか止めようと手探りで彼の腕を掴み止めようとした。 しかしレオナ先輩の手は止まることなく、腰より下にある、私のお尻をするりと撫でる。 「…煽ったのはてめぇだ」 「あお…っ、なんの話で、っ!」 むにゅりと尻タブを鷲掴みにされ、目を見開いた。 何をしているんですかとキッと睨み訴えたものの、ギラついた彼の瞳はそんな私の訴えなどものともせずにスゥと細められる。 「好きな女に好きなこと出来る状況で煽られて、喰わねぇなんて雄じゃねぇよなぁ?」 「へっ…?」 すり、と太もも辺りに何かが巻きつく。 ふさふさとした肌触りが、彼の尻尾だと気づかせた。 そのくすぐったさと、彼からの思わぬ告白に、私の頭はキャパオーバーを迎えてしまった。 ぼふん!と音を立てるように顔どころか全身が真っ赤になり、じわぁと目に水が溜まる。 それにギョッとした顔をしたレオナ先輩は、慌てた様子で私ごと起き上がった。 「ぉ、おい…何泣いてんだお前…っ」 お尻に回っていた手は私の頬を優しく包みつつも、力が入ってぐ、と上にむかされる。 もう片手はあわあわと何をすればいいのかと困ったように宙を彷徨っていて。 太ももを撫でていた尻尾も、くるんと丸め込まれていた。 上にむかされたことで彼の耳が視界に入る。 その耳はいつものようにピンと立ってはおらず、横に寝てピルピルと震えていた。 「…っ、」 「おい、黙ってたらわかんねぇぞ…って、何笑ってやがるてめぇ…」 その光景があまりにも、普段のレオナ・キングスカラー先輩からは想像出来なくて。 気が付けば私はふ、と笑いをこぼしてしまっていた。 「…っふふ、ごめんなさ、だってっ…ふふふっレオナ先輩、叱られたグリムみたいで…かわいくてつい…っ」 「あぁ?」 そう。 本当にそうなのだ。 グリムを前にめちゃくちゃ叱った時にまさにこんな感じだったのを思い出してしまう。 まるまった尻尾も垂れ下がった耳もそのもので。 ライオンは猫科の動物なのだと思い出して尚更込み上げてくる。 ぴく、とレオナ先輩のこめかみが動いたのに気付き、あ、やばいと慌てて口を開こうとしたその瞬間だった。 ぼすん! 「ッ、た…」 「…俺が、なんだって?」 「や、あの、普段はかっこよくて素敵なレオナ先輩がたまにある可愛い一面を見てギャップがあって好きだなって思っただけです!!!」 再びベッドに戻って、さっきよりも身動きが取れない状況になった私は、思わずイデア先輩に負けないくらいの早口で捲し立て、怒られると思いギュッと目を瞑っていた。 しかしレオナ先輩からの雷は一向に落ちてこない。 恐る恐る目を開いて、そのままぽかんとしてしまう。 「れ、おな先輩…?」 「っ、るせぇこっちみんな…!」 見上げた彼の顔は真っ赤になっていて、視線は全く合うことなく彼の大きな掌に視界が遮られる。 大きすぎるそれは私に顔をしっかりと覆うものだから息ができなくてもごもごとしていると、開けた口から出た舌が彼に手を少し舐めてしまう。 大袈裟なほどびくりと揺れた先輩の体に、私は青ざめる。 あっこれ死んだ。 「…やっぱ俺のこと煽ってんだろ、お前」 遮られた視界のまま、耳元で低く囁かれた言葉。 びくっと肩を揺らした私の太ももには、再び彼の尻尾が巻きついていた。 バクバクと心臓が死ぬほど動く音がする。 それは私からも、くっついたままの彼からもしているような気がして。 青くなっていたはずの私は、また真っ赤に染まるのだった。
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「週末にいつもの1年生メンバーでオンボロ寮に集まって、ホラー映画の鑑賞会をすることになったんですよ。 」 「…ホラー映画なんて所詮子供騙しの作りモンじゃねぇか。 そんなもんの為にわざわざ集まるなんざ理解出来ねぇな。 」 「そんなに言うことないじゃないですか…私は結構楽しみにしてるんですよ!」 「…フン」 「もう………あ、そういえば次の授業移動教室なんでした。 私はもう行きますけどレオナさんもサボっちゃダメですよ!」 「はいはい…………あァ、ホラーといえばひとつ思い出した。 おい草食動物、よく聞いとけ。 夜の校舎内には絶対に1人で行くんじゃねぇぞ。 」 「えっ…なんでですか…?」 まず夜に校舎の中に入ること自体あまりない事だと思うのだけれど。 腑に落ちない表情の私を見てレオナさんがひとつ溜息をついたその時、昼休み終了5分前のチャイムが大きく鳴り響いた。 「やばいもうこんな時間…!すみません急ぎなんでもう戻りますね!」 そう一方的に叫ぶとレオナさんの返事も聞かずに一目散に走り出した。 という事があったのが少し前。 「あれ…ない…?」 夕飯を食べ終え、明日が提出期限のプリントを片付けようと思い立ち鞄の中を探したものの、目当てのプリントが見当たらないのだ。 「えーっと…」 鞄の中身を全てひっくり返してもどこにも無い。 …もしかして、机の中に忘れてきちゃったのかも どうしようかと考え込むも提出期限は明日、遅れようものならクルーウェル先生に怒られること間違いなしだ。 今から取りに行く選択肢しかない。 時刻は夜8時、今日は部活はない日なので生徒達はみんな寮へ戻っているはず。 誰もいない真っ暗な校舎に1人で行くのはやはり気が乗らない。 それに理由は聞きそびれてしまったがこの前レオナさんに 「1人で夜の校舎には行くな」と言われたばかりである。 グリムを連れていこう。 そうと決めたらソファに寝そべっているグリムに近づき、声をかける。 「グリム、ちょっとお願いが…」 「ん…う〜ん、もう食べられないんだゾ……」 涎を垂らしながらお腹を出して寝ている。 それはもうぐっすり。 「ねぇ、グリムってば…」 「ん〜…むにゃ…」 …知ってはいたが相変わらずグリムの眠りは深い。 これはしばらく起きそうにないだろう。 仕方ない…一人で行くしかないか。 すぐにプリントだけ取って帰れば大丈夫だよね…スマホだけは持っていこう プリントを取りに行ってくる、と書き置きを残しグリムを置いてオンボロ寮を出た。 校舎の前に着き、上を見上げる。 昼の時点でも厳かな雰囲気の建物だとは思っていたが夜になると不気味さに拍車がかかりすごく入りづらい。 しかし私は絶対にプリントを持って帰らないと行けないのだ。 恐る恐る扉に手をかけてみるとなんの抵抗もなく簡単に開いた。 ここに来るまでの間にもしかして鍵が掛かっている可能性もあるかもしれないとも思ったがどうやら大丈夫なようだ。 鍵が開いていたということは、先生がいるかもしれない。 夜の学校に来るのは褒められたものではないし出来れば見つかりたくはないが、この真っ暗な校舎の中に1人きりじゃないのかもしれないという考えは少しだけ私の心を軽くさせた。 真っ暗な校内をスマホの光を頼りに歩く。 すこし安心したとは言ったがやっぱり誰もいない真っ暗な校舎は怖い。 レオナ先輩が聞いたら16歳にもなってゴーストが怖いのかと笑われそうだけれど怖いものは怖い。 この世界にはゴーストや動く絵画などの不思議な存在は沢山いるがそれとこれとは話は別である。 なんだか焦燥感に駆られてカツカツと靴音を鳴らしながら小走りで廊下を走りだした。 今にも何か出てきそうな雰囲気を感じながら奥へと進む。 さっさとプリントを回収して帰ろう。 「…え〜っと…、…あ、あった!良かったぁ…!」 1年A組に着き、自分の机の中を漁ると簡単に探し物は見つかった。 良かった、これで帰れる。 時刻を見ると8時20分を回るところだった。 教室の扉を閉め、再び廊下を歩き出す。 カツ、カツ、カツ ぺた、ぺた、ぺた 「……ん?」 自分の足音の後に続いてぺたぺたと音がする。 思わず立ち止まって後ろを振り向くが誰もいないしなんの物音もしない。 …気のせいかな… 早足で再び歩き出した。 カツ、カツ、カツ ぺた、ぺた、ぺた ……!!やっぱり気の所為じゃない! 何かに付けられている。 しかも足音から察するに相手は裸足。 絶対にろくなものじゃない。 「ひっ…」 思わず廊下を全速力で駆けた。 私のリアルホラー耐性は限りなく低い。 怖い話は好きだが要するにビビりだ。 無我夢中で走っていると足音はいつの間にか聞こえなくなっていた。 直ぐに昇降口に向かい、扉に手をかけるがギィと軋んだ音がするだけで扉はビクともしなかった。 この扉は鍵が閉まっていようと内側からなら開けられるタイプだ。 開かないなんてありえない。 さっきの足音、開かない玄関。 きっと関連性はあるのだろうがこれ以上こんな所に居たくない。 しかしいつまでも開かない扉の前にいても何も始まらない。 試しに窓を開けようとしてみたが窓さえ開かなかった。 積んだ。 グリムもいないというのに怪奇現象に巻き込まれてしまったようだ。 心細すぎる。 そうだ、スマホ…誰かに連絡出来れば… 外部との連絡手段さえあればどうにかなるのではないか。 慌ててスマホを確認するがなんと表示は圏外。 誰かに助けを求めるのもムリというのか。 しかしいつまでも絶望していても仕方ないし、さっきの足音の主に遭遇する可能性を考えたらもっと怖くなってきた。 早く別の出口を探そう。 この後監督生はNRC七不思議的な怪異たちに襲われる。 おおまかな設定だけ 生かせてないけど今回は両片思い設定 監督生 レオナさんの忠告を聞かなかった結果怪奇現象に巻き込まれた。 例え寝ていようとグリムを連れてきていれば結果は違ったかもしれない。 怪異にダメージを与えると少しの間電波が復活するのでこの後レオナさんに半泣きで助けを求める電話をかける。 レオナさん 校舎内で寝過ごしたりして何度か怪異に遭遇するも頭脳も物理的にも強いので普通に生還した。 魔法が使える生徒なら自力でどうにか出来るだろうけど魔法が使えない監督生には無理だろうからせっかく忠告してあげたのに監督生から半泣きで電話がかかってきた。 激おこで救助に向かうことになる 最初の場面のそっけない態度の理由ははやきもち.
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