今回の事件では、発生直後からTwitter上で「犯人って在日コリアン?」「犯人が在日か韓国籍だったら最悪の展開」などという発言がなされていた。 中には「帰ってほしい」などというヘイトスピーチも散見された。 また、Yahoo! 知恵袋にも「犯人は在日ですか?」などという質問があげられていたほか、2ちゃんねる内でも同様の指摘が相次いでいる。 これは男の名前が公表されていなかったからだが、そもそもメディアが容疑者の名前や国籍を含めた人定を記事に明記するのは通常、警察の発表を受けてからのことだ。 男は現在入院中で、意識不明との報道もある。 警察の捜査員も、本人に話を直接聞きながら裏付けを取っていくことができないため、たとえ免許証を身につけていたとしても、それが確実に本人の物なのかを確認するには、一定の時間が掛かる。 さらに、刑事責任能力の有無の検討が必要になるケースもあり、事件・事故後に警察が容疑者の名前をすぐに公表しないことは、珍しくない。 登戸殺傷でも「犯人は在日」トレンドブログとは そもそもトレンドブログとは、検索エンジン対策(SEO)に長けており、ユーザーが検索しそうなキーワードを先回りして記事化し、検索からユーザーを流入させてページビューを得ることで、広告収入を稼いでいるとみられるブログ群だ。 その内容は、ほかのサイトの記事の引き写しや、単なる憶測に留まっていることが多い。 社会の注目が集まる事件・事故が発生するたびに、容疑者のプロフィールや顔写真を紹介するといった触れ込みのトレンドブログの記事が、大量に作り出されている。 川崎市登戸で5月に起きた児童らに対する無差別殺傷事件でも、トレンドブログが「犯人は在日」という言説を拡散させていた。 この際には、福田紀彦・川崎市長が「事実に基づかない臆測が流布している。 不適切で遺憾だ」(6月3日、)と発言し、こうした言説そもそものを否定。 批判した。 断定はしていないが… 今回の事件でも、複数の「トレンドブログ」がそうした断片的な情報を記事化している。 どれも根拠はない。 BuzzFeed Newsが調べた限り、現在複数のブログで以下のような言及がなされている。 「京アニ放火犯人の顔画像や名前は?国籍は在日韓国?経歴&犯行動機は?• 「 京アニ火災の犯人の動機や特徴、顔画像、40㍑ガソリンとは?在日韓国との噂も!」• 「京アニ火災犯人は在日韓国人!?本名や経歴は?茨城出身の元従業員ではなかった」 いずれも断定しているものはない。 「決めつけるのは止めましょう」などと書いているような記事もあるが、見出しに疑問符などを持ってきている以上、かたちのうえでは断定を避けながらも、検索流入を期待して「在日」という言葉を入れた可能性は高いと考えられる。 また、これ以外にも2ちゃんねる上の情報を「あじあにゅーす2ちゃんねる」が以下のように掲載している。 あくまで「可能性」の指摘ではあるが、その根拠は示していない。 【京アニ放火】放火犯が韓国人の可能性!!! 安倍首相が国家公安委員長に徹底捜査を指示した理由!!! 「在日」と調べている人たちがいる 先述の通り、トレンドブログはSEO対策に長けており、検索ボリュームが大きいキーワードを記事内に多く取り込んでいる。 つまり、こうしたキーワードがあるということは、「在日」と調べている人たちが存在するということを忘れてはいけない。 外国人差別などに詳しいジャーナリストの安田浩一さんは、川崎の事件を受け、「ヘイトスピーチ対策法」に関する(5月29日)で以下のように語り、日本社会に潜む民族差別の存在を指摘した。 「容疑者の身元が確認されるまでの間、ネットにはどんなことが流れたのか。 犯人は外国人に違いない、川崎だから在日コリアンが多いからおそらく在日だろう、名前が発表されないのは何らかのの忖度があるなーー。 ふざけるな、という気持ちでいっぱいになりました。 凶悪事件が起きるたびに、ヘイトにまみれたデマが流布され、信じる人がそれを広げる。 多くの場合には全くマイノリティが関係ない場合が多いにもかかわらず、何度なんども繰り返されている」 ヘイトスピーチ対策法は2016年6月に施行されたが、罰則規定などがないため、その実効性を疑問視する声は大きい。 一方、川崎市では条例違反を繰り返した場合、50万円以下の罰金とする、全国で初めてヘイトスピーチ に刑事罰を科す条例の制定を目指している。
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みわよしこ [フリーランス・ライター] 1963年、福岡市長浜生まれ。 1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。 在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。 主な守備範囲はコンピュータ全般。 2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。 現在は電動車椅子を使用。 東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。 日常雑記ブログは。 生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ 生活保護当事者の増加、不正受給の社会問題化などをきっかけに生活保護制度自体の見直しが本格化している。 本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を紹介しながら、制度そのものの解説。 生活保護と貧困と常に隣り合わせにある人々の「ありのまま」の姿を紹介してゆく。 京アニ事件の容疑者に対して、「なぜ野放しにしていたのか?」と病歴と犯罪を結びつける議論が噴出している(写真はイメージです) Photo:PIXTA 京アニ事件の疑問は増すばかり 社会は悲しみを乗り越えられるか 京都市伏見区にある「京都アニメーション」第1スタジオへの放火が報道されてから、1週間になる。 心より、亡くなられた34名の方々のご冥福と、負傷された34名の方のご回復を祈りたい。 また、自身も火傷を負って重体と伝えられる容疑者・A氏(41歳)に対しても、1人の人間として回復を望む。 できれば、回復後は適切なサポートのもとで取り調べを受け、人生と事件への歩み、そして自分の事件に対する思いを、自ら語ってほしい。 A氏と事件のディテールについての報道が重ねられるたびに、私は「とはいえ、なぜあんなことを?」という疑問が増えるばかりなのだ。 ちょうど1週間前の事件当日、仕事をしながら目に飛び込んでくる報道を時折り横目で見ながら、気になっていることがあった。 身柄を確保されたA氏が、事件直後、「さいたま市在住の41歳の男」と報道されていたことだ。 警察は当然、実名と居住地と年齢を同時に把握していたはずだ。 実名をメディアに公表することに対して警察が慎重な場合、考えられる可能性の1つは、本人の精神疾患や精神障害による人権への配慮だ。 ともあれ、事件当日の夜間から翌日にかけてA氏の実名報道が開始され、「精神的な疾患がある」「訪問看護を受けていた」「生活保護を受給していた」といった情報とともに拡散され始めた。 SNSには、「なぜ野放しに?」「公金で生きさせる必要はなかった」といった意見が次々と現れ始めた。
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ここには出火当時74人の従業員がいたが、火災により33人が死亡した。 警察庁によれば、平成以降に発生した放火事件としては最悪の被害者数だという。 京都府警は、ガソリンのような液体をスタジオ1階にまき火をつけたと見られる男の身柄を確保。 殺人と現住建造物等放火の容疑で調べをすすめているが、男も体に火傷を負い病院に搬送されており、19日0時時点で、意識不明の重体だという報がある。 男に関する情報は現在のところ、所持していた免許証から、さいたま市在住の41歳であることが明らかになっているのみ。 また当日朝の行動としては「死ね」と叫びながらビルに入りガソリンをまいたことや、放火後に現場から南方向にある京阪電鉄宇治線の六地蔵駅付近まで逃走し、路上に倒れていたところを男性従業員に取り押さえられ、警察官に引き渡されたこと、そのとき「パクりやがって」「火をつけた」などと話したことなどが報じられている。 放火発生直前に20リットルの携行缶2つを持って近所のガソリンスタンドでガソリンを購入した男がいたことも、合わせて報じられた。 こうした痛ましい事件が起こると、雨後の筍のごとく量産されるのがトレンドブログ記事だ。 トレンドブログとは、その名の通り、時事ネタや芸能ニュース、テレビドラマなど、まさにその瞬間に流行しているものを素早く記事化したうえで、記事に貼ったネットワーク広告で収益を得るサイトのことをいう。 その時に多くのアクセス数が見込める記事を出し、瞬間風速的にアクセス数を集めるという特性から、今回のような事件が発生した直後には、同じようなタイトルのトレンドブログ記事がネット上に大量発生する。 今回の放火事件が起こってからも、トレンドブログ界隈では、極めて短時間のうちに多数の記事をUPしていた。
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