最初の白雪姫と、グリム童話初版とのちがい では、 マリー・ハッセンプフルークさんが語った話と、 グリム童話初版に入った話とで、白雪姫がどう変わったのかを見ていこう。 グリム童話のキーワードである 「残酷さ」に焦点を当てて、そのちがいを追っていく。 1.白雪姫の最初の狙われ方 まず、最初の 白雪姫で見られる 残酷さのちがいは、 女王が白雪姫を殺そうとするその手段である。 女王は 「鏡よ鏡……」と、鏡にこの世で一番美しいのは誰かと聞く。 白雪姫が一番美しいといわれた女王は、それを妬んで白雪姫を殺そうとするわけだ。 この白雪姫を狙うところが、 グリム童話より前の 原作(マリー・ハッセンプフルークの語った話)では次のような流れになっている。 女王様と白雪姫は、森へ一緒に出かけた。 そこには美しい赤いバラが咲いていた。 女王:「白雪姫、きれいなバラを取ってくれない?^^」 白雪:「わかりました!」 白雪姫がバラを取りに馬車から降りた。 そのとたんに、馬車はすごい勢いで去っていった。 白雪姫は森に置き去りになった。 女王は、白雪姫を森の獣たちに食べさせたかったのである。 こんな感じだ。 グリム童話に入る前の原稿段階では、 白雪姫はただ森に置き去りにされるだけだったのである。 ところが、これが 初版になるとちょっと変わる。 女王は狩人を呼んだ。 そしてこう命令した。 女王:「白雪姫を森に連れてって、殺せ!殺したら肺と肝臓を取ってこい!塩で煮て食ってやる!」 白雪姫の内臓を塩で味つけして、食べるつもりでいたのだ。 しかもそれを自分でやるのではなく、なんにも悪くない 狩人にやらせるのだからまったくあくどい。 だいぶ 残酷になったものだ。 現在のグリム童話では、この 「内臓食べるバージョン」がそのまま採用されて残っている。 なお、 グリム童話初版の 女王は、白雪姫のまま母ではなく、実の母親である()。 実の母親が娘の内臓を食べるという、すさまじい話だ。 ハンニバル・レクターも驚きである。 2.白雪姫の復活のしかた 次に、白雪姫が復活するシーンに目を向けてみよう。 まずはグリムより前の 原作がどんな感じだったか。 原稿の段階では、 白雪姫の父親である 王さまがどこかへ出かけている設定から始まる。 王さまが帰ってくる途中に森を通った。 そこで白雪姫が死んでいる棺(ひつぎ)を発見した。 白雪姫が死んだことがわかり、悲しんだ。 それで、王さまが連れていた仲間に医者が何人かいて、その医者たちはこびとに頼んで白雪姫の死体をゆずってもらった。 それから、部屋のすみに縄をはった。 白雪姫は生き返った。 こんな感じだ。 つまり、 白雪姫がのどにつまらせた 毒リンゴがどうたらっていう話はまったく無関係。 医者が縄をはっただけで生き返ったことになっているのである。 そもそも医者のくせに、身体をいじるとか、そういうことはしないのだ。 縄をはるという、アフリカの村で流行っているような儀式、いわゆる 呪術というやつで 白雪姫を生き返らせたのである。 おそらく、呪文などを唱えたのであろう。 そのあと、 白雪姫は無事お城に帰って、どこからともなく現れた王子さまと結婚し、幸せに暮らす。 王子のかげがまったく見えないのは、なんだか切ない。 これに対し、グリム童話初版ではちゃんと王子が登場する。 王子が こびとたちのところで泊めてもらおうと思ってやってくると、そこで 白雪姫の棺を発見。 「美しいから売ってほしい」とお願いする場面である。 さて、そこからこんな展開で話がすすむ。 王子は白雪姫の棺を、召使いにかつがせて城へ持っていった。 城の中で、召使いたちはいつも棺をかつがされるので、怒っていた。 あるとき、召使いの一人が棺の中から白雪姫を出して、持ち上げた。 召使い:「ふざけんな!こんな死んだやつのせいで、なんで苦労しないといけないんだ!」 キレた召使いは白雪姫の背中をなぐった。 すると、飲みこんだ毒リンゴのカケラが出てきて、白雪姫は生き返った。 じっくり考えると、いろいろとシュールな点にあふれていて、なかなかに笑えてくる話である。 最初の原作ではそれなりにスムーズに生き返った 白雪姫。 しかし、 グリム童話になってからは、 怒った召使いに殴られて生き返るという、ブラックコメディのような展開になってしまった。 どこかのコントにありそうな話である。 ちなみに、生き返りのシーンはグリム童話の最終版でさらに改変。 召使いが木に足を取られて棺が揺れたせいで、毒リンゴがのどから出てくることになる。 ドジな召使いのおかげで、白雪姫は生き返るのである。 ディズニーアニメ版ではもちろん、 王子さまの甘いキスで目を覚ます。 変化を追ってみると、ずいぶんとむちゃくちゃな変わり方をしてきたと実感できるものである。 まとめ よく ディズニーと グリム童話とで比較される 白雪姫。 だが、 グリム童話になる前の 原作、すなわち マリー・ハッセンプフルークさんが聞かせたお話の原稿と、そのあとの グリム童話初版とで比較すると、 残酷にしたのはグリム兄弟だということがわかる。 数々のスピンオフも出ている 白雪姫のルーツはなかなかに奥が深い。 気になる方は、ぜひほかにもいろいろと探ってみてはいかがだろうか。
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CONTENTS• 映画『白雪姫~あなたが知らないグリム童話~』について (C)2019 Mandarin Production — Gaumont 本作はグリム童話『白雪姫』をモチーフとして、現代に生きる女性たちの性と生を描き出します。 命の危機を感じて逃げ、隠れて生活していく中で次々と 男を翻弄してゆく娘を妖艶に演じるのは、フランス映画界の女神、ルー・ドゥ・ラージュ。 日本で開催された「フランス映画祭2017」で一般の観客によりエールフランス観客賞に選ばれた『夜明けの祈り』にて主人公の医師・マチルドを演じ注目を集めたルー・ドゥ・ラージュが、同作の監督アンヌ・フォンテーヌと再びタッグを組みます。 恋人を義理の娘に奪われかけ、嫉妬に狂う義母役にはイザベル・ユペール。 フランスを代表する国際派女優が圧倒的な演技力で演じました。 また、 監督は現代のフランス映画界を牽引するひとりアンヌ・フォンテーヌ。 『恍惚』『ココ・アヴァン・シャネル』『夜明けの祈り』など数多くの作品で脚光を浴び、つねに女性の生き方や愛の目覚めを描いてきました。 映画『白雪姫~あなたが知らないグリム童話~』のあらすじ (C)2019 Mandarin Production — Gaumont 美しく若い女性のクレア(ラージュ)は、亡くなった父親が経営していたホテルで働いています。 現在ホテルは義理の母親のモード(ユペール)が運営。 クレアはモードに対して制御しがたい嫉妬心を抱えていますが、一方で、モードの若い恋人はクレアに恋をしてしまいます。 その事を知り、クレアを永遠に葬ろうとするモード。 しかし、クレアは間一髪、見知らぬ男に助けられ、彼の双子の兄弟とチェリストが住む牧場で一緒に暮らすことに。 生活を共にしていくうちに、一人、また一人と彼女の魅力にやられ恋に落ちていく男たち。 そして、次第にクレアも彼女の中で何かが解放されていくことを感じ始め…。
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孤独、殺意、ねたみ、善意と愛情。 そのすべてがつまった小宇宙がここに。 ドイツ民衆の口から口へと語りつがれてきたメルヘンを、こまめな熱意をもって収集し、文学的才能によってナイーヴな詩に高めたグリム兄弟。 本書は、世界中に愛読されるグリム童話のなかから、表題作をはじめ、『歌う骨』『金の鵞鳥』『強力ハンス』『勇ましい豆仕立屋』『灰だらけ姫』『千匹皮』『鉄のハンス』『金の鳥』『藁と炭といんげん豆』など23編を収録した傑作集第一集である。 目次 小人のルンペルシュティルツヒェン 歌う骨 金色の子どもたち 鵞鳥番の少女 マレーン姫 つぐみのひげの王様 金の鵞鳥 強力ハンス 三人の怠け者 おいしいおかゆ おやゆび豆助の旅 勇ましい豆仕立屋 賢いちびの仕立屋 藁と炭といんげん豆 ラプンツェル 一つ目、二つ目、三つ目 灰だらけ姫 千匹皮 鉄のハンス 白雪姫 金の鳥 命の水 こわがることをおぼえようと旅に出た男の話 解説:植田 敏郎 本書収録「白雪姫」より むかし冬のさいちゅうのことでした。 まるで綿毛でも飛ぶように、空からひらひらと雪がまい落ちてきました。 そのとき、お妃がひとり、黒い黒檀の窓わくのついた窓ぎわに腰をおろして、針仕事をしていました。 お妃は、ぬいものをしながら、目をあげて雪を見やりました。 このとき、お妃の指先に針がささり、血のしずくが三滴、雪の上にしたたりました。 …… 本書「解説」より 本書はグリム童話のうちで特に優れたものを一九六二年発行のドイツのグリム研究の第一人者フリードリッヒ・フォン・デァ・ライエン教授校訂のテキストによって訳したものである。 ライエン教授はこれまでのテキストでは、似たテーマの童話が方々にちらばっていて、分類もされず系統もたてられていないのを遺憾として、童話をこれまでとはすっかりちがった順序で配列している。 これで同種類の童話がまとめられたから、研究者にはことに便利であろう。 ハーナウの弁護士の家に生る。 学究肌の兄ヤーコプと詩人肌の弟ヴィルヘルムは、常に行を共にし、ドイツ民族の魂の発露たるものの収集、刊行、研究に情熱を注ぎ、ゲルマン文献学に大きな功績を遺した。 その成果は『子供と家庭のための童話』『ドイツ伝説集』、代々の学者に引きつがれて1961年に完成した『ドイツ語辞典』等。 兄には大作『ドイツ語文法』もある。 植田敏郎(1908-1992) 広島生れ。 東京帝大独文科卒。 1931年渡欧、ウィーン大学等で学ぶ。 専門はゲーテ時代のドイツ文学で、学習院大、一橋大教授等を歴任。 一方日独の児童文学の架け橋となる著作翻訳を行った。 翻訳文化賞等受賞多数。 童話と言えば、誰もが幼い頃には一度は聞いたことのあるメルヘンの世界。 でも、グリム童話もあればイソップ童話もあり、こんがらがっているかもしれません。 『白雪姫 グリム童話集 1』で童話を見直してみると、新しい発見があるかもしれません。 近年はかなり知られるようになりましたが、西欧の童話、特にグリム童話は実はかなり残酷な話が多いです。 昔のドイツの風俗、文化を忠実に描写しているからこそなのです。 パステルカラーのメルヘンの世界は、色眼鏡ごしだったのですね。 作者のグリム兄弟は、「七教授抗議事件」で知られるドイツの言語学者、文献学者です。 そしていわゆるグリム童話の正式名称は『子供と家庭のための童話』です。
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