これだけ大きな減額割合だからこそ、要件が厳しく、また、複雑なものとなっています。 税金のプロである税理士でも、小規模宅地等の特例の適用を誤ってしまうこともあるくらいです。 小規模宅地の特例ができた背景 小規模宅地等の特例が創設されたのには、次のような背景があります。 亡くなった人が住んでいた土地や事業をしていた土地について、その全てに相続税が満額かかってしまうと、それを引き継ぐ相続人が住む土地や事業をする土地を失ってしまうかもしれません。 そのような酷な状況に追い込まないために小規模宅地等の特例という制度ができました。 小規模宅地等の特例の効果(メリット) 小規模宅地等の特例の効果は、ずばり、引き継いだ土地にかかる相続税を劇的に抑えられることです。 例えば、1億円の土地について、小規模宅地等の特例を使えなければ3,000万円の相続税がかけられたとします。 しかし、小規模宅地等の特例が使えれば、相続税は600万円で済んでしまいます。 引き継ぐ土地の価値は変わらないのに、相続税を劇的に抑えられるのが特徴です。 小規模宅地等の特例の対象となる土地(宅地)は3種類に分けられる 小規模宅地等の特例には、• 住んでいた土地• 事業をしていた土地• 貸していた土地 と、大きく分けて3種類があります。 種類ごとに解説していきます。 住んでいた土地/特定居住用宅地等 特定居住用宅地等とは、被相続人(亡くなった人)が住んでいた宅地で、配偶者または一定の条件を満たす親族が取得した部分のことをいいます。 特定居住用宅地等の概要を理解するには、順序立てて考えることが一番の近道です。 全部で3ステップあります。 まずは、概要を図で確認しましょう。 このステップ1を満たさない限りは、ステップ2には進めません。 「亡くなった人が住んでいたかどうか」について、迷うことなどないと感じるかもしれませんが、意外と判断に迷うケースがあるのです。 まず第一に、 亡くなった人が老人ホームに入居していたケースがあります。 私の肌感覚では、亡くなった人が生前に老人ホームに入居していたケースは半分くらいあるのではないかと思います。 亡くなった人が老人ホームに入居していた場合でも、 亡くなった人が要介護認定を受けていた場合等の要件を満たす場合には、もともと住んでいた土地を亡くなった人が住んでいたものとして考えることができます。 また、亡くなった人が住んでいた土地の上の建物は、必ずしも亡くなった人が所有している必要はありません。 建物の所有者が親族であれば、特定居住用宅地等に該当するのです。 詳しくは、「」をご覧ください。 基本的には亡くなった人と同居していた親族が生計一親族に該当することが多いですが、同居していたということは、上記アの亡くなった人が住んでいた土地と同じになります。 この規定で考えるべきは、「 亡くなった人と別居していた親族が住んでいた土地について」です。 考えられるパターンとしては、親は東京に住んでいて、その息子が大阪の大学に行くために親所有のマンション1室に住んでいて、親からの仕送りで生活していた場合です。 このとき、親が亡くなった場合は、息子が住んでいた大阪のマンションは特定居住用宅地等に該当するのです。 生計一親族について、もう少し詳しい内容を知りたい場合には、「」を参照してください。 こちらも 「亡くなった人が住んでいた土地」と 「生計一親族が住んでいた土地」に分けて解説します。 要件を満たす取得者は、「配偶者、同居親族、家なき子の3者のみ」です。 ・配偶者:亡くなった人の夫又は妻が該当します。 内縁の妻等の婚姻関係のない人は該当しません。 ・同居親族:亡くなった人と同じ家に住んでいた親族が該当します。 同居かどうかの判断が難しいケースも多々あります。 実務上、よく迷うケースは「」にまとめていますのでご覧ください。 また、この同居親族を考えるにあたって、よく出てくる論点は二世帯住宅です。 こちらは「」でわかりやすく解説しています。 ・家なき子 家なき子とは、簡単に言えば、「第三者所有の建物に賃貸暮らししている人」です。 この家なき子は要件が複雑怪奇です。 なるべくわかりやすく解説しますので、お付き合いください。 下記のすべての要件を満たした場合に、家なき子となれます。 亡くなった人に配偶者がいないこと• 亡くなったときに土地を相続する人が住んでいた家屋を過去に所有していないこと なるべくわかりやすく解説したつもりですが、「」に具体例をいくつか挙げていますので、ぜひ確認していただければと思います。 生計一親族は当然ですが、間違いやすいのは配偶者です。 そこに住んでもいない亡くなった人の配偶者が取得したとしても、特定居住用宅地等に該当するのです。 意外に盲点ですので気をつけましょう。 上の図を見てもらえれば一目瞭然です。 すなわち、 取得した土地を相続税の申告期限まで所有し続けたり、居住し続けたりする必要があるということです。 配偶者には要件がないのがポイントです。 所有(保有)継続要件の詳細は、「」にまとめています。 限度面積及び減額割合 小規模宅地の特例には、適用できる限度となる面積や減額割合があります。 住むための土地(特定居住用宅地等)の限度面積と減額割合は以下のとおりです。 限度面積:330㎡• 減額割合:80% 【具体例1】• 相続税評価額:1億円• 地積:200㎡• 相続税評価額:4,000万円• 地積:400㎡• 貸付事業用宅地等と一緒に適用する場合には、下記算式により計算し、200㎡までが限度となります。 事業をしていた土地/特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 実務上、ほとんど出てきませんので、簡単に解説します。 特定事業用宅地等は、亡くなった人やその生計一親族が事業をしていた土地について、一定の要件を満たした場合に小規模宅地等の特例の適用ができる土地をいいます。 事業とは、所得税における事業所得となるような事業です。 八百屋や料理屋など、俗にいう「自分の店」を持っている場合をイメージするとわかりやすいかと思います。 注意点としては、 「亡くなった人のやっていた事業と同じ事業を申告期限まで継続する必要がある点」です。 詳細は、「」を参照してください。 また、特定事業用宅地等の兄弟分として、 「特定同族会社事業用宅地等」という区分もあります。 これは、 「亡くなった人の同族会社の事業の敷地にも小規模宅地等の特例が適用できる」というものです。 こちらは「」で詳しく解説しています。 最後に、特定事業用宅地等は平成31年に大きな改正がありました。 「」でまとめています。 限度面積及び減額割合 特定事業用宅地等の限度面積と減額割合は、以下のとおりです。 限度面積400㎡• 貸していた土地/貸付事業用宅地等 亡くなった人やその生計一親族が貸付をしていた土地についても、小規模宅地等の特例が可能です。 貸付事業用宅地等といいます。 代表的な貸付事業用宅地等は、賃貸アパートの敷地や貸駐車場()です。 また、貸付事業用宅地等で論点となるのが「相当の対価」で貸付をしているかという点です。 例えば、親族に低額で貸していた土地については、小規模宅地等の特例が適用できない可能性もあります(参照:)。 次に、賃貸アパートについて空室がある場合も、税務署と争いになることが多いです。 亡くなったときに空室であってもちゃんと募集をして、ある程度短い期間で次の入居者が決まったのなら貸付事業用宅地等に該当するものとして考えて問題ないでしょう(参照:)。 貸付事業用宅地等は、平成30年度に大きな改正がありました。 この制度を適用した過度の租税回避を防止する目的で改正されました。 亡くなる前3年以内に貸し付けた土地については、貸付事業用宅地等に該当しなくなったのです。 詳しくは、下記コラムを参照してください。 限度面積及び減額割合 貸付事業用宅地等の限度面積と減額割合は以下のとおりです。 限度面積200㎡• 小規模宅地の特例の適用を受けるために必要な書類 小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税申告書に一定の書類を添付する必要があります。 必ず添付が必要なのは、下記3つとなります。 「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」又は「法定相続情報一覧図(図形式のものに限ります)」• 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し• 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの) そのほか、家なき子のときは、居住家屋の登記簿謄本や被相続人が老人ホームに入居していた場合には、介護保険証や老人ホームの入居契約書などケースによって添付資料が異なってきます。 詳しくは「」をご覧ください。 小規模宅地等の特例は節税効果が大きく、積極的に活用したい制度です。 実務上でもよく質問を受けるので、それだけ知名度と関心が大きいのでしょう。 小規模宅地等の特例は、間違えが許されません。 財産の評価を間違えた場合には、更正の請求等で間違えを是正することが可能です。 小規模宅地等の特例は、原則として当初申告で納税者が採用したものを変更することができないのです。 「もっと有利に小規模宅地等の特例を使えたのに!」と申告後に思っても後から修正ができないという非常に怖い特例でもあるのです。 したがって、小規模宅地等の特例を適用する場合には専門の税理士に依頼してしまったほうが良いでしょう。 また、近年の改正により、税法の裏をかくような手法はできなくなっていますので、計画的に相続税対策を進めることが重要です。 申告時の手続きも少し複雑なので、悩んだらすぐに税理士に相談することをおすすめします。 相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください 相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。 また、適切な申告をしないと、 後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。 税理士法人トゥモローズでは、 豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。 初回相談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。
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この記事の目次• 1.原則は申告期限までに遺産分割を終えて適用する 相続税の小規模宅地等の特例は、自宅や事業用地として使っていた宅地の相続税評価額を50%または80%減額する制度です。 適用するためには、原則として 相続税の申告期限(被相続人の死亡から10か月後) までに遺産分割を済ませて税務署に申告書を提出する必要があります。 特例が適用できる宅地の限度面積と減額割合は、宅地の種類ごとに以下のとおり定められています。 種類ごとの適用要件や詳しい内容については、下記の記事で解説しています。 2.期限までに申告できなかったケース別の対応法 小規模宅地等の特例は、 相続税の申告期限を過ぎた後の申告(期限後申告)でも適用することができます。 つまり、申告が期限に間に合わなかったとしても、小規模宅地等の特例を適用して相続税を引き下げることができます。 小規模宅地等の特例が適用できるかどうかは、次の3つの事項がポイントになります。 申告期限までに遺産分割できたか• 「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したか• 申告期限から3年以内に遺産分割できたか これらの事項の場合分けをフローチャートで示すと次のようになります。 この章では、それぞれのケースごとに対応法を紹介します。 2-1.税額が0になるから申告しなかった場合 小規模宅地等の特例を適用すると宅地の評価額を大幅に引き下げることができるため、税額が0になることも多くなります。 税額が0であれば申告が不要であると誤解されがちですが、申告をしなければ小規模宅地等の特例を適用したことにはなりません。 税額が0になるから申告しなかった場合は、 期限後であっても速やかに相続税を申告しましょう。 期限後申告でも小規模宅地等の特例は適用でき、相続税を0にすることができます。 2-2.申告が遅れた場合・申告を忘れた場合 特別な理由がなく申告が遅れた場合や申告を忘れていた場合でも、期限後に申告すれば小規模宅地等の特例を適用することができます。 但し、期限後申告では無申告加算税と延滞税が上乗せされます。 2-3.申告期限までに遺産分割ができなかった場合(分割見込書提出あり) 申告期限までに遺産分割ができなかった場合は、税務署に届け出ておくことで、後日遺産分割ができたときに小規模宅地等の特例を適用することができます。 まず、 法定相続分で遺産を分けたことにして仮の申告をします。 そのとき、 「申告期限後3年以内の分割見込書」(以下では「分割見込書」と表記します) を添付します。 分割見込書には、遺産分割ができない理由といつ頃分割できるかの見込みを記載します。 仮の申告では小規模宅地等の特例は適用できないため、特例を適用しないで計算した税額を納めます。 申告期限から3年以内に遺産分割できた場合 申告期限から3年以内に遺産分割できた場合は、 小規模宅地等の特例が適用できます。 仮の申告で納め過ぎた税額があれば、遺産分割できた日の翌日から4か月以内に申告のやり直し(更正の請求)をして返してもらうことができます。 申告期限から3年以内に遺産分割できなかった場合 次のようなやむを得ない事由があるときは、特例の適用までの期間を延長することができます。 遺産分割をめぐって法的な争いが起こっている場合• 遺言で一定期間遺産分割が禁止されている場合 申告期限から3年を過ぎた日の翌日から2か月以内に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。 遺産分割ができないやむを得ない事由が解消したときは、その日の翌日から4か月以内に遺産分割をします。 仮の申告で納め過ぎた税額があれば、遺産分割できた日の翌日から4か月以内に申告のやり直し(更正の請求)をして返してもらうことができます。 2-4.申告期限までに遺産分割ができなかった場合(分割見込書提出なし) 申告期限までに遺産分割ができず分割見込書を提出しなかった場合の対応法は次のとおりです。 申告書は提出したが分割見込書の提出を失念していた場合 申告書だけを提出して分割見込書の提出を失念していた場合は、 小規模宅地等の特例は適用できません。 申告期限から3年以内に遺産分割できた場合 申告期限から3年以内に遺産分割できた場合は 小規模宅地等の特例が適用できます。 ただし、申告書とともに分割見込書を提出しなければなりません。 申告書だけを提出して分割見込書を提出しなかった場合は特例が適用できないので注意しましょう。 申告期限から3年以内に遺産分割できなかった場合 申告期限から3年以内に遺産分割できなかった場合は 小規模宅地等の特例は適用できません。 分割見込書を当初の申告期限までに提出していないうえ、申告期限後3年以内にも提出していないため、特例を適用できる余地はありません。 3.まとめ ここまで、相続税の期限後申告で小規模宅地等の特例を適用するための手続きをご紹介しました。 特例の適用ではいつ遺産分割されたかが重要であり、相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合は、手続きが少し難しくなります。 小規模宅地等の特例を適用して相続税を軽減したい場合は、申告期限に間に合うように遺産分割をして申告書を提出することが重要です。 もし申告期限に間に合わない場合は、相続税専門の税理士に相談して対応を考えることをおすすめします。
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ここからが重要なポイントです。 実は、この小規模宅地等の特例は・・・・ 相続する人によって、 特例が使える人と 特例が使えない人が存在します。 もし特例が使えない人に自宅を相続させてしまった場合には、せっかく8割引きにできる特例が、みすみす使えなくなってしまいます! それでは、この特例が使える人を紹介します。 この特例が使える人は 3人います。 3人いるのですが、3人目は条件が厳しいため中々使うことができません。 原則としては初めに紹介する2人が使えるので、3人目はオマケだと考えてください。 それでは紹介していきます! まず、1人目は 配偶者です。 夫が先に亡くなった場合の妻、妻が先に亡くなった場合の夫です。 配偶者が自宅を相続した場合には、無条件でこの特例を使うことが可能です。 次に2人目。 2人目が重要です! その2人目とは、 同居親族です。 相続が発生したときに、亡くなった人と一緒に住んでいた親族が自宅を相続した場合には、自宅の評価額は8割引きになります。 ここで非常によくいただく質問は、 「同居って、住民票だけ一緒にしておけばいいってことですか?」 という質問です。 この答えは、 NOです!! 住民票が同じでも、実際に同居していない場合には、この特例は使えません。 そして、実際に同居していたかはどうかは、税務署の職員さんから、 徹底的に調べられます。 ここはあえて強調しますが、同居していたかどうかは、税務署の職員さんから、 徹底的に、 徹底的に、 徹底的に、 調べられます。 ですので、同居していたように見せかけようなんて考えないでください。 なお、この特例は同居の実態があれば、住民票が別々の場所にあったとしても特例を受けることは可能です。 相続税は実態が全てなのです! また、これもよくいただく質問ですが、「同居はどれくらいの期間しなければいけないですか?」という質問です。 実は、同居には期間の制限がありません。 狙ってできることではないですが、亡くなる一週間前から同居をしていたとしても、この特例は受けられます。 しかし、そう簡単にはいきません。 この特例は、亡くなる前の期間に制限はありませんが、亡くなった後、10ヶ月間はそこに住み続けなければいけないという条件が存在します。 そのため、やはり一時的な同居を狙うということはできないのですね。 3人目は、 亡くなった方と別居していて、かつ、3年以上自分の持家に住んでいない親族です。 わかりやすく言えば、賃貸暮らしをしている子供が当てはまります。 この持家のない子供の特例を、税理士業界では 「家なき子特例」と呼んでいます。 この家なき子特例は、他にも細かい条件が付いています。 この特例を使うための条件は、次の二人が存在しないことです。 配偶者 2. 同居している相続人 配偶者がいないことが条件ということは、言い換えると、配偶者が既に亡くなっている、つまり、2次相続限定で家なき子特例は使うことができます。 もしくは元から配偶者がいない場合 また、同居している相続人もいないということは、言い換えると、亡くなった方が、一人で自宅に住んでいるような場合に使える特例なので、家なき子特例が使えるケースは比較的少ないケースです。
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