バンコクのスーパーで存在感を示す日本のお菓子 東南アジアの中心都市、タイの首都バンコクでスーパーマーケットに足を運んでみよう。 菓子売り場に陣取った日本のお菓子の存在感にきっと目を奪われるはずだ。 江崎グリコの「ポッキー」、「プリッツ」、森永製菓の「ハイチュウ」、カルビーの「ジャガビー」「かっぱえびせん」「さやえんどうスナックBUNBUN」、湖池屋の「カラムーチョ」等など、タイ語でブランド名が表記された見覚えのあるパッケージの大群を目にすると、日本のお菓子がいかに現地で歓迎され、浸透しているかを痛感する。 現地の人を魅了する日本のお菓子。 この現象はタイ限定のものではない。 いま世界のあちこちで進行している。 シンガポールや台湾、香港、中国、インドネシア。 そして、北米、ヨーロッパ、中東にまで活躍の舞台を広げる日本のお菓子。 その成功の要因を、森永製菓の「ハイチュウ」と江崎グリコの「ポッキー」に絞って紹介しよう。 メジャーリーガー・田澤純一投手が火付け役の「ハイチュウ」人気 ガムやキャンディーのように見えて、そのいずれでもない。 唯一無二の不思議な食感を特徴とする「ハイチュウ」は、日本国内で独自に進化したガラパゴス的お菓子の代表格といってもいいだろう。 この「ハイチュウ」のアメリカでの人気が加速している。 快進撃の火付け役となったのがメジャーリーガーだ。 ボストン・レッドソックスの田澤純一投手がブルペンに「ハイチュウ」を持ち込んだことがきっかけとなり、周囲の選手にも「ハイチュウ」ファンが急増。 これを受けて、販社の米国森永はサンプル提供をスタートし、その後、チームとのスポンサー契約に至る。 人気がMLB全体に広がったため、いまではミネソタ・ツインズやシカゴ・カブス、さらにはNBA(北米プロバスケットボールリーグ)のニューヨーク・ニックスともスポンサー契約を締結している。 売上も順調に伸び、「ハイチュウ」は現地の大型スーパーマーケットの定番商品だ。 アメリカ在住の日本人やアジア系住民だけではなく、ラテン系も含めたローカルな消費者が「ハイチュウ」ファンとして着実に育っている。 現地の嗜好(しこう)に合わせたフレーバー開発、柔軟な容量設定 なぜ、「ハイチュウ」がここまで人気を獲得できたのか。 それは、決してMBLでの人気というフロックではない。 絶え間ざる現地化マーケティングのたまものだ。 例えば、フレーバーの種類だ。 世界のどこでも「ハイチュウ」の基本アイテムは、ストロベリー、グレープ、グリーンアップル味の3つだが、アメリカではブラックチェリー味やマンゴー味を追加。 マンゴー味は、アメリカでの中で急速に人口が増えているラテン系に向けのアメリカオリジナルのフレーバーだ。 ちなみに、中国で販売されている「ハイチュウ」には、ミルク味やピーチ味もある。 国や地域、民族によって異なる食の志向を踏まえたフレーバー開発は現地化の鉄則である。 バンコクのスーパーで販売されている森永製菓の「ハイチュウ」。 容量についても現地化は欠かせない。 アメリカのコストコでは500g入りの「ハイチュウ」が販売され、好評を得ている。 この大袋は、アメリカの家庭で頻繁に催されているパーティを想定して開発された。 テーブルの上に大袋を置き、客が好きなだけ袋の中からお菓子を取っていく。 このシーンに照準を合わせたボリュームだ。 とんでもない大袋は、中国の「ハイチュウ」にも存在する。 こちらは婚礼のパーティ需要として専門の問屋向けに開発したもの。 その一方で、同じ中国では低所得者層向けの7粒入りタイプも販売されている。 インドネシアではさらに小容量の3個入りのカレンダータイプ(小袋がいくつも連なったタイプの商品)の「ハイチュウ」も計画中だ。 2015年夏、米国工場が本格稼働 価格についての「ハイチュウ」のモットーは、誰もが手が届く価格であること。 ただし、安売り商品ではない。 価値が認められる上限での価格を追求している。 価格勝負に陥れば、体力を消耗し、ブランド力の低下を招く。 最寄り品ではなく、目的を持って購入してもらえる買回り品としての価格設定が「ハイチュウ」を指名買いしたいブランドに導いた。 チャネル選択も海外進出の成否を左右する要因だ。 「ハイチュウ」の場合、台湾の工場からアメリカに輸出し、まずセブン-イレブンで試験的に販売し、好評を得たことから、日系やアジア系のスーパーマーケットに導入。 ここでの反響も良かったため、いよいよ米系のスーパーマーケットに進出して現在に至る。 2015年夏からは米国工場が本格的に稼働する。 今後、「ハイチュウ」をアメリカのお菓子だとみなす消費者も増えるかもしれない。 それこそ、海外市場に定着したということ。 現地化の究極の姿である。 「ポッキー」ファンの育成、「楽しさ」演出する戦略 海外30カ国で年間の2億個を売り上げている江崎グリコの「ポッキー」も、「ハイチュウ」同様、ガラパゴス的進化を遂げたお菓子。 チョコレートもビスケットも西洋由来のお菓子だが、それを組み合わせ、何かをしながら手を汚さずに食べられる「ながら菓子」はあるようでなかった。 その「ポッキー」の海外戦略からは、販促の現地化の重要性が見て取れる。 「ポッキー」のコンセプトは、世界共通で「シェアハピネス」。 楽しいシーンに必ずあるお菓子として提案していくため、東南アジアの国々ではある特定の場所にフォーカスした。 その場所とは、タイならば大型のショッピングモール。 大型の商業施設の数がまだ少ないベトナムでは映画館。 いずれもメインターゲットである若い男女が「楽しさ」を求めてこぞって集まる場所だ。 インドネシアでは、学校も重要なチャネルの一つ。 公的な学校での私企業によるプロモーションが可能なお国柄を背景に、江崎グリコは「ポッキー」のCMに起用しているJKT48(インドネシア版AKB48)を描いた真っ赤なワゴンを中学校や高校に乗り入れ、大々的なサンプリングを実施している。 早くから「ポッキー」のファンを育成するためだ。 イスラムの国ならではの販促策も展開している。 イスラム教徒はラマダンの時期には断食をするが、それも日中限定であり、日が暮れると家族や友人同士で集まり、食事をし、夜遅くまで買い物を楽しむ。 このシーンに「シェアハピネス」の「ポッキー」を食べてほしいと提案しているのだ。 「ラマダン明けにポッキーを」のプロモーションが軌道に乗れば、中東など他のイスラム国への展開も可能になる。 「ポッキー」の未来は大きく広がっている。 ガラパゴス製品の海外展開には非ガラパゴス人材が必須 このように、海外で成功する日本のお菓子には共通点がある。 挙げてみよう。 海外にはあまり例がなく、独自性が高い(ガラパゴス菓子)• 現地の舌、志向を踏まえたフレーバーの開発• 現地の生活習慣や文化を踏まえた容量の開発• 現地の経済事情を鑑みつつ、最寄り品ではなく買い回り品としての価値を付加した価格設定• 現地の生活習慣や文化、宗教を踏まえたプロモーション• 2~5をスピーディに行動に移す海外事業に長けた人材 他国の文化や食を巧みに取り入れ融合させて、他国に例がないガラパゴス製品に仕上げるのは日本企業の得意とするところ。 つまりポテンシャルの高い製品はお菓子以外にもたくさんあるということだ。 だが、6に関して言えば、現在のところ、海外での事業展開の経験がある人材を総合商社や他の消費財メーカーからヘッドハンティングするお菓子メーカーが少なくない。 社内で適任者が育っていないためだが、今後は、そうした人材の内製化が必要になるだろう。 ガラパゴス製品の海外に売り込むためには非ガラパゴス人材が欠かせない。 両者が揃えば鬼に金棒。 ガラパゴス製品に満ちた日本には多くのビジネスチャンスが横たわっている。
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なぜそれらは売れるのか? (日本実業出版社)の著者である三田村蕗子氏がレポートする。 メジャーリーガーに端を発したハイチュウの快進撃 森永製菓のハイチュウがメジャーリーガーの間で人気、というニュースを耳にした読者も多いだろう。 ボストン・レッドソックスの田澤純一投手が持ち込んだのがきっかけで、人気沸騰。 これを受けて、米国森永はサンプル提供をスタートし、レッドソックスとのスポンサー契約まで実現する。 キャラメルでもない、ガムでもない、口に入れると、フルーツの風味が広がり、かんでもかんでもかみきれず、気がつくと溶けて消えていく独特の不思議な食感は、やがて球団職員や球場を訪れるファンをも魅了していく。 ここで一気に攻勢をかけるべく、森永製菓は2015年夏から現地生産をスタートする計画だ。 海外事業を統括する海外事業部長の山下充洋さんは語る。 「まずは台湾の工場からアメリカに輸出し、セブン-イレブンで展開しました。 日本で100円のハイチュウがアメリカでは1. 29ドルしますが、非常に回転率がよかったんですね。 次に、日系やアジア系のスーパーに入れたら、やはりよく売れ、自信もついた。 そこで、アメリカ人に食べてもらえるお菓子に仕立てようと、米系のラルフルズやコストコといったメインストリームで勝負をかけました。 これも動きがよく、リピートがつくという確証が取れたので、いよいよ現地生産に踏み切ります」.
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