一見、価数が酸塩基の強弱に影響しそうですが、価数よりも圧倒的に電離度のほうが影響します。 では電離度とは何でしょうか。 電離度 電離度とは、溶液中で 溶質が電離する割合のことです。 しかし,すべてが電離するわけではありません。 例えば、硫化水素 H 2Sの電離度が0. 2で、100個あったとすると、 H 2S100個のうち、0. 2の割合で電離(イオンに分かれる)します。 つまり、20個電離します。 電離度0. 2ということは、電離しない割合は1-0. 8)が電離せず H 2Sのまま残ります。 これをモル濃度(溶液1Lあたりの溶質のモル)で考えるのが基本です。 一般的に以下のように考えます。 これは、右向きしか起こらない反応ということを表します。 大切なのは、強酸、強塩基はイオンの状態が安定で結合状態が不安定というイメージを持つことです。 高校化学で覚えるべき強酸・強塩基 強酸 硫酸(H 2SO 4),硝酸(HNO 3), 塩酸(HCl),臭化水素酸(HBr), ヨウ化水素酸(HI) 強塩基 水酸化ナトリウム(NaOH),水酸化カリウム(KOH) , 水酸化カルシウム(Ca OH 2 ), 水酸化バリウム(Ba OH 2 ) 強酸・強塩基を必ず覚え、それ以外は弱酸・弱塩基と覚えましょう。 強酸は、硫酸と硝酸とハロゲンのフッ化水素酸以外と覚えます。 強塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物のみと覚えましょう。 大切なのは、弱酸、弱塩基は結合状態が安定でイオンの状態が不安定というイメージを持つことです。 しっかりと覚えておきましょう。
次の1 第 2 族元素 周期表において、第 2 族に属するベリリウム Be ・ マグネシウム Mg ・ カルシウム Ca ・ ストロンチウム Sr ・ バリウム Ba ・ ラジウム Ra などの元素を、総称して「第 2 族元素」といいます。 このうち、カルシウム Ca ・ ストロンチウム Sr ・ バリウム Ba ・ ラジウム Ra の 4 種類の元素を、「アルカリ土類金属 alkali earth metals 」といい、互いによく似た性質を示します。 ベリリウム Be とマグネシウム Mg は、一般的にアルカリ土類金属に含めません。 しかし、広義には、第 2 族元素とアルカリ土類金属は、言い換えて使用されることもあります。 第 2 族元素は、いずれも最外殻の電子配置が n s 2 である 元素 n = 2,3,4 ・・・ です。 原子は、この 2 個の電子を失って、希ガスと同じ電子配置を取って安定化します。 そのため、第 2 族元素の金属イオンでは、酸化数が + 2 となる状態が一般的です。 また、アルカリ土類金属は、アルカリ金属と同様に炎色反応において、各元素に特徴的な発色を示します。 単体の製法についても、アルカリ金属と同様に、化合物の溶融塩電解によります。 85 無 しにくい 899. 5 Mg 649 1. 74 無 熱水と反応 737. 7 Ca 839 1. 55 橙色 冷水と反応 598. 8 Sr 769 2. 54 紅色 冷水と反応 549. 5 Ba 729 3. 59 黄緑色 冷水と反応 502. 9 第 2 族元素では、自由電子が 2 個になっているため、アルカリ金属よりも金属結合が強く、このことが単体の密度や融点の増加をもたらしています。 また、第 2 族元素の中でも、特にアルカリ土類金属は、空気中の酸素 O 2 や水 H 2 O と容易に反応するので、それらを避けるために灯油中に保存します。 しかし、その反応性は、アルカリ金属ほど高くありません。 さらに、イオン化エネルギーについても、第 2 族元素は、アルカリ金属よりも一般に大きくなります。 これは、第 2 族元素では、アルカリ金属よりも原子核の正電荷が大きい分だけ、最外殻電子をより強く引き付けているからです。 これは、主にベリリウム Be の原子半径およびイオン半径が、他の第 2 族元素と比べて、非常に小さいことに起因します。 ベリリウム Be の最外殻電子は、強く原子核に引き付けられており、ベリリウム Be の関与する化学結合では、電子対はベリリウム Be にかなりの割合で引き寄せられ、化学結合は共有結合性を帯びます。 それ故に、ベリリウム Be の化学的性質は、他の第 2 族元素よりも、むしろ第 13 族元素であるアルミニウム Al に類似しています。 ベリリウム Be の単体は、常温常圧では、銀白色の金属固体として存在します。 ベリリウム Be の密度は 1. リチウム Li の密度 0. 5 倍ありますが、それでもアルミニウム Al の密度 2. リチウム Li が軟らかく、融点が低く、反応性が高いのに対して、ベリリウム Be は強度があって、融点が高く、表面に酸化被膜を生じるため、反応性があまり高くありません。 1 ベリリウム Be の化学的性質は、他の第 2 族元素よりも、むしろ第 13 族元素であるアルミニウム Al に類似している ベリリウム Be とその化合物には、甘味がありますが、わずかな量で死に至る強い毒性もあります。 ベリリウム Be の利用が始まった 1950 年代後半に、ベリリウム Be を分離・加工・利用する工場の従業員に、「ベリリウム症」と呼ばれる慢性および急性の食欲不振、呼吸困難、肉腫などが見られました。 生体分子中にあるリン酸塩の部位に結合して、その機能を変えたためと考えられています。 安全対策の結果、現在ではベリリウム症の罹患率は激減しましたが、加工作業での取り扱いには、十分な慎重さが要求されます。 このように、ベリリウム Be は高価で毒性があるため、極めて特殊な製品、例えば、ミサイルやロケットなどの軍事産業や、航空宇宙産業における構造部材として用いられます。 それならば、コストや毒性は問われず、軽量で強靭であることが至上命題であるからです。 例え ば、 NASA が中心となって開発を行っているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の反射鏡には、ベリリウム Be が使われています。 この反射鏡の大きさは、ハッブル宇宙望遠鏡の 2. 5 倍もあり、非常に高い観測性能が期待されています。 2 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のベリリウムミラー 他に変わった用途としては、ベリリウム Be は、 X 線装置や粒子物理学の試験における X 線透過窓として用いられます。 これは、ベリリウム Be が低密度かつ原子量が小さいために X 線を透過させ、それに加えて、ベリリウム Be には内部を完全な真空に保てる強度があり、微弱な X 線も透過できる薄さに加工できるからです。 また、金属銅に数パーセントのベリリウ ム Be を混ぜた「ベ リリウム銅合金」は、金属銅よりもはるかに高強度で、純銅に近い良好な電気伝導性があります。 ベリリウム銅合金は、叩いても火花が出ないため、油田や可燃性ガス関連産業で使う工具の材料になります。 火気厳禁の場所で、鉄の工具から火花が飛び散ったら、大惨事になりますからね。 ベリリウム銅合金製のヘッドを付けたゴルフクラブもあります。 ハイテク素材なら、ボールを思った場所に飛ばせるのではないかという風潮に乗った製品です。 しかし、このクラブを使ったからといって、特別にスコアが良くなる訳ではありません。 3 ベリリウム銅合金でできた工具 3 マグネシウム i マグネシウム Mg 「マグネシウム magnesium 」の単体は、密度が 1. 軽いイメージのあるアルミニウム Al でも、密度は 2. マグネシウム Mg は、単体として天然には産出しませんが、塩類や岩石の成分として、自然界に多量に分布しています。 地殻の金属元素としては、 7 番目に大きいです。 海水や動植物にも含まれます。 主要鉱物には、滑石 Mg 3 Si 4 O 10 、 苦 く 灰 かい 石 せき CaMg CO 3 2 、 菱 りょ 苦 く 土石 どせき MgCO 3 などがあります。 マグネシウム Mg には、手頃な価格、強さと軽さ、加工しやすさが揃っています。 しかしながら、マグネシウム Mg には可燃性があり、そのことが唯一の欠点です。 マグネシウム Mg は、酸素 O 2 と化合しやすく、強い還元性を持つため、空気中で放置すると、表面が酸化されて灰色を帯びてしまいます。 また、マグネシウム Mg は、二酸化炭素 CO 2 や水 H 2 O とも反応しますが、いずれも表面に酸化被膜が生じます。 そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属と異なり、腐食は内部まで進行せず、灯油中で保存する必要はありません。 様々な合金の第一金属 合金の基本となる金属 や、添加剤に利用されています。 身近なところでは、航空機、自動車、船舶、農業機械、工具、精密機械、スポーツ用具、携帯電話、医療機器、宇宙船、兵器などの様々な分野で用いられています。 特に重量節約が問題となる輸送機関の機体やエンジン材料として、マグネシウム Mg は重要です。 ドイツのフォルクスワーゲン社が販売している小型自動車「ビートル」には、 20 kg のマグネシウム合金がエンジン部分に使われています。 ビートルは、週刊少年サンデーで連載されている「名探偵コナン」で登場する阿笠博士の愛車としても有名です。 4 阿笠博士は、少年探偵団の引率役として、彼らをビートルに乗せて様々な所に出かけている アルカリ土類金属の硫酸塩は水に対して難溶性であるのに対して、マグネシウム Mg の硫酸塩 MgSO 4 は水溶性です。 硫酸マグネシウム MgSO 4 は、その溶解度の高さを利用して、肥料などとして用いられます。 特に有機合成の分野では、硫酸マグネシウム MgSO 4 の無水物が、乾燥剤として汎用されます。 5 Ca OH 2 5. 4 Sr OH 2 5. 2 Ba OH 2 3. 8 ii 硫酸マグネシ ウム MgSO 4 硫酸マグネシウム七水和物 MgSO 4 ・ 7H 2 O は「エプソム塩」の別名もあり、下剤や解毒剤として、 17 世紀初頭に発見されました。 イングランドのサリー州エプソムで、干ばつの際にも牛が水を飲みたがらない泉があり、不思議に思った旅人が飲んだところ、医療上の効果が発見されたといいます。 効果は評判を呼び、「万能薬」との噂が立ち、王侯貴族も治療のために訪問する名所になりました。 ホテルや劇場が立ち並んで、寒村は大きな発見を遂げたのです。 現在でも、「水に溶かした硫酸マグネシウム七水和物 MgSO 4 ・ 7H 2 O とオリーブオイルを数回に分けて飲むと、肝臓内の毒素が体外に排出されて肝臓が洗浄される」とする民間療法が存在します。 しかし、医学的な根拠は無く、硫酸マグネシウム七水和物 MgSO 4 ・ 7H 2 O を大量に摂取することで、単に下痢を起こしているだけという説もあります。 5 硫酸マグネシウム七水和物 MgSO 4 ・ 7H 2 O は、イングランドのサリー州エプソムで発見された iii 塩化マグネシ ウム MgCl 2 塩化マ グネシウム MgCl 2 は、水溶性で潮解性があり、海水中に濃度 0. グネシウム MgCl 2 を主成分とする水溶液は、強い苦味を持つので「にがり」と呼ばれています。 市販されているにがりは、海水を煮詰めて最初に結晶化する塩化ナトリウム NaCl をまず除き、さらに加熱して結晶化した 塩化マ グネシウム MgCl 2 を遠心分離で取り出して製造しています。 海水を濃縮した本にがりの液は大変苦く、そのまま一滴舐めるだけでも、苦痛で吐き気を生じることもあるので注意が必要です。 実際に 2004 年には、神奈川県の知的障害者更生施設で、職員が誤ってにがりの原液 400 mL を飲ませ、女性入所者が死亡する事件が起こっています。 現在では、豆腐の凝固剤は 塩化マ グネシウム MgCl 2 だけでなく、硫酸カルシウム CaSO 4 、グルコノデルタラクトン、塩化カルシウム CaCl 2 、硫酸マグネシウム MgSO 4 など、様々な物質が使用されます。 しかし、にがりを用いる方が、しっかりとした豆腐ができやすいといいます。 近年では、にがりで作られた豆腐の味が見直され始め、スーパーマーケットなどでにがりを使った豆腐が容易に入手できるようになりました。 6 にがりは、豆乳を豆腐に変える凝固剤として使用される iv 二ホウ化マグネシ ウム MgB 2 マグネシウム Mg のホウ化物である二ホウ化マグネシウム MgB 2 は、 21 世紀に入って早々に、最も注目を浴びた無機化合物です。 2001 年 1 月、青山学院大学の秋光純らの研究チームが、ごくありふれた物質として市販もされていた 二ホウ化マグネシウム MgB 2 が、実は 39 K で「超伝導相 superconducting phase 」に転移することが見出されたためです。 二ホウ化マグネシウム MgB 2 は、超伝導リニア用コイルとして研究が進み、二ホウ化マグネシウム MgB 2 の超伝導コイルが開発されています。 7 二ホウ化マグネシウム MgB 2 は、 39 K で超伝導を示す v グリニャール試薬 RMgX これまでの無機化合物とは趣の異なる物質として、有機合成化学の分野で重要な有機化合物の 1 つである、「グリニャール試薬 Grignard reagent, R - MgX 」についても触れておきましょう。 これは、一般的に RMgX の化学式で表される、マグネシウム Mg を含んだ有機化合物です。 R はメチル基 - CH 3 やフェニル基 - C 6 H 5 などを表し、 X はハロゲンを表します。 この化合物は、完全に水を除去したジエチルエーテルなどの有機溶媒中で、金属マグネシウムをハロゲン化アルキルなどと反応されることにより得られます。 8 グリニャール試薬の調製 この反応は、マグネシウム Mg とアルカリ土類金属との相違点を表すものです。 すなわち、マグネシウム Mg には、ベリリウム Be ほどの共有結合性はないものの、若干の共有結合性があるのです。 このため、グリニャール試薬は、カルボニル化合物などに対して、炭素型の求核剤として作用し、カルボニル炭素との間に、新たな炭素 - 炭素共有結合を形成します。 それ故に、グリニャール試薬は、有機合成分野において、重要な試薬として用いられています。 グリ ニャール試薬を発見した功績により、フランスの化学者であるヴィクトル・グリニャールとポール・サバティエは、 1912 年にノーベル化学賞を受賞しました 詳細は を参照。 9 グリニャール試薬とカルボニル化合物の反応 4 カルシウム i カルシウム Ca 「カルシウム calcium 」は、 1808 年に イギリスの化学者であるハンフリー・デービーにより、塩化カルシウ ム CaCl 2 の融解塩電解で初めて遊離された金属です。 「カルシウム」 と聞くと、多くの人は「白色」をイメージするかもしれません。 しかし、白色なのはカルシウムの化合物であり、単体のカルシウム Ca は、銀白色で 密度 1. カルシウム Ca の語源は、石灰岩の主成分が炭酸カルシウム CaCO 3 であったことから、ラテン語の「 calx 石灰岩 」に由来します。 意外なことに、英語の「 calculate 計算する 」も同語源で、こちらは数を数えるのに用いた小石に由来します。 10 単体のカルシウム Ca は、 銀白色の 非常に軟らかい金属である 皆さんが金属のカルシウ ム Ca を 見る機会は、めったにありません。 その理由は、カルシウム Ca の単体は、空気中では非常に不安定であり、直ちに空気中の酸素 O 2 や水 H 2 O 、二酸化炭素 CO 2 などと反応して、水酸化カルシウム Ca OH 2 や炭酸カルシウム CaCO 3 などに変化するからです。 そのため、金属ベリリウムや金属マグネシウムとは異なり、金属カルシウムは、灯油中で保存する必要があります。 体重 70 kg の成人の体の中には、約 1. 05 kg のカルシウム Ca が含まれます。 脊椎動物の骨には、フッ化カルシウム CaF 2 、炭酸カルシウム CaCO 3 、 ヒドロキシアパタイト Ca 5 PO 4 3 OH などとして含まれ、下等な動物では、カルシウム Ca の部分がマグネシウム Mg である場合もあります。 これは、生物は太古の昔には海水中に多いマグネシウム Mg を用いていましたが、陸上に上がると、より強い骨格を作れるカルシウム Ca を利用し始めたためではないかと推定されています。 ii 酸化カルシウム CaO 酸化カルシウム CaO は、水 H 2 O と反応させると、発熱して水酸化カルシウム Ca OH 2 となります。 そのため、慣用名として、「生石灰 quick lime 」呼ばれます。 この反応は、身近な所でも応用されており、酸化カルシウム CaO は、乾燥剤や殺虫剤などに用いられます。 他にも、弁当を温めるために酸化カルシウム CaO と水 H 2 O を袋詰めにし、紐を引くと両者が混合して、発熱するようにしたものもあります。 この反応は、火も使わず煙も出ないため、火を使えない状況や、火に弱い素材で包装された食品を温める用途に使われることが多いです。 CaO 固 + H 2 O 液 = Ca OH 2 固 + 65. 2 kJ iii 水酸化カルシウム Ca OH 2 その一方で、この反応で生成する水酸化カルシウム Ca OH 2 は、「消 石灰 slaked lime 」と呼ばれます。 水酸化カルシウム Ca OH 2 は、塩基として酸性化した河川や土壌の中和剤として使われます。 水酸化カルシウム Ca OH 2 は、かつてグラウンドなどに白線を引くラインパウダーとして使われていました。 しかし、強塩基性を示すため、傷口や目に入ると危険であり、現在では主に炭酸カルシム CaCO 3 の粉末が使われています。 水酸化カルシウム Ca OH 2 は、水にやや溶けにくいですが、その水溶液は、「石灰水 lime water 」と呼ばれます。 水酸化カルシウム Ca OH 2 が水に溶解する反応は発熱反応であり、その溶解度は、温度の上昇とともに減少する珍しい物質です。 また、石灰水に二酸化炭素 CO 2 を吹き込むと白く濁り、この反応は、二酸化炭素 CO 2 の検出反応としてあまりにも有名です。 石灰水が白濁する理由は、生成する炭酸カルシウム CaCO 3 が、水に難溶であるためです。 「月のしずく」や「人魚の涙」とも呼ばれる真珠も、炭酸カルシウム CaCO 3 とタンパク質の層が、交互に積層されて形成される生体鉱物です。 「日本は資源が乏しい」とよくいわれますが、石灰岩だけは豊富に存在します。 観光地として有名な秋吉台や四国カルストは、石灰岩が点々と地表に露出した場所だし、地下深くの石灰岩が地下水で溶けてできた鍾乳洞も、日本各地に点在しています。 炭酸カルシウム CaCO 3 の用途も様々で、学校の教室で使われるチョークは、身近にある炭酸カルシウム CaCO 3 の塊の 1 つ です。 粉にすると研磨力があるので、歯磨き粉や消しゴムにも含まれているし、陶器の材料にもなります。 また、紙に炭酸カルシウム CaCO 3 を漉き込むと、白く透けにくくなるので、製紙業にも大変重要です。 11 チョークの主成分は 炭酸カルシウム CaCO 3 であり、ホタテ貝殻や卵殻がリサイクル原料として用いられている 炭酸カルシウム CaCO 3 は、彫刻や建材にも欠かせません。 石灰の 粉を水と顔料で着色し、乾き切っていない漆喰の上に絵を描く技法は、「フレスコ画」と呼ばれます。 システィーナ礼拝堂にある、ミケランジェロの「最後の審判」が代表的な例です。 また、人類最古の芸術作品として知られるラスコー洞窟の壁画も、石灰岩の上に書かれた一種のフレスコ画です。 長年に渡って変質・摩耗しない石灰岩だからこそ、壁画は 15,000 年もの歳月を生き延びて、我々の目に触れることができました。 芸術の世界において、 炭酸カルシウム CaCO 3 が我々にもたらした恩恵は極めて大きいといえます。 12 フランスにあるラスコー洞窟は、先史時代の洞窟壁画で有名である 現在市販されているカルシウム錠剤の有効成分は、炭酸カルシウム CaCO 3 です。 実は、カ ルシウム Ca を摂取すると、犯罪発生率が下がるかもしれないという研究があります。 研究によれば、血中の鉛レベルが高いと、殺人や暴行、強盗を犯しやすいのだそうです。 特に胎児期および出生後に血中の鉛レベルが高かった子供は、 20 代前半になったときに犯罪や暴力を起こしやすくなるといいます。 カルシウム Ca の摂取量が不十分であると、鉛 Pb が脳に吸収されやすくなることが分かっています。 胎児の脳に悪影響を与える重金属には、鉛 Pb 以外にもカドミウム Cd 、マンガン Mn 、水銀 Hg など様々なものがあります。 13 市販されているカルシウム錠剤 雨が降ったあと、ブロック塀やコンクリート壁に、カタツムリがたくさん現れるところを見ることがあります。 これは、カタツムリがコンクリートに含まれるカルシウム Ca を摂 取するために集まっている現象です。 カタツムリの殻の主成分は、炭酸カルシウム CaCO 3 です。 成長とともに殻も大きくなるので、不足するカルシウム分を、コンクリートから摂取しているのです。 14 カタツムリは、殻を形成するのに必要なカルシウム Ca を摂取するために、コンクリートを食べる 炭酸カルシウム CaCO 3 は、中性の水にはほとんど溶けません。 しかし、希塩酸 HCl などの強酸性の水溶液には溶けて、二酸化炭素 CO 2 を発生します。 また、炭酸カルシウム CaCO 3 は、加熱すると酸化カルシウム CaO と二酸化炭素 CO 2 に分解します。 この反応は、酸化カルシウム CaO の工業的製法として利用されています。 さらに、このような炭酸塩の分解反応は、他のアルカリ土類金属でも起こり、熱分解が起こる温度は、原子番号の小さいものほど低いです。 15 炭酸カルシウム CaCO 3 と塩酸 HCl の反応 何より大きな 炭酸カルシウム CaCO 3 の用途は、「セメント cement 」の原料です。 炭酸カルシウム CaCO 3 が 7 〜 8 割に対し、粘土 SiO 2 やセッコウ CaSO 4 ・ 2H 2 O などを 2 〜 3 割程度の割合で加え、粉砕機で細かくします。 これを再び粉砕して得られるのが、いわゆるセメントです。 これを水で練って放置しておくと、 水和や重合により 硬化していきます。 完全に硬化したあとのセメントは、空気中の二酸化炭素 CO 2 により、炭酸カルシウム CaCO 3 となっています。 ここにあらかじめ砂や砂利を混ぜて置き、強度を増したものが、いわゆる「コンクリート concrete 」です。 16 セメントに 水 H 2 O を 加えて練ると、水和や重合が進んで硬化する セメントは自由に成形できる上、固まれば石のように固くなるので、建材として非常に優れています。 この画期的な材料が使われ始めたのは、約 9,000 年も前の石器時代に遡るというから、昔から発明家はいたのだなと思わされます。 エジプトでは、ピラミッドの建築に使われたし、中国でも、約 5,000 年前から使われています。 しかし、セメントを最も有効に利用して見せたのは、古代ローマの人々でした。 紀元前 753 年にイタリア半島中部に建国された古代ローマは、様々な変転を重ねつつ、地中海世界を制覇し、驚くべき文化の花を咲かせました。 体格にも地理的条件にも決して恵まれなかった彼らが、数々の戦いを勝ち抜き、 1,000 年以上もその国家を維持して見せたのは、まさしく世界史の奇跡という他ありません。 これを支えたのが、道路や水道、各種建造物といった、ローマのインフラ整備の力でした。 「すべての道はローマに通ず」のことわざ通り、ローマの道路整備は徹底していました。 ローマ街道の総延長は約 15 万 km と、ほぼ地球 4 周分にも及んでいます。 そのかなりの部分が、 2,000 年後の現在まで残っており、現役の自動車道路として使われているところさえあるというから、その堅牢さには驚く他ありません。 17 現在にも残るローマ街道 標準的なローマ街道は、 2 台の馬車がすれ違える幅 4 m が確保され、その両脇に幅 3 m の歩道がありました。 車道は最大深さ 2 m まで掘り下げられ、そこに三層構造の石造りの路盤が造り上げられました。 表面には、大きな分厚い石を敷き詰め、セメントでこれを固めました。 山にはトンネル、川には橋が架けられ、いずれも大型投石器などの軍事機械が通過できる規格でした。 この整備された街道のお陰で、ローマ時代の旅人は、徒歩でも 1 日 25 〜 30 km を、馬車なら 35 〜 40 km を旅することができました。 領土全体に張り巡らされたこの街道のお陰で、どこで戦乱が起きても、ローマ軍は素早く駆け付けることができました。 あの巨大な領土をわずか 30 万の兵士で守ることができたのは、この素晴らしい街道のお陰であり、堅固なセメントの威力によるものでした。 もちろん、コロッセオや大浴場をはじめとする建造物群、各地から首都へ清潔な水を運んだ水道など、ローマのインフラには、みなセメントが活用されていました。 この材料なくして、ローマ帝国の栄華はなかったのです。 v 炭酸水素カルシウム Ca HCO 3 2 水酸化カルシウム Ca OH 2 の水溶液である石灰水に、二酸化炭素 CO 2 を吹き込むと、炭酸カルシウム CaCO 3 の白色沈殿が生じます。 しかし、さらに過剰の二酸化炭素 CO 2 を吹き込むと、炭酸水素カルシウム Ca HCO 3 2 となって、水に溶けるようになります。 そして、炭酸カルシウム CaCO 3 の微粒子が、水中に分散したコロイドとなります。 18 水酸化カルシウム Ca OH 2 の反応 この反応は、鍾乳洞形成の原理となっています。 すなわち、二酸化炭素 CO 2 を含む弱酸性の雨水により、炭酸カルシウム CaCO 3 を主成分とする石灰岩が浸食され、このような浸食によって、石灰岩体の内部に多くの空洞が生じます。 そして、石灰岩中の微細な割れ目などを満たした雨水が洞窟内に滲出すると、二酸化炭素 CO 2 を含む雨水と炭酸カルシウム CaCO 3 との化学反応が可逆的であることから、洞窟内で二酸化炭素 CO 2 が抜けて、炭酸カルシウム CaCO 3 が方解石として晶出し始めます。 それが長い年月をかけて沈積して、鍾乳洞などの洞窟生成物が形成されるのです。 このようにして、鍾乳石は 200 年間で約 1 cm 成長するといわれています。 19 山口県にある秋芳洞 vi 硫酸カルシウム CaSO 4 ベリリウム Be とマグネシウム Mg 以外の第 2 族元素の硫酸塩は、水に溶けにくいです。 硫酸カルシウム CaSO 4 は、「セ ッコウ plaster 」の主成分です。 焼きセッコウは、適当な水と混ぜると、発熱しながら硬化して体積が少し増え、二水和物のセッコウになります。 この性質を利用して、硫酸カルシウム CaSO 4 は、壁の塗装や陶磁器の型、塑像やギプスに使用されます。 塩化カルシウム CaCl 2 は、乾燥剤や路面の凍結防止剤として利用されています。 ただし、塩化カルシウム CaCl 2 を乾燥剤として用いる際には、アンモニア NH 3 の乾燥には注意が必要です。 アンモニア NH 3 と反応して CaCl 2 ・ 8NH 3 を作るので、アンモニア NH 3 の乾燥には不適なのです。 塩化カルシウム CaCl 2 は、工業的には、炭酸ナトリウム Na 2 CO 3 を生成するアンモニアソーダ法の副生成物として得られます を参照。 また、実験室的には、水酸化カルシウム Ca OH 2 と希塩酸 HCl の中和反応で生成します。 アセチレン C 2 H 2 は、酸として見た場合は、水 H 2 O よりも弱い酸です。 この反応は、弱酸であるアセチレン C 2 H 2 の遊離反応とも見ることができます。 海綿動物の中には、ガラス繊維の二酸化ケイ素 SiO 2 の骨格を持つものがおり、人体における骨や歯も、物理的にはガラスなど他の材料でも作れると考えられています を参照。 脳の活動を促す働きもあり、カルシウム Ca が不足すると、イライラするなどとよくいわれることです。 骨は進化の過程で、最初は カルシウム Ca の貯蔵庫として作られ、あとから構造材になったとする説もあるくらいです。 5 ストロンチウム 「ストロンチウム strontium 」は、銀白色の軟らかいアルカリ土類金属です。 化学反応性が非常に高いため、金属ストロンチウムは灯油中に保存されます。 ストロンチウム Sr には、放射性同位体であるストロンチウム 90 Sr ストロンチウ ム 90 があります。 このストロンチウ ム 90 のせいで、世間におけるストロンチウム Sr のイメージは最悪です。 普通のストロンチウム Sr には放射能はなく、「死の灰」だといって非難されるいわれは全くないのです。 ストロンチウ ム 90 は、周期表ですぐ上にあるカルシウム Ca と化学的性質が似ているために、骨に蓄積されやすいです。 そのため、ストロンチウ ム 90 は、生物学的半減期が非常に長くなって、人体に対する毒性が非常に強くなります。 ストロンチウム Sr の用途の 1 つに、夜行塗料があります。 中には放射能を持つ塗料もあって、イメージ改善には役立たず、それどころか、ここでも妙な連想のせいで、誤解される始末です。 アルミン酸ストロンチウム SrAl 2 O 4 入りの際立って明るい塗料は、確かに暗闇でも光ります。 けれども、それはラジウム化合物入り塗料のような原子核崩壊による発光ではなく、周囲の光をよく吸収し、その後数十分ないし数時間かけて、エネルギーを光として放出しているからです。 この性質を「蓄光 phosphorescence 」といいます。 20 アルミン酸ストロンチウム SrAl 2 O 4 入りの蓄光塗料 6 バリウム i バリウム Ba 「バリウム barium 」は、銀白色の軟らかいアルカリ土類金属です。 他のアルカリ土類金属元素と類似した性質を示しますが、カルシウム Ca やストロンチウム Sr と比べると、その化学的反応性は高いです。 アルカリ土類金属としては、密度が 3. ただし、実際の金属バリウムが、他の金属と比べて特に重いという訳ではありません。 分類としては、バリウム Ba は軽金属に分類されます。 純粋な金属バリウムは重くないのに、その化合物の大半が重いのが特徴的です。 また、バリウム Ba は、歴史的に重要な発見の一翼を担った元素でもあります。 1938 年にドイツの化学者であるオット・ハーンは、ウラン U に中性子を照射すると、ウラン U よりはるかに原子番号の小さいバリウム Ba が検出されることを発見したのです。 この発見が、「原子核分裂 nuclear fission 」を証明することとなり、原子力エネルギー利用への道を開くこととなりました。 ハーンはこの功績により、 1944 年にノーベル化学賞を受賞しています。 ii 硫酸バリウム B aSO 4 バリウム化合物の用途の多くは、バリウム化合物の懸濁液の密度の大きさを利用します。 その代表例が、油井 ゆせい の掘削です。 ドリルで地面を掘削しながら、硫酸バリウム BaSO 4 の懸濁液を穴に注入していきます。 破砕した岩石屑を、それより比重が大きいこの懸濁液で浮き上がらせ、穴から取り除く訳です。 21 油井の採掘に 硫酸バリウム BaSO 4 が使われている また、硫酸バリウム BaSO 4 は、 X 線を透過させないという性質を利用して、医学検査の造影剤として利用されます。 消化管のどこを撮影するかによって、口から飲むか、肛門から注入されるかします。 この状態で X 線を使って撮影すれば、消化管のくびれや曲がりが、はっきりと見えるようになります。 22 胃の X 線造影に 硫酸バリウム BaSO 4 が使われている 自然界では、積極的に 硫酸バリウム BaSO 4 を利用している生物がいます。 例えば、チリモ科のある藻類は、幼生時に水底へ潜って捕食者から逃れるための重りとして、またある種の繊毛虫は、重力センサーとして、 硫酸バリウム BaSO 4 を体内に取り込んで利用しているといわれています。 なぜ 硫酸バリウム BaSO 4 を使うのか、はっきりとした理由は分かっていませんが、 硫酸バリウム BaSO 4 が重いこと、また地殻中に比較的多量に含まれることから、進化の過程で利用しやすかったためだと考えられています。 iii 酸化バリウム BaO 純粋な金属バリウムは、酸素ガスと反応して、酸化バリウム BaO に変化します。 この反応を利用して、金属バリウムは、酸素ガスを取り除くゲッターとして用いられます。 旧式の真空管はほとんどの場合、ガラス管の内側に銀白色の金属バリウムを蒸着させてあります。 微量の酸素ガスやその他の気体が、製造時に真空管内に残っていたり、年月とともにガラスの接合部から潜り込んだりしたとしても、金属バリウムが反応して、それを除去してくれます。 同様のバリウムゲッターは、真空を利用する各種装置や電球の中でも、酸素ガスや水蒸気を完全除去するために働いています。 23 真空管の内側には、金属バリウムが蒸着させてある しかしながら、この用途は、真空管を使わない液晶テレビやプラズマテレビの普及によって、徐々に姿を消しつつあります。 真空管が時代遅れになった今、バリウム化合物の用途の花形は、イットリウム系超伝導体 YBa 2 Cu 3 O 7 です。 これは、構成する元素の頭文字を取って、「 YBCO 」 とも呼ばれます。 液体窒素温度 77 K を超える転移温度の初めての超伝導体であり、イットリウム系超伝導体 YBa 2 Cu 3 O 7 の発見以後、超伝導の研究が盛んに行われるようになりました。
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炎色反応とは アルカリ金属やアルカリ土類金属などの塩や単体を炎の中に入れて加熱すると、各元素に特有の色を呈する反応のこと。 元素の定性分析や花火の着色などに利用される。 炎色反応の仕組み 炎の中に金属塩を入れると、炎の熱で金属原子が生じる。 原子は原子核と電子からできており、電子が原子核の周りを回っている(基底状態)。 この原子を加熱すると、電子が熱エネルギーを吸収し、外側の軌道に移る(励起状態)。 このときに電子が持つエネルギーは、吸収した熱エネルギーの分だけ大きくなる。 電子が初めの軌道よりも原子核から離れた軌道にある状態(励起状態)は不安定である。 そこで、電子は元の軌道に戻り、安定な状態(基底状態)になろうとする。 このときの余分なエネルギーが光として放出されるのである。 つまり、電子が外側の軌道にあるときと内側の軌道にあるときのエネルギー差が光として放出される。 この光の波長(色)は各元素に固有の値である。 炎色反応の光が目に見えない元素もある。 また、電子が元の軌道の2つ外の軌道にまで飛び上がることもある。 例えばナトリウムではこの場合、通常の炎色反応のときよりも大きなエネルギーを放出して元の軌道に戻ることになるため、エネルギーの大きい紫外線を発する(紫外線は目に見えない)。 バイルシュタイン試験 ロシアの化学者Friedrich Konrad Beilsteinが考案した簡単なハロゲンの検出法である。 これを再び加熱したとき、試験物質中に塩素、臭素、ヨウ素が存在すれば、緑から青の炎色反応を示す。 ただしこの反応ではフッ素の検出はできない。 ハロゲン化銅が炎の中で揮発することによって炎色反応が起こるが、フッ化銅 CuF 2は不揮発性のため、フッ素は検出できない。 この反応はごく少量の試験物質でも可能である。 コバルトガラス コバルトガラスはコバルトを含む青色の色ガラスである。 ナトリウムの炎色反応で発生する色の光をよく吸収するため、これを吸収する光学フィルターとして利用される。 ナトリウムの炎色反応は非常に強く、不純物のナトリウムが含まれていると本来観察したい炎色反応の色が見えずらくなる。 そこで、コバルトガラスを使い、ナトリウムの炎色反応の色を吸収することで、ナトリウム以外の炎色反応が観察しやすくなる。 特にカリウムの炎色反応を見るときに使われることが多い。
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