こうした事実から、 猫を酔わせる効果を持つのはもっぱら「虫こぶ」である可能性が高まりました。 ですから確実に反応を引き出したい場合は、虫こぶを粉にした「またたびパウダー」がおすすめということになります。 またたびを原料として用いた猫グッズはたくさんありますが、「実」や「枝」だとちょっと匂いを嗅いだだけでそっぽを向かれてしまう可能性があります。 またたび同様、猫に対する多幸感効果を持つイヌハッカ(キャットニップ)の場合、植物につく害虫を追い払うため「ネペタラクトン」と呼ばれる成分の生成量が増えるといいます。 またたびにおいても同様のメカニズムが働き、蕾の中に侵入したマタタビミタマバエの卵や幼虫をなんとかして追い払うため、防虫成分(猫にとっては多幸感成分)が活発に作られるのかもしれません。 またたびの安全性に関するヒントとしては、2010年にオクラホマ州立大学の調査チームが行った研究論文があります ( :)。 調査チームが1973年以降に公表されたまたたびに関する英語圏の調査報告をしらみつぶしに調べてみたところ、 またたびが猫に害を与えるという証拠は何一つ見つからなかったそうです。 そして「またたびは猫の脳にダメージを与える」という都市伝説の出どころが、ドイツの動物学者パウル・ライハウゼンが1973年のシンポジウムで述べた逸話的な報告であることを突き止めました。 大まかな内容は「大阪動物園で大型のネコ科動物にまたたび与えたところ、実験者の姿を見るやいなや、食事すら中断して檻の前に近づきまたたびの匂いを欲しがるようになった。 脳に対する何らかのダメージがあるかもしれない」といったものです。 しかしこの報告は科学的な手法に則って行われた研究論文でも何でもなく、単なる観察の結果です。 その後この逸話は10を超える様々な書籍の中で繰り返し引用されるようになり、いつしか事実として定着してしまいました。 こうした伝言ゲームの結果が「またたびは猫の脳にダメージを与える」という都市伝説だと考えられます。 ですから 現時点では、またたびが猫の脳にダメージを与えるという逸話には、少なくとも科学的な根拠がないと考えてよいでしょう。 またたびで中毒になる? 日本国内においても「またたびで中毒に陥った」とか「またたびは猫の中枢神経を麻痺させる」といった表現をネット上で非常によく目にします。 中には「またたびを摂りすぎて死んでしまった」といったものすらあるようです。 しかし誰一人として出典や医学的な証拠を明示していないことから考えると、これもライハウゼンに端を発する伝言ゲームの一部なのだと考えられます。 あるいは浮世絵に描かれた猫の姿などから想像を膨らませた結果なのかもしれません。 またたびが猫の脳に与える影響を具体的に調べてみると、「中毒に陥れる」とか「麻痺させる」と言うよりむしろ「活性化させる」とか「リラックスさせる」作用の方が強いようです。 この調査では、以下のような事実が明らかになりました ( :)。 またたびの中枢神経への影響• 呼吸数には影響を及ぼさない• 迷走神経を通じて血圧をやや低下させる• 大脳辺縁系(海馬・扁桃体)、視床下部、網様体、視床中継核、尾状核、大脳新皮質などに作用する• 海馬、視床下部、網様体において突発的な放電が時折起こる• もっぱらコリン作動性の神経細胞に作用する 突発的で不規則な電気信号の放電が脳内で起こることにより、一時的におかしな行動を取ることはあっても、「中毒に陥る」とか「麻痺する」ことはないようです。 またコリン作動性の神経細胞に作用しやすいのが本当だとすると、副交感神経に作用しやすいということですので、どちらかといえばリラックス効果を生み出している可能性の方が強いと考えられます。 呼吸数を増加させたり血圧を上昇させる作用はないようですので、「ショックで死んでしまった」といった風説は、全く別の死因をまたたびと取り違えたのかもしれません。 NEXT:またたびのあげ方 老猫にまたたびを与えたら体調不良に陥ったという話は聞きませんので、年齢制限はないと考えられます。 しかし若い猫よりも高齢の猫の方がまたたびに対するリアクションが悪くなってしまうことは確かなようです。 2016年、アメリカ・テキサス州にある「Cowboy Cat Ranch」は猫に陶酔感を引き起こすとされる代表的な4つの植物を用いて、猫のリアクションテストを行いました ( :)。 激しい反応匂いを嗅いだりなめたりすると同時に、顎や頬を擦り付けたりひっくり返ったりする行動を10秒以上継続する。 無反応最低2回のテストのうち1回も反応しない。 ずっと与え続けているとだんだんリアクションが薄くなっていくところから考えると、猫の体がそれを一番よく知っているのでしょう。 匂いを嗅がせるだけの場合は、またたびの量を増やしたところで空気中に放散される匂い物質が増えるだけですので、リアクションは強くなるものの体に対する害はそれほど無いと考えられます。 一方、「食べる」とか「なめる」という形でまたたびを与える場合は、胃腸への影響も考えなければなりません。 まずは耳かきの先ですくった程度の量から始め、猫の体調やリアクションを見ながら少しずつ増やしていくようにすれば、その猫に合った適量が見えてくるでしょう。 与え方は? 実験に用いられた植物素材• またたび学名は「Actinidia polygama」。 日本の企業「Smack」と「現代製薬」が市販している虫こぶ(虫えい果, ちゅうえいか)を乾燥して粉末状にしたもの。 イヌハッカ学名は「Nepeta cataria」で欧米では「キャットニップ」(cat nip)とも呼ばれる。 アメリカの企業「Frontier」と「Smarty Kat」が市販している葉と花を乾燥させたもの。 セイヨウカノコソウ学名は「Valeriana officinalis」。 アメリカの企業「Organic Bio Herbs」と「Frontier」が市販している根の部分。 アカバナヒョウタンボク学名は「Lonicera tatarica」。 カナダの企業「The Cat House Inc. 」が市販している木と木くず。 キャットニップの効果は接触してすぐに現れて5~15分継続し、その後しばらくの間反応しなくなるものの数分たつと再び興奮反応を示すとされています (Todd, 1963)。 調査を行ったのはメキシコ・ベラクルス州立大学のチーム ( :)。 幼齢猫(3ヶ月齢未満)20頭、若齢猫(3ヶ月以上6カ月齢未満)20頭、成猫(6ヶ月齢以上)20頭を対象とし、500mgのキャットニップに対してどのような反応を示すかを観察したところ、能動的反応と受動的反応には年齢、性別、不妊手術の有無という因子が影響を及ぼしている可能性が浮かび上がってきたと言います。 具体的には以下です。
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マタタビとは? マタタビの名前の由来は疲れた時に甘い果実を食べると「再び旅ができる」と言う意味で付けられたそうです。 キウイと同じ仲間で秋に3~4cmの実がなります。 果実は先がとがった長いだ円形です。 花が咲く時期は、葉の半分位は白い色に変わります。 なので遠くからでも目立つので分かりやすいです。 マタタビと言えば、猫を虜にするイメージがとても強いように思います。 マタタビは木や葉や実の全部が猫に効果があります。 マタタビは「マタタビラクトン」と言う成分によって、猫の脳の神経が麻痺して味ではなく匂いで酔った状態になるのです。 人には酔うという効果はありませんが、ビタミンがとても豊富で、お風呂に入れると疲労回復、神経痛を和らげるといった効果があるようです。 名前 マタタビ 呼び名 木天寥(もくてんりよう)夏海(なつうめ) 学名 Actinidiapolygama 分類 マタタビ科マタタビ属 旬の時期 6月~7月 採れる場所 山地 食べ方 味噌漬け 塩漬け 天ぷら またたび酒 似ている山菜 サルナシ マタタビの採り方 黄緑色の実の部分が収穫可能ですので、付け根をナイフやハサミで摘み取ります。 葉の部分を採取する場合は比較的若い葉を選んで摘み取りましょう。 若葉の方が、香りも強く柔らかいため食用に適しています。 マタタビの下処理・食べ方 お茶などで飲む場合は若芽や葉は洗ってから陰干にします。 陰干しにした後に天日で干し、乾燥した葉を軽く揉みます。 玄米を炒り、揉んだまたたびの葉を入れて炒ると、マタタビ玄米茶の完成です。 こうばしい香りを楽しめます。 実の部分はそのままでは非常に辛く、食べられないため、味噌漬けたり、塩漬けにします。 逆に辛さを利用するという手段もあります。 わさびに似た辛さですので、新芽をすり鉢で潰して、わさびの変わりに刺身につけて食べたり少し硬くなった芽は、天ぷらにすると美味しいです。
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マタタビラクトンは 人間にも効果あり そんなマタタビラクトンだが、実は猫だけでなく人間にも「血行促進」や「疲労回復」などの効果があるとされている。 その理由について藤井教授は「男性の精液や女性の子宮から分泌されるホルモンと似ているからではないか」と考察する。 「1982年に、その発見でノーベル医学生理学賞も受賞しているのが、『プロスタグランジン』という物質です。 プロスタグランジンは男性の精液から発見され、前立腺から分泌されると考えられています。 どのような働きをするのか長く解明されていなかったのですが、ここ20年くらいで生理のときに子宮を収縮させる作用があることが分かり、今では陣痛促進剤として使われています。 また、血圧を上げたり下げたりする作用や血管拡張作用、発熱作用もあります。 じつは、この『プロスタグランジン』と『マタタビラクトン』は構造の一部が似ているのです」 ちなみに、北日本ではマタタビはお茶として嗜まれており、飲むと血行がよくなるとして、「食べる温泉」とも言われている。 確かに血管拡張作用のあるプロスタグランジンの効能と似ているようだ。 「動物や人間の細胞には、アレロケミカルを含め、さまざまな物質をキャッチするポケット、いわゆる受容体があります。 構造が似ていると、この受容体がキャッチして身体に信号を送り、似たような作用を及ぼすことは十分にあり得ます。 あくまでも私の想像で、まだ研究で明らかにはなっていませんが、『プロスタグランジン』と『マタタビラクトン』という物質の構造が似ていることは、マタタビが人間に与える影響を考えるうえで興味があります」 マタタビラクトンが人間に与える影響は、はっきりとは明らかにはなっていないようだが、血行促進のほかにも鎮痛効果や強精効果、さらに疲労回復にも効果があるとされている。 マタタビラクトンは水に溶けにくいため、摂取するにはマタタビに熱水を掛けて成分を抽出し、お茶として飲むといいという。 なぜマタタビラクトンが猫や人間といった特有の個体にだけ作用するのかなど、まだ良くわからないことの多い模様。 いずれにしても、マタタビが生存するうえで獲得したアレロケミカルが、好影響を持っているのは間違いなさそうだ。
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