「対策の成功」が独り歩きしてしまった危機感 「専門家会議は、これまで『見解』という形で意見を述べていました。 それが、今回は『提言』となりました。 これは、具体的に政府に対して意見を伝えたかったというところです」(岡部所長) 北海道では、2月中旬から下旬にかけて感染者が急増したことから、知事によって緊急事態宣言が出された。 政府からも同時期に、「1〜2週間が瀬戸際」という表現で対策の強化が訴えられていた。 19日の専門会議では、緊急事態宣言に伴う北海道の一連の対応によって、 感染者の爆発的な増加を防ぐことができたとしている。 また、北海道を除く地域で実施されたイベント自粛をはじめとした複数の対策も、総合的に見るとある程度効果的だったと判断された。 専門家会議座長、国立感染症研究所所長の脇田隆字氏。 撮影:三ツ村崇志 今後の対策の方針について、3月19日の専門家会議の会見では、 これまでの対策を継続していくことが発表された。 しかし、岡部所長によると、当初、専門家会議では2つの方針が議論されていたという。 1つは、 対策を強化することを視点に置きながらも、今までと同じように医療機関のパンクを防ぎながら対応する方針。 もう1つは、2月末からの一連の対策の効果を踏まえて、 さらに強い対応を取り、徹底的に新型コロナウイルスを抑え込もうという方針だ。 「少なくとも、現状から対応をぐっと緩めるという考えは私たちにはありませんでした」(岡部所長) 今、危険度が高いのは都市部 3月25日の緊急会見で、オーバーシュートの重大局面にあると注意喚起する小池百合子都知事。 撮影:三ツ村崇志 3月19日の専門家会議では、東京や大阪といった都心部で 感染者とのリンクを追えない(感染源の分からない)患者の割合が増えてきたことが指摘されている。 「かなりハラハラしている状況です。 感染源が分からない感染者は、本来、濃厚接触者を調べた先にいるはずです。 それが調べ切れなくなりつつあります。 今は、濃厚接触者を早急に見つけ出すことが求められるのですが、それにはものすごい労力がかかります。 まだ諦めるには早いので、専門家会議の提言では対応するための人や費用を求めました」(岡部所長、本発言は23日夜) 日本は、新型コロナウイルスへの対応の基本方針として、 クラスター(感染者集団)の早期発見などを掲げている。 感染者を調査するペースに対して、感染者の発生ペースが早くなってしまうと、クラスターを早期に発見できなくなり、気づかないうちに感染者が爆発的に増えてしまいかねない。 東京都が3月25日の緊急会見で配布した資料には、これまでに確認された感染者どうしのリンク情報(感染が確認された日付段階の情報)が記載されていた。 濃厚接触者の有無については、空欄が目立つ。 撮影:三ツ村崇志 では、問題となる感染源が分からない感染者はどの程度いるのか。 3月25日の東京都の緊急会見では、 新たに発生した41人の感染者のうち、13人の感染者の感染源が特定できていないと発表された。 3月25日20時の段階で、東京都に確認されている 感染者は全部で212人(3月26日にはさらに47人増えた)。 25日の都の緊急会見で配布された資料によると、 それぞれの感染者が確認された時点で、感染者と濃厚接触があったなどという感染の経緯を追えているは 75人に過ぎなかった。 つまり、 残り137人の感染者は、感染が確認された時点で、どこから感染したのか分かっていなかったということになる。 東京都福祉保健局 健康安全部感染症対策課の担当者は、 「感染が確認された時には感染源が分かっていない場合でも、その後、保健所の調査で感染経路が確認されている例もあります」 と話すが、「現段階で、どの程度感染経路の把握が進んだのか?」というBusiness Insider Japanからの質問に対して具体的な回答はなかった(個人情報の保護などが理由)。 なお、一時期感染者が増えていた愛知県では、3月26日の段階で報告されていた 感染者157人中、感染の経緯が分かっているのは137人。 感染者の急増が懸念されていた北海道でも、 感染者168人中、少なくとも 93人は感染の経緯が把握できていた(3月26日段階の各自治体の資料を参照)。 感染者が多いとされている他の都道府県と比べても、やはり東京都内では感染の実態を掴みきれていないという印象は否めない。 都内の感染状況・危機意識を正確に判断するためにも、感染経路に関する情報の透明性が求められる。 感染源の分からない患者が、すでに判明している感染者から感染していたのなら不安は多少軽減できる。 しかし、 もしそれぞれバラバラの感染源から感染していた場合は、その背後に、さらに多くの感染者がいる可能性が否定できなくなる。 ロックダウンを防ぐためにできる数少ない取り組み 3月25日以降、東京ではロックダウンの懸念から、一部では食品の買い占めなどが起きている。 現状では生産も物流も止まっていない。 通常通りの購買行動をとればよいだけだ。 撮影:三ツ村崇志 今後、感染源の特定できない感染者が増え続ければ、都心部で爆発的な感染者の増加「オーバーシュート」が発生し、 ロックダウンといった強い措置を取らざるを得なくなる。 「感染症を抑え込むことを科学的に考えるなら、『1カ月間、すべての人は自宅待機』などとするのが一番簡単な対策です。 1カ月経てば、検査方法もアップデートされる。 治療薬の臨床試験も進み、事情はずいぶん変わるでしょう」(岡部所長) ただし、多くの人を1カ月家に閉じこめるという戦略をどこまで実施できるのかは未知数だ。 ロックダウンを実施すると、経済的に大きく疲弊してしまうことも課題であり、さらに人の心理・精神状態にも問題が出てくる可能性が高い。 だからこそ日本はこれまで、なんとかロックダウンにならないようにこらえ、しのぐ戦略をとってきた。 この3つの条件が重なるような場所では、新型コロナウイルスの感染が拡大しやすいと考えられている。 こうした場所は避けるよう、自分の行動を見直してほしい。 出典:東京都 専門家会議は、感染の拡大を防ぐために、3つの条件 「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で発話や発声をする密接場面」が重なっている状況を避けるよう行動することが重要だと、何度も強調してきた。 当然、少なくとも何らかの症状がある人は、3つの条件が重なっていない場所であっても、外出や人との接触を控えるべきだろう。 これらは、今後感染の拡大を抑えるために、私たち一人ひとりができる数少ない対策であり、最も重要な取り組みでもある。 オーバーシュートが発生すると若者からの重症者も 3月26日の渋谷スクランブル交差点。 相変わらず人はそれなりに多い。 撮影:三田理紗子 基本的に、新型コロナウイルスに感染しても、 8割の患者は軽症で済む。 これは、このウイルスと戦う上で大きなアドバンテージである一方、症状がなかったり軽かったりする人の間で、気が付かないうちに感染が広がる可能性も考えられるという意味で、やっかいな性質でもある。 とりわけ若い世代は高齢者に比べて活動範囲が広いため、軽症・無症状のうちに知らぬ間に感染を広げる役割を担ってしまいがちだ。 専門家会議から若者に対して「お願い」という形で、感染が広がりやすい3つの条件が重なる場を避けるよう注意喚起されているのはそのためだ。 また、若者は軽症で済むことが多いといっても、もしオーバーシュートが生じれば、感染者の増加に応じて、若者の重症例や死亡例も必ず増えてしまうことが想定される。 「若者自体のリスクは低い。 ただし、 低いだけであってリスクがないわけではない」(岡部所長) 実際、海外では、すでに20代の患者が死亡する事例が報告されている。 また日本でも、2月には北海道で感染が確認された20代の女性が、一時的に人工呼吸器を使う重篤な状態に陥っていた例も確認されている(女性はその後回復)。
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東京都は16日、新型コロナウイルスの感染者を新たに149人確認したと発表した。 このうち、感染経路が不明か調査中の人は約7割の103人に上る。 都内の累計の感染者数は2595人となった。 また都は同日、新たに3人の死亡が確認されたと発表した。 都内の死者は計56人。 都によると、看護師や入院患者の集団感染が確認されていた都立墨東病院(東京・墨田)で、新たに看護師ら職員4人の感染を確認した。 同病院に関係する感染者は計11人となった。 このうち、入院患者1人の死亡も判明した。 都内で16日に感染が確認された149人のうち、年代別では30代の34人が最多。 40代以下は88人だった。 都では11日に1日あたりで最も多い197人の感染を確認。 14日には161人、15日は127人だった。 都の担当者は「一時よりも人数は減っているが、安心はできない。 今後も引き続き、外出の自粛徹底をお願いしたい」と話していた。
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2020年04月14日 都立墨東病院の1病棟において、新型コロナウイルスの感染が確認された患者が複数発生しましたので、御報告いたします。 2 経過等 (1)経過 患者A ・3月下旬に当該病棟に入院し、4月初旬に当該病棟から退院 ・同月中旬に呼吸困難の症状があり再入院し、PCR検査の結果、本日「陽性」が判明 ・現在の症状は重症である。 患者B ・4月初旬に当該病棟に入院 ・入院中に発熱あり、CTで肺炎像を確認。 PCR検査の結果、本日「陽性」が判明 ・現在の症状は中等症である。 (2)現在判明している事実 ・当該病棟内に、4月中旬に発熱した患者Cが、現在、個室で経過を観察。 本日、PCR検査を実施。 現時点では、その他の患者に感染を疑わせる症状は見られない。 ・陽性となった患者と本日から14日以内に接触した職員は、全部で42名である(医師4名、看護職員33名、臨床検査技師1名、放射線技師3名、事務1名)。 このうち3名の当該病棟に勤務している職員が発熱症状を申し出ている(うち1名は現在解熱)。 現時点では、その他の職員には症状は見られない。 ・職員は、患者の診療や処置を実施する際はサージカルマスクの着用及び手指消毒等の標準予防策を実施していた。 ・当該病棟を3月下旬に退院した患者Dが、4月初旬に発熱し感染症の専用病棟に再入院。 PCR検査で4月9日に「陽性」が判明。 また、当該病棟で業務に従事した委託職員Eも4月初旬に発熱があり、PCR検査で同日に「陽性」が判明している。 患者D及び委託職員Eについて、所管保健所の指導等も踏まえて他の患者及び職員との接触状況を確認したところ、発症以後の接触はなく、この時点では自宅待機等の対応を行うべき対象者はいなかった。 ・今回も所管保健所に指導を仰ぎながら調査を行っているが、陽性が判明した患者間での濃厚接触等の接点は見られず、現時点では感染ルートは不明である。 3 対応状況 ・陽性が判明した患者A及び患者Bは、感染症の専用病棟に入院し管理を行っている。 ・当該病棟に入院中の他の患者に説明を行い、継続して健康観察を行う。 ・当該病棟退院から14日以内の患者には、電話で連絡をし、症状があった場合には病院に連絡するよう伝えている。 ・所管保健所の指導により、接触のある職員42名についてPCR検査を実施し、陽性患者との接触から14日間の自宅待機を行う。 ・病棟の手すり、ドアノブ等の高頻度接触面の消毒を毎日行っている。 ・引き続きサージカルマスクの着用及び手指消毒等の標準予防策を徹底する。 4 今後の診療体制について ・9日から当該病棟への新規入院・院内他の病棟からの転入を制限している。 また、この制限は、現在入院中の患者が当該病棟に入院している間、継続する。 ・外来及び当該病棟以外の病棟への入院については、保健所の指導及び当院感染症専門医の助言等を踏まえて検討したところ、陽性となった患者A及び患者Bが発症以後に、外来及び他の病棟の患者及び職員との接触が確認されていないことから、通常どおり診療を継続する。
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