仮にそのような性質が存在するのであれば、それを実数の公理として加えることにより、本当の意味での「実数の公理系」が完成します。 以下ではそのような性質について考察します。 有理数の稠密性 有理数について簡単に復習しましょう。 つまり、約分したときに同じ数になる有理数どうしを区別せず、それらを同一の有理数とみなすということです。 有理数は数直線を用いて視覚的に表現できます。 この点を原点と呼びます。 図:有理数と数直線 約分したときに同じ数になる有理数を同一の有理数とみなすとき、こうして得られる数直線上のそれぞれの点には有理数の座標が1つずつ対応しています。 つまり、数直線上の異なる点には異なる有理数がそれぞれ対応し、逆に、異なる有理数には数直線上の異なる点がそれぞれ対応するということです。 有理数の座標が与えられた点を有理点と呼ぶこととします。 したがって、数直線上には有理点が隙間なく並んでいるはずです。 このことを指して、有理点は数直線上に 稠密(dense)に分布していると言います。 以上のことを代数的に確認することもできます。 これは、どんなに近い2つの有理点の間にも別の有理点があることを示唆しています。 数直線上には有理点がびっしりと詰まっているということです。 言い換えると、どんなに近い2つの有理数の間にも別の有理数が存在します。 古代ギリシアにおいて、ピタゴラスは無理数が存在することを証明しました。 数直線上には有理点がびっしりと詰まっていることを先に指摘しましたが、任意の2つの有理点の間に無理点が必ず存在するということは、有理点だけでは数直線は隙間だらけだということになります。 その隙間を埋めているのが無理点です。 以下ではこのことを デデキントの切断(Dedekind cut)と呼ばれる概念を用いて厳密に表現します。 図においてそれぞれの目盛りは有理点を表しています。 このことを以下で厳密に確認しましょう。 つまり、実数という概念は有理数の切断から定義できるということです。 つまり、実数を座標とする点は数直線上に連続に分布しており、その意味において実数の間には隙間が存在しません。 公理主義的実数論では、先の命題を実数を特徴づける公理として採用します。 これを 連続性の公理(axiom of continuity)や 完備性の公理(completeness axiom)などと呼びます。 次回は実数の連続性の公理を別の命題として表現します。
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さて、今回は【集合論】についてのお話、第1回。 突然ですが【点と線】。 芥川賞作家・松本清張先生の作品に同名のミステリー小説がありますが…… 数学の世界にも【点と線】にまつわるミステリーがあります。 まず【点】についてですが、数学で扱うこの【点】、実は大きさを持たないのです。 この事実は【ユークリッドの原論】にまでさかのぼる事が出来るのですが、今回、そこまで深くは踏み込みません。 でもそれじゃぁ、図形の勉強をしようとしてもワケわからないし(そもそも図を描く意味がないので) 図形として【点】を表示する時は、大きさを持たせて描く事になるのです。 とりあえず 【点は大きさがない】 という事だけ覚えておいて下さい。 さて、お次は【線】。 「線とは何ですか?」と聞かれた場合、みなさんは何と答えるでしょう? 【線】とは【点】の【集まり】である このように答える人、私の経験上、けっこう多いです。 異なる2つの点が与えられた時 その2点を通る直線を1本ひく事が出来ます。 直線とは両端がなく、無限に続く真っ直ぐな図形の事ですが、今回は このように両端が存在する、いわゆる【線分】という形を考えてみましょう。 上の図は【線分AB】と言います。 この時、この線分には【長さ】が存在しますよね。 例えば 線分ABの【長さ】が5になるとしましょう。 さて、ここで1つのミステリーに遭遇するんです。 もし「線とは点の集まりである」としたならば、大きさを持たないハズの点を集めたところで、大きさ、すなわち長さなんて出来ないはずです。 仮に点を1億個集めても、やはり大きさはゼロ。 ではもっともっと遙かに多い、無数の点を集めたら? 確かに直線(線分含む)には、無数の点があります。 しかし 【大きさ0】の点を集めたところで、【長さ】(大きさ)が出来るハズがない いや、無数にあるなら【大きさ】が出来る どちらが正しいのでしょうか? 実際のところ、線分には長さが存在するので後者が正しいような気もします。 しかし点を集めて線が出来たというならば 大きさを持たないものでも、無数にあれば大きさが出来る? という話になるわけで、そこが1つ、数学的ミステリーとなるわけです。 線には無数の点がある。 言い換えると【無限個】の点があるという言い方になります。 この【無限】という概念は非常にやっかいで、時に直感的でない結果が現れる事があるのです。 例えば中学校で習う、循環小数の話を。 9999……】と、小数点以下に無限に9が続く数と、【1】はどちらが大きいでしょう? 0. 9999…… < 1 と思う人もいるでしょうが不正解。 正解は 0. 9999…… = 1 です。 何故かというと x = 0. 10x = 9. x=0. 9999…… でしたから 0. 9999…… = 1 というわけです。 このように【無限】が絡むと、直感的に【おや?】と思うような事が起こりえるのです。 一昔 ( ひとむかし )前の数学界ではこの【無限】を 曖昧 ( あいまい )に扱った時代もあり、それが大論争のきっかけとなる事もしばしば。 有名どころでいうと、ニュートンやライプニッツの創始した【微積分】における【無限小】の概念も大論争を巻き起こした1つの事例です(その話は【微分積分】のところでしたいと思います)。 話を戻します。 大きさを持たない点を無限個集めたら、大きさが出来る? この疑問に答を与えたのが【カントール】や【デデキント】など19世紀後半から20世紀初頭に活躍した数学者達になります。 【デデキント】は自らの生み出した【デデキント・カット】(デデキントの切断)と呼ばれる手法で【実数の連続性】を示し、【カントール】は自然数が無限にあるという【無限】と、実数が無限にあるという【無限】では、その度合いが違う事を示しました。 ところがそう単純な話ではないんですね。 自然数 1,2,3,4,…… 偶 数 2,4,6,8,…… 「自然数と偶数、どちらが多い?」と聞かれた場合、専門的に数学を学んでないと「自然数が多い」と答える人がほとんどでしょう。 だって、自然数の中に偶数が全て含まれているのですから。 ところが数学の世界では、自然数と偶数は同じ数だけある。 正確に言うと、集合としての【濃度】が等しいという言い方になります。 ちなみに自然数と整数、自然数と有理数も同じ数だけある(同じ【濃度】となる)のです。 それが何故かについては、後半語りますので。 自然数と整数は同じ数だけあり(同じ濃度であり)、自然数と有理数も同じ数だけある(同じ濃度である)。 そこまできたら自然数と実数も……となりそうですが、不思議な事に自然数と実数はそうならないんですよね。 こと【実数】になると一気にその個数が跳ね上がります(濃度が違う)。 ここらへんの話も、後半していきますので。 【無限】が絡むと、直感的でない結果が多々得られる という事なんですね。 集合を構成している1つ1つのものを【要素】と言います。 無限個の要素を持つ集合について、深く研究したのが集合論の創始者【カントール】。 19世紀の後半、カントールは【集合論】、そして【無限】という概念を深く研究し、後の数学界に大きな影響を与える事になります。 数学においては、どの集合をベースにして話を進めるのかは大事な話。 例えば高校数学では【有理数の範囲で因数分解しなさい】とか【実数の範囲で因数分解しなさい】、あるいは【複素数の範囲で因数分解しなさい】といった問題が出題される事もあります。 カントールは自然数や実数の集合について、驚くべきいくつかの事実を証明しました。 しかしどうしてもある1つの問題だけは解決できず、そのまま亡くなってしまいます。 【連続体仮説】 後にヒルベルトやゲーデルらがのカントールの意志を引き継ぎ、彼の死後45年にして、コーエンが連続体仮説について解決を与えます。 しかし…… コーエンの示した結論は、カントールや多くの数学者の予想に反する結果となります。 また、カントールが【連続体仮説】の問題に直面するまでに、【対角線論法】などの画期的なアイディアが使われるのですが…… そのアイディアは数学界を大きく揺るがす【ゲーデルの不完全性定理】にまで繋がっていきます。 そしてそれこそが、【連続体仮説】の意外な結末を導く事になるのです。 集合論を巡る議論の中、カントールは精神を病み、晩年は精神病院で過ごすことになります。 そして退院する事無く、亡くなってしまいました。 連続体仮説がどのようにして生まれ、そして意外ともいえる結末はどんなものだったのか? カントールは何故、精神病院で生涯の幕を閉じたのか? この章では、そういう話をしていきます。 後半、ちょっと難しい話をしてしまいましたが、難しそうな所はスルーして下さい。 それでは…… 今宵のドラマティックな数学の世界は 【集合論】 その世界を覗いてみましょう。 コーシーやラメがフェルマーの最終定理の証明に挑戦した際、虚数を含む素因数分解で一意性が成り立たない事をクンマーに指摘され、2人は最終定理の証明を諦めた経緯があります。 クンマーはその証明の穴を補うため、理想数 ideale complexe Zahl なるものを考案。 後にデデキントがイデアル(ideal)の概念を生み出しました。 【イデアル】は、プラトンの【イデア】が語源です。 これらの話は、【数A:整数論】でやる予定です。
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この記事は の付録です. なおその8と9は前提で話が進みます. さて前回は連結性を定義したのでした. その最後に中間値の定理において,結局 区間の連結性が本質であるということがわかりました. 従って,今回はそれについて調べていきましょう. Th Rは連結である. 前回の連結性で気づいた方もいるかもしれませんが, 分割の定義が非常に 切断に似ています. デデキントカットを忘れてしまった方は,動画その3またはPDFを参照してください. 従って,これを示すには一番良い表現なので,こちらを用いましょう. すなわち,Rの任意の切断はかならず, Aに最大値が存在するか,Bに最小値が存在するかの一方のみが成立することを背理法によって示します. これは本編で触れましたが,Rは順序体であるので,両方に最大値と最小値が存在することはありません. 従って,どちらにも存在しないと仮定して,矛盾を導くという方針で行きましょう. では,maxAとminBが存在しないような切断が存在すると仮定しましょう. このとき, が成り立ちます. すなわち,Aは開集合になります. 実際,最大値の性質から,もしAに最大値が存在するなら こうなるはずですので, Aに最大値が存在しないということは,Aのすべての元はこれの否定を満たします. 同様にして,Bにも最小値がないことからBが開集合であることがわかるので, 連結性に矛盾が生じたので,これで良いことになります. 次に逆を示します. つまり,実数の連続性を仮定して,連結性を導きます. 後半の表現としては通常の実数の連続性を使いましょう. つまり, 空でない上に有界な集合は上限をもつあれです. 背理法により示します. つまり,Rが連結でないと仮定して矛盾を見つけます. さて,連結でないと仮定したのですから,分割が存在します. すなわち, となるようなものが存在します. ここで,二つの開集合が互いに素である事から, となります. ここで, であるとします. 逆の関係であれば役割を入れ替えれば良いです. 従って,実数の連続性から, が存在します. すなわち, となります. 従って, となります. 従って,上と同じようにすると, が成り立ち,これは分割の定義に矛盾するので,結局連結であることがわかりました. さて,ここから次も成り立ちます. Cor Rの区間はすべて連結. 実際は指数関数や,三角関数は定義もしていないし,連続性もしらべてませんが,そこらへんはいずれやると思うので勘弁してください. ところで証明にて,分割の開集合は実は閉集合になると述べましたが, 連結な空間では,閉集合かつ開集合となるのは限られます. 最後にそれを示しましょう. prop 連結な位相空間 おいて,閉集合かつ開集合となるのは,X自身か空集合に限る. というか連結でないことの否定としているわけだから当たり前だけども. 何度も背理法を使うのでうんざりしてきましたが,頑張りましょう. すなわち,Xとも空集合とも一致しないせず,閉集合かつ開集合となるようなXの部分集合Aが存在します. ここで,Aの補集合考えると, となることがわかります. ところで,この事実は意外とよく使います. この辺はちょっとしたテクニックですが,使える場面があるなら使ってみるのも良いかもしれません. 今回は少しオマケっぽい内容でしたが,これで終わります. ありがとうございました. 間違いや質問があればコメントしていただけると幸いです. 余談ですが,今回はデデキントカットのみを使ってやろうと思ったのですが,デデキントカットから連結性の証明がどうもうまくいかなかったので,断念して普通の方を使いました. 誰か思い ついた方がいたら教えてください.
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