5月物の価格が一時、マイナス圏に突入したのである。 これは市場の混乱に伴う一時的なものだが、その背景にはコロナ後の社会は、需要と供給の関係が一変するのではないかとの不安心理がある。 今回の危機が一段落した時には、従来の価格や価値の概念が大きく変わっているかもしれない。 6ドルまで下落した。 原油価格がマイナスになるというのは、これまでにあり得なかったことである。 「価格がマイナス」と聞いてもピントこない人も多いと思うが、要は原油を買ってもお金を払う必要はなく、逆にお金がもらえることを意味している。 では、なぜこのような事態に陥ってしまったのだろうか。 重要なポイントは、マイナスになった商品が、5月を期限とする先物という点である。 先物市場というのは、将来のある時点で商品を引き渡すことをあらかじめ確約した取引で、5月物の先物を購入した投資家は、5月末までその先物を保有していた場合、その商品(この場合は原油)を引き取らなければならない。 逆に5月物を売った投資家は、代金を受け取ることで商品から手離れできる。 通常、5月物の原油を購入した投資家は、それを事業会社に販売して利益を得ることになるが、5月時点でまったく原油の需要がなかった場合、誰もその原油を買ってくれなくなる。 原油は保管に莫大なコストがかかるので、持っているだけで大きな損失になってしまう。 つまり、あくまで5月に限った話だが、売れる見通しがなくなったことから、5月物を保有している投資家はお金を払ってでも引き取って欲しいと考えた。 これが「価格がマイナス」になった理由である。 当然、石油の需要が減少している理由はコロナショックだが、いくら新型コロナの感染が拡大したからといって、石油の需要が消滅するわけではない。 しかしながら急激な経済の縮小で、5月という時期に限って言えば、原油を調達しようという人がいないので保有者はもてあましてしまったという図式である。 6月が期日となっている取引を見ると、価格は暴落しているが、5月物のようなマイナス価格にはなっていない。 これまでもリーマンショックなどの危機が発生した時には、原油価格は乱高下してきた。 それにもかかわらず、なぜ今回は価格がマイナスという異常事態になったのだろうか。 その理由は、長期的なスパンでは、もはや原油は重要な資源ではなくなっているという、大きな見立てが市場に台頭しているからである。 近年、原油の採掘コストは上昇を続けており、以前のようにタダ同然で石油を掘れるという状況ではなくなっている。 一方で再生可能エネルギーのコスト低下が進み、エネルギー供給全体に占める比率も顕著に高まっている。 皮肉なことだが、中東の産油国は砂漠地帯で日射量も多いので太陽光発電のコストが低く、むしろ石油よりも安価にエネルギーを調達できる可能性も取り沙汰されている。 加えて、コロナショックが終息した後には社会のIT化が一気に進み、グローバルな調達網(サプライチェーン)が見直されるとの指摘も多い。 これまでの時代は、最もコストが安い地域から地球を半周してでも資材を調達するのが当たり前であり、人が直接各地域を行き来してビジネスに励んでいた。 こうした環境だからこそ、LCC(格安航空会社)のビジネスが発達したともいえる。 このような社会を維持するためには大量のエネルギーが必要となるわけだが、コロナ後にはビジネスのIT化や商品の地産地消化がさらに進み、エネルギーの需要は大幅に減少する可能性が高い。 そうだからといって石油の需要がなくなるわけではないが、石油がないと何もできないという従来の価値観はすでに過去のものとなりつつある。 こうした長期的な見立てが存在しているからこそ、一時的な混乱とはいえ価格がマイナス圏に突入するという異常事態が発生したと考えるべきだろう。 つまり、価格がマイナスになるという今回の混乱は、ポスト・コロナ社会の予兆と考えるべきである。 これまで繁華街やビジネス街の交差点に面しているビルの1階というのは、とてつもない賃料相場となっていた。 銀行やコンビニ、飲食チェーン店など、あらゆる業界がこぞって、この場所に店舗を構えることを望んだからである。 しかしコロナ後の社会では、銀行はさらに店舗網を縮小して サービスのIT化を進め、外食産業はデリバリー対応を強化するだろう。 すでに店舗過剰が指摘されているコンビニも、同じ水準の店舗網を維持するとは思えない。 そうなると、極めて高額の家賃を支払ってでも、交差点に面した場所に店舗を構えるという企業は少なくなり、こうした物件の相場は大きく崩れる可能性が高い。 この話はたかが不動産の賃料とは考えないでほしい。 不動産というのは私たちの生活に密接に関わっており、あるカテゴリーの賃料相場が変化すると、不動産の利用方法が大きく変わり、最終的には私たちのライフスタイルにも影響を与えるのだ。 社会のIT化が高度に進んだ場合、不動産がどのように利用されるのか現時点で詳細に予測するのは不可能だが、思ってもみなかった変化が起こる可能性は高いと筆者は考える。 今、休業要請で大変な状態となっているイベント関係も、コロナがいったん落ち着けば営業を再開するだろう。 だが中長期的に感染症は事業における大きなリスク要因であり、この業界の基本的な価値観も大きく変わる可能性が高い。 イベントの在り方が変化すれば、当然、私たちのライフスタイルにも変化が訪れるはずだ。 このほか、テレワークの普及でスーツの需要がさらに減ったり、訪問営業という手法や、長時間の通勤も消滅に向けて動き始めるかもしれない。 一連の話は、社会のIT化によって起こる変化と言われてきたものばかりだが、コロナをきっかけに一気に加速する可能性が高まっている。 少なくとも、従来の「価値」や「価格」の概念はいったん、リセットするくらいの覚悟が必要だろう。 加谷珪一(かや けいいち/経済評論家).
次の
WTIの5月限月の原油先物がマイナス37. 63ドルで取引(大引けの価格)されたようです。 マイナスと聞いてびっくりされた方が多いかと思います。 売ったのにお金を払う状態です。 普通は嫌ですよね(笑) 今回はマイナス価格とは何かご説明します。 63 per barrel. Meanwhile international benchmark, Brent crude, which has already rolled to the June contract, traded 8. 58 per barrel. 原油先物とは? 原油先物(Futures を買って先物の満期まで保有すると、その価格で買ったことが保証されます。 買った後に上がったら得しますし、下がったら損です。 当たり前ですね(笑)。 そして先物の売り手が買い手に、事前に指定された規格の原油を届けます。 変なものを届けられても困るので品質が決まっていて、受け渡す場所も決まっています。 これを現物(Spot 受け渡し決済と呼びます。 今回注目していたのはWTI原油先物の5月限月ですが、先物は4月21日(アメリカ東部時間)が最終取引日なんですね。 NYMEX CMEグループ で取引されている原油先物は「現物決済」なので、実際に受け渡しする日よりも事前に先物を終了させないと準備できないからです。 売り手が「モノ」を持ってないなら、この間にいくらでも良いのでどこかで買ってきて、「先物の買い手」に渡さないといけません。 これは受け渡し場所がアメリカのオクラホマ州のクッシングという場所です。 9000万バレルの貯蔵タンクがあり、パイプラインも周辺の州へつながっています。 現物を持っている商社が、価格リスクをヘッジするために先物をショートしたりします。 商品先物の理論価格 商品(コモディティー)の先物はコンビニエンス・イールドという保管料が発生します。 コンビニとは、英語で「便利」という意味ですよね?イールドは利回りの英語です。 先物価格の方が高くなります。 先物と現物が同じ価格だったらどちらを買いますか?現物の原油は保管するのにお金がかかります。 なので先物の方が有利なので高いです。 また金利が高いほど先物が高いのも同じ論理で、先物は証拠金取引なので買うにはお金はあまり必要ありませんが、現物は大きなお金を準備しないといけません。 銀行から借り入れてるとすると金利がかかりますね。 通常は保管コストを現物の人に負担してもらっているので先物価格の方が高いのですが、今回は先物を持ってる人が、突然現物を渡されて莫大な保管コストを負担する可能性が上がったので価格が安くなったのですね。 デリバティブの価格はマイナスになり得る さて、ここで権利義務関係をおさらいしましょう。 売り手と買い手の両方が権利を持っている金融商品は存在しません。 買い手が権利行使しようとしたら、売り手が嫌だと拒否できたら、何のための権利なのか分からないですね。 今回は原油の先物なのでお互いが義務を負っています。 これがくせ者です。 原油先物を売った人が原油を買い手に受け渡しをするのです。 モノをもらえるので、別に困らないじゃないかと思いますが、必ずしもそうではありません。 実生活でも、動かないような中古車を自分の家の庭に配送されたら嫌ですよね?価値が無いような資産は、処分するお金をもらわないと引き取りたくありません。 別の例では、リゾートマンションや中古のセスナは異常なほど安く買えます。 ただし、毎月高額の維持費を取られます。 なので維持費が払えない売り手はいくらでも安く手放そうとするのですね。 これを同じことが今回原油先物で起こりました。 クッシングのオイルタンクが満タンになってしまったのです。 ニュースでは120%までタンクに貯蔵していて、もうこれ以上入らないといった状況だったのでしょう。 パイプラインでオクラホマ州周辺の州に油送しようとも、そこまでの需要がないそうです。 売り手は持ってる原油をクッシングのタンクに入れようにも、入れられません。 何とかしなければいけないので、買い手にただでも良いので売りたいという状況になりました。 そして原油先物はお金を払って引き取ってもらう、マイナス価格になったのです。 売り手のオイルがクッシングの外にあるなら、そこで受け渡しをすればよいが、法外な保管料を取られそう。 不透明なのでマイナスでも売ってしまえという売り手が現れたのかと思います。 ただ大引けが-37. 63はいくら何でも冷静さに欠けているかと。 原油の輸送量は場所にもよりますが、20ドルくらいのイメージなので-37. 63ドルで買って輸送すれば儲かる気もしてます。 引けの価格で証拠金を清算するので、評価損益が大きくでて投資家によっては追証になる可能性があります。 これは投機的な売り手が、買い手を追証に追い込むロングスクイーズという状況な気もしています。 今日、アメリカ東部時間4月21日が原油5月満期の最終取引日ですが、恐らく、プロはOTC(相対)で先物が満期を迎えた後も取引しているかと思います。 プロ同士の戦いはまだまだ続きますが、状況が一段落したら市場は冷静になるのかもしれません。 原油先物がマイナスの価格になるという歴史的瞬間を垣間見たことはずっと記憶に残るでしょう。
次の
原油市場は大暴落をした後、産油国の減産の思惑などからいったんは上昇。 今後はどうなるのか。 鍵を握っているのは、サウジアラビアでもロシアでもない(写真:AP/アフロ) ここ1カ月以上激しい値動きが続いている原油市場が、また新たな局面を迎えることになりそうだ。 原油相場の指標となっている4月2日のWTI原油価格の値動きは激しかった。 すなわち、NY時間の朝方発表された新規失業保険申請件数が600万件を大きく超える内容となり、雇用の落ち込みや景気減速に対する懸念が改めて強まる中で、原油先物価格は1バレル=21ドルを割り込むまで値を下げていた。 アメリカがサウジとロシア両国に減産を呼びかけていたのはそれまでにも伝えられていたから、減産で合意するとの見通しということ自体はそれほどのサプライズではなかったのかもしれない。 だが、トランプ大統領は減産規模について「1000万バレルから場合によっては1500万バレルに上る」との見方を示したことが、上昇に拍車を掛けた可能性が高い。 価格反転の可能性はないのか? この発言に関してはまだ確認が取れた話ではなく、大統領お得意の見切り発車の可能性が高く、ホワイトハウスのスタッフをまたまた慌てさせたようだ。 それでも、その後サウジが週明けの6日に「OPEC(石油輸出国機構)プラス」の緊急総会を開催する意向(その後暫定的に9日開催に延期)を示したほか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領も「大幅な減産は可能」との見方を示したこともあって、3日には改めて買いが加速。 一時は28ドル台後半まで値を伸ばす展開となった。 新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な景気の減速、都市のロックダウンによる生産活動の停止や人々の移動がなくなったことによる航空機需要の激減などで、今後もエネルギー需要の落ち込みは相当なものになると予想されている。 これが長期的に相場の大きな重石となるのは避けられないだろう。 それでも、商品の価格は需要と供給のバランスで決まるものだ。 需要が大幅に減少しても 、それ以上に生産の削減が進むのではあれば需給は引き締まり、価格が上昇に転じる可能性は十分に高い。
次の