家の中には禰豆子達の弟たちが眠っていた。 まだ朝早いもんね。 外ではコーンコーンと薪を斬る音が響いていた。 「炭治郎さんも外?」 「うん。 今が炭の売り時だから」 「そう…あとで何か温かいものでも差し入れしようかな」 「お兄ちゃん喜ぶと思うよ。 何渡すの?」 「懐炉…はあんまり意味ないよね。 うーん、やっぱり食べ物だよねぇ」 「だったらお茶を用意してくれない?お兄ちゃんが戻ってきたら出してあげるの!」 「私が勝手に用意してもいいのかな?」 「いいのいいの!」 そう言いながら私は惣菜を台所に置いた。 隣で禰豆子が湯呑を用意していた。 「あら、木蓮。 来てたの」 「あっ、お邪魔してます、葵枝おばさん!」 「炭治郎なら外よ」 「はい!戻ってきたらお茶をお出ししようと思っていて」 「そう、用意してくれたのね。 ありがとう」 「お母さん!木蓮が惣菜持ってきてくれたの。 芋の煮付けだよ」 「そうだったの。 ちょっと待ってね、木蓮」 そう言っておばさんは食材と包丁を用意するとパパッと簡単な惣菜を作り上げた。 「これ、お母さんに渡してちょうだい。 いつもお世話になってますって」 「いいんですか!ありがとうございます!」 受け取っている最中、外から聞こえていた木を打つ音が消えた。 禰豆子が肩を寄せてくる。 「ふふ、お兄ちゃん来るよ!」 「う、うん…!」 からからと戸が開いて炭治郎さんが家の中に入ってきた。 「木蓮。 いらっしゃい。 いつも朝早いなぁ」 「た、炭治郎さん。 おはようございます!」 「おはよう」 「あの、あの、寒い中お疲れ様です、お茶を用意させていただきました!」 「ありがとう」 「もう、木蓮ったらあんまり大きい声出してると弟たちが起きちゃうよ」 「ご、ごめん…!」 私はどぎまぎしながら炭治郎さんにお茶を出す。 炭治郎さんはにこにこ笑いながらちゃぶ台の前に座ってお茶を飲んだ。 「暖かくて身に沁みる。 ありがとう、木蓮」 「良かった…!」 私はこの優しくてかっこいい竈門炭治郎さんの許嫁だ。 [newpage] 親同士に決められた許嫁。 親からこの人と将来結婚するんだよ、と言われて私はそのまま炭治郎さんに見惚れた。 良くも悪くも私は一途で両親に従順だった。 私はすぐに炭治郎さんの事を好きになった。 炭治郎さんは恋愛ごとに疎くてあまりそういう気持ちを向けられた事はない。 おじさんが亡くなって炭治郎さんは竈門家の大黒柱になったのだ。 そりゃぁ恋愛なんかにかまけてる暇はないよね。 そして将来私はあの家へ嫁ぐ。 禰豆子は可愛くていい子だし兄弟たちもみんな可愛くていい子だし私は楽しみで仕方がないのだ。 少しでも炭治郎さんの印象に残りたくて、私は許嫁なんだって周りに知らしめたくて、こうして足繁く山の上にある竈門家に通っていた。 お茶を飲み干した炭治郎さんはそのまま朝餉を頂いた。 私もご一緒させてもらって、なんだかもう竈門家の一員になったみたいだ! 愛する炭治郎さんの隣で頂く朝餉、とても美味しい…。 堪能している間に炭治郎さんはサッサと朝餉を頂いてしまっていそいそと立ち上がる。 大変だ!私も早く食べないと! 「た、炭治郎さんっ!私にも何かお手伝いすることありませんか?」 「うん?木蓮は家の仕事はいいのか?」 「はい!お母さんから炭治郎さんのお家のお手伝いをしておいでって言われているので!」 「そうか。 それじゃぁ母さんの手伝いを頼めるかな」 「お任せください!!」 炭治郎さんにお願いされちゃった! よぉし、木蓮頑張ります!! 葵枝おばさんは一人で子供たちを育てているとっても強い女性だ。 こんな人が未来の姑さんなんてとっても素敵です、本当に。 葵枝おばさんのお手伝いをしていると弟たちも起きてみんな私に遊べとせがみ最終的に子守をする事になった。 「こんこん小山の 子うさぎは なぜにお目目が 赤うござる 小さい時に母様が 赤い木の実を 食べたゆえ それでお目目が 赤うござる」 葵枝おばさんから教わった子守唄をうたってやるとみんなが耳を澄ませて私の声を聞く。 「木蓮ねえちゃんは歌うまいよな」 「そう?」 「いいなーお兄ちゃんは!こんな可愛いお嫁さん貰えるなんて~」 「ふふ、ありがとう花子」 そうしていると炭治郎さんが籠を持って山を下ろうとしている事に気が付いた。 「炭治郎さん」 「あぁ、木蓮。 炭を売ってくるよ」 「それでしたら私もご一緒します!」 「そう?そうだな、ついでに木蓮を家まで送ろう」 私と炭治郎さんは家族のみんなに挨拶をして一緒に山を下った。 こうして炭治郎さんの隣に立って歩いているだけで私は心臓は高鳴って仕方がない。 ちら、と炭治郎さんを盗み見ては恥ずかしくなって顔を背けてしまう。 町まで下れば炭治郎さんはあっという間に人々に囲まれる。 大人気で私も鼻が高い。 「おや、木蓮も一緒かい」 「こりゃ将来おしどり夫婦だな!」 「そ、そんな…おしどり夫婦だなんて!」 「あはは、そうなれるといいなぁ木蓮」 た、炭治郎さんが私と夫婦になれるといいって!? ………聞き間違い? いやいや! ボッと赤くなって何も考えられなくなる。 「は、はい…はい…炭治郎さんと、おしどり夫婦…」 「木蓮?大丈夫か!?顔が真っ赤だ!」 「木蓮は本当に照れ屋なんだから!」 わはははと町中に笑い声が響き渡る。 ああもう本当に恥ずかしい! 炭治郎さんは次々と炭を売って行き、最終的には籠の中は空になってしまった。 「も、もう遅いですし炭治郎さん、良ければうちに泊まって行きませんかっ?」 「うん?そうだなぁ…でもみんなが家で待っているし…」 「炭治郎、悪い事は言わねェ。 泊めてもらいな」 「三郎爺さん」 炭治郎さんは少し迷っていたけど三郎さんの言葉もありうちに泊まる事になった。 「三郎爺さんがそんな事を」 「そんな訳で、今夜はお世話になります」 「おい!炭十郎んとこの子が泊まるってよ!」 「はいはいはい!いらっしゃい、炭治郎!木蓮も雪を落としてさっさと家に入りな」 「たんじろうだー!」 「たんじろうたんじろうー!」 うちにも兄弟はたくさんいて、私は長女である。 「炭治郎義兄さん、外は寒かったでしょう。 さぁ、温まってください」 「お母さん手伝うよ」 私と双子の弟は少し身体が弱くていつも病に伏せている。 お医者様からは日に当たると死んでしまうとまで言われているくらいだ。 ここ数年前から調子が良いみたいで、家の中だけ自由に動き回っているようだ。 起きてて平気なのか?」 「はい。 炭治郎義兄さんもお変わりないようで」 「今日はお世話になるよ」 「久々の宿泊だから木蓮も喜びます」 「ははは」 もう、燈木ったら! 炭治郎さんが愛想笑いしてるじゃない! 炭治郎さんを困らせるような事話さないでほしい! [newpage] みんなで食事を済ませ風呂も済ませたところで、私と炭治郎さんは二人っきりにさせられた。 お父さんもお母さんも本当に世話焼きなんだから! ………本当にありがとうございます。 「…いつも思うけど燈木は不思議な匂いがするなぁ」 「不思議な匂い?」 「うん。 そして体調も良くなって…それから…………の、匂いも…一体何があったんだろう…?」 私は首を傾げる。 なんて言ったんだろう? 炭治郎さんは鼻が利く。 匂いなんて言われてもわからないしなぁ。 「でも…燈木が元気になってくれて本当に嬉しいです。 いつも遊びまわる弟たちを羨ましそうに見てましたから。 双子なのに私だけ元気で、燈木にとってそれも羨ましかったかもしれません…未だに日が落ちてからしか外には出歩けませんけど」 「………」 「炭治郎さん?」 「あ、いや。 ………その…」 「?」 「燈木が夜に外を出歩いてるのか?」 「はい、そうみたいです。 みんな寝静まった頃に、たまにいなくなってるんです」 「………」 「…あ、あの…炭治郎さん…?」 「燈木がまさかそんな…ううん、なんでもない」 「え…?」 「明日は朝一番に山を登るから早く寝よう!おやすみ、木蓮!」 「あ、お、おやすみなさい…?」 隣に炭治郎さんがいるっていうのに眠れると思ってるの…? 案の定炭治郎さんの横顔を眺めていた私は全く眠れなかった。 [newpage] ひたひたと足音が聞こえた。 今何時だろう…早く寝ないといけないっていうのに私はずっと炭治郎さんの寝顔に夢中だった。 厠に行こうかな…。 そう思ってもぞもぞと布団から這い出る。 そういえば足音が聞こえたんだった。 この時間に歩いてると言えばお父さんか燈木だ。 でも明かりはついていなかったしどの部屋を覗いても起きている人はいなかった。 燈木の布団だけ空になっていたから、燈木が外に行ったことがわかった。 「もう、こんな真冬に薄着で外に出ると燈木なんかすぐに風邪ひいて倒れちゃうよ」 私は暖かい上着を羽織って、もう一枚手に取って外へ飛び出した。 雪道に足跡が続いていた。 山の方へ向かっている。 私はそのまま山の方へ歩いた。 燈木は町中に佇んでいた。 「燈木…」 「木蓮。 まだ起きてたのかい」 「隣に炭治郎さんがいるんだよ、寝れると思ってる?」 「…ふふ、そうだね。 木蓮は炭治郎義兄さんが大好きだから」 「…あれ?燈木、手…汚れてるの?血?」 私は慌てて燈木に駆け寄って上着を着せた。 「どこか怪我したの?」 「…少しだけ咳をしたときに吐血したみたいだ」 「こんな寒い中外に出るからだよ!………家に帰って温まろう?」 「…うん」 燈木の手を引いて歩き出す。 燈木の手は冷え切っていてとても冷たかった。 「木蓮…」 「うん?」 「…炭治郎義兄さんの家族に何かあったら、悲しいよね…」 「え?急にどうしたの?」 「…炭十郎さんのときだって、木蓮すごく泣いてたじゃないか」 「そりゃぁ…そうだよ。 燈木、炭十郎さんの話はやめて。 …泣いちゃうから」 「…泣き虫だなぁ、木蓮は」 燈木は歩きながら小さくごめんね、と呟いた。 この時私は、燈木は炭十郎さんの話をしたことを謝っているのだと思った。 「いいよ!そのかわり、今日は暖かくして寝る事!わかった?」 「…うん」 二人で手を繋いで家へと帰る。 燈木と笑いながら話をしたのはこの日が最後だった。 [newpage] 家に戻った私は深夜と言う事もあり布団に入ったらすぐに寝入ってしまった。 勿体ない事をしてしまった…炭治郎さんがせっかく隣にいたというのに。 いやいや、ずっと眺めてたけど眺め足りないんだよ…。 浅い眠りについていた私は隣でごそごそする音に目が覚めた。 「ん…」 「あ、おはよう木蓮。 ごめん、起こしちゃったか?」 「…炭治郎さん…たっ、炭治郎さん!」 「シー!まだみんな寝てると思うから…」 「え…」 「夜が明けたから帰るよ。 今から山を登ればみんなが起きる頃には家に着くから」 「そんな、朝餉も食べて行ってください」 「父さんがいなくなってから、俺が竈門家の長男だ。 家にいなくちゃ」 「…そう、そうですね…」 炭治郎さんはすごく大人びてる。 私の一つ上の13歳だ。 おじさんが亡くなってからずっと炭治郎さんは強い責任感を持って生きているようだった。 さすが炭治郎さんはかっこいい。 「あの、でしたらお菓子をお持ちください」 そう言って私は昨日の内に焼いておいた焼き菓子を炭治郎さんに持たせた。 「ありがとう木蓮!弟たちが喜ぶよ!」 「は、はい…あの、炭治郎さんも…いえ、なんでもありません…」 炭治郎さんに一番に食べてもらいたかったけど兄弟想いの炭治郎さんの事だからわかってた。 わかってましたよ! 炭治郎さんは家を出る前にジッと燈木の部屋の襖を眺めた。 「どうかされましたか?」 「…いや、昨日よりも…燈木、何かあったか?」 「えっと…?」 「…その、血の匂いが…」 「あ…!昨日燈木、また夜に出歩いてたんです。 そしたら少し血を吐いたと言っていて。 それのせいかもしれません」 「…そ、そうか…それなら…いや、そういう問題でもないんだけど…」 「後でお世話しますから、炭治郎さんはお気をつけて」 「うん。 また」 炭治郎さんは手を振って帰って行った。 いつ見ても素敵です、炭治郎さん。 一家の大黒柱として強い責任感を持ち、長男み溢れる兄弟想いな炭治郎さん…あんな人が私の旦那様に…本当にいつ考えても夢みたい…。 ハッ! 呆けている場合じゃない、燈木のお世話しないと! 急いで湯を沸かして燈木の部屋の襖を開けた。 「燈木、大丈夫?…あれ?」 布団はもぬけの殻だった。 なんで?どうして? 燈木? 「…厠?」 桶を置いて厠へと急ぐ。 とんとんと扉を叩いても返事はなくて、厠で気を失っていたら大変だと思い申し訳ないが扉を開けたが、誰もいなかった。 「燈木がいない!」 日を浴びると死んじゃうって言われてるのに今外にいるって言うの!? 私は急いでお父さんとお母さんを叩き起こした。 一家総出で燈木を探す事になったが、結局どれだけ探しても見つからなかった。 「今日は曇っていて日が出ていないから大丈夫だと信じよう」 「燈木…ごめんなさい、私が昨日炭治郎さんと一緒に寝たから…」 「何を言ってるんだ木蓮。 用意したのは俺と母さんだ、気に病むんじゃない」 「………」 「………木蓮…」 「…そうだ!もしかしたら炭治郎さんのところに行ってるかもしれない!私見てくる!」 「あんまり遅くなるんじゃないよ」 「うん!」 私は上着を羽織って家から飛び出した。 お願い燈木、お願いだから炭治郎さんのお家にいて。 どうか無事でいて!.
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attention ・逆行 ・年齢操作 ・設定捏造あり ・炭治郎愛され ・自分の性癖にしか考慮しておりません! ・なんでも許せる方向け!!まじでなんでも許せる方向け!! 誤字脱字などありましたらこっそり教えて頂けると喜びます。 [newpage] ーーあと一撃、あと一振り、あと数分、……あと何秒だ うごけ!動け!!やつを足止めするんだ!!あと数分で日の出なのにっ!! 「うぅ、…ッハ!…はぁ…はぁー…ゆめ、か?」 炭治郎はしばらくボーッと天井を見つめた後、ゆっくりと身体を起こした。 全身から吹き出た汗が服に纏わりつき気持ち悪い。 出来れば着替えたいところだが…。 「一体ここは…どこなんだろうか…」 くまなく辺りを見渡すが知らない部屋だ。 どうやら今回は蝶屋敷に運ばれたわけではないらしい。 熱でも出しているのだろうか、身体がやけに熱い。 額からポタっと流れた汗を手で拭い、はたっと炭治郎は動きを止め目を見開いた。 今しがた汗を拭ったばかりの手を見つめ、開いたり閉じたりを繰り返す。 「…うぇ、あ…てだ…。 手がある!」 どういうことだろうか…、右腕は無惨との戦いで喰われたはずだ。 食いちぎられ目の前で無情に喰われた痛みを未だに鮮明に覚えているのに。 なのに俺には今、右腕がある。 もしや俺はーーー鬼になってしまったのだろうか…。 そうだ無惨はどうなった?! 炭治郎が未だ熱を持ちふらつく身体で立ち上がったその時、ガタッと音を立て襖が開く。 水の入った桶とタオルを持った女性は立ち上がる炭治郎を視界に入れると慌てた様子で駆け寄ってきた。 「炭治郎、寝てなくちゃダメじゃない!まぁびっしょりね。 先に着替えましょう」 そう言いながら手早く炭治郎を着替えさせたその女性をまじまじと見つめ、炭治郎は口を開いた。 「ね、ねずこか?」 「やぁねー何を言ってるの?」 女性は首を傾げながらも炭治郎を再び布団に寝かせ額に冷たい水で絞ったタオルをのせる。 「いい?今は休息が必要なのよ。 寝ちゃいなさい」 頭を優しく撫でられていく内に段々と意識が遠のいていく。 禰󠄀豆子じゃないのか…驚くほど妹に瓜二つのこの女性は禰󠄀豆子じゃないのか。 確かにこの声は禰󠄀豆子の声じゃないけれど。 じゃあ、誰なんだろうか…。 炭治郎は優しい声を聴きながら深い眠りに落ちた。 駄目だな、善逸の真似をしてみようかと思ったんだけどあのテンションはやっぱり俺には無理だ。 あの時、仲間を多く失いながらも鬼舞辻無惨を追い詰め、あと少しで日が登り奴が滅びるか、俺の命が尽きるかの瀬戸際……そこからの記憶がない。 善逸や伊之助は大丈夫だっただろうか…。 あの時鬼になったのかと思っていたがそれもどうやら違うらしい。 どうやら俺はーー時を遡ったみたいだ。 時が遡ったというのは些か語弊があるかもしれない。 なぜならあの頃と状況が違うところが多々見受けられるからだ。 もしかしたここは同じ世界の別次元なのかもしれない。 まず俺は随分早くに産まれてしまったみたいで、今の俺は父さんの父さん。 俺にとっては爺ちゃんだった人の兄の息子として生まれた。 そういえばあの頃には母さんの爺ちゃんと婆ちゃんの話も、父ちゃんの爺ちゃんと婆ちゃんの話も聞いたことなかったな。 さらに竈門家は代々炭売りの家系だったはずなのだけど、こちらでは代々神職の家系であるらしい。 あと不思議な事にこの時代でも『炭治郎』と名付けられ姿形もすべてそのままだ。 ただ額の痣だけはやっぱり無くなっていた。 記憶が戻ったのはあの高熱を出した5歳の時だ。 意識を失った後再び目覚めた時には、この時代の俺の記憶と25年生きた炭治郎の記憶がぐちゃぐちゃになって襲いかかってきて暫くは相当取り乱して暴れたらしいんだけど……その時の記憶もあんまり覚えてはいない。 やっと落ち着き状況を冷静に理解したのはそれから3日後の事だった。 そういえばあの禰󠄀豆子に似た女性は俺の母さんだったみたいだ。 この時代では父さんはまだ赤ちゃんで母さんに出会ってはいない。 この世界ではもしかしたら出会わないのかもしれない。 でも今度はどんな状況だろうと無惨に簡単に殺させたりしない。 例え俺が家族じゃなかったとしても今度は絶対に守ってみせる。 強くなる。 誰も死なせたりしないように強く強く。 なんて言ってみたものの……剣の稽古をする時間がない!全くないっ!! この時代の竈門家は実に裕福な家庭だ。 宮司の父に。 医者の母。 町で医者をしていた母に一目惚れした父が猛アタックの末結ばれたらしく、結婚したら医者をやめて家に入るはずの母を、父が医者をしている姿が好きだからという理由で母は医者を続けている。 そして両親にはまだ炭治郎以外に子供がいない。 なので炭治郎には剣を振るうよりも山程覚えなければいけないことがあった。 特に今年は長老をやっていた祖父が亡くなり、毎年ヒノカミ様に舞を捧げる役目を担っていた父が一部の祖父の仕事を引き継いだ為、来年の年初めは炭治郎が神楽を捧げ舞う事になったのだ。 そんな炭治郎の一日は6時に起きることから始まる。 7時から舞の稽古、9時から勉学、12時にお昼を挟み、13時から医者である母の手伝いをしたり、宮司である父から神職の仕事を教わる。 15時に休憩を挟んで、16時から18時まではまた舞の稽古がある。 それが終われば夕食をとり風呂に入る。 毎日の疲れからか20時には布団の中で爆睡していた。 炭治郎は13歳にして中々ハードな生活をしているのである。 「つかれたなーー…」 そう呟きながら炭治郎は地面に寝転がった。 今日も父と舞の稽古だった。 前世といっていいのかわからないが、あの頃父はすでに布団から起き上がるのも難しくて、実際に舞を全て教えてもらい舞ったのは今回が初めてだ。 神楽一つ舞うのがこんなにも大変な事だとは思わなかった。 呼吸法がわかっていても今の小さな体では扱いきれてないように思える。 そういえば火仕事を家業としてないないこの世界の竈門家がなぜヒノカミ様を祀っているのかというと、どうやら先々代の当主の弟が火仕事をしていたらしくその際にヒノカミ様を祀るために踊っていた風習が今でも受け継がれている。 因みに聞いたところによるとその人の息子は鬼狩りをしていたみたいだ。 旭日が象られた耳飾りはその息子さんが付けていた物みたいで、共に受け継がれ今は父の耳に飾られている。 年初めの舞を奉納する際に炭治郎に譲られる事になっている。 それにしても……と炭治郎は自分の今いる場所を改めて見渡す。 かつて山の中で住んでいた家の10倍はあるであろう屋敷と神宮。 そして広大な庭。 蝶屋敷より大きいかもしれない…。 神職の一族とあってか、その敷地内の一画に神楽を舞う為の施設『神楽殿』まで構えている。 今、炭治郎がいる場所がまさにそうだ。 毎年ここに村人を集めヒノカミ様への舞を奉納している。 炭治郎は一度伸びをすると「よいしょっ」と立ち上がる。 「よし、もう一度最初からやってみるかー。 そして風呂に入ろう!」と呟いたその時どこからか白檀のような清涼で高貴な匂いが鼻をくすぐり、炭治郎はキョロキョロと視線を動かす。 周囲に見当たらずあれ?と首を傾げていると不意に部屋中に心地よい声色が響いた。 「やぁ炭治郎、年明けが楽しみだね」 炭治郎が声のする方に顔を向けると、正面に位置する階段に腰をかけた産屋敷耀哉が微笑んで此方を見つめていた。 いつの間にそこにいたんだ…、と耀哉を見つめ返していると、ふと善逸の顔が頭に浮かぶ。 もし善逸がここにいたら飛んで叫んで驚いて泣いて怒りそうだなと、想像してクスッと笑いが漏れた。 今世では俺は、お館様もとい産屋敷家とは親密な関係にある。 俺というか俺の両親が耀哉の両親と仲がいいというだけだけど。 生まれた時からお館様とはよく一緒にいて、んー…兄弟?兄妹?姉妹?……のように育った。 この時代の産屋敷家の人達も呪いの影響で病弱であった。 もちろんお館様も。 だから最近までお館様は魔除けの風習として女の子の格好をして過ごしていたんだけど、何故だが俺も同じように女の子の格好をさせられていた。 俺は10歳でやめたけど。 今でも元気だった俺にあれは必要だったのか疑問ではある…。 それから色々あってお館様の両親が亡くなって耀哉が産屋敷家当主になったり、それで喧嘩して仲直りしたり、今度は俺の祖父が亡くなって産屋敷家を巻き込んでのドタバタがあったりと……そんなことがあって今は親友、いや家族だと思っている。 「炭治郎」 炭治郎が物思いにふけっていると今度は強く名前を呼ばれた。 声色に少し不満が混じっていたのは気のせいだろうか…。 なんて思いつつ、その声の主に意識を戻すといつのまに距離を詰めてきたのか、顔の僅か数センチまで自身の顔を寄せた耀哉がいて炭治郎は飛び上がって驚く。 「っうわぁ」 炭治郎のその態度が不満だったのか耀哉が一瞬ムッとした顔をした気がして、自然と口角が上がる。 あの頃のお館様は病気の事もあってあまり表情を変える方ではなかったけど、今のお館様は呪いの進行が遅く、まだ元気な事もあってか年相応な色んな表情を見せてくれるので、それだけ気を許してくれているのかと嬉しく思う。 お館様の呪いも早くなんとか出来ないかと思っているのだけど、残念な事に炭治郎に医学の知識はない。 今は少しずつだけど空いた時間に医者の母から医学を習っている状態だった。 「大丈夫かい?なんだか今日は随分ぼんやりしているよ」 「いや……なんでもないんだ」 「私には話せないことなんだね」 「……うん。 今はまだダメだ」 「そうか…。 じゃあ炭治郎が話してくれるまで待っているとしよう」 「ありがとう。 いつか必ず話すよ」 「いつまででも待っているよ。 でも私が死ぬまでには話して欲しいかな」 耀哉は顔に笑みをのせそう告げた。 「冗談でもそういう事言うなっ!!」 耀哉の言葉に、一瞬お館様が亡くなったあの日の光景が頭を過り炭治郎は炎のような激しい怒りと悲しみに襲われた。 「……すまない、冗談がすぎたね」 「………」 笑えない冗談がすぎる!!謝られたってすぐには許さないぞ。 「炭治郎」 「………」 暫く反省すればいいんだ。 「もう言わないから許して欲しい。 君に無視されるのは辛い」 「………」 「もしかしてもう私の顔も見たくないのかい?……そうか、それなら仕方ない。 もう二度と会わないと約束するよ」 許さな……は? 「ちょ、え?!待ってくれ、ごめん調子に乗りすぎた!」 「うん、いいよ。 私も二度と会わないつもりなど更々ないからね」 「……なんだこれ、めちゃくちゃ腹立つ。 手のひらの上で転がされた気分だ」 そう言って憤る炭治郎に耀哉は「お相子だよ」と言って笑った。 「で、お館様は何しに来たんです?」 気を取り直して炭治郎が問いかけると、耀哉の顔色が変わる。 「炭治郎!……やめてほしい。 君には、君だけには名前で呼んでほしいんだ。 …もう私の名前を呼んでくれる人はいなくなってしまったから」 今まで見たこともないような悲しげな顔でそんなこと言われたら、もうお館様だなんて呼べなくなってしまう。 小さな頃は名前で呼んでいたが、最近は耀哉が産屋敷家当主になると同時に炭治郎は『お館様』と呼び名を変えていた。 「…ごめん耀哉」 「いや、こちらこそすまない炭治郎。 取り乱してしまった」 「……………」 「……………」 「……………」 「………っく」 顔を見合わせ2人で黙り込んでいると、突然口を押さえこんで震えだした耀哉に炭治郎は慌てて駆け寄った。 「か、耀哉!!発作か?!すぐ医者を呼んでくるから待っててくれ」 そう言って走り出そうとした炭治郎の手を耀哉がパシリと掴む。 「おい、離してくれないと医者を呼べっ」 「…っく、くく。 …あっはは」 「ないって。 ……はぁー、まぁ発作じゃないならよかった」 笑い続ける耀哉に次第に炭治郎の顔はチベットギツネのような顔になる その顔を見てさらに耀哉は笑う。 一頻り笑った耀哉は満足したように一息つくと口を開いた。 「久しぶりにこんなに笑ったよ。 余りにも君が悲惨な表情をしていたから、なんだか面白くなってしまった。 私は両親が亡くなった事はそこまで悲観していないよ。 実は今度結婚することになってね」 「それはめでたいな!」 [newpage] ・竈門家 この世界線では神職の家系。 産屋敷家とは縁が深い。 代々神職の仕事をしているが、先々代の当主の弟が火仕事をしていた。 その息子がどうやら鬼狩りをしていたらしい。 旭日が象られた耳飾りはその人から受け継がれてきた。 炭治郎の父は宮司、母は医者をしている。 ・竈門炭治郎 元日柱。 天然で人誑しのスキルを持っている。 25歳の時、鬼舞辻無惨を追い詰めるも一歩及ばず死亡したと思ったら逆行した。 しかし逆行した世界は状況が違う様子。 逆行後、産屋敷耀哉とは同じ年の幼馴染となる。 炭治郎のピアスの穴は耀哉が開けた。 15歳で再び日の呼吸法を完璧に使えるようになると、耀哉に逆行してきた事を話す。 耀哉の為に医学を学び、17歳の時に青い彼岸花から呪いの進行を抑える薬を完成させる。 青い彼岸花の場所は炭治郎しか知らない。 現在鬼から人間に戻す薬を研究中である。 18歳の時に2年分の耀哉の薬を置いて行方をくらませ20歳の時フラリと帰ってきた。 その際怒った耀哉から強制的に鬼殺隊に入れられカスガイガラスをつけられる。 嘗ての嗅覚と身体能力を取り戻した後は、無惨と互角に渡り合えるだけの力があるが『柱』にはならず『隠』に入り、後に『隠』の長になる。 隊員に色んな意味でめちゃくちゃ慕われている。 滅多に人前に姿を現さない。 ・産屋敷耀哉 優しそうに見えるが腹の底で何を考えてるかわからない黒い人。 両親が亡くなり13歳の時に産屋敷家当主、鬼殺隊の長になった。 後にあまねと結婚した。 皆からお館様と呼ばれ心酔されている。 基本的に微笑んでいるか無表情だが炭治郎の前だけでは色々な表情を見せる。 初恋は炭治郎。 あまねとは結婚前から炭治郎共有同盟を結んでいる。 15歳の時、炭治郎の事情を知り無惨が日光でしか殺せないことを知る。 17歳の時、炭治郎が開発した薬のお陰で呪いの進行が止まり徐々に回復する。 背中にケロイドの後は残っている。 全盲にはならなかったが呪いの影響で視力は落ちたため目が悪い。 一時期行方をくらませた炭治郎に怒って鬼殺隊に入隊させた。 耀哉は炭治郎を日柱にする気でいたがいつのまにか炭治郎は『隠』になってしまった。 カスガイガラス達が炭治郎に懐きすぎて最近駄々をこねるので少し困っている。 ・産屋敷あまね 本編に一切登場していない 超絶美人さん。 17歳の時に耀哉と結婚した。 耀哉とは結婚して子供をもうけたが、そこに愛はあるが恋ではない模様。 恋は耀哉に出会う前にある事で助けてもらった炭治郎に捧げている。 耀哉とは結婚する前から炭治郎共有同盟を結んでいる。 炭治郎共有同盟とは… どちらが炭治郎を手に入れても2人で分け合おう。 独り占めは無し。 炭治郎は2人をそういう目で見ていない 次の話は10年後に話が飛ぶよ.
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| | |* 俺は長男だから、欲しくても我慢。 むちゃくちゃにしたいほど欲しいあの子。 けれども叶わないから我慢していた。 それなのに......。 「あっ...... きょう、じゅろさっ... !」 あの人に抱かれているのを見てしまったから。 俺はもう我慢できない。 ぐちゃぐちゃに壊してしまいたい。 _____ はいもう題名からえっちいですね 鈴神です。 思いつきです、消すかもしれません。 ひたすらえっちい. 煉獄さんがセクハラしてるだけ.
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