文・写真:クボタプレス編集部 街をやわらかに桜が覆い、まっ赤で可愛らしいイチゴが食卓やカフェのメニューを彩る頃…… 思い浮かべると、心なしか寒さが和らいで気分も華やぐようです。 春の風物詩のひとつ・イチゴは、寒くて成長の遅い時期に甘く、今こそイチゴ狩りに絶好だとご存じでしたか。 さぬきうどんならぬご当地いちごブランド『さぬきひめ』を求めて、訪れた先は意外にも、小学校の跡地[2016年3月に約120年の歴史を閉じた旧財田上小学校]。 かつて子どもたちの運動場だった場所に建つ「がっこうのイチゴ園 財田上」では、折しもオープニングイベントが行われ、地域振興の場らしい賑わいを見せていました。 中四国クボタが立ち上げた未来型観光農園について、詳しく伺いました。 以前は校庭だった場所に建つ、広さ28a 2,800平米 の施設。 全国で加速する農業就業人口の減少が主な要因です。 農家のほとんどを占めている高齢者の離農と世代交代の難航、新規参入のハードルの高さなど、山積した問題の解決は立ち遅れています。 そこで、中四国クボタがクボタファームの香川県展開を手掛けることに。 「がっこうのイチゴ園 財田上」は、その最初の取り組みです。 かなり特殊なケースや農法でも成果を上げていますが、今回は廃校利用と聞き、驚きました。 「2016年4月にプロジェクト始動・9月には定植したいと候補地を探すも、選定に苦慮しました。 水源が遠い、井戸掘りを要する、アクセスが不便、平地でない、水はけが悪い…… ファーム開設の条件になかなか合いません。 三豊市で6つの小学校が3月をもって同時閉校になると知ったのは、そのころでした。 2015年の12月、市から企業/個人で跡地を管理または使用してくれるところはないかと公募が始まると、飛びつくように応募したんです」 以下、中四国クボタ営業担当 竹内直己さん 「がっこうのイチゴ園 財田上」の成り立ちとコンセプトについて語る、中四国クボタの竹内直己さん。 「学校の敷地は『農地』でないため、農地所有適格法人の設立・要件の遵守がなくとも、農業を営めます。 法人化、つまり別会社をつくって出資するとなれば、手続きから認可取得までの時間が余計にかかってしまい、スケジュール的に不可能です。 早い開始が重要でした。 次に、校庭を使えること。 運動場の土地はフラットで硬く、水はけもよいので、ビニールハウスの敷設に適しています。 また、旧財田上小学校の近くには道の駅があって、1日に800人ほど訪れています。 幹線道路にも通じ、アクセスに恵まれている点から、道の駅との協力で観光客を見込めるのではないかと。 「もともと施設栽培を前提に、獲得した農園の広さに見合った栽培品目を絞り込む段取りになっていて、イチゴに決まりました。 ハウス面積28a(2,800平米)のうち、栽培面積は20a(2,000平米)。 大切にしたポイントは、たくさん栽培して生産性を上げることではありません。 観光農園が目的ですから、畝の幅を110cm~120cmと広く取り、緑色のシートがあるところは、下に板を敷いてフラットな車いす専用レーンにしました【写真】。 そして、もうひとつのこだわりは、高設養液栽培です。 人生の一時代を育んだ学び舎を失った地元の皆さんの想いに寄り添い、思い出が形に残るよう『がっこうのイチゴ園 財田上』と名付け、この地域とクボタの新たな挑戦が始まりました」 閉校した小学校がビニールハウスのイチゴ園に?! 意外性の強い印象を受けますが、グラウンドは好条件の揃った土地。 農地でないため別途法人化や認可申請は不要、土質が硬く水はけに優れる、近くに道の駅がある、など。 香川ブランド『さぬきひめ』は、こんなイチゴ あまおう、とちおとめ、とよのか、女峰、ひのしずく、紅ほっぺ、ももいちご…… イチゴの品種をどれくらい挙げられますか。 各地の名産は全国約40品種も存在するそうです。 香川県代表は『さぬきひめ』。 どのような特徴のイチゴなのか気になります。 ここから先は、栽培のスペシャリストにお話を伺いました。 「香川県推奨の『さぬきひめ』を栽培しています。 甘味が強い品種の特性に加えて、糖度を高める栽培の工夫があるのでしょうか。 「温度管理のたまものです。 ところが、1日中ずっと一定にしておけばよいわけではなくて。 高温だと成長は早いですが、糖度が下がる。 今までに『早い。 短期間に成長を強いると、おいしさは損なわれやすいのです」 手間のかかる子ほどかわいい、丹精込めて育てています 葉が増えて風通しを遮られると、アブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。 手作業による適時ケアは不可欠です。 「農業経験者は揃っているものの、私も含めて皆、イチゴ栽培は初めて。 天候と色づきの関係とか、実際に経験してみないと判断しかねる状況が多々ありました。 最適な環境づくりに関して、JAや農業改良普及センターに指導を仰いだり、イチゴ農家の方と頻繁に連絡を取って状況を見ていただいたりしました。 栽培の課題は、生育タイミングに合わせた適切な手入れで、実に手作業が多いのです。 葉の数を決めて間引かないと実が小さくなりますし、風通しを遮られて害虫が発生してしまいます。 「友達や知人に差し上げているだけなんですけれど、おいしいと言われています 笑 商品では、販売用果実を道の駅と地元の洋菓子店、結婚式場に納品しているほか、加工品むけに手作りジャム店と契約して、このイチゴ園で瓶詰めを販売しています。 クボタファームの最終目標は、生産から販売までをパッケージとすることです。 「バス会社・旅行会社や観光庁などに働きかけ、バスツアーやパック旅行にイチゴ狩りのプランを提案しています。 イチゴはやはり、特別感のある果物だと思うんです。 中でもとりわけ、私たちは香川県で育成された『さぬきひめ』に強い愛着と思い入れがあります。 当日は、旧財田上小学校最後の卒業生を含む、三豊市立和光中学校の生徒さんをご招待。 「慣れ親しんだ小学校がなくなって悲しかったけれど、今日またこの場所に来て、友達とおいしくイチゴを食べました。 ありがとうございました」と楽しそうな様子でした。 イチゴ狩りでは、クボタの糖度計「フルーツセレクター」を使って、糖度の計測にチャレンジ。 摘み取ってきた果実が糖度12度以上だった生徒さんには、イチゴ園オリジナルシールをプレゼントするゲームで競い合い、盛り上がりました(集合写真は、見事獲得のシールを掲げたところ)。 このイチゴ園が、行政・地域と連携して豊かな未来を拓く一助となるよう、中四国クボタの挑戦は、これからも続きます。
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実は窪田さん、今回導入したデスクトップタイプではなく、ショルダータイプのフルーツセレクターを以前に使ったことがあるそう。 「今と同じようにギフト用のメロンの測定に使っていましたが、持ち運びができるので、私たちが使うというよりは、主に農家さんが畑で収穫時期の見極めに活用していました」。 その当時から、フルーツセレクターの測定精度の高さに注目していた窪田さん。 同じような糖度計もあるなか、「測った時のブレが非常に少ないこと。 導入前、クボタの担当者とやり取りをする中で弊社の要望に対して、スムーズな対応をしてくれた」ことが決め手となり、導入に踏み切りました。 窪田さんが、新型機に最も魅力を感じておられるのが測定スピード。 「測定スピードが格段に上がっているので、処理能力が増えたのはもちろんのこと、測定を待つストレスが軽減され、仕事がはかどります」。 今年はギフト用メロンの販売に乗り出した初年度ということもあり、1台で多いときでも1日に200玉から300玉を測定。 作業時間は、1時間から1時間半になるそうです。 「操作も以前と比べて使いやすくなり、使い勝手が良いですね。 これなら私が不在の場合でも、別のスタッフが同じように測定できます。 誰でも正確に測定できるというのは非常に大きいメリットです」。 新型機は、5. 7インチのタッチパネル付きカラー液晶を採用。 必要項目に絞った画面構成で操作性が向上し、使いやすくなりました。 メロンを傷つけることなく、糖度が測定可能。 障害果の発見にも 今回ギフト用に販売しているメロンは、糖度14度以上のもの。 「基本的にメロンは高価なものです。 果肉を切取り果汁を搾って測定するタイプの糖度計だと、どうしてもロスが出ます」。 そのため、一部のものしか切取れず、全てのメロンを測定することができません。 しかも、切取った部位により糖度が異なるため、糖度にバラツキが出ます。 一方、クボタのフルーツセレクターは、サンプル台に青果物を載せるだけで、糖度のほかに酸度や重量も測定可能。 青果物を傷つけることなく、測定できる秘密は、クボタの『近赤外分光分析技術』にあります。 その技術とは、近赤外線を活用した測定法で赤外線の一種である、近赤外光を青果物に照射し、青果物を通った近赤外光の波長(透過光)を計測し、糖度を測るというもの。 光が透過した部分の平均的な成分を測定できるので、精度の高い測定が可能です。 この技術は、クボタのKSAS対応コンバインに搭載されている、にも応用されています。 また、外観からは判別できない内部の生理障害も検知できます。 「今年の北海道の生育環境下では、まず障害果は出ないと思いますが、障害果が出る年は生育期間中、メロンにとってストレスが掛かることが多い、たとえば成長する時期が非常に寒いなどの場合に出やすいとよく言われています。 症状としては、糖分が変化してアルコール発酵し、食べたときに少し舌がピリッとすることがあります。 症状が進むと、苦味を感じたり傷んだりします。 障害果は農家さんが見て、ある程度判別できますが、100%取り除けるわけではないので、ここで怪しいものは検査して、その残りの数%をフルーツセレクターではじければ」と窪田さんは、お客様からのクレームをフルーツセレクターで、最小限に抑えたい考えです。 高級フルーツの代名詞でもあるメロン。 「私たちは仕事の中で何万個という数のメロンを扱っていますが、お客様にとってみれば、1年に1個かもしれませんし、何年かぶりに購入したのかもしれません。 手に取ったその1個が美味しくなければ、次回買っていただけないかもしれない。 ひょっとしたら、メロンを毛嫌いしてしまう原因になりかねません。 だとすれば、品質に間違いのないものをお届けして、美味しかったと喜んでいただきたい。 他の人にも贈りたい、もう一度食べたいと思っていただけることが最も重要です」。 今回、大手量販店に出荷しているギフト用のメロンは、富良野の生産者と共同で生み出した、オリジナルブランド『天果(てんか)』。 ネーミングからパッケージのデザインまで、窪田さんが手掛けています。 「富良野は立地的にメロンを作る環境として非常に素晴らしく、美味しいメロンがたくさんできます。 その美味しいメロンを、どうしたらもっとお客様に認知していただけるかを考えたとき、お客様が分かりやすい『糖度』という指標をフルーツセレクターで明確にする。 そこでまずはブランドを知ってもらって、次にまた購入していただく形を取りたいと思っています」。 フルーツセレクターで購入者の裾野を広げ、リピーターが確保できれば、商品の取扱量が増え、生産者の収益向上にもなり、産地がますます活気づいていくことにもつながります。 「今年は大手量販店と主に取引をしていましたが、糖度を測定する取組みを面白いと思ってくれている企業様がいます。 次年度は弊社でもやりたいというお話を何社かいただいており、品質や糖度をフルーツセレクターで保証する取組みに期待が高まっています」と、販路の広がりに手ごたえをつかまれている窪田さん。 旭川中央青果様の取組みに、フルーツセレクターが一役買っています。
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文・写真:クボタプレス編集部 街をやわらかに桜が覆い、まっ赤で可愛らしいイチゴが食卓やカフェのメニューを彩る頃…… 思い浮かべると、心なしか寒さが和らいで気分も華やぐようです。 春の風物詩のひとつ・イチゴは、寒くて成長の遅い時期に甘く、今こそイチゴ狩りに絶好だとご存じでしたか。 さぬきうどんならぬご当地いちごブランド『さぬきひめ』を求めて、訪れた先は意外にも、小学校の跡地[2016年3月に約120年の歴史を閉じた旧財田上小学校]。 かつて子どもたちの運動場だった場所に建つ「がっこうのイチゴ園 財田上」では、折しもオープニングイベントが行われ、地域振興の場らしい賑わいを見せていました。 中四国クボタが立ち上げた未来型観光農園について、詳しく伺いました。 以前は校庭だった場所に建つ、広さ28a 2,800平米 の施設。 全国で加速する農業就業人口の減少が主な要因です。 農家のほとんどを占めている高齢者の離農と世代交代の難航、新規参入のハードルの高さなど、山積した問題の解決は立ち遅れています。 そこで、中四国クボタがクボタファームの香川県展開を手掛けることに。 「がっこうのイチゴ園 財田上」は、その最初の取り組みです。 かなり特殊なケースや農法でも成果を上げていますが、今回は廃校利用と聞き、驚きました。 「2016年4月にプロジェクト始動・9月には定植したいと候補地を探すも、選定に苦慮しました。 水源が遠い、井戸掘りを要する、アクセスが不便、平地でない、水はけが悪い…… ファーム開設の条件になかなか合いません。 三豊市で6つの小学校が3月をもって同時閉校になると知ったのは、そのころでした。 2015年の12月、市から企業/個人で跡地を管理または使用してくれるところはないかと公募が始まると、飛びつくように応募したんです」 以下、中四国クボタ営業担当 竹内直己さん 「がっこうのイチゴ園 財田上」の成り立ちとコンセプトについて語る、中四国クボタの竹内直己さん。 「学校の敷地は『農地』でないため、農地所有適格法人の設立・要件の遵守がなくとも、農業を営めます。 法人化、つまり別会社をつくって出資するとなれば、手続きから認可取得までの時間が余計にかかってしまい、スケジュール的に不可能です。 早い開始が重要でした。 次に、校庭を使えること。 運動場の土地はフラットで硬く、水はけもよいので、ビニールハウスの敷設に適しています。 また、旧財田上小学校の近くには道の駅があって、1日に800人ほど訪れています。 幹線道路にも通じ、アクセスに恵まれている点から、道の駅との協力で観光客を見込めるのではないかと。 「もともと施設栽培を前提に、獲得した農園の広さに見合った栽培品目を絞り込む段取りになっていて、イチゴに決まりました。 ハウス面積28a(2,800平米)のうち、栽培面積は20a(2,000平米)。 大切にしたポイントは、たくさん栽培して生産性を上げることではありません。 観光農園が目的ですから、畝の幅を110cm~120cmと広く取り、緑色のシートがあるところは、下に板を敷いてフラットな車いす専用レーンにしました【写真】。 そして、もうひとつのこだわりは、高設養液栽培です。 人生の一時代を育んだ学び舎を失った地元の皆さんの想いに寄り添い、思い出が形に残るよう『がっこうのイチゴ園 財田上』と名付け、この地域とクボタの新たな挑戦が始まりました」 閉校した小学校がビニールハウスのイチゴ園に?! 意外性の強い印象を受けますが、グラウンドは好条件の揃った土地。 農地でないため別途法人化や認可申請は不要、土質が硬く水はけに優れる、近くに道の駅がある、など。 香川ブランド『さぬきひめ』は、こんなイチゴ あまおう、とちおとめ、とよのか、女峰、ひのしずく、紅ほっぺ、ももいちご…… イチゴの品種をどれくらい挙げられますか。 各地の名産は全国約40品種も存在するそうです。 香川県代表は『さぬきひめ』。 どのような特徴のイチゴなのか気になります。 ここから先は、栽培のスペシャリストにお話を伺いました。 「香川県推奨の『さぬきひめ』を栽培しています。 甘味が強い品種の特性に加えて、糖度を高める栽培の工夫があるのでしょうか。 「温度管理のたまものです。 ところが、1日中ずっと一定にしておけばよいわけではなくて。 高温だと成長は早いですが、糖度が下がる。 今までに『早い。 短期間に成長を強いると、おいしさは損なわれやすいのです」 手間のかかる子ほどかわいい、丹精込めて育てています 葉が増えて風通しを遮られると、アブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。 手作業による適時ケアは不可欠です。 「農業経験者は揃っているものの、私も含めて皆、イチゴ栽培は初めて。 天候と色づきの関係とか、実際に経験してみないと判断しかねる状況が多々ありました。 最適な環境づくりに関して、JAや農業改良普及センターに指導を仰いだり、イチゴ農家の方と頻繁に連絡を取って状況を見ていただいたりしました。 栽培の課題は、生育タイミングに合わせた適切な手入れで、実に手作業が多いのです。 葉の数を決めて間引かないと実が小さくなりますし、風通しを遮られて害虫が発生してしまいます。 「友達や知人に差し上げているだけなんですけれど、おいしいと言われています 笑 商品では、販売用果実を道の駅と地元の洋菓子店、結婚式場に納品しているほか、加工品むけに手作りジャム店と契約して、このイチゴ園で瓶詰めを販売しています。 クボタファームの最終目標は、生産から販売までをパッケージとすることです。 「バス会社・旅行会社や観光庁などに働きかけ、バスツアーやパック旅行にイチゴ狩りのプランを提案しています。 イチゴはやはり、特別感のある果物だと思うんです。 中でもとりわけ、私たちは香川県で育成された『さぬきひめ』に強い愛着と思い入れがあります。 当日は、旧財田上小学校最後の卒業生を含む、三豊市立和光中学校の生徒さんをご招待。 「慣れ親しんだ小学校がなくなって悲しかったけれど、今日またこの場所に来て、友達とおいしくイチゴを食べました。 ありがとうございました」と楽しそうな様子でした。 イチゴ狩りでは、クボタの糖度計「フルーツセレクター」を使って、糖度の計測にチャレンジ。 摘み取ってきた果実が糖度12度以上だった生徒さんには、イチゴ園オリジナルシールをプレゼントするゲームで競い合い、盛り上がりました(集合写真は、見事獲得のシールを掲げたところ)。 このイチゴ園が、行政・地域と連携して豊かな未来を拓く一助となるよう、中四国クボタの挑戦は、これからも続きます。
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