ある人間が受話器を取るなり一言、少し面倒臭そうに言葉を発する。 「Devil Must Die デビルマストダイ 」 何度か返事を返すと、メモ帳にペンを走らせ受話器を置き、コートを羽織りながら歩き出した。 「さぁて…。 仕事だ! ガレージの中にあるバイクに乗り、エンジンをかけると一人の女性が声を掛けてきた。 「あら、ネロ。 どうしたの? 」 「キリエ…。 悪いな、仕事が入った」 キリエと言う女性の問い掛けにネロと言う男性が返答すると、彼女は少し残念そうに顔を伏せた 「外界…? 多いわね、最近」 不安と心配が混ざったような目でネロを見つめた。 「この店が知られてきたってことかな。 悪魔絡みだから繁盛しない方が良いんだけど」 「…そうね。 うん」 ヘルメットとゴーグルを着けながら、軽い口調で返した。 彼の尤もな言葉に賛同しつつ、彼女は表情を曇らせる。 「気を付けてね」 ガチャ、キュカカカカカカッ! 「大丈夫だよ。 すぐに帰ってくる」 ドルンッ!! ドルンッ!!! ドッドッドッドッドッドッドッドッ! キリエに心配を掛け無いように、口調は先程と変わらないが芯の強い眼差しを向けた。 それに納得すると、バイクのアクセルを吹かしながら、もう一言だけ付け加える。 「行ってくるよ、キリエ」 その言葉に、彼女も答えた。 「行ってらっしゃい、ネロ」 … 今回の仕事は悪魔の討伐。 仕事内容はいつもと変わらないが、彼らが住んでいる《フォルトゥナ》と言う都市は、外界と離れた島であり、外に出る仕事となると船を出さなければならない。 船を降り、バイクを走らせ数時間後…、目的地に到着。 家を出たのは昼間だったが、夕日がもうすぐ沈む所まで来ていた。 「座標は…ここであってるよな…」 バイクから降りながらメモ帳の座標と地図を交互に見比べた。 辺りを見回したが、瓦礫の山と廃屋が一つあるだけ。 誰も住んでいる気配はないが、とりあえず向かってみようと、ドアノブに手を掛けようとした時、革手袋 グローブ を着けた右腕が疼いた。 すぐにそれを察知して、ドアから後方へ飛び退くと、先程まで自分がいた場所がドアごと切り刻まれる。 「ハッ…!」 (ビンゴ!! ) 笑っていた。 普通の人間なら即死していたであろう状況にも関わらず。 「C'mon 来いよ! 」 大剣《レッドクィーン》の柄に手を掛けながら挑発の言葉を放つ。 すると、廃屋の中からズタ袋を着たカカシの手足に大鎌が取り付いた様な化け物が数体出て来た。 「なんだよ。 当たりは当たりだけどザコの掃き溜めか」 (報酬は期待出来そうにないな) 拍子抜けした様に言った瞬間、悪魔《スケアクロウ》が一斉にネロに飛び掛かる。 大抵の人間ならば恐怖で動けない様な状況でも、彼は臆する事なく自分もスケアクロウの方に突っ込んで行った。 大鎌と剣がぶつかりあうが、即座にその大鎌を押し切りつつ、剣の柄を捻る。 瞬間、剣が炎を噴き出しながら2体のスケアクロウを斬り裂いた。 剣の推進力に身を任せながら、奥にいた悪魔に間合いを詰めると、剣を逆手で持ち替えながら柄を捻り、悪魔を殲滅していく…。 大剣《レッドクイーン》に搭載された《イクシード》と言う機能は、剣の柄をバイクのアクセルの様に捻る事で剣から推進剤を噴き出し、斬撃を上げるものである。 だが、この《レッドクイーン》はネロ専用に改造を施しており、並の人間では扱えない程に凄まじい推進力を持っていた。 「Crash 壊れろ! 」 最後の一体になったスケアクロウに斬撃を浴びせ、剣を背負う。 「これで終わりか? 」 腕を組み、何もない空間に一言呟く。 だが、廃屋の中に潜んでいたスケアクロウが奇襲を仕掛けようと、飛びかかるが、 「Be gone 失せな! 」 既に分かっていたようにその左手には愛銃の《ブルーローズ》が握られており、引き金を引いた瞬間、縦に並んだ二つの銃口から弾丸が発砲された。 スケアクロウは無惨にも弾丸に貫かれ、辺りにズタ袋と白濁した体液をぶちまけ消滅。 左手で数回銃を回転させ、腰のホルスターに納めると、悪魔が湧いて出て来た廃屋に目を向け… 今度は包帯を巻き、グローブを着けた右腕に目を向ける。 「これで本当に終わり、…みたいだな」 一歩、また一歩と廃屋に近づき、中に入ってみる。 予想通り中は荒れ果てており、人が住める状態ではなかった。 何も無いことに納得し、外に出ようとした時…ふと足を止めた。 振り返ると棚の一ヶ所から赤い光が見えた。 「……? 」 僅かにだが、自分の右腕もそれに呼応する様に疼く…。 呼び寄せられるかのように《それ》に近づき、右手で手に取ってみた。 大きさは掌に乗るくらいの赤い宝石。 「これは…? ) 廃屋の隙間から射し込む斜陽に翳す。 「綺麗だ」。 そう思う。 「……もらっていいのかな…? 」 (だとしたら儲け物なんだけ…) キィイイイイイン…ッ! (ど) 「ッッ!!? 」 [newpage] コートのポケットに仕舞おうとした。 その瞬間だ。 宝石が振動を始め、それに伴い光を放ち出す。 「うぁ…!! 」 (なんかヤベェぞコレッ!!!! ) 警告。 《右腕》が彼に知らせる。 冷や汗がどっと吹き出て来るほどに。 少し前まで「スターやオーブを蒐集してる物好きな金持ちに売ろう」などと考えていた自分を呪うネロ。 「このっ…!! 」 「遠くに捨てろ」。 でなければ意味がない。 《右腕》が知らせる。 左足を前に出し、地を強く踏み締める。 右腕を思いっきり引き、 「シッ!!! 」 ビュ!!!! 外野手の送球さながらに宝石を投げる。 ゾッ…! 危険信号。 更に汗が吹き出て来た。 服の中に氷を入れられたなんてものと比較にならない。 車が突っ込んで来るなんてものとも。 「…」 恐る恐る顔を上げる。 瞳孔の開いた彼の瞳が捉えたのは、前方1メートルの空中で停滞する宝石だった。 光も先ほどより強くなっている。 思考が止まる。 「しくじった」と思うことすら。 ネロの体が解き放たれた光に包まれる中、 「チッ…! 」 微かに舌打ちが聞こえた。 「当たり? いいや、ハズレ」と。 そこから0. 宝石を中心に半径30メートルが跡形もなくなる。 廃屋も地面も、……ネロも。 ……球体状にくり抜いたように消えた。 確かに、今回の仕事は初めて来た土地だったが荒廃した地面と瓦礫、廃屋しかなかったはずが、森の中に横たわっていた。 自分の周囲には廃屋の木材や瓦礫が散らばり、幸い自分が乗って来たバイクもある。 体を起こし、服についた埃を祓うと倒れたバイクを起こしながら、取り敢えずこれまでの事を思い返した。 悪魔の討伐に来て見つけた宝石を手に取り、それが光を放った所で記憶が途切れていた。 (そうだ!! ) ハッとし、ぼーっとしていた意識が明細になっていく。 「あの石! 」 右腕の袖を捲り、手袋と包帯を取ると、そこには人外の異形の右腕があった…。 外殻のようになり、手の甲から肘の付近まで亀裂が走り、同時に青白い光をぼんやりと発する。 指先も爪が尖っている。 《悪魔の右腕》。 彼 ネロ 自身が名付けた彼の腕。 一年前に発現したものである。 右腕に意識を集中し、《赤い宝石》のイメージを浮かべると、掌の上に《それ》は出現した。 「…こいつのせいか? 」 何故 投げた筈の物が彼の右腕から出現したのか。 右腕の中にあるのを彼自身が分かった理由。 ……《悪魔の右腕》が知らせるからだ。 その宝石《レリック》を見詰めながら一人考えてみるが一度溜め息をつくと、もう一度右腕の中にそれを吸収。 (只の魔石じゃなかったのかよ…! ) 「取り敢えずここが何処かだな…!? まさか魔界…じゃないよな?」 空を見上げると、満天の星空と月と思われる大きな星が二つ。 更に、近隣の惑星らしき星も存在した。 コートの懐から時計を取り出すと、時刻は18時前だった。 確か悪魔と戦っていたのは17時半くらいのはず…。 夕方だったが、まだ日が沈むまで一時間はあったはずだったが、日は沈みきっていた。 何より、周囲の様子からここが自分のいた土地…、それどころか自分のいた世界では無いことを直ぐに察する。 今までに幾多の悪魔と戦ったが、流石に魔界にまでは来たことはなかった。 不幸中の幸いにも、バイクは壊れていなかったので取り敢えず移動して人を探すことにした。 「頼むから魔界ってのは無しにしてくれよ…」 バイクで夜風を切りながら呟き、元いた場所を後にした。 夜も更けており、とにかく安全に寝れる場所を探す。 コンパスは持ってきていたが、バイクの下敷きになり壊れていた。 そもそもコンパスが使えるかどうかも分からない世界では宛 あて にはできない。 結論として、川を見つけ下流に向かうことに。 運良く川はすぐに見付かった。 バイクから降り、川の水を掬うと一口飲んでみる。 昼にフォルトゥナを出てから何も口にしていなかったから、少し気分を落ち着かせる事が出来た。 口を拭うとそこに腰を降ろし、空を見上げるが、ここが異世界であることは認めざるを得ない…。 「……フォルトゥナでもこんな星は見られなかったからな…」 異世界なのは間違いないが、星空を見ていると不思議と不安が消え、気持ちも楽になった。 「朝になったら誰かいないか探してみるか…」 剣を地面に突き刺し、もたれ掛かり瞼を閉じた。 (キリエ…) まどろむ意識の中、恋人とも姉とも言える女性の名前が横切る……。
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87 ID くっさ これは女 なのは「きぃいいいいいい!!!!無職童貞が私を煽るなんて許せないの」 / , ,ィ ハ i、 、! イ , ,ィ ハ i 、. ___, \ > ,! lvヾ,. :jヽ ーT'f. :j'7`h t. ヾi丶 u レ' ヾl. ノ u,イl. 、u L_ フ , '. イ/ ,. r''" ヽ:::::::::::i! -。-ュ-. ヽ:::::::::;!
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生い茂った草木を掻き分けながら、一人の男が森の中を進んでいた。 「チッ。 めんどくせぇったらねえな、オイ」 黒い肌着にに真っ赤なコートを羽織り、下は黒い皮のジーンズにごついブーツ。 背中には時代がかった長剣を背負い、銀の髪は月の光を反射する。 森を書き分けて進む彼の眼前に、一人の少女が現れた。 「あん?」 その少女は、金の装いに紅い宝玉を持つ杖を両手に構え、白い衣服を身にまとった、茶色い髪の毛のかわいらしい少女だった。 「ここから先は危険です。 ですから、このまま帰ってください」 「はっはっ、そうかい。 でもな、嬢ちゃん。 俺はこの先に用事があるんだ」 あくまで真剣な様子の少女に、男は軽い調子で答える。 「こう見えて俺は何でも屋でね。 依頼を受けてこの先に用事があるんだよ、お嬢ちゃん」 「ですが、この先は危険なんです。 一般人は立ち入り禁止です」 「へぇー。 どう危険なんだい?」 「………それは言えません」 問いかける男に、少女は言葉を濁した。 「とにかく、一般人を通すわけには行きません。 帰ってください」 「ん〜、まあ、俺も一般人に括れねえことはねえけど、だいぶ特殊な分類だぜ嬢ちゃん?」 口に端を少しだけ引き上げて、男は少女に一発指弾をかます。 思った以上の力に、少女は思わず尻餅をついた。 「ちょ………! いきなり何するんです、」 少女が口早に文句を言うより先に、 シャァッ! 鎌を振り上げた異形の仮面たちが男の身体に無数に刃をつきたてた。 少女の顔が、血しぶきに染まる。 「………あっ、え?」 理解の追いつかない少女。 突然気配もなく現れた異形たちは、男に刃をつきたてたまま少女のほうを振り向き、 「レディの前では礼儀が大事だぜ?」 男の振るう拳に容赦なく吹き飛ばされていく。 「ま、悪魔なんぞに礼儀を求めるほうがどうかしてるか」 身体中に鎌の刃を残した男は、順繰りにそれを抜いてゆく。 少女の見ている前で、傷口は瞬く間にふさがっていった。 「え、え………?」 もはや自分の理解を上回る光景に、唖然となる少女。 「伏せてろよ、嬢ちゃん」 男はそれだけ言うと、異形のものたちを見据えて宣言した。 「さあ、楽しいパーティーの始まりだぜッ!!」 腰の部分から、黒と白の巨大な二丁の拳銃を取り出し、そのまま異形たちに容赦なく銃弾の雨を浴びせかける。 「イィィヤッホォォォォウゥゥゥゥゥ!!」 絶え間なく続く銃音は、異形の仮面を、マントの身体を、容赦なく引き裂いてゆく。 身体を回し、腕を交差し、時には視線の及ばぬ背後に向けて。 男はまるで踊るように銃器を操り、笑いながら異形のものたちを屠ってゆく。 シャッ! 「おっとぉぉ!」 虚空から出現した仮面は上から男を斬ろうとするが、それよりも男の銃弾のほうが速く仮面を打ち砕く。 だが、それは囮。 「あ………!」 少女の見ている前で、男の背後から、異形の仮面が迫る。 「ハッ! ミエミエなんだよ!」 だが男はあろうことか二丁の拳銃を上空に放り上げ、そのまま振り向きざまに長剣で異形の仮面を真っ二つにする。 「はっはぁぁぁ!!」 笑いながら男は、さらに周囲に出現した異形たちを剣を振り回して両断していく。 手首の運動で円を描き、腕の振りで直線を薙ぎ、身体の動きで周囲を払う。 まるで棍を振り回すように長剣を振るい、演舞のように相手を倒す。 まさに、独壇場。 「はっ!」 あざ笑うように最後の仮面を両断すると、男は長剣を背に背負い、落ちてきた拳銃をキャッチして腰のホルスターにしまった。 そして少女に近づいて、手を差し伸べた。 「立てるか?」 「あ、ハイ………」 少女が男の手を取ろうとした、まさにその瞬間。 シャァッ! 生き残っていた仮面の異形が最後の力を振り絞って男に襲い掛かる。 驚いた表情で男が振り返ると、少女が杖を構えて仮面のあった位置を見据えていた。 驚いたぜ。 お嬢ちゃん、一体何者だい?」 「あなたこそ何者なんですか? あれだけいたアンノウンをこんな短時間で殲滅するなんて………」 しばらく、両者の間に緊張が漂う。 その緊張を先に解いたのは少女のほうだった。 「………私の名前は、高町なのは。 時空管理局所属の武装隊士官です」 「タカマチ・ナノハ、か。 俺の名前はダンテ。 「ああ、そうだ。 魔界に住む腐った外道どもを残らず地の底に追い返す………。 それが俺の仕事さ」 ダンテはそういうと、そのまま先に進もうとした。 「嬢ちゃん………ナノハ、だったな? 悪いことはいわねえから、さっさと帰るんだな。 悪魔なんぞに関わるとろくなことねえぜ?」 「そうはいきません。 私は、魔導師です。 誰かが悲しい思いをするなら、私がその悲しみを払う………。 そう、決めたんです」 なのはは決然とした表情でそう言い放つ。 その声を背中で受け止めたダンテは、口の端を引き上げたまま口を開いた。 「覚悟があんなら上等だ。 それはそうと、この先に進ませてもらうぜ? こっちも生活がかかってるんでな」 「私が案内します。 この先には私の仲間がいますから、誤解されないように」 「ありがたいねぇ」 なのはの先導に従い、ダンテは森の中を進んでゆく。
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