個人的理解者である製作のラース・クヌードセンから次作の製作許可を貰い、『ミッドサマー』に着手しました。 アスターは実生活で恋人と別れた経験を映画にしようと決めており、自分が本作の主人公・ダニーの立場に在ったと制作の動機を説明しています。 キャスト 主演は、『トレイン・ミッション』のイギリス人俳優フローレンス・ピュー。 クリスチャンの友人・マーク役を『レヴェナント』のウィル・ポールターが演じ、レイナーとは本作で2度目の共演です。 『ミッドサマー』あらすじ・ネタバレ ダニー 大学生のダニー・アーダーは、躁うつ病を患う妹・テリーから 不穏なメッセージが届き両親に連絡する。 メールを出してもテリーから返信が無い為、ダニーは神経質になっていた。 1人で夜を過ごしたくないダニーは、大学院生の彼氏・クリスチャンに電話。 クリスチャンは、ダニーが妹の事情に構い過ぎて自分の生活に支障が起きていると諭す。 クリスチャンの友人・マークは、精神的に自立できないダニーはカウンセリングが必要だと揶揄。 クリスチャンに別れろと暗に勧め、ダニーの頼り過ぎを批判した。 家族の喪失 そこへダニーからクリスチャンに再び電話が掛かってくる。 クリスチャンの友人達が興ざめする中、クリスチャンは応答。 妹が両親を殺害した後自殺した事を知ったダニーが電話口で絶叫していた。 駆けつけたクリスチャンは、ダニーを抱きしめた。 ダニーは、クリスチャンがスウェーデン出身の友人・ペレに誘われ、男友達4人だけでスウェーデンの夏至祭・ミッドサマーを訪れる計画を立てていた事を初めて知る。 2人は口論になるが、ダニーの心労に同情したクリスチャンは一緒に旅行へ誘った。 マークがクリスチャンに頼み事をして一緒に席を外した際、ペレはダニーに故郷の夏至祭の様子を撮った写真を見せる。 そして、ダニーの家族に起きた事件についてお悔やみを言った。 ダニーは酷く動揺し、トイレに駆け込み声を殺して泣き始めた。 5人は一路スウェーデンへ飛ぶ。 到着すると、マークは地元の女性を見て魅力的だと興奮。 生まれ故郷に着いたペレは小さな村を案内する。 アメリカ人の友達だと村民に紹介して回り、ペレの弟がイギリスから招いた友人のサイモンとコニーを引き合わせた。 ミッドサマー 男性陣はペレの弟からマジックマッシュルームを貰い、ダニーはお茶で飲む。 夜9時だというのに、外は日中のように明るい。 ダニーは死んだテリーの妄想を見たまま眠り込んだ。 目覚めたダニーと一行は、祭典が開催される場所へ移動。 大勢の村民が小奇麗なコスチュームを着て集い、数人がフルートを吹いている。 皆周囲から温かく歓迎された。 祭りを翌日に控え、参加者に対し、夏至祭は90年に1度だけの催し物だとアナウンスがあり、9日間続くイベントを祝う乾杯が行われた。 若い女性達は手を繋いでダンスをしながら円周に回る。 少女が通りがかりにクリスチャンを軽く蹴って笑顔を向けた。 クリスチャンは一緒にダンスに交ざり、ペレは誕生日を迎えたダニーの顔を写生し、その絵を渡して祝った。 2人だけの内緒にしようと言うペレに対し、ダニーは、自分の誕生日をクリスチャンが忘れているので大丈夫だと答える。 案内された宿舎は、壁に見慣れない 儀式を描いた様な絵が鮮やかな色彩で飾られていた。 全員圧倒されながら壁を眺めた。 クリスチャンは、スマホの電波が届かない為、 何処に居るのか分からないとジョッシュにこぼす。 ペレは、ダニーに、1才から16才は春、17才から32才は夏、33才から52才は秋、そして53才から72才は冬と例えて人の人生を考える村の風習を教えた。 悪夢の始まり 翌日、夏至祭が始まる。 奇妙なシンボル型にセッティングされたテーブルに全員座って食事を摂った。 暫くすると、初老の男女が立ちあがり、向き合って何事か言うとお酒を酌み交わす。 全員起立し、ダニー達も真似てグラスのお酒を飲み干した。 その初老の女性が椅子に座ったまま村民が運んで行く。 切だった崖の頂上に到着した女性を残された全員が下から臨む中、古い書物の一節が読み上げられた。 村民の若い女性の手をナイフで傷つけ、何か書かれた岩にその女性が自分の血をなすりつけた。 そして、椅子から立ち上がった初老の女性は、崖から飛び降りて自殺する。 サイモンとコニーがショックを受け大声で抗議する。 村民が誰一人微動だにしない中、先ほど酒を酌み交わした初老の男性も続いて崖から身を投げた。 しかし、男性は死にきれずうめき声をあげる。 村民も真似るように声を上げ始めた。 大きなハンマーを持った村人が男性の顔目掛けて打ち下ろし、他の数人も既に死んだ男性の顔をハンマーで潰した。 異常な事態に激怒したサイモンとコニーは群衆から離れて行く。 2人を呼び止めた村の長・シヴは、代々伝わる長い習慣で、人生の終わりを迎えた2人の老人にとっては、喜びの行為だと説明する。 ダニーは気が動転。 クリスチャンは、夏至祭について卒業論文を書くジョッシュに、自分も同じトピックにすると言った。 ジョッシュは自分で他のテーマを探せと怒るが、クリスチャンは動じず夏至祭を題材にすると主張。 ペレは、 祭典は秘匿事項であり、記録を残すことは禁じられているとジョッシュに話した。 一方、ダニーは耐えられず荷物をまとめて村を出ようとする。 ペレは、一生に一度の祭りを友人と分かち合いたかったと言い、両親を失った自分も気持ちが分かるとダニーを説得。 ジョッシュから睡眠薬を貰って床についたダニーは悪夢にうなされた。 クリスチャンを気に入った村の少女がベッド下に恋の御守りを置いた。 翌日、庭仕事をするペレは、村民の名前は匿名で場所を特定しなければ卒論を書いても良いと村の年長者から許可が下りたが、同意書に署名するようジョッシュに伝える。 一方、祖先の魂に繋がると信じられている古木に用を足した マークは村の怒りを買う。 荷物をまとめて村を出ようとしたコニーに、サイモンは先に駅へ向かったと村人が告げる。 トラックは2人乗りの為、後からコニーを迎えに戻ると説明するが、自分を置いて行ったサイモンに、コニーは怒り心頭。 側に居たダニーはクリスチャンにその事を話す。 しかし、クリスチャンは気に留める様子も無く、卒論の為に近親相姦が許可されているのか村人に質問する。 時々従妹同士なら村の年配者は許可することもあるが、近親相姦は通常タブーの為 村以外から相手を招くと答えた。 夕食の時間になってもコニーが姿を見せない事をダニーは心配する。 そこへ村の女性がマークに声を掛け、マークは喜んで一緒に連れ立ち席を外した。 夜になり、村に伝わる書物が展示されている神殿へ忍び込んだ ジョッシュは、卒論の為に写真を撮影。 誰かに後ろから頭を殴られたジョッシュは血を流して床に倒れる。 翌朝、ダニーとクリスチャンは、書物が無くなったと村民から聞かされた。 マークとジョッシュの両方とも姿が見えず、村民は2人を疑っていた。 新女王 ダニーは女性達に誘われ、同じコスチュームを着用し花冠を頭に乗せてダンス競争に参加。 クリスチャンは、自分に恋をする村の少女と性的関係を持たないかとシヴから打診された。 そして、最後まで踊り続けた ダニーはメイ・クイーンに選ばれ祝福を受けた。 テーブルの上座に腰を下ろしたダニーに皆グラスをあげて乾杯する。 勧められるまま口にした飲み物でクリスチャンは意識がもうろうとし始めた。 ダニーが村の儀式の為に畑に連れ出された間、クリスチャンは更に薬を盛られてしまう。 全裸の村民が歌う前で、クリスチャンは少女と性行為をする羽目に。 戻ったダニーは、神殿から聞こえる歌に惹かれて中を覗く。 ショックを受けて泣きだすダニーを村の女性達が宿泊所へ連れて行った。 取り乱すダニーと同じ様な声を上げて女性達も泣きだす。 行為が終わったクリスチャンは裸のまま外へ飛び出し、納屋へ駆け込む。 そこには、くり抜かれた目に花を挿入され、内臓を摘出されたサイモンの死体が飾られていた。 突然村民に薬の粉を吹きかけられたクリスチャンは、体の自由を奪われ声も出せなくなった。 儀式が再び進行する。 壇上には、ダニーが1人花の中に座っていた。 村の年長者は、クリスチャンに対する評決を下すよう、ダニーを促す。 少女と関係を持ったことが許せないダニーは、クリスチャンの死を選択した。 切断されたコニー、マーク、そしてジョッシュの首で神殿内部が飾り付けられる。 村から2人の志願者も椅子に着席。 クリスチャンは熊の毛皮を着させられ床に座っている。 神殿に火が点けられ、瞬く間に炎が建物を覆う。 汚れた魂を追い出すと言う目的で、儀式の生贄として3人が生きて焼き殺される中、村民全員狂人のように体を動かした。 最初は目に涙を溜めていたダニーだが、炎と煙が包む神殿を見つめるうちに、次第にうっすら笑みを浮かべた。 『ミッドサマー』を観た感想 冒頭に起きるダニーの悲劇の連続場面は非常に暗く、背景音楽も手伝って異様な雰囲気が漂います。 しかし、スウェーデンの夏至祭が始まった途端、眩し過ぎるほど明るく、色とりどりの花で埋め尽くされた美しい光景が終始画面を占めています。 村民は皆笑顔で温かく訪れたアメリカ人の学生達を歓迎。 ところが老人2人の投身自殺に始まり、事態は一変します。 従来のホラー映画とは異なり、真昼間の見晴らしの良い平原で気味の悪い儀式が延々と続行。 祭典の装飾や村人たちの小奇麗さとは逆に起きている事がが異常な為、観ている人は精神的な動揺や気分の悪さを感じるかもしれません。 本作の監督・脚本を兼務したアリ・アスターは、夏至祭を体験しに来たカップルの別れを描くのが目的だと話しています。 アスターは、観客にスウェーデンの民間伝承に対する理解を求めようとしていない為、描写される儀式に意味を見出そうとせずに鑑賞することをお勧めします。 説明の無い不可解なシンボルや絵がたくさん出て来るので、それを見ておくと4人のアメリカ人学生の身に起きることも予想出来る仕掛けです。 アスターが映画を通して何を見せたかったのかと言えば、物事は見掛けと異なるという点です。 例えば、主人公のダニーは、スウェーデンのミッドサマー 正確な呼称はミッドソマー へ行く以前、そして家族の悲劇に見舞われる前から既に精神的に不安定です。 表向きはいたって普通の女子学生ですが、安定剤を常用し、クリスチャンに固執しています。 また、夏至祭へ誘うスウェーデン人学生のペレは、クリスチャンやマークとは異なり、温和でダニーに親切です。 しかし、最初から村民ではない外の人間を誘い、90年に1度行われる祭典の生贄にする為にスウェーデンへ連れて行きます。 このカルト集団にとって、自分達以外の人は物でしかなく、個人という概念も存在していません。 封建時代の様にヒエラルキーで構成された小自治体は、全てを年長者が決定する権限を保持。 他の若い層は皆それをルールとして従っています。 上述した説明を映画の鑑賞前に読んで頂くと、少しは物語が分かりやすいと思います。 家族を失った精神的な脆さを抱えるダニーが、最後は自分の感情や心情を全て分かち合える新たな家族を得るまでの物語だと、アスターは要約しています。 前作のアメリカにおける悪魔崇拝のカルトに続き、本作では欧州のカルトを描いたアリ・アスターは、2ヶ月掛けて村と夏至祭の舞台を建造しました。 キャストは皆お互いに気を配って精神的安定を保ったと話しており、俳優陣にとっても苦労があった作品です。
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監督の 『ミッドサマー (原題:MIDSOMMAR) 』を鑑賞しました。 観終わった今はとにかく「スゴいものを見たな」という感じ。 今回は ネタバレありで 『ミッドサマー』の感想を書いていきます。 未見の方はブラウザバック推奨。 セリフの引用などはうろ覚えなのでニュアンスです。 美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。 しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。 妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。 ホルガは太陽をとして崇める文化であるようだ。 しかし、1人、また1人と仲間たちが消えていき……? もう、この公式サイトて怖い。 よく見てほしい。 見えなければ画面を拡大してほしい。 サイト全体に砂嵐がかかっている。 なんなんだ、このサイトは……。 言いようのない気持ち悪さに襲われる。 映画の総じた印象としては、頑張ってR15にとどめたんだなという感じ。 エロ、グロ、ドラッグ、カルト、全部入ってます。 なかでも強烈だったのはエロ。 シーン自体は長くないけど一番ショッキングだったかもしれない。 ダニーの恋人クリスチャンは、ホルガの一員であるの少女・マヤに誘惑される。 ホルガには生殖行為に対して厳格な規定があるようで、族長的な人に承認された男女でなければセックスを許されない。 クリスチャンは言われる。 「あなたとマヤのセックスを許可します。 あなたは的にも理想の相手だわ」 そしてなんやかんやあってクリスチャンとマヤはまじでヤる。 といっても、この前に飲まされた謎のお茶と嗅がされた謎のお香によって、このときのクリスチャンは正気ではないのだが。 このときの画面がもう……すごかった。 2人がヤッているところを、全裸の成人女性十数人が取り囲んで、なんか不気味な歌を歌っている。 たぶん、孕みやすくなる儀式かまじないみたいなものだろう。 女の陰部は丸出しでも大丈夫で、セックス時の結合部がダメなのは当然いいとして、暗いところのちんちんは大丈夫で、明るいところのちんちんはダメってよくわからん。。 グロは個人的にはそうでもないかなと思った。 飛び降りて死んだおじいさんおばあさんの死体とか、神への生贄とするために飾り付けられた死体は、ショッキングな見た目ではあるが、明らかな「人形」感があるからそんなに怖くもなかった。 生贄とされる死体は、木や花を植えられるなどして飾り付けられている。 ここで『』の標本事件を思い出した。 あれをクリアした人にとっては『ミッドサマー』の死体は楽勝。 いや、でも人間に熊の生皮を被せるのはしっかり驚いた。 「あああ!その発想はなかった!」って思わず言ってしまったよ……その発想はなかった。 血もほとんど出ないからでもない。 ドミネーターのほうがグロとしては強烈。 「ホルガ」について 『ミッドサマー』で大きなテーマとなっている架空の共同体「ホルガ」。 ホルガは、人間の生と死について確固とした考えをもっている。 その基本は、人間の一生を四季としてとらえていること。 ・子供時代は「春」 ・青年期は「夏」で旅に出る ・大人は「秋」で労働をする ・老年期(~72歳)は「冬」 そしてカから来た彼らのひとりは聞く。 「72歳を過ぎたらどうなる?」と。 ホルガの人たちはその問いに答えを濁す。 そこで大体わかるだろう!と。 察しが悪いやつらだなあ! その後、彼らはホルガの「儀式」を目の当たりにすることになる。 72歳を迎えた2人の老人が、崖から飛び降りてするのである。 うち、おばあさんはすんなり死ぬことができったが、おじいさんはそうはいかなかった。 足を骨折したのみで死ぬことができなかったのである。 そのときのホルガの人々のブーイングときたら……。 仕方がないから、係の者が長いハンマーを取り出しておじいさんを殴り、殺すのである。 ちなみにこのおじいちゃん()が『ベニスに死す』のあの美少年だと知ってびっくり。 セーラー服の少年おいしいもぐもぐ。 そういえば『ミッドサマー』でもどこか高貴な雰囲気があった。 あまりに衝撃的な光景に、取り乱すカからのご一行。 彼らに、ホルガの女性は改めて説明する。 「ここでは72歳になると、次の世代へ命を譲るのよ。 そして次に生まれた子どもに、彼ら(した老人ら) と同じ名前を付けるの」 冬が終われば、また春がくる。 次の春を迎えるために、72歳を過ぎたホルガの者はよろこんで命を捧げる。 また別の話。 論文を書くために、カ人の一人は質問する。 「ここは小さい共同体です。 近親相姦の心配はないのですか?」 ホルガの男性は説明する。 「ここでは意図的に近親交配をして、聖なる力をもつ者をつくり出しているんだ。 しかし外部からの血も混ぜてバランスをとっている」 ここでもまた、察しの悪いやつらだなあ!と思うのである。 なぜなら、彼らカ人こそがホルガが求めている「外部の血」なのだから。 そのために、マヤに誘惑されたクリスチャンが「種」を採られてしまうのだ。 しかし、この共同体にはどうも違和感を覚えるところが多い。 彼らホルガは「自然と調和する」といいながら、自然の理に反することばかりしている。 、意図的な近親交配、ドラッグでトリップする、など……。 彼らはそのすべての行為を「」によって意味付けしている。 先述のように、は「次の世代へ命を譲る」ため、近親交配は「聖なる力をもつ者をつくり出す」ため、トリップは「自然と一体化する」ため……。 明らかに矛盾した行動であっても、上手いことばで言ってしまえばどうとでもとらえられる。 正当化の怖さを感じた。 また、この共同体は皆が一になることを絶対的な善としている。 ホルガの者は 「ここの者はみんな家族だ」という。 当然のこととして「四季」に沿った生き方をする。 女王となったダニーが耐え切れず泣き出したときは、他の女たちも協調するように、こぞって泣き、咽ぶ。 そしてその泣き声すらも最後にはぴったりと合っていく。 これも物凄い光景であった。 つまりここでは多様性が皆無である。 多様性という概念すらないのだと思う。 人種のるつぼたるカからここを訪れた彼らにとっては、なるほど理解の範疇を超えていたはずである。 伏線について ダニーたちは、現地でサイモンとコニーというイギリス人のルと合流する。 その2人も当たり前に死ぬ。 というか最終的にはダニー以外全員死ぬ。 サイモンは鳥小屋の中で床と平行になるように吊るされ、生きたまま内臓を鳥たちにつつかれている。 これは神話に登場する神「プロメテウス」がモデルか? プロメテウスは人間に火の概念を教え、人間は武器を作り戦争をするようになった。 それに起こったゼウスはプロメテウスを山に磔にして、生きたまま鳥に内臓をつつかれるという苦行を課す。 ホルガで最終的に生贄に選ばれた9人は、「聖堂のような場所」で火に包まれて死ぬ、というか生贄としての役目を果たす。 プロメテウスを模し、「火」という伏線をすでに仕込んでいたのかもしれない。 また、ホルガに着いたばかりの頃「これはラブストーリーだよ」と教えられた絵。 女性が陰毛を剃っているコマがあるが、実際にクリスチャンはマヤの陰毛を食べさせられる。 この絵はのちのクリスチャンの行く末を描いていたのである。 『ミッドサマー』にはこういう伏線がたくさん仕込まれていて、それを考えるのも楽しい。 とくに絵はとっても重要で、のちの展開を物語っているものが多い。 ディズニーリゾートなんかでよく見られる手法だと思う。 つまり、アトションのスタンバイエリアに壁画やオブジェなどがあり、アトションのストーリーを予測できるものが多い。 、……。 なお、公式サイトには「観た人限定 完全解析ページ」というコーナーがあり、かなり詳細に考察されていて読み応えがある。 ここでは『ミッドサマー』を2回鑑賞することが推奨されている。 絶妙な気持ち悪さが画面を支配する ホルガに車で向かうシーン、カメラが上から車を追い越し、画面全体が逆さまになる。 まるで、彼らがこれから向かう世界は、今までの世界とはまったくあべこべである、とでも言いたげな。 こんな映像は初めて見た。 まさに「映像体験」としか言い得ないだろう。 さらに、ラストにいくにつれて画面に歪んだエフェクトがかけられていく。 とくにダニーが女王に選ばれた直後の食事シーンでは、肉がゆらゆら動いている。 また、このときダニーの頭にかぶせられたでかい花冠の、右眼のすぐ上にある花。 じつはよく見ると花蕊が開いたり閉じたりしていて、これがまた最高に気持ち悪い。 動くはずのないものが動いているのである。 まるで幻覚を見ているかのように。 これはたぶん、あの謎のお茶を飲んで彼らがラリってるからなのだと思う。 この揺らぎはたしかに気持ち悪いんだけど、なぜか同時に心地よさも覚える。 なんとも不思議だった。 その心地よさこそが怖かった。 観終わったときのわたしは本当に、なぜか清々しい気持ちになっていたのだ。 『ミッドサマー』という映画に洗脳されてしまった、とわたしは思った。 ダニーは最後、燃え続ける聖堂と生贄たちを見ながら微笑みを見せ、ホルガを受け入れたように見える。 それと同じようにわたしも、この奇妙な世界を受け入れてしまったのである。 殺人やグロテスクな死体よりなにより、その事実が一番怖かった。 「お前たちは狂ってるよ」と。 だが、彼らにとってはあれが「普通」で、彼らから見たらわたしたちが「異常」なのだ。 何をもって普通といえるのか。 それは神のみぞ知るところでしかない。 所詮わたしたちは、生まれた瞬間からの環境による「教育」によって刷り込まれた「常識」という色眼鏡を通してしか、世界を見られないのである。 いわく、「常識とは18歳までに集めた偏見のコレクションである」。 そして、「生きる」とは何なのか。 彼らは72歳を超えると「次の世代へ命を譲る」が、これが正しくないことだと、いったい誰が断定できようか? ちなみに、これは突き詰めれば「輪廻転生」の考え方にもつながる。 つまり仏教の色が濃い日本にとって、ホルガの思想はまったく他人事ではないはずなのだ。 テレビアニメ『バビロン』において、正崎善は言った。 「『善』とは続くことである。 そのとき、ホルガの思考を否定できる権利はわたしたちにはないのかもしれない。 なお予定は未定。
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映画『ミッドサマー』で主人公のダニーたちを夏至祭に招待したスウェーデンからの留学生ペレは、温厚な人柄ながら謎の多い人物です。 ペレはダニーが好きなのでしょうか? 家族も恋人も死んでしまい、それまで自分を支えてきてくれた存在を全て失ってしまったダニーは、その後どうなったのでしょうか? 今回は『ミッドサマーのペレはダニーが好きなのか?メイクイーンのその後をネタバレ考察』というタイトルで、作中のペレについての解説と、夏至祭が終わった後のダニーについて考察してみたいと思います。 ミッドサマーネタバレ!ペレはダニーが好きなのか? ミッドサマー見終わったからTwitter村のミッドサマー民の様子を観よう!!って思ったらミッドサマーの演者たちのオフショットがガラが悪すぎて笑っちゃった。 — 🌳🐰😈 liangtu59 ペレはもともとクリスチャンの友達で、夏至祭に行く話にも最初はダニーは入っていませんでした。 しかし彼はクリスチャンが、自分にべったり依存してくるダニーを鬱陶しいと思っていることも、ダニーの妹が両親を道連れに自殺を図り、ダニーが家族全員をいっぺんに失ってしまったことも知っていたと思います。 ペレの両親も幼い頃に炎で焼かれて死んでしまい孤児になったペレは、その話を聞いた時点でダニーの喪失感に共感し、好意を寄せていたのかもしれません。 誕生日にもダニーの似顔絵をプレゼントしていましたね。 では、生贄を捧げる狂気の祭典にペレはどんなつもりでダニーを歓迎したのでしょうか? これについては夏至祭に外部の人間を呼ぶ目的を振り返る必要がありますね。 夏至祭に外部の人間を呼ぶ目的 ハルガ村に着いてから、ダニーたちは村のしくみや風習についてあれこれ質問します。 「村の人数が少ないようだけど、血が濃くなりすぎることはないのですか?」と。 これについて村人の答えは「だから時々外部から人を招きます」というものでした。 ダニーたちが参加したのも、ハルガ村側の意図としては「良い人がいたら仲間に引き入れたい」という意味だったのです。 つまり外部の人間を夏至祭に呼ぶ目的は2つありました:• 精霊に捧げる生贄の役割をしてくれる者を選ぶ• 一族に外部の血を入れ、子供をもうける者を選ぶ 強いて言えば、2つ目の目的に叶う人物は「丈夫で健康な子供を埋める、体力がある女性」か、「精力のある男性」だったはずです。 ダニーが夏至祭でダンスの競技に参加させられたのは、「一族に引き入れるにふさわしい、丈夫でスタミナのある女性かどうか」を確かめるためのテストだったと言えるでしょう。 最後のひとりになるまで倒れず踊り続けて勝利したダニーは、晴れてテストに合格しメイ・クイーンとして祭り上げられます。 お祝いの席で「あなたはもう家族よ!」と声をかけられ、ダニーの合図によって食事が始まるシーンは、彼女が一族の一員となったことを表しています。 天涯孤独で帰る家も家族もなかったダニーには、拒む理由もなかったでしょう。 ペレはそこまで見込んでダニーを招き入れたのではないか、と思います。 ダニーがメイ・クイーンに選ばれなかったらどうなっていたか? いかに勘とセンスの良いペレでも、ダニーがダンスで優勝するところまでは予測できていなかったはずです。 もしもダニーが早い段階で踊り疲れて倒れてしまい、メイ・クイーンに選ばれていなかったらどうなっていたのでしょう? ダニーは殺されていたのでしょうか? いいえ、わたしは、ダニーは最初から村に懐柔するつもりで呼ばれたと思います。 ペレは天涯孤独で寄る辺ないダニーを一族に迎えることが、お互いのためにも最高の救済だと思って連れて行ったんだと思うのです。 ダニーたちが知らないところで、ペレがダニーについて話した情報は村人たちに共有され、みんなでダニーをかつぎ上げたんだと考えています。 ダニーがメイ・クイーンになったのだって、もしかしたらわざと周りの女性たちが示し合わせて先に倒れたのかもしれません。 そのほうがダニーが歓迎されていると実感できるからです。 もしもダニーが命を落とす可能性があったとしたら、ペレの説得を全く聴き入れず、コニーのようにハルガの風習を拒絶して出て行ってしまった場合だけだったと思います。 どちみち外部からの生贄は最低4人必要だったわけなので、ダニーへの当てが外れた場合は、やむを得ずダニーを先に生贄に決めたかもしれません。 でも生贄になることさえも、ハルガ村では幸せなことなので、ペレたちには罪悪感はなかったと思います。 予定の人数より多くの人間が死ぬことになるかもしれませんが、ハルガ村で生贄を出す機会はしばしばあると思うので、次回用とかなんとか、言い訳はいくらでも作れると思います。 ・・・ メイクイーンのダニーその後について考察してみた 『ミッドサマー』の役者さんたちのオフショット、ホルガ村の日常って感じですごく良いな…写真集出して欲しい — もつれら mtmtSF ここからは筆者の妄想と勝手な憶測です。 クリスチャンが生贄となり、神殿ごと焼き落されたのが祭典のクライマックスで、無事に9日間の夏至祭は終わりました。 ダニーは村人たちの温かいサポートに癒され、「本当の家族」に囲まれていると実感します。 ペレや他の村人たちの勧めにより、ダニーはしばらく村で暮らすことにしました。 そのほうがダニーの心の傷が早く癒えるとペレがアドバイスをしたのです。 大学は休学です。 ペレが手続きを代行してくれ、「クリスチャンやマークはどうなった?ジョシュはどこへ消えた?」という煩わしい噂の処理もペレが全部やってくれました。 ダニーにはもはや過去の世界に未練がないので、ハルガ村の住人として再生するのにそれほど時間はかかりませんでした。 村の風習を学び、料理や生活様式を吸収して、すっかり一族に溶け込みます。 ハルガの民は34歳までは人生の夏で「巡礼の時」なので、ダニーも翌年までハルガで過ごし、また大学に戻りました。 今のダニーの恋人はペレです。 休暇の度に村に帰ってくるペレと次第に仲良くなり、二人は交際するようになったのでした。 数年後の夏至祭に訪れた別れ ダニーがハルガの民になってから数年の時が流れ、今年もまた夏至祭の季節がやってきました。 90年に一度巡ってくるのは「大祭」ですが、それ以外の年にも夏至祭は毎年あるのです。 ダニーとペレは大学を卒業し、ダニーにはすでに2人目の子供がいます。 今年の夏至祭では、ペレが生贄を志願しました。 「今年は僕が生贄に立候補することにしたよ。 」とペレ。 「随分早く行ってしまうのね。 寂しいけど、あなたが決めたことだから、嬉しいわ」とダニー。 子供たちも笑顔で納得してくれました。 ガラガラで選ばれたもう一人の生贄は、ダニーが村に来てから親切にしてくれた女友達でした。 ペレたち生贄が神殿に入る前、ダニーは彼女に挨拶に行きます。 「わたしがメイ・クイーンになった初めての夏至祭を覚えてる?競技の前のグラスをあなたと飲み干したのよ」 「覚えてるわ、懐かしいわね!ダニー、元気でね!」 「ありがとう!」 笑顔で神殿に入っていくペレたち生贄一同。 「イチイの木から取って来た。 痛みを感じない」 そう言って村人の一人が生贄たちの舌にひと掬いずつ薬を乗せて廻ります。 やがて儀式通りに火が放たれ、全然熱いし痛いため叫び出した生贄たちに合わせて、神殿の外ではダニーや子供たち、他の全員の村人たちが狂ったように一緒に叫ぶのでした。 終わり ミッドサマーにハマったわたしは、コロナで外出できない週末、こちらの映画に出会いました。 チリに実在したカルト集団の実態を描いたエマ・ワトソン主演の映画『コロニア』です。 ペレの両親も幼い頃に火で焼かれて死んだ、と作中にあるので、夏至祭は90年に一度というわけではなく、毎年あると仮定して、ミッドサマー映画のその後を考察してみました。 ペレはダニーが好きだったんです。 最初からダニーと結婚したくて夏至祭に誘ったのです。 映画を観ていない人にはネタバレだった部分もあると思いますが、後半の「その後のストーリー」は全て筆者の憶測と妄想による創作です。 あなたの考える「その後ストーリー」バージョンは? ひろさん、5日間しか描かれていないこと、鑑賞中にちゃんとカウントされたんですね! わたしは観ながら日にちを数えるのはできませんでした。 笑 わたしの考えでは、映画のエンディングが9日間のクライマックスで「語られていなかった4日間は過ぎていた」という解釈でした。 前年の勝者はすぐに次の生贄になったかもしれませんね。 そう思うとダニーもそんなに長生きできないのかも。 でも、せっかく外部から入った人間をすぐに生贄にしてしまうと子孫が増えず効率が悪いような気がして、元から心を病んでいたダニーは村にすっかり洗脳されて住民となり、お母さんになるチャンスがあったことにしてその後をイメージしてみました。 ディレクターズカット版だと、コニーは生贄として死ぬはずだった子供の代わりに溺死させられたことが描かれているそうです。 ダニーがうっかり儀式を止めてしまってその子は死なずに済んだとか。 ハルガ村では子供もじゃんじゃん生贄になるんですかね。 だとすると、子孫を増やすことにそこまで注力してないかもしれないから、やはりダニーはすぐ死ぬかもしれませんね。 アリ・アスター監督がどこまでを演出として描いたのか不明ですが・・・とても精密に作り込まれた映画なので、前年のメイクイーンが出てこないことも、ひろさんの仰るようにダニーの将来が長くないことを予見させるための伏線かもしれませんね。 あ~恐ろしや。
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