『この愛を終わらせてくれないか』 女子高生たちの愛する地獄、愛される地獄 愛には色々な形がある。 仲良くしたいというものもあれば、ただ見つめていたいという感情もある。 理由なんて無いし、正解もない。 ただ、愛は自由だ、とは言い切れない。 結末が悲劇になることは多々ある。 この作品はサスペンス調で 思春期少女たちのねじれた愛と憎しみを、ひりついた空気と数多の謎で描いていく。 クラスメイトの芸能人・ 速水瞬(はやみ・まどか)のことが大好きな、 八河柚(はちかわ・ゆず)。 彼女にとって瞬は神様で、遠くから見ていることが幸せだった。 しかし瞬には 世木幸子(せぎ・さちこ)という友人がいた。 社交的で明るく、瞬に親しく寄り添う幸子。 彼女に対する 柚の憎しみはどんどん募っていく。 「全てから世木幸子が愛され全肯定されようとも 私は地球最後の一人になっても憎んでやる」 SNSの鍵垢で幸子の悪口を書き続けていた柚。 しかしそのツイートは幸子に発見されてしまう。 幸子は柚を屋上に呼び出して言う。 「いいよねーあんたは 誰からも見向きもされないで 誰かに愛される地獄が何かあんたにも教えてあげようか」 幸子と柚はそのまま、一緒に屋上から落下。 死んだかと思って焦って目をさました柚は、 自分が幸子の姿になっていることに気づく。 現時点では、落下したあと入れ替わったのかどうかなどはっきりとした状況は定かではない。 3人に何が起きているかは徐々に明らかになるだろう。 そこよりも、 「友人が多くて憧れの人の側にいた幸子」と 「知人友人はゼロでこそこそしていた柚」のギャップがもろに浮かぶ描写の数々が残酷だ。 瞬のそばにいられるからこそ柚は幸子の身体になったことを喜んだ。 今まで感じたことのない幸せに襲われていた。 けれども彼女は明るい幸子には、今まで嫉妬で憎んでいた幸子にはなりきれない。 「気持ちわりーな お前の幸せそうな顔見ると吐き気するんだよ」とかつて言っていたであろう姿に自分がなっている状況は、痛々しさが目立つ。 瞬の行動も謎が多い。 柚は「幸子は瞬にまとわりついている女」という見方をしていたので分かっていなかったようだが、瞬は幸子に 独特な感情を持っているのが徐々に見えてくる。 「幸子になって瞬を横から見ていられればそれでいい」なんてのは、むしのいい話。 ここからが 「愛される地獄」が本当の意味で始まるのだろう。 愛するのは大変だし苦痛も多い。 けれども愛するのは基本的に楽しいことが多い。 相手に迷惑をかけるか否かとは別に、あらゆるスタイルで愛すことは可能だ。 柚の崇拝のような愛情も、人に神性を押し付ける自分勝手な愛の形だ。 一方で愛される方はそれをコントロールできない。 避けるか受け入れるかの覚悟を決めて、 自分も相手も傷つける可能性すら選ばねばいけない。 タイトルにある「愛」は柚のものか、幸子のものか、それとも瞬のものか。 女子高校生の暴走する愛情は、外見と内面の存在もぐちゃぐちゃなままに、人と自分を傷つけながら迷走していく。 ゴリゴリとした線で描きこまれた絵柄が、張り詰めた柚の心理を生々しく表現している。 特に幸子になった柚の 驚き、不安、怒り、侮蔑、憧れでギュッと変わる瞳の表現が秀逸。 自分の本音を隠し続ける彼女の言動と相まって、読んでいてずっと不安になるのが見事だ。
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漫画「 この愛を終わらせてくれないか」は「少女支配」を描いた筒井いつき先生の新作漫画。 ジャンルは青年漫画のヒューマンドラマになっているが内容は百合系のラブサスペンスのような不穏で黒い部分を纏った作品。 ヒロインとなる少女は八河柚(はちかわゆず)。 彼女は女優、モデルとして活躍する同級生・速水瞬(はやみまどか)の熱狂的なファンであった。 遠くから瞬を見守り、接点も持たない柚であったが、ある出来事を境に瞬の親友…そしていつも一緒にいられる仲となっていく。 ただ、 少女は満たされる程に気持ちが渇いていく事を覚えていく。 少女が抱える気持ちは恋愛感情なのか…それとも違った別の感情なのか…。 ラブストーリーのようなラブサスペンスのような…そして百合系も交える注目の漫画となっています。 漫画「この愛を終わらせてくれないか」は電子書籍ストア「eBookJapan」で取扱・試し読み可能! この愛を終わらせてくれないか【ネタバレ】 1話ネタバレ 冒頭、柚の速水瞬への熱狂的なファン具合が描かれていく。 彼女がグラビアを飾る週刊誌は発売と同時に買ったり、雑誌に顔を近づけて瞬の映る写真を眺めたり…とにかくヤヴァい(笑) さらに柚の背景が明かされていく。 彼女は速水瞬と同じ高校に通い、同じクラスメイトだったのだ。 いつでも触れる距離にいる憧れの人物であったが、陰キャレベルも高い柚は話しかける事も出来ず、ただ教室の片隅から瞬を眺めている。 そんな中で柚が苛立ちを覚える相手が一人いた。 瞬の親友的立ち位置である世木幸子(せぎさちこ)といった同級生だ。 瞬と親しい幸子の事が憎くて堪らない柚。 彼女は胸の内に秘める苛立ちなどをSNS愚痴アカウントで放出していた。 しかし、愚痴アカが乗っ取られる事態に遭遇。 さらに乗っ取られたアカウントから学校の屋上に来いといった指示を受ける事へ。 恐怖もあり、屋上へ行けない柚。 そんな彼女のもとへ幸子が現れる。 そして彼女は柚の愚痴アカウントを見せつけていく。 柚のSNSを乗っ取りしたのは幸子であった。 幸子は直ぐに柚が瞬の熱狂的なファンである事に気がついていく。 そして 『今度、瞬に会わせてあげようか』などと伝えていく。 馬鹿にされた気分の柚は幸子に掴みかかるが意味深な言葉を吐き出していく幸子。 『誰かに愛される地獄が何か…あんたにも教えてあげようか』 そのまま幸子は柚を押し倒して屋上から一緒に飛び降りていく。 目が覚めて鏡を見た柚に戦慄が走る。 顔や体が世木幸子だったのだ。 意識が入れ替わったのか…。 混乱していると瞬が見舞いに現れる。 そして世木幸子として瞬と接していく柚は初めて瞬の体に触れていく。 2話ネタバレ 嫌いだった女の体に入れ替わった柚。 元に戻る事はなく世木幸子として生活をしていく。 人気者である幸子には多くのお見舞いなどが訪れてくる。 当然だが親友である速水瞬も例外ではない。 親友として憧れの瞬に近づける状況の柚は 『神様に一番近い特等席』などと思いこんでいく。 とにかく瞬に近づける体を手に入れて幸せ一杯の柚。 しかし、彼女は確認する事があった。 同じ病院に入院している自分自身である。 幸子として自身のお見舞いにいく柚。 幸子とは真逆で誰もお見舞いにきた形跡はない。 また怪我もかなり重症の模様。 自分自身の体に手をかけようとしている柚。 しかし、思い留まる。 この先どうなるか不明だが一先ず、世木幸子の人生を引き受けて、恐らく自身の体に転生している幸子に 『そこで勝手に死んでてね…』と一言告げて立ち去る柚。 3話ネタバレ 幸子の体は全快。 柚は世木幸子として学校へ戻っていく。 瞬と急接近していく事でときめき過ぎて身が持たない柚。 そんな中、幸子を慕う後輩・しおりがウザ絡みをしてくる事へ。 放課後一緒にお茶をする事へ。 勘が鋭いしおり。 いきなりぶっ込んだ質問を投げかけていく。 『あんたサチ先輩じゃないすよね。 あんた一体誰なんすか?』 手を握られてまったく離そうとしないしおり。 教えるまで絶対に手を離さないと真顔で言われる柚。 困惑していく。 4話ネタバレ しおりは今までの幸子と今の幸子が違い過ぎるといった事で中身が別人だと思いこんでいる模様。 そして柚は入れ替わった事をしおりにだけ告げていく。 困惑しつつも今までと違う幸子の様子を見ているので納得もしていく。 そして、しおりは柚が世木幸子を演じられるように協力をしていく。 まずはメイクから。 メイクして可愛くなった幸子の顔にときめく柚。 なんだかんだ、しおりと絡んでいると瞬に恋していると直ぐに見破られていく柚。 しかし、自身の気持ちが恋なのか…自分ではどこかしっくり来ていない様子の柚。 そして瞬から連絡を受ける柚。 彼女と喋るだけで幸せな柚であったが、自身の分身が現れて葛藤。 そんな分身の意見を振り切っていく柚。 5話ネタバレ 柚が何故、速水瞬の熱狂的ファンになっていったのか…彼女との出会いが明かされていく。 柚が瞬ファンになったのは小学生時代だった。 場面は現実へ。 世木幸子として上手く立ち回っていく柚。 途中、しおりも現れてウザ絡み。 そしてしおりは柚達の同級生である郡司に恋心を抱いていた。 平穏に日常を過ごしつつ、瞬とデートの約束をした土曜日が訪れてくる。 6話ネタバレ 水族館デートをする柚と瞬。 柚はとにかく憧れの瞬と一緒なので終始ときめきっぱなしである(笑) 舞い上がりつつも瞬との水族館デートを楽しんでいく柚。 そんな中、瞬から貰ったとされるヘアピンをどこかに落としてしまう柚。 必死で探していると見つけてくれたのは瞬であった。 合流すると瞬はヘアピンをつける素振りをしつつ、柚(幸子)にキスをしていく。 突然の出来事で瞬の手を振りほどいてしまう柚。 逃げるように去っていく。 『違う…違う…こんなの瞬ちゃんじゃない…』 7話ネタバレ 郡司にデートのお誘いをするしおり。 しかし、見事に玉砕していく。 けっこうきっぱりとフラレていく。 休み時間となり、しおりと合流した柚。 水族館デートの一部始終を明かしていく。 もちろん瞬からキスされた事も。 同性愛にも寛容なしおり。 喜び讃えていく。 しかし、柚にとっては神様のような存在の瞬が自分にキスなんてあり得ないといった気持ちらしい。 困惑する柚に喝を入れていくしおり。 一方、瞬は未だ意識の戻らない八河柚が寝ている病室を訪れていた。 そして柚の髪にヘアピンをつけて一言… 『幸子』と柚に向かって呟く瞬…。 ここで1巻は終了。 次巻へ続いていく。 この愛を終わらせてくれないか【感想】 速水瞬は既に世木幸子は別人である事を見抜いているのか…。 得体の知れない何かを背負っているような瞬がジワジワと恐怖を掻き立ててくれます。 巻末に次巻予告ありましたが、どうやら柚は瞬の幸子へ対する異常な愛情に気づき、受け入れる決意をしていく模様。 瞬と幸子は以前からどんな関係だったのか…。 そして瞬の愛情に耐える事が出来るのか…。 あらすじにある満たされるほど渇いていく状況になっていくのか。 愛をテーマにしながらジットリとした怖さもある作品。
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