ノン フィクション。 (ノン)フィクションラブ|ネタバレと感想!2話で純と初デート!|漫画Plus!

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ノン フィクション

しかし、この規定のなかの「文学以外」という限定ははずしてもかまわないと思われる。 現在では、ノンフィクション作品は、りっぱな文学作品として認められていて、現代文学の世界で大きな位置を占めているからだ。 [川村 湊] 海外のノンフィクション古代のギリシアでは神々の物語として「神話」が、そして人々の物語として「歴史」があった。 ホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』は神と人との物語として「神話物語(=フィクションの原型)」として位置づけられていたが、シュリーマンの遺跡発掘によって、現実にあった歴史を素材とした、いわばノンフィクション作品であることが証明された。 ヘロドトスやトゥキディデスの『歴史』やカエサルの『ガリア戦記』、司馬遷 しばせん の『史記』などの歴史書が、もっとも早い時期のノンフィクション作品ということができ、それは神々の物語としての「神話」や、その発展形態としての伝説、綺譚 きたん 、妖精 ようせい 物語、ロマンスなどのフィクション(=虚構、小説)と、ジャンル的に分離・区分されるようになったのである。 近代においてもジョン・リードの『世界をゆるがした十日間』(1919)やエドガー・スノーの『中国の赤い星』(1937)など、革命や戦争に密着したドキュメンタリーとしてのノンフィクション作品が書かれたが、記録文学、ドキュメンタリーといったさまざまなジャンル名をまとめるような形で「ノンフィクション」と称されるようになったのは、第二次世界大戦後のことであって、アメリカのジャーナリズムにおいて従来の記録や報道、または実話小説などと違ったノンフィクション作品が書かれるようになってからのことだ。 代表的なものとしてトルーマン・カポーティの『冷血』(1966)をあげることができる。 もちろん、それ以前にもアンドレ・ジッドの『ソビエト紀行』(1936)やジョージ・オーウェルの『カタロニア讃歌 さんか 』(1938)のような著名な小説家によるノンフィクション作品(紀行、記録、報告)がなかったわけではない。 しかし、文学作品としてのノンフィクションが認識されるようになったのは、欧米においても、日本においてもごく近年のことに属しているのである。 [川村 湊] 日本のノンフィクション記録文学、ルポルタージュ文学といった名称で、ノンフィクション作品はこれまでも日本の文学史において登録されてきた。 ノンフィクション作家、ノンフィクション文学という言葉があたりまえのように流通し、ノンフィクション作品を対象とした大宅壮一ノンフィクション賞のような文学賞も創設された。 こうしたノンフィクション文学というジャンルの確立には、何人かの小説家の力があったと思われる。 第二次世界大戦後のこうした分野を活発化させたのは坂口安吾 あんご であり、『安吾巷談 こうだん 』(1950)や『安吾新日本地理』(1951)などの作品は明らかに戦後のノンフィクションのはしりである。 それは小説家の手すさびのエッセイ、漫筆ではなく、社会現象や事件、現実・事実を相手にした作家の真剣な表現活動の取組みだったのである(それがやや余裕の産物のようにみえたとしても)。 もっと現代に近いところでそうしたノンフィクション作品の試みを行ったのが、開高健 かいこうたけし である。 彼は『片隅の迷路』(1962)のような、現実に起こった徳島ラジオ商殺しという冤罪 えんざい 事件を小説として書くかたわら、『ずばり東京』(1964)や『ベトナム戦記』(1965)といったルポルタージュ作品を書き、大都市東京というキメラのような街や、ベトナム戦争という世界の矛盾の輻輳 ふくそう する場所から現代社会、現代の戦争についての報告を行ったのである。 もう一人、ノンフィクションを書いた小説家として梶山季之 としゆき をあげることができる。 『黒の試走車』(1962)などの産業スパイ小説で、一世を風靡 ふうび した彼は、週刊誌の取材記者、ルポルタージュ記事の書き手として「トップ屋」とよばれるノンフィクション作家たちの先頭にたった。 日韓関係、原爆問題、移民問題を中心に、政治・経済・犯罪・芸能界など、彼の守備範囲は広く、また、反体制的、社会批判的なスタンスは、その後のノンフィクション・ライターの反骨精神につながったといえる。 それはまた、大宅壮一 おおやそういち の大衆社会への批評性につながり、また、松本清張 せいちょう の現代社会の暗黒面を暴き出した『日本の黒い霧』などのノンフィクション作品にもつながっている。 石牟礼の『苦海浄土』(1969)、上野の『地の底の笑い話』(1967)、松下の『狼煙 のろし を見よ』(1987)などは、社会的事件に題材を仰いだものだが、作者の詩情や感性がその作品の底を流れているのが特徴的である。 沢木耕太郎は人物評伝のスタイルで『人の砂漠』(1977)を書き、テロ事件の被害者と加害者とを両面から描いた『テロルの決算』(1978)を書いた。 鎌田慧は『自動車絶望工場』(1973)で、体験的ルポルタージュの道を開いた。 柳田邦男は『マッハの恐怖』(1971)で、現代の航空機事故が、社会のあらゆる方面からの影響力とあらゆる方面への波及力をもっていることを示した。 彼らは、国内、国外を問わない旺盛なフィールドワークと、緻密 ちみつ な文献資料の活用によって、ノンフィクション作品をより広く、一般的な文学作品として定着させていった。 猪瀬の『ミカドの肖像』(1986)は、日本の近代の天皇制と西武資本との「結託」を論証し、佐野の『巨怪伝』(1994)は政治家の近代史を、吉田の『下下戦記』(1987)は水俣 みなまた 病の患者世界を、吉岡の『墜落の夏』(1986)は日航機墜落事故を、関川の『海峡を越えたホームラン』(1984)は、日韓の野球社会を、久田の『サーカス村裏通り』(1986)は、日本のわびしいサーカス団の世界を、野村の『海の果ての祖国』(1987)は、サイパン移民の世界を、それぞれ新鮮な視角から描き出し、ノンフィクション作家として成長していった。

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************** 2004年2月 小浜島の消印 ************** やぁみんなみんな元気かな。 こっちは20度も越えてもう初夏だね。 すっかり南の島。 今日、島の子供と遊んだ。 こっちの子供はホント子供らしい顔をしてる。 まっすぐな瞳してる。 仕事はきつい。 今までの農業で一番きつい。 それでも、おじいやおばあと島歌を歌いながら働いていると、きついとかつらいとか、どうでもよくなってくるんだ。 俺は肉体労働をするようになってから、働いてお金を稼ぐことにすげー手応えを感じるようになった。 なんだか分からないお金をもらうよりよっぽどいい。 仕事が終わるとみんな土まみれになってメシ食ってる。 みんないい顔してるよ。 ぜひ経験してほしい。 身体の芯から強くなるよ。 そして熱くなる。 もう島の生活にも慣れてきた。 友達もできたし潮で天気もよめる。 ゆきも毎日研いでるうちに上手くなってきた。 物や身体を大切にするようになった。 これはすごく大切なことだと思う。 結局人間は自分の身体ひとつに依存してるんだから。 仕事が終わると、サッカーやバスケしてる。 あと、毎日3Km走ってる。 なんか走りたくなる島なんだ。 こんなに健全なのは、このかた初めてかも。 Very thanx to Chuta-kun!!! さすらい人の青年・チュータ。 今度はサトウキビの収穫の手伝いに。 ************** 2004年1月 小浜島の消印 ************** ハブとの決闘 今日、ついにハブに出くわした。 スグには判らなかった(保護色になってる)。 とぐろを巻いて、じっと構えていた。 後で聞いた事だが、とぐろを巻いている時は危険らしい。 覚悟を決めて、向かってくるらしい。 ゆき(キビをなぎ倒すナタのこと)の先で、ひょいっと首を押さえる。 バタバタと暴れて、苦しそうに口を開ける。 いくつもの牙と舌が見える。 瞬間、ぎょっとする。 農家のおじいがそこらへんのキビで胴のあたりを押さえて言う。 「そらっ頭を落とせっ」 俺はゆきを振り上げ、打ち下ろす。 落ちない。 もう一発。 おじいが3時の休憩で言う。 「噛まれたらヤバイぞ、小浜に血清はないからな。 」おいおい。 これからもハブとの闘いは続く。 日毎に寒さが深まる。 といっても14度だけど。 みんなブルブル震えてる。 左足を馬に踏まれた。 追伸:おじいは昔よく人魂を見たそうだ。 最近は見なくなったらしい。 チュータ さすらい人の青年・チュータ。 みかんの収穫の手伝いに行きました。 ************** 2003年12月 八幡浜の消印 ************** 冷夏、暖冬の2003年。 カレンダーもめくれ、最後の月となりました。 荷物、届きました。 ありがとう。 こちらは暖かくて、日中はTシャツで汗かいて、ミカンもいでます。 すっかり日焼けしました。 ゆかいな仲間達もできました。 この人達はホントにゆかいです。 一日のうちでやらなくちゃならんことは、ミカンもいで、フロ入って、メシ食うことだけです。 だからまったく時計を見ない。 朝も勝手に目が覚める。 起きるとものすごい数の鳥たちが好き勝手に騒いでいる。 一日の始まりの空気の中で身体を動かすのは、なんとも気持ちがいい。 ヤモリや巨大グモが度々現れ、トイレは壊れ、テレビと水道もブッ壊れ、フトンはダニだらけ。 床にはでかい穴と・・・まあすごい小屋(山小屋よりひどい)で暮らしているけれど、ここの生活、悪くないです。 しかしTさんのミカン山はどでかい。 これをカラッポにすると思うと、すこしクラッとする。 それではみんな、心と身体 大切に・・・ こたつにミカンにReggea music チュータ さすらい人の青年・チュータ。 穂高の山荘に手伝いに行きました。 麓にゴミを捨てに降り、山荘に食材を持って登る。 山荘の管理人は見えない所でやることが沢山あるようです。 ************** 2003年7月 穂高の消印 ************** みんなお元気ですか。 つゆ明けも間近で、いよいよ夏本番ですね。 お身体大切に。 さて僕は、雲の上にいます。 仕事は「大変だ」と思えば大変ですが、「大変じゃない」と思えば大変じゃありません。 山の仕事はぐんと力仕事が多いですが、やりがいがあります。 山の人達は調和と水を大切にします。 水は大変貴重です。 毎日毎日、深いふか~い自然に囲まれています。 本当に言葉では表せません。 ぜひ時間があれば遊びに来てください。 素晴らしいパワースポットです。 先日、ネパールのシェルパのサーダー二人と、下の小屋まで歩荷した時、熊の足跡を見つけました。 フンも見ました。 昨日は熊道も見つけました。 熊をこんなに身近に感じたのは初めてのコトです。 早く熊が見たいです。 それではまたお便りします。 山荘より。 チュータ 青年・チュータはさすらい人。 世界各地を訪ねたり、収穫の手伝いをしに日本各地へフラリと旅立ちます。 今週は、そんな彼が家族に宛てて送ってくれた『片道書簡』をお楽しみください。 ************** 2002年6月 メキシコ・パレンケの消印 ************** Ola! 皆々様お元気でしょうか? 外では、いかつい親父達の生演奏が村の人達をトランスしている。 子供がたくさんはしゃいでいる。 ココはジャングルの真ん中の小さな村 パレンケ。 午前0:30である。 それにしてもTacoは旨い。 辛くないTacoなどTacoではない。 ちなみにTacosの『s』は複数形の『s』である。 Mexicoはタフな国だ。 チュータ 2004年6月11日・21時。 吉祥寺のソウル・バーのドアをくぐり、カウンターの端にひとり座っている紅(コウ)を見つけると、隣のスツールに腰掛けながらオレはボヤいた。 「こんな日にメールで呼びだすなよ。 オレ、今日は落ちてんだからさ・・・。 」 「落ちてんだろうなーって思ったからヒロのこと呼びだしたんじゃない。 」 紅は目を合わせるでもなく、オレの横でふわりと微笑んだ。 BGMには昨日他界してしまったオレの心の師、レイ・チャールズが流れている。 オレが落ちているのは、まさしく彼を失ってしまったことが原因だ。 彼の新曲は、もう聴けないのだ。 そして当然、もう二度と来日することも。 会話もせずフワフワとそんな事を考えている。 『Jorgia on my mind』。 レイ・チャールズの歌声とピアノの音だけが二人の間の空気を振動させていた。 差し向いではなく、カウンターに横並びのオレと紅。 二人の関係を説明するならば、ちょうどこんな感じ。 愛はあるけど恋人ではない、『盟友』とか『同胞』とか・・・・・・いや違うな。 すでに『くされ縁』って匂いがしなくもない。 会話がなくても、その場が成り立ってしまうようになっていた。 紅と初めて会ったのは20年も前になる。 大学のゼミでいきなりオレに 「キミ、彼女と別れたばっかなの?」って初っぱなから失礼な事を言ってきたのが紅だった。 前の彼女と別れたのはもうだいぶ前のことで、ただあんまりいい別れ方じゃなかったこともあって「しばらくオンナはいいや」って思っていた頃だった。 だから、不躾な逆ナンを仕掛けてきた変なオンナだな、と見上げてみたら、あら。 わりといいんでないの?ってなルックス。 「彼女は募集中だよ~ん。 キミ立候補してくれんの?」 我ながら軽っちょく返したら、紅はまるで外人みたいに思いっきり「は」の字を並べるように大笑いしてこう言った。 「アンタにとって、あたしみたいなのは恋愛の対象にならないと思うよ。 」 ・・・・・う~ん・・・・確かに。 ルックスはいいけど、なんだかどっかで会ったような、妹とか家族っぽいこの感覚はなんなんだ??? 「それよかアンタ、前の彼女の生き霊しょってるよ~。 もうオンナはいいや、とか思ってんじゃない?」 「えっ!!!」 オレってそんなに顔に出てたか!? それより、彼女の生き霊ってなんじゃそりゃ! 「よっぽど恨まれるようなこと彼女にしたの?」 「し、しねえよ! そりゃ、あんまりスッキリとは別れられなかったけど・・・ ってか、むしろオレの方がダメージでかいんすけど。 」 「あのねえ、彼女が幸せになれるように願ってあげると離れてくれるよ。 『オレの方が』なんて言ってないで、ちゃんと願ってあげなね。 じゃないとアンタも次に進めないよ。 」 紅には子供の頃からそういう不思議な力があったらしい。 まわりに気持ち悪がられるのでめったに口にしないそうだが、その日はゼミに来てみたら、あんまりにも立派なモンをしょってる男がいたんで、ついアドバイスゴコロが疼いたんだそうだ。 その日からオレらは意気投合し、でも決して恋愛感情は湧き出て来ることはなく。 卒業し、就職でバラバラになってからも、オレが何かにぶち当たっていると、必ずと言っていいほど紅から連絡が来るんである。 先に座っていた紅が頼んだ二杯目がカウンターに置かれる頃、BGMは『Unchain my heart』になっていた。 ああ、オレが大好きな曲・・・。 いや、お袋が大好きだったと言うべきか。 新しもん好きの親父が買ったドでかいステレオで(当時ステレオはチェスト並みにめちゃくちゃでかかったのだ)毎朝のようにお袋はこの曲のレコードをかけていた。 「おかあさんといっしょ」を見るよりも前から、オレはレイ・チャールズの洗礼を受けていたのだ。 「就職してすぐくらいにさ」 「ん?」 やっと口を開く気になったオレに、紅が震える空気を壊さないようにそっと振り向く。 「お袋をレイ・チャールズの来日公演に招待してやったのよ。 」 「ふーん、お母さん、レイ・チャールズ好きだったって前にヒロ言ってたもんね。 喜んだでしょ。 親孝行されて。 」 「いやあ、結局オレの方が喜んじゃってたな、あの時。 お袋ってば、『カッコいい!カッコいい!』って連発してたんだけど、実際ホントにカッコよかったんだよ。 目が見えないだなんて、全然気にもならなかったな。 ステージに上がるときはピアノの前まで手を引いてもらうんだけどさ、弾きだしたらもうスゴイわけ。 観客に対してどう魅せるかってのを研究してんだよな。 あの独特の体を左右に振るやつとか、足をバタバタと踏みならすやつとかさ。 あっという間にステージと観客を一体にしちまうんだよ。 」 「ヒロはバンドでギターやってたよね。 なんでピアノにしなかったの?」 「そりゃあ子供の頃はピアノって・・・女のコが習うもんだって思ってたから。 それに、ピアノってギタリストと違って動き回れないじゃん。 」 「ギターの方がカッコよく見えるって思ったわけだ。 」 「んんん~。 ・・・そういうコトなんですけどね。 」 「わははは。 フツーすぎ!」 「だけどね、実際やってみると、弾くことに集中しちゃってカッコよく見せるのをおろそかにしがちになっちゃうんだよね。 みんなアレ、気持ち良く弾いてるように見えるけど、見えるだけでホントはそう見せているんだよね。 」 「そうなの? ソロとか弾いてるの見ると、もう自分に酔っちゃってるな~って感じするけどなあ。 」 「いんや、あれは気持ち良く弾いてるように見せつつ、次はどのフレーズを弾いたらカッコいいだろうかって常に考えてるから、かな~りテンパってるんすよ。 」 「ははは、そうなんだ~。 そう見えないからスゴイよね。 」 「レイ・チャールズは目が見えないからこそ、余計にそこにもこだわったのかなあ・・・。 」 オレはギターを弾いてるとき、『魅せる』ということを同時にするのがとても苦手だった。 リズムに合わせて頭を振ることはできても、ジャンプしてみせたり、ギターを振り回したり、そんなことするより音に没頭していたかった。 ヴォーカルとギターとベースはステージを動き回れるんだ。 キーボードやドラムと違ってね。 だから、観客との一帯感を創りだすのはオレたちの役目でもあったんだ。 でもオレには正直、ちょっとばかし面倒な役目だった。 レイ・チャールズは歌とピアノでみごとにそれをやってのけていた。 椅子から体を離したら、盲目の彼にはキーの位置が判らなくなってしまうのに。 彼にはそんな『見えない鎖』なんてメじゃなかったんだ。 『魅せる』ことに気をとられなくていい程に、彼は音楽に愛されていた。 彼自身がソウルミュージックのエネルギーでこの世に創られた人だったのだ。 お袋が他界してからは、彼が来日するたびに『また今度』『また今度』って延ばし延ばしにしてしまってた。 オレだけが楽しむのは、お袋に悪いような気がしてたんだ。 今更だけど、もったいないコトをしてたよな。 あの大きくうねるような会場の一体感。 もう二度と、味わうことは出来ない。 「Unchain your heart. Set him free. 」 オレのグルグルを経ち切るかのように紅が言った。 「おいおい、違うだろ。 『Unchain my heart』だ。 your、じゃない。 」 「違う、ヒロに言ったの。 捕らわれてちゃだめだよって。 『心を解き放て』。 レイ・チャールズを自由にしてあげなくちゃ。 」 「わかってるさ。 でも、もう二度とあのステージを観ることは出来ないんだなって・・・。 」 「あのね、もっと喜ぼうよ。 」 「喜ぶ? レイの死を?」 「そう。 だって、レイ・チャールズはもう、盲目の人じゃないんだよ。 」 レイの曲が流れている。 Unchain my heart・・・Set me free・・・ Unchain my heart・・・Set me free・・・ 「そうだな・・・。 」 「そうだよ。 」 解き放たれた彼は、もう盲人ではない。 今ごろどんな風景を楽しんでいるんだろうか。 ずっと見てみたかったものは見れたんだろうか。 珊瑚礁の広がる海のその向こうに美しく沈んでゆく夕日。 見渡すかぎりに広がるヒマワリの黄。 虹やオーロラの儚い美しさはその目にもう捉えただろうか。 「あっちではきっと、風景にインスパイアされた彼の新曲が聴けるんだろうなあ。 」 あ、我ながらまたアホなコト言ってしまった。 「そうそう。 きっとヒロのお母さんはチケット握り締めて彼の来るのを待ってたと思うわよ。 」 「そうか。 ・・・いいなあ、お袋。 オレもいつか行ってやるぞ~!」 少なくともオレは、彼と同じ時代を生きることが出来たんだ。 それも、お袋のおかげで早くから彼を知ることが出来た。 ライブも体験した。 すっごく影響された。 それだけでも、ものすごくラッキーなことだよな。 ほんのちょっと見方を変えたら、なんだか胸がジンワリと暖まった。 さっきまで落ちてたオレはどこかに行ってしまった。 あっけない程に。 いいのか?これで。 いいんだよな。 レイ、ありがとう。 出来ればまた、次も同じ時代を生きたいよ。 それから口に出しては言えないけどさ。 お前もスゲエよ。 ありがとな。

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************** 2004年2月 小浜島の消印 ************** やぁみんなみんな元気かな。 こっちは20度も越えてもう初夏だね。 すっかり南の島。 今日、島の子供と遊んだ。 こっちの子供はホント子供らしい顔をしてる。 まっすぐな瞳してる。 仕事はきつい。 今までの農業で一番きつい。 それでも、おじいやおばあと島歌を歌いながら働いていると、きついとかつらいとか、どうでもよくなってくるんだ。 俺は肉体労働をするようになってから、働いてお金を稼ぐことにすげー手応えを感じるようになった。 なんだか分からないお金をもらうよりよっぽどいい。 仕事が終わるとみんな土まみれになってメシ食ってる。 みんないい顔してるよ。 ぜひ経験してほしい。 身体の芯から強くなるよ。 そして熱くなる。 もう島の生活にも慣れてきた。 友達もできたし潮で天気もよめる。 ゆきも毎日研いでるうちに上手くなってきた。 物や身体を大切にするようになった。 これはすごく大切なことだと思う。 結局人間は自分の身体ひとつに依存してるんだから。 仕事が終わると、サッカーやバスケしてる。 あと、毎日3Km走ってる。 なんか走りたくなる島なんだ。 こんなに健全なのは、このかた初めてかも。 Very thanx to Chuta-kun!!! さすらい人の青年・チュータ。 今度はサトウキビの収穫の手伝いに。 ************** 2004年1月 小浜島の消印 ************** ハブとの決闘 今日、ついにハブに出くわした。 スグには判らなかった(保護色になってる)。 とぐろを巻いて、じっと構えていた。 後で聞いた事だが、とぐろを巻いている時は危険らしい。 覚悟を決めて、向かってくるらしい。 ゆき(キビをなぎ倒すナタのこと)の先で、ひょいっと首を押さえる。 バタバタと暴れて、苦しそうに口を開ける。 いくつもの牙と舌が見える。 瞬間、ぎょっとする。 農家のおじいがそこらへんのキビで胴のあたりを押さえて言う。 「そらっ頭を落とせっ」 俺はゆきを振り上げ、打ち下ろす。 落ちない。 もう一発。 おじいが3時の休憩で言う。 「噛まれたらヤバイぞ、小浜に血清はないからな。 」おいおい。 これからもハブとの闘いは続く。 日毎に寒さが深まる。 といっても14度だけど。 みんなブルブル震えてる。 左足を馬に踏まれた。 追伸:おじいは昔よく人魂を見たそうだ。 最近は見なくなったらしい。 チュータ さすらい人の青年・チュータ。 みかんの収穫の手伝いに行きました。 ************** 2003年12月 八幡浜の消印 ************** 冷夏、暖冬の2003年。 カレンダーもめくれ、最後の月となりました。 荷物、届きました。 ありがとう。 こちらは暖かくて、日中はTシャツで汗かいて、ミカンもいでます。 すっかり日焼けしました。 ゆかいな仲間達もできました。 この人達はホントにゆかいです。 一日のうちでやらなくちゃならんことは、ミカンもいで、フロ入って、メシ食うことだけです。 だからまったく時計を見ない。 朝も勝手に目が覚める。 起きるとものすごい数の鳥たちが好き勝手に騒いでいる。 一日の始まりの空気の中で身体を動かすのは、なんとも気持ちがいい。 ヤモリや巨大グモが度々現れ、トイレは壊れ、テレビと水道もブッ壊れ、フトンはダニだらけ。 床にはでかい穴と・・・まあすごい小屋(山小屋よりひどい)で暮らしているけれど、ここの生活、悪くないです。 しかしTさんのミカン山はどでかい。 これをカラッポにすると思うと、すこしクラッとする。 それではみんな、心と身体 大切に・・・ こたつにミカンにReggea music チュータ さすらい人の青年・チュータ。 穂高の山荘に手伝いに行きました。 麓にゴミを捨てに降り、山荘に食材を持って登る。 山荘の管理人は見えない所でやることが沢山あるようです。 ************** 2003年7月 穂高の消印 ************** みんなお元気ですか。 つゆ明けも間近で、いよいよ夏本番ですね。 お身体大切に。 さて僕は、雲の上にいます。 仕事は「大変だ」と思えば大変ですが、「大変じゃない」と思えば大変じゃありません。 山の仕事はぐんと力仕事が多いですが、やりがいがあります。 山の人達は調和と水を大切にします。 水は大変貴重です。 毎日毎日、深いふか~い自然に囲まれています。 本当に言葉では表せません。 ぜひ時間があれば遊びに来てください。 素晴らしいパワースポットです。 先日、ネパールのシェルパのサーダー二人と、下の小屋まで歩荷した時、熊の足跡を見つけました。 フンも見ました。 昨日は熊道も見つけました。 熊をこんなに身近に感じたのは初めてのコトです。 早く熊が見たいです。 それではまたお便りします。 山荘より。 チュータ 青年・チュータはさすらい人。 世界各地を訪ねたり、収穫の手伝いをしに日本各地へフラリと旅立ちます。 今週は、そんな彼が家族に宛てて送ってくれた『片道書簡』をお楽しみください。 ************** 2002年6月 メキシコ・パレンケの消印 ************** Ola! 皆々様お元気でしょうか? 外では、いかつい親父達の生演奏が村の人達をトランスしている。 子供がたくさんはしゃいでいる。 ココはジャングルの真ん中の小さな村 パレンケ。 午前0:30である。 それにしてもTacoは旨い。 辛くないTacoなどTacoではない。 ちなみにTacosの『s』は複数形の『s』である。 Mexicoはタフな国だ。 チュータ 2004年6月11日・21時。 吉祥寺のソウル・バーのドアをくぐり、カウンターの端にひとり座っている紅(コウ)を見つけると、隣のスツールに腰掛けながらオレはボヤいた。 「こんな日にメールで呼びだすなよ。 オレ、今日は落ちてんだからさ・・・。 」 「落ちてんだろうなーって思ったからヒロのこと呼びだしたんじゃない。 」 紅は目を合わせるでもなく、オレの横でふわりと微笑んだ。 BGMには昨日他界してしまったオレの心の師、レイ・チャールズが流れている。 オレが落ちているのは、まさしく彼を失ってしまったことが原因だ。 彼の新曲は、もう聴けないのだ。 そして当然、もう二度と来日することも。 会話もせずフワフワとそんな事を考えている。 『Jorgia on my mind』。 レイ・チャールズの歌声とピアノの音だけが二人の間の空気を振動させていた。 差し向いではなく、カウンターに横並びのオレと紅。 二人の関係を説明するならば、ちょうどこんな感じ。 愛はあるけど恋人ではない、『盟友』とか『同胞』とか・・・・・・いや違うな。 すでに『くされ縁』って匂いがしなくもない。 会話がなくても、その場が成り立ってしまうようになっていた。 紅と初めて会ったのは20年も前になる。 大学のゼミでいきなりオレに 「キミ、彼女と別れたばっかなの?」って初っぱなから失礼な事を言ってきたのが紅だった。 前の彼女と別れたのはもうだいぶ前のことで、ただあんまりいい別れ方じゃなかったこともあって「しばらくオンナはいいや」って思っていた頃だった。 だから、不躾な逆ナンを仕掛けてきた変なオンナだな、と見上げてみたら、あら。 わりといいんでないの?ってなルックス。 「彼女は募集中だよ~ん。 キミ立候補してくれんの?」 我ながら軽っちょく返したら、紅はまるで外人みたいに思いっきり「は」の字を並べるように大笑いしてこう言った。 「アンタにとって、あたしみたいなのは恋愛の対象にならないと思うよ。 」 ・・・・・う~ん・・・・確かに。 ルックスはいいけど、なんだかどっかで会ったような、妹とか家族っぽいこの感覚はなんなんだ??? 「それよかアンタ、前の彼女の生き霊しょってるよ~。 もうオンナはいいや、とか思ってんじゃない?」 「えっ!!!」 オレってそんなに顔に出てたか!? それより、彼女の生き霊ってなんじゃそりゃ! 「よっぽど恨まれるようなこと彼女にしたの?」 「し、しねえよ! そりゃ、あんまりスッキリとは別れられなかったけど・・・ ってか、むしろオレの方がダメージでかいんすけど。 」 「あのねえ、彼女が幸せになれるように願ってあげると離れてくれるよ。 『オレの方が』なんて言ってないで、ちゃんと願ってあげなね。 じゃないとアンタも次に進めないよ。 」 紅には子供の頃からそういう不思議な力があったらしい。 まわりに気持ち悪がられるのでめったに口にしないそうだが、その日はゼミに来てみたら、あんまりにも立派なモンをしょってる男がいたんで、ついアドバイスゴコロが疼いたんだそうだ。 その日からオレらは意気投合し、でも決して恋愛感情は湧き出て来ることはなく。 卒業し、就職でバラバラになってからも、オレが何かにぶち当たっていると、必ずと言っていいほど紅から連絡が来るんである。 先に座っていた紅が頼んだ二杯目がカウンターに置かれる頃、BGMは『Unchain my heart』になっていた。 ああ、オレが大好きな曲・・・。 いや、お袋が大好きだったと言うべきか。 新しもん好きの親父が買ったドでかいステレオで(当時ステレオはチェスト並みにめちゃくちゃでかかったのだ)毎朝のようにお袋はこの曲のレコードをかけていた。 「おかあさんといっしょ」を見るよりも前から、オレはレイ・チャールズの洗礼を受けていたのだ。 「就職してすぐくらいにさ」 「ん?」 やっと口を開く気になったオレに、紅が震える空気を壊さないようにそっと振り向く。 「お袋をレイ・チャールズの来日公演に招待してやったのよ。 」 「ふーん、お母さん、レイ・チャールズ好きだったって前にヒロ言ってたもんね。 喜んだでしょ。 親孝行されて。 」 「いやあ、結局オレの方が喜んじゃってたな、あの時。 お袋ってば、『カッコいい!カッコいい!』って連発してたんだけど、実際ホントにカッコよかったんだよ。 目が見えないだなんて、全然気にもならなかったな。 ステージに上がるときはピアノの前まで手を引いてもらうんだけどさ、弾きだしたらもうスゴイわけ。 観客に対してどう魅せるかってのを研究してんだよな。 あの独特の体を左右に振るやつとか、足をバタバタと踏みならすやつとかさ。 あっという間にステージと観客を一体にしちまうんだよ。 」 「ヒロはバンドでギターやってたよね。 なんでピアノにしなかったの?」 「そりゃあ子供の頃はピアノって・・・女のコが習うもんだって思ってたから。 それに、ピアノってギタリストと違って動き回れないじゃん。 」 「ギターの方がカッコよく見えるって思ったわけだ。 」 「んんん~。 ・・・そういうコトなんですけどね。 」 「わははは。 フツーすぎ!」 「だけどね、実際やってみると、弾くことに集中しちゃってカッコよく見せるのをおろそかにしがちになっちゃうんだよね。 みんなアレ、気持ち良く弾いてるように見えるけど、見えるだけでホントはそう見せているんだよね。 」 「そうなの? ソロとか弾いてるの見ると、もう自分に酔っちゃってるな~って感じするけどなあ。 」 「いんや、あれは気持ち良く弾いてるように見せつつ、次はどのフレーズを弾いたらカッコいいだろうかって常に考えてるから、かな~りテンパってるんすよ。 」 「ははは、そうなんだ~。 そう見えないからスゴイよね。 」 「レイ・チャールズは目が見えないからこそ、余計にそこにもこだわったのかなあ・・・。 」 オレはギターを弾いてるとき、『魅せる』ということを同時にするのがとても苦手だった。 リズムに合わせて頭を振ることはできても、ジャンプしてみせたり、ギターを振り回したり、そんなことするより音に没頭していたかった。 ヴォーカルとギターとベースはステージを動き回れるんだ。 キーボードやドラムと違ってね。 だから、観客との一帯感を創りだすのはオレたちの役目でもあったんだ。 でもオレには正直、ちょっとばかし面倒な役目だった。 レイ・チャールズは歌とピアノでみごとにそれをやってのけていた。 椅子から体を離したら、盲目の彼にはキーの位置が判らなくなってしまうのに。 彼にはそんな『見えない鎖』なんてメじゃなかったんだ。 『魅せる』ことに気をとられなくていい程に、彼は音楽に愛されていた。 彼自身がソウルミュージックのエネルギーでこの世に創られた人だったのだ。 お袋が他界してからは、彼が来日するたびに『また今度』『また今度』って延ばし延ばしにしてしまってた。 オレだけが楽しむのは、お袋に悪いような気がしてたんだ。 今更だけど、もったいないコトをしてたよな。 あの大きくうねるような会場の一体感。 もう二度と、味わうことは出来ない。 「Unchain your heart. Set him free. 」 オレのグルグルを経ち切るかのように紅が言った。 「おいおい、違うだろ。 『Unchain my heart』だ。 your、じゃない。 」 「違う、ヒロに言ったの。 捕らわれてちゃだめだよって。 『心を解き放て』。 レイ・チャールズを自由にしてあげなくちゃ。 」 「わかってるさ。 でも、もう二度とあのステージを観ることは出来ないんだなって・・・。 」 「あのね、もっと喜ぼうよ。 」 「喜ぶ? レイの死を?」 「そう。 だって、レイ・チャールズはもう、盲目の人じゃないんだよ。 」 レイの曲が流れている。 Unchain my heart・・・Set me free・・・ Unchain my heart・・・Set me free・・・ 「そうだな・・・。 」 「そうだよ。 」 解き放たれた彼は、もう盲人ではない。 今ごろどんな風景を楽しんでいるんだろうか。 ずっと見てみたかったものは見れたんだろうか。 珊瑚礁の広がる海のその向こうに美しく沈んでゆく夕日。 見渡すかぎりに広がるヒマワリの黄。 虹やオーロラの儚い美しさはその目にもう捉えただろうか。 「あっちではきっと、風景にインスパイアされた彼の新曲が聴けるんだろうなあ。 」 あ、我ながらまたアホなコト言ってしまった。 「そうそう。 きっとヒロのお母さんはチケット握り締めて彼の来るのを待ってたと思うわよ。 」 「そうか。 ・・・いいなあ、お袋。 オレもいつか行ってやるぞ~!」 少なくともオレは、彼と同じ時代を生きることが出来たんだ。 それも、お袋のおかげで早くから彼を知ることが出来た。 ライブも体験した。 すっごく影響された。 それだけでも、ものすごくラッキーなことだよな。 ほんのちょっと見方を変えたら、なんだか胸がジンワリと暖まった。 さっきまで落ちてたオレはどこかに行ってしまった。 あっけない程に。 いいのか?これで。 いいんだよな。 レイ、ありがとう。 出来ればまた、次も同じ時代を生きたいよ。 それから口に出しては言えないけどさ。 お前もスゲエよ。 ありがとな。

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