1.発行事業者に登録しないとどうなるか? 免税事業者が適格請求書等発行事業者に登録しないとどのような影響があるのでしょうか。 インボイス制度の概要とともに解説していきます。 1-1.インボイス制度 インボイスは 適格請求書とも言い、「納品書」「送り状」「請求書」等の役割を担う書類です。 インボイスは現在の発行されている請求書と比べて、次のような違いがあります。 明細ごとの適用税率、消費税額の記載が義務付けられる• 課税事業者に対する交付義務がある• 不正交付には罰則が定められている• 原則、課税事業者のみが発行できる このように、インボイスは現行の請求書よりかなり厳密にルールが規定されている書類なのです。 インボイス制度の導入には軽減税率の実施が関係しています。 軽減税率導入後は複数の税率が混在する状態になるため、消費税計算上、書式が定まっていない現在の請求書では様々な不具合が生じる可能性があります。 さらに言えば、軽減税率を利用した不正に一役買ってしまう可能性もあるでしょう。 インボイス制度を導入すれば取引の内容や取引ごとの税率が明確化されるため、トラブルや不正防止に有効だと考えられているのです。 なお、インボイスは原則、消費税の課税事業者のみが発行できることとなっています。 事業を開始して間もないうちは、本業に精一杯で税金面のことを考える余裕がない方も多いことでしょう。 ただ、様々な税金が… 1-2.免税事業者はインボイスを発行できない 先ほども触れた通り、インボイスは原則として、消費税の免税事業者は発行することができません。 そこにインボイス制度の大きな問題点があるのです。 インボイス制度導入後は、消費税の仕入税額控除を受けるための要件として、インボイスの保存が原則必要となります。 したがってインボイスを発行できない 免税事業者からの仕入は、仕入税額控除が適用できなくなってしまうのです。 仕入先にとっては、「免税事業者に支払った消費税は控除できない」という事態となるため、大変な損を被ります。 ただし、免税事業者からの仕入税額控除の廃止は段階的に行われることとなっており、具体的には次のスケジュールで実施されます。 期間 仕入税額控除の範囲 2023年9月30日まで 100%控除 2023年10月1日~2026年9月30日まで 80%控除 2026年10月1日~2029年9月30日まで 50%控除 2029年10月1日から 完全廃止 このように、免税事業者からの仕入について仕入税額控除が完全に廃止されるのは2029年10月1日からとなっており、まだ猶予は残されています。 1-3.取引を打ち切られる可能性 課税事業者からすると、同じ仕入をするなら仕入税額控除が適用される事業者から仕入れようとするのは当然と言えます。 したがって免税事業者は 事業者間の取引から排除されてしまう恐れがあるのです。 もしくは仕入税額控除が使えない分、商品価格の値下げを強要されることもあるかもしれません。 「なぜこんなひどい制度を導入するんだ」と感じる方もいると思いますが、軽減税率を成り立たせるうえでやむを得ないという面もあります。 1-4.益税の問題 免税事業者が取引から排除されかねない制度の導入に、「国は免税事業者を無視するのか!」と憤りを覚える方もいるかもしれません。 しかし考え方によっては、「免税事業者は今まで優遇されていただけ」という見方もできるのです。 それは「 益税」という、消費税制を考えるうえでしばしば議論となる問題が関係しています。 現行の消費税制では、免税事業者は売上時に消費税を預かっているにもかかわらず、その消費税を国に納めていません。 本来、売上時に受け取った消費税は国に納めなければならないのですが、免税事業者に限り納付しなくて良いことになっているのです。 要するに、免税事業者は消費税の分だけ特をしている、とも言えますよね。 このように消費税が事業者の利益となってしまうことを「益税」と言います。 益税問題には不公平感を指摘する声が挙がっていたのですが、インボイス制度を導入することで益税問題を解決することができると言われています。 したがって国は免税事業者を不利な立場に追いやろうという意思があると言うよりも、本来あるべき消費税制に近づけようとしているとも考えられます。 しかしそうは言っても免税事業者にとっては死活問題。 簡単に納得できる人は少ないでしょうが、そういう考え方もあることは知っておいたほうがいいでしょう。 2.発行事業者に登録するとどうなるか? 免税事業者はインボイスを発行できないと説明してきましたが、課税事業者となったうえで登録事業者となることでインボイスを発行できるようになります。 登録自体はそこまで厳しい審査があるわけではないので、比較的すんなり登録事業者になることができるはずです。 免税事業者が登録事業者となった場合どのような影響があるのか、詳しく解説していきます。 2-1.納税の義務が発生 免税事業者がインボイスを発行できるようになるためには、課税事業者となるしかありません。 当然の話ですが、課税事業者となれば消費税の納税義務が発生します。 インボイスを発行できるようになれば取引先から敬遠されることはなくなりますが、今まで免除されてきた消費税の負担が生じてしまうのです。 また、給与や減価償却費など、仕入税額控除の対象とならない経費が大きい事業者の場合、決算上は赤字でも高額な消費税が発生することも珍しくありません。 気になる方は直近の決算の数字だとどれくらいの消費税負担が生じるのか、試算してみることをおすすめします。 2-2.経理負担が増える インボイス制度には、事業者の経理事務の負担が増大するという問題点が指摘されています。 現行の帳簿や請求書による方式と比較して、ルールが厳密であることが理由の1つです。 インボイスには取引の相手方に対する交付義務があり、発行したインボイスの保存も義務付けられています。 さらに事務負担を増大させる要因として、もし取引金額等に変更があった場合、その都度インボイスの発行が必要となる点が挙げられます。 インボイス制度では、インボイスに記載された消費税額が仕入税額控除の対象となるので、金額に変更があればその都度訂正のインボイスが必要になるのです。 そうなってくると今まで請求書等の内容にそこまでうるさくなかった取引先も、仕入税額控除の金額と直結するとなれば、細かくチェックしてくることが想定されます。 インボイスの内容についての問い合わせや訂正依頼など、細かい作業が増えることは間違い無さそうです。 経理担当の従業員を持たない小規模零細企業であれば、社長が全てその処理を自分で行うことになるため、今まで以上に経理事務に割く時間が増えることでしょう。 2-3.登録すべきか? 今は免税事業者でも課税事業者になってインボイスの発行事業者に登録できることは説明した通りですが、果たして登録すべきなのかどうか、悩ましいところではないでしょうか。 「取引から排除されてしまうのであれば登録するしかないだろう」と思われるかもしれませんが、実は登録しないほうが得なケースもあります。 登録すべきかどうかは取引先の種類や売上高等を考慮して、総合的に判断する必要があります。 その基準については次章で詳しく解説します。 3.登録しないほうが良いケース まずは免税事業者であってもインボイスの発行事業者として登録しないほうが良いケースを考えていきましょう。 3-1.メイン顧客が消費者 一番分かりやすいケースは、青果店等のメイン顧客が一般消費者である事業者です。 「免税事業者からの仕入は仕入税額控除の対象とならない」という点が登録すべきかどうか悩むポイントでしたが、 顧客のほとんどが消費者であれば仕入税額控除のことを考慮する必要がありませんよね。 また、課税事業者との取引ではインボイスの発行義務がありますが、対消費者については発行義務はありません。 消費者に対して発行するレシートは、区分記載請求書等の要件が整っていれば良いことになっています。 現在軽減税率に対応していないレジを使用していても、「すべて軽減税率対応」などと手書きやスタンプの押印でも対応できることとされています。 2019年10月の消費増税と軽減税率の導入にともない、請求書や帳簿や領収書など(以下、請求書等)の記載・保存方法が、… ただし、メイン顧客が消費者であっても、例えば青果店であれば課税事業者である飲食店の仕入先にもなっている場合も多いでしょう。 そういったケースについては、インボイスを発行できないことを了承してもらうしかなさそうです。 3-2.メイン顧客が免税事業者 先程も触れましたが、インボイスは課税事業者との取引において発行義務が生じます。 つまり、事業者同士の取引だとしても、相手方が免税事業者であればインボイスの発行義務は無いのです。 例えばフリーランスのエンジニアとデザイナーなど、免税事業者同士の取引がメインである場合には、インボイスの登録事業者となる必要性は薄いでしょう。 3-3.値引したほうが有利な場合 記事前半で説明した通り免税事業者からの仕入には経過措置が設定されており、2029年9月までは仕入額の一部を仕入税額控除が適用できることとなっています。 したがって免税事業者からの仕入について仕入税額控除が完全撤廃されるまでの間は、その分を値引き対応することで取引先も納得してくれる可能性があります。 値引きが事業に与える影響は少なくないでしょうが、インボイス発行事業者に登録すると消費税の納税義務の負担が生じるため、どちらが得かを考えてみましょう。 もし値引き分の負担が消費税の納税額の負担より少ないのであれば、登録せずに値引きに対応した方が良いでしょう。 ただし、消費税の転嫁拒否等の法律上、取引先からの値引の強制は問題とされています。 しかし、零細事業者は値引きの要求に応じざるを得ないケースもあるのが実情です。 4.登録したほうが良いケース 一方、免税事業者がインボイス発行事業者に登録した方がいいケースについて考えてみましょう。 4-1.メイン顧客が課税事業者で、取引を停止されるおそれがある場合 繰り返し説明してきましたが、免税事業者からの仕入は仕入税額控除の対象になりません。 メインの顧客が課税事業者であれば、そのことを理由に取引を停止される可能性が高いと言えます。 消費税の納税義務が生じてしまいますが、取引先が無くなってしまえばそもそも事業を継続できなくなってしまいます。 現在より負担が増えることは承知の上で、課税事業者となってインボイス発行事業者に登録するしかないケースも多いでしょう。 4-2.売上アップが見込める場合 恐らく取引先の多くが、インボイス制度が開始された時点で登録事業者であるかどうかを確認してくることと思います。 インボイス制度開始時点で登録事業者となっていなければ、その時点で取引を停止されてしまう可能性も十分考えられるでしょう。 それならば、例えば近い将来売上が1,000万円(税込)を超える見込みがある方は、少し前倒しで課税事業者になったうえでインボイス発行事業者に登録してしまうのも一つの考え方です。 1年か2年早めに消費税の納税義務が生じてしまいますが、取引を停止されるよりはマシという考え方です。 5.登録方法 あなたがインボイス発行事業者に登録すべきかどうか、判断はついたでしょうか? ここからはその登録方法と流れを簡単に解説します。 5-1.税務署に登録申請 発行事業者の登録をするためには、税務署に登録申請書を提出する必要があります。 登録申請書は郵送や税務署の窓口に持参して提出するか、今後e-Taxによる電子申請でも提出可能となるようです。 具体的な登録申請の流れは次のとおりです。 登録申請書を所轄の税務署に提出する• 税務署による登録申請書の審査を受ける• 審査通過後、発行事業者として登録される。 登録情報が国税庁ホームページに公表される• 税務署から書面で登録完了の通知が届く 以上が登録申請から登録完了までの原則的な流れです。 なお、免税事業者が登録事業者になるためには、登録申請書とあわせて「 消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。 免税事業者のままでは登録申請をすることができないため、課税事業者となってから登録申請をするイメージです。 2023年10月からインボイス制度(適格請求書等発行方式)が始まりますが、インボイスを発行するためには、税務署に登録… ただし、次で解説するように、この手続きには経過措置が設定されています。 5-2.免税事業者に係る登録の経過措置 2023年10月1日の属する課税期間については、課税事業者選択届出書を提出しなくても登録事業者になることができるという経過措置が設定されています。 登録申請書が課税事業者選択届出書を兼ねており、インボイス発行事業者への登録をすれば自動的に課税事業者になり、納税義務が発生するという仕組みです。 ここまで読んだ方は大丈夫だとは思いますが、何も考えずに登録申請をしてしまうと自覚なく課税事業者になってしまうことも考えられるため、その点には注意しましょう。 6.【参考】見直し案 消費税制が大きく変わることが想定されていますが、各団体からは制度の見直しを求める意見が出されています。 ここではその一部をご紹介します。 6-1.免税事業者の制度を廃止する案 日本税理士会連合会は免税事業者制度を廃止し、すべての事業者を課税事業者としたうえで、売上高が少ない事業者は申告不要とする制度案を提示しています。 実は先ほど解説した益税問題以外にも、消費税の免税事業者制度には問題点が指摘されています。 例えば多額の設備投資を行った場合などは課税事業者であれば消費税の還付を受けることができますが、免税事業者では設備投資の際に支払った消費税は還付されず、支払ったままとなってしまいます。 還付を受けようとする場合には、その課税期間開始前に「課税事業者選択届出書」を提出しなければなりません。 しかし、事前に設備投資を見越して課税事業者となることが困難なこともありますし、そもそも課税事業者の選択ができることを知らない免税事業者も多いことでしょう。 このような免税事業者に関する問題が存在しているうえに、免税事業者の判定は非常に複雑なものとなっているという弊害もあるのです。 こうした一連の問題を解消するためには、すべての事業者を課税事業者として取り扱うことが一番手っ取り早いだろうとする考え方です。 その上でその課税期間の課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者を申告不要とすれば、小規模事業者の負担増も回避することができます。 この見直し案が採用されるかどうかは未知数ですが、もし取り入れられたとしたら、将来的にインボイス制度の免税事業者関係の問題解消にも役立つことになるかもしれません。 6-2.見直しを求める運動 建設業の従事者や職人で構成される全国建設労働組合総連合は、インボイス制度の導入を見直すよう働きかけています。 建設業にとって欠かせない存在である一人親方や職人の多くは免税事業者であるため、インボイス制度が導入されてしまうと甚大な影響が出ることが予想されます。 恐らく発注先は、一人親方や職人に対して値下げを要求するか、課税事業者となってインボイスを発行することを求めるでしょう。 これらの負担に耐えられず廃業する人が多く出れば、建設業そのものが立ち行かなくなってしまう可能性がある、というのが全建総連の主張です。 全建総連は財務省や国税庁との交渉を通じてインボイス制度の見直しを求めているようですが、「制度見直しの実現は程遠い状況」ということです。 まとめ インボイス制度が免税事業者に与える影響について解説してきました。 軽減税率導入に伴うトラブルや不正防止に役立つとされるインボイス制度ですが、その実施は免税事業者を厳しい立場に追いやることでしょう。 インボイスを発行できない免税事業者は、取引を停止されることを受け入れるか、消費税の課税事業者となって納税の負担を背負うことを選ぶか、どちらかを選択することになります。 迷った方は上でも解説した通り、次の2点を検討して対応方法を決定するのが良いでしょう。 メイン顧客が課税事業者、免税事業者、消費者のどれであるか• 近い将来、売上が1,000万円を超える見込みはないか 免税事業者からの仕入が仕入税額控除の対象とならなくなるにはまだ時間的猶予があります。 段階的に割合は減らされていきますが、完全に廃止されるのは2029年10月1日からです。 今のうちから対策を考えておくことで、インボイス制度導入後の傷を最小限に食い止めましょう。 Ad Exchange.
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この軽減税率を実現するために必須とされているのが、平成35年10月から本格導入される「インボイス方式」というもの。 軽減税率の影に隠れていますが、実は、このインボイス方式への変更は、消費税の仕組みを根本から変える導入以来最大の改正なのです。 そこで、今回は、インボイス方式導入によりどんな事業者が影響を受けるのかについてまとめてみようと思います。 請求書等保存方式からインボイス方式への移行 消費税の納税額は、課税売上に伴い預かった消費税から課税仕入れに伴い支払った消費税額を差し引く(仕入税額控除)ことで計算がされます。 この仕入税額控除を受けるために、現在の「請求書等保存方式」では、帳簿の保存に加え、取引の相手方(第三者)が発行した請求書等の保存を要件としています。 しかし、請求書等に適用税率・税額を記載することは義務付けられていません。 これが、インボイス方式になると、消費税の納税額を計算する際に、預かった消費税額から控除をする消費税(仕入税額控除)について、登録された「適格請求書発行事業者」が発行した「適格請求書」(インボイス)に記載された消費税額に基づき計算がされるのです。 「何のために使ったのか」に加えて「誰に支払ったのか」も考慮へ 請求書保存方式からインボイス方式への変更は、単に適用税率・税額を記載するかどうかという問題ではありません。 請求書等保存方式では、仕入税額控除が可能かどうかは、支払った消費税額が課税売上高に対応するものであれば控除可能、非課税売上に対応するものは控除不可という「何のために使ったのか」という点だけが判断基準となります。 その支払先が課税事業者であるか免税事業者であるかという「誰に支払ったのか」は仕入税額控除では影響がありません。 つまり、 支払う相手が免税事業者や個人消費者であっても仕入税額控除が可能なのです。 一方で、インボイス方式では、「何のために使ったのか」だけでなく「誰に支払ったのか」も仕入税額控除で問題になってきます。 というのも、免税事業者や個人消費者はこのインボイスを発行することが出来ません。 当然、 免税事業者や個人消費者からの仕入れについては仕入税額控除ができないことになるのです。 しかし、その売上高を獲得するための仕入れや諸経費等の支払いはあり、そこには消費税が上乗せされて支払いをする必要があります。 本来、間接税である消費税について、事業者は納税はしてもその負担をすることはありません。 あくまでも負担をするのは、最終消費者のみです。 そのため、預かった消費税額ー支払った消費税額が事業者の消費税の納税額となり、支払った消費税額が預かった消費税額より大きい場合にはその差額が還付されます。 しかし、免税事業者は、消費税の申告をすることがないため、その還付を受ける余地がありません。 結果的に、 免税事業者は、支払った消費税を自腹で負担しなくてはいけないことになるわけです。 今まで消費税の納税義務がなく益税を享受していた免税事業者が、今度は益税がなくなるどころか消費税を自腹で負担をしなくてはならないのですからその影響は甚大です。 言い換えれば、 免税事業者ゆえの益税を狙うような消費税節税対策は、インボイス方式導入までのものということなのです。 免税事業者・個人消費者からの買い取り 繰り返しになりますが、請求書保存方式では、「何のために使ったのか」は仕入税額控除に影響をしますが「誰に支払ったのか」は影響しない。 つまり、 支払う相手が免税事業者であっても、そもそも事業者ではない個人消費者であっても関係なく、その支払額に消費税額が含まれているものとして、仕入税額控除の対象となります。 もう消費税導入から30年も経つのに、未だに出版社から請求書発行の際に「消費税あり・なし」なんて記載を求められると、一体今まで何を学んできたんだと思いますがね。 自分たちが免税事業者や個人への支払いでも仕入税額控除をしているのに。 しかし、インボイス方式になると「誰に支払ったのか」も影響し、インボイスの発行できない免税事業者は仕入税額控除の対象にはなりません。 請求書等保存方式である現在、自分が免税事業者だからといって、消費税の上乗せをしないと支払う消費税を自腹で負担することになるので、多くのケースで売上高に消費税を上乗せして請求をしているはずです。 それがインボイス方式になり消費税を上乗せできなくなれば、支払う側からすると消費税の仕入税額控除ができない代わりに支払う金額も消費税分だけ減るので負担は変わらないでしょう。 しかし、税込金額で請求をしている免税事業者は、同じ金額で請求をしている課税事業者との競争上不利になります。 というのも、発注側からすると同じ金額を支払ったのに課税事業者からならば消費税額が控除できるのに、免税事業者からでは消費税額が控除できないということになるので、そもそも免税事業者が取引から排除される恐れもあるということ。 そのため、インボイス方式については、免税事業者への影響を考慮し、今後変更がされる可能性もあるのです。 問題なのは、個人消費者からの仕入れです。 個人消費者は自分に消費税の納税義務がないため、自分が受け取る代金に消費税が上乗せされているかなど興味はありません。 結果的に、実質的に消費税は上乗せされることなく買取価格が設定されているはずです。 それがインボイス方式に変わることで、個人消費者からの仕入れについては、今までできていた仕入税額控除ができなくなる。 その結果、同じ金額の仕入れでも、インボイス方式になることで、消費税の納税額は増えることになると考えられる。 つまり、特に、 マイホームを買い取る不動産業者、リサイクルショップ、中古車販売業者など個人からの仕入れの多い業者については、インボイス方式により、消費税の納税額が大幅に増えることになるのではないかと。 しかし、業界団体の政治的の折衝の賜物なのか、次のような例外規定は設置されました。 つまり、 古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者 の売却目的での仕入れについては、今までどおり免税事業者や個人消費者からの買い取りについても消費税の控除が可能となったのです。 まあ、軽減税率は建前で、財務省の本音は益税つぶしのためのインボイス方式でしょうけど。 それなら、非課税売上に係る課税仕入れに伴う消費税が控除できないという「控除対象外消費税」についてもさっさと改正して、シンプルに事業者は預かった消費税額ー支払った消費税額を納税額とする仕組みにしてほしいものですね。 Author:ヨシザワマサル 税理士。 1967年生まれ。 明治大学商学部卒業。 國學院大學大学院経済学研究科博士前期課程修了。 在学中からの國學院大學公開講座講師、本郷公認会計士事務所(現 辻・本郷税理士法人)勤務を経て、1994 年、当時26 歳で吉澤税務会計事務所開設。 現在、同事務所代表、株式会社トータル・マネジメント・コンサルティング代表取締役及びアライアンスLLPパートナー。 「潰れない会社づくりに寄与する」ことをミッションとし、税務・資金調達という自身の専門分野で種々の難問に取り組む「中小企業のファイナンス用心棒」。 加えて、法務やIT、不動産有効活用、マーケティングやPRなどの諸問題についても、多面的に構築した専門家ネットワークによる問題解決をすることで、クライアントの「全体最適を考慮した安定成長」に寄与している。 「プレジデント」「日経トップリーダー」「日経産業新聞」「アントレ」をはじめとした各種メディアでの取材・執筆実績多数。 著書にシリーズ37万部突破となった「図解会社の数字に強くなる!」(ディスカヴァートゥエンティーワン)、「会社の財務」(日経BP社)のほか、Amazonで和書総合第一位となった「儲かる会社にすぐ変わる!社長の時間の使い方」や「つぶれない会社に変わる!社長のお金の残し方」「起業家のための手ガネ経営で勝ち残る法」「はじめての独立・起業なるほど成功ガイド」(いずれも日本実業出版社)「ケチな社長はなぜお金を残せないのか」「2時間で丸わかり不動産の税金の基本を学ぶ」「一生食べていくのに困らない経理の仕事術」「はじめての人にもわかる金融商品解剖図鑑」(かんき出版)「27歳知識ゼロからの25分でわかる決算書入門」(中経出版)「なぜ決算書が読めるヤツは出世するのか」(西東社)などがある。 運営主体 2020年6月1日 カテゴリー• アーカイブ化•
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- 目次 -• 悩める女性のプラットフォーム!! オンラインカウンセリング『ボイスマルシェ』 展開している事業内容・特徴 2014年9月24日開催のTOKYOイノベーションリーダーズサミットにも参加したベンチャー、株式会社バーニャカウダの展開する女性専用のオンラインカウンセリングサービス『ボイスマルシェ』が人気だ。 さらに2014年9月12日にはSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資も実施した。 利用料金は55分で12,000円。 利用時間を超過すると自然に電話が切れる仕組みになっており、会話が弾み高額な請求が発生することはない。 25分で3,000円というお試しプランも提供しており、カウンセラー1人につき1回のみであるが、通常料金相当で4名のカウンセラーに相談できる。 サービス利用時間は8:00〜27:00まで。 申し込みは最短10分前から可能なので、平日や休日問わず自分の空いた時間で利用でき、かつ、ふと思いついた相談事も即座に相談可能だ。 同サービスが人気となっている最大のポイントは、カウンセリングをぐっと身近にしたことにある。 アメリカのドラマではよく登場するカウンセリングだが、日本ではちょっと敷居が高いイメージもあるが、実は大きな市場が古くから存在する。 それは占いマーケットだ。 女性にとって、占い師は「話し相手」であるという。 仕事・恋愛・お金・将来等々…。 さまざまな悩みを打ち明けるのは、現状の悩みを解決したいのはもちろん、しばし会話することによって精神的ストレスから解放されたいからでもあるそうだ。 このような側面を持つ占いの市場規模は、1兆3,000億円にも達する。 占いサービスの本質的な需要がカウンセリングという見方をすれば、カウンセリング市場は大きな可能性を秘めている。 株式会社バーニャカウダの創業者である古川 亮氏によれば、カウンセリングと占いマーケットの共通課題として、価格の不透明さ、個人経営が主で、時には怪しげな肩書き等から、利用者にとっては不安な面が多い事に気づいた。 そこで、そうした課題を解消したサービスにはニーズがあるのではと考え、2012年にサービスインした。 女性のためのオンラインカウンセリングと銘打った同サービスの最大の特徴は、いつでも、どこからでも、匿名で相談できることである。 在籍するカウンセラーは、2014年9月時点でのべ160名。 「心理カウンセラー」、「セラピスト」、「キャリアカウンセラー」、「風水コンサルタント」、「ライフオーガナイザー」等がおり、恋愛からキャリア、生活全般に至るまでの悩みに対し、適したカウンセラーを見つけることが可能。 テーマや職種別でのランキング評価や口コミも表示されているので、初カウンセリングの人でも相談しやすい。 利用方法も非常に簡単で、かつユーザービリティに優れている。 必要なのはサイトへの会員登録と電話のみ。 ニックネーム・氏名・電話番号・メールアドレス等を登録し、『ボイスマルシェ』が提供する仮想貨幣「マルシェフラン」を購入すれば準備完了。 カウンセリング・カルテと称されたカレンダーで、各カウンセラーの空いている時間を選び、相談したい内容をコメントすれば申し込みは終了。 あとは統一された050のボイスマルシェ専用電話番号から電話がかかってくるのを待つばかりだ。 そして、相談開始となるが、ユーザーの氏名・メールアドレス・電話番号等はカウンセラーに開示されることは無い。 カウンセラーはあらかじめ、事前に事務局からオンラインで伝えられた相談内容を吟味しているので、電話を受けた瞬間からスムーズに相談ができる。 当然ながら、相談内容が外部に漏らされることはない。 さらに、終了時にはカウンセラー評価もあるので、「有名な先生だから〜」といった肩書きに惑わされることもないのである。 占いやカウンセリングは相談する・される側に弱者強者の関係がつきまとう傾向にあるが、それが同サービスにはまったくない。 この点も、画期的なサービスの特徴と言えるだろう。 縁を味方につけ、アイデアを具現化。 幼少の頃より抱いた事業家へ ビジネスアイデア発想のきっかけ 『ボイスマルシェ』のアイデアは、代表取締役である古川亮氏と取締役の菅野彩子氏が出会ったリクルート時代に遡る。 古川氏は小学校の頃に松下幸之助の著書に感銘を受け、幼少より事業家をめざしていたそうだ。 その大志を抱き、一橋大学商学部経営学科に進学し卒業後、リクルートへ入社した。 不動産広告事業で営業職の激務をこなす日々。 その傍らで、自分の事業を成すべく起業ノウハウやエッセンスを蓄えながら、旧知の同僚とともに事業アイデアを練り、着々と起業の準備を進めていった。 2009年前後のことだった。 しかし、事情により、同僚が実家に一時戻ることを余儀なくされ、計画はストップしてしまう。 そのとき、たまたま社内研修で知り合ったのが菅野氏である。 起業をめざす古川氏と、新規事業立ち上げに携わり後は起業を見据えていた菅野氏は意気投合し、同僚が戻ってくるまでの間、事業アイデアの収集をともに行うことになった。 このときにフォーカスしたのが「占い」だという。 「私はもともと、個人が持つ技術や知識を集約し活用するビジネスを模索していました。 占いの市場調査をしてみて、占いが悩み相談所として機能していることに驚きました。 世の中には例えば、心理カウンセラーやファイナンシャルプランナーなど、あらゆる相談の専門家がいるわけです。 しかし、現状はそういった内容も占いに頼っているという女性が多かった。 この結果を見て、カウンセリング市場に自分が模索するビジネスがあるのではと確信したのです。 そうして、提供側の課題とユーザーが抱く敷居の訳を分析して、考案したのがボイスマルシェでした」 残念ながら、同僚は戻ってくることはなかった。 しかし、ビジネスアイデアを固め、ニーズの確信を得た2人は、ともに『ボイスマルシェ』を事業とし起業する意志を固めた。 そして、2010年1月に誕生したのが株式会社バーニャカウダだ。 その後、2年のインターバルを経て『ボイスマルシェ』が正式に誕生するわけだが、これまでの苦労話を古川氏に尋ねると、一番は資本金や、開発費用等の資金繰りだったと笑う。 特に開発では毎月100万円単位の資金が飛び、貯蓄も底を尽いたそうだ。 だが、一橋大学時代の恩師沼上幹教授、友人、(株)リクルートOBの事業者たちなどの人脈から、支援を受けることができ、氏は局面を乗り切りながらリリースに向けて猛進した。 そうしてサービスインした『ボイスマルシェ』。 在籍するカウンセラーが、各自のブログやHPなどで紹介することにより、口コミで認知度が広まり、確実に女性ユーザーを獲得していった。 市場規模は未知数!? ボイスマルシェが切り開く新しい事業領域 将来への展望 2014年9月。 同社はSMBCベンチャーキャピタルを引受先として第三者割当増資を実施、資金調達に成功した。 今度、一層のサービスの拡充、経営基盤の強化、人員採用に取り組んでいく構えだ。 近々の目標は年内に在籍カウンセラー数200名体制にすること。 また、今年12月には社員2名の採用も決定している。 古川氏自身はこの事業分野を「エアポケット」であると表する。 「ボイスマルシェに参加する、法人でない個人事業主の女性カウンセラーと協働する考え方は、従来の組織内の労働者を対象とする組織論や、市場での法人の振る舞いを研究してきたミクロ経済学的な考え方では、捉えきれない領域だと考えています。 まさにエアポケットで教科書が無いんですね。 そして、この市場開拓の鍵を握るのがインフラの構築です。 現状、専業のオンラインカウンセリングサービスは他にないため、旗手として後続のサービスのお手本となるノウハウやセオリーの構築にも力を注いでいきたい」 株式会社バーニャカウダは、今、成長期に突入している。 サービスの普及並びに事業領域のバリュー確立など、取り組むべきテーマは膨大だ。 狙いは占い市場をカウンセリング市場にリプレイスすること。 そうすれば、潜在的な事業規模はとても大きいと言えるだろう。 このエアポケットにはあふれんばかりの潜在ニーズとベンチャービジネスの魅力が詰まっている。
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