前立腺がんの病期分類と転移の傾向 前立腺がんの病期分類は、ほかのがんにも共通する「TNM分類」(T:癌の大きさ、N:リンパ節転移の状況、遠隔臓器の有無)に加え、「グリソンスコア」(G)という数値も勘案されます。 グリソンスコアとは、腫瘍の悪性度を図る病理学上の分類です。 前立腺に針を刺して採取した組織を病理医が顕微鏡で見て判断する検査で、2〜10の9段階からなります。 6以下は低悪性度、7は中悪性度、8〜10は高悪性度であることを示します。 以上を整理したものが、下記の病期分類です。 前立腺がんは、骨への転移が多い特徴があります。 初期段階では前立腺内に留まっているがん細胞が、増殖が進むにつれて皮膜をやぶって外へ出て転移するのです。 骨転移の有無は、「骨シンチグラフィ」という検査で調べられます。 骨シンチグラフィとは、放射性医薬品を注射し、専用の機器で画像を映し出す検査です。 転移がある部分には、放射性医薬品が集まりやすいため黒く写し出されます。 骨以外で転移が多い部位は、遠隔リンパ節、肝臓、肺、脳、皮膚等が挙げられます。 また、「PSA」の血中濃度でも、転移の有無が分かる場合があります。 PSAは前立腺特異抗原といって、もともと前立腺にある抗原です。 ただし、稀にPSAが低値でいながら骨転移のある場合もあります。 また、前立腺肥大症や炎症でも高くなる可能性があるため、絶対的な判断基準ではありません。 歴史的には、1941年にHugginsらが進行性前立腺癌患者に対し精巣摘出手術をして改善を認めたのが最初で、以来、精巣摘出手術は前立腺癌に対するゴールドスタンダードとして広く施行されてきました。 前立腺がんは、男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激によって成長するため、男性ホルモンを分泌する精巣をとってしまう方法です。 ただ、術後、長期間経過すると、小さくなったがんが再び大きくなる(再燃)という欠陥がありました。 そこで、根治を目的として導入されたのが根治的前立腺全摘除術です。 前立腺全摘除術は、前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道とを縫い合わせる標準術式です。 リンパ節転移のある場合は、郭清術を同時に施行するのが一般的です。 施設によっては、腹腔鏡による前立腺全摘除術も行われています。 また、放射線療法も著しく進歩し、前立腺全摘除術と並んで標準的治療法とされています。 放射線療法は照射方法により「外照射」と「内照射」に大きく分けられます。 外照射は、外から放射線を前立腺に向けて照射する方法です。 従来は、放射線が直腸や尿道などにも当たる難点がありましたが、現在は前立腺だけに放射線を集中させる技術が開発され、「原体照射」や「IMRT(強度変調放 射線治療)」が行われています。 一方、内照射は前立腺の中から放射線を当てる方法です。 放射線を発する小線源を前立腺内に埋め込む「密封小線源療法」は、外照射以上に多くの放射線を前立腺に集中させることができます。 現在は、欠陥のあった精巣摘出手術ではなく、ホルモン剤を注射して男性ホルモンのはたらきをブロックする内分泌療法が台頭してきました。 前立腺癌における化学療法では、内分泌療法にまさる治療法はないと言われています。 最も一般的な内分泌治療は、LH-RH(性線刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、および抗アンドロゲン剤の併用あるいは単独療法です。 LH-RHアゴニストとしては、「ゴセレリン」あるいは「リュープロレリン」の1カ月および3カ月製剤が使用されます。 抗アンドロゲン剤としてはステロイド性と非ステロイド性が日本で承認されています。 それぞれの治療法の適応基準 治療法の選択は、上記のTNM分類とグリソンスコアの組み合わせによって決められます。 T1a、N0、M0の場合 【グリソンスコア6以下】 T1a のがんは、多くが高分化型(PSA値が低く、増殖スピードも遅いがん)で前立腺に留まり、定期的にPSAを測定する(PSA 監視療法)以外の治療を必要としません。 ただ、患者の年齢が若い場合(50~60 歳)は、期待される生存期間が長くなるため、前立腺全摘除術や放射線治療等の根治療法を検討することもあります。 【グリソンスコア7以上】 グリソンスコアが高くなると、PSA 監視療法のほか、患者の年齢が期待余命で15 年以上ある場合には根治療法を考慮してもよいとされています。 T1b-c、T2、N0M0の場合 【グリソンスコア6以下、PSAが20ng ml以下】 前立腺がんにおける根治療法には、前立腺全摘除術と放射線療法があります。 この段階の症例では、根治療法に加え、PSA 監視法が選択肢になります。 治療開始時で期待余命が10~15 年以上の場合には前立腺全摘除術か放射線療法。 10 年以下の場合には内分泌療法か放射線療法が選ばれます。 【グリソンスコア7以上、PSAが20ng ml以下】 グリソンスコアが高くなると、PSA 監視療法は不適になります。 期待余命が10~15 年以上望める場合には根治療法(前立腺全摘除術,放射線療法)を考慮することが推奨されています。 ただし、低分化型(悪性度が中程度)の局所前立腺癌は、根治療法で生存率が良好になるとは言えません。 【PSAが20ng ml以上】 治療方針をPSA 値のみで決めることはできませんが、20ng mlを超えるとほとんどの場合、PSA 監視療法は対象外。 手術の適応も慎重に考慮することになっています。 特にPSA が100ng ml を超える場合は、ほとんどの症例で遠隔転移があると言われているため、仮に根治療法を行なったとしても、その後内分泌療法も必要となります。 T3、N0、M0 T3 と診断される場合、前立腺全摘除術の適応は一般的には難しいとされますが、期待余命が10 年以上の時には、例外的に手術を選択肢の一つするケースがあります。 また、近年は、内分泌療法を併用した放射線治療の良好な成績が報告されているため、今後の選択肢拡大が期待されています。 T4、N0、M0もしくはN1、M1 これらの進行性前立腺癌は、局所療法では制御不能であるため期待余命に関わらず内分泌療法の適応となります。 再発時の補助療法、救済治療をどう選択するか 前立腺がんにおける再発には、治療により低下していたPSAが再上昇する「PSA再発」、リンパ節や他臓器への転移がみられた「臨床的再発」があります。 このうちPSA再発は、前立腺がん再発の最初のイベントと解釈されます。 外科治療実施後、PSA再発が見つかった際の対応は、アジュバント療法(補助療法)もしくは、救済治療として、放射線療法、内分泌療法などを行います。 これらを手術前に行う場合はネオアジュバント療法と呼んだりします。 PSA再発を認めた場合、転移性であれば内分泌療法が第1選択肢となります。 一方、局所にとどまっていることが明らかな場合は、局所療法である放射線治療により、予後が改善するはずです。 しかし腫瘍の局在がはっきりする前にPSA再発がわかることが一般的で、状況に合わせて適切な選択をすることが大切です。 ローリスク群では経過観察もあり得ますが、PSAが増えて倍になるまでの時間(PSADT)が早かった場合は放射線治療が推奨されることもあります。 具体的には、悪性度が高いと考えられるグリソンスコア7以上かつPSADT12カ月未満の場合。 さらにPSADTが術後3カ月未満の場合は、PSA再発を認めた段階で救済治療としての内分泌療法を開始することが望ましいとしています。 病態によっては、救済放射線治療も効果が期待できます。 グリソンスコア8以上の症例ではPSA再発後、PSA値が低いうちに高線量(64. 8グレイ)の照射を行えば良好な結果が得られるとしています。 ただし、どのような症例に対してどのような救済療法を選択することが最善かは、いまだ論争があるのが現状です。 「再燃」における化学療法(内分分泌療法) 一度なくなったがんが再びできる再発とは別に、小さくなっていたがんが大きくなる「再燃」という概念があります。 前立腺がんが再燃した場合の化学療法(内分泌療法)には、いくつかの方法があります。 まず、抗アンドロゲン剤のみを中止することで一過性に病勢の低下を認めることがあります。 あるいは「ヒドロコルチゾン」というホルモン剤との組み合わせにより、14-60%にPSAの低下および 0-25%に臨床的効果が得られます。 ただ、PSA低下効果は通常2〜4カ月であると報告されています。 前立腺がんは、ホルモン剤のほかに、抗がん剤による全身化学療法も生存率を改善することが期待されていますが、その効果はあまり大きくないというのが現状です。 前立腺がんの再燃に対しては、抗がん剤単剤あるいは多剤併用療法による化学療法が試みられています。 単独療法に用いられる薬剤としては、「estramustine phosphate」「CPA」「fluorouracil(FU)」「ETP」などがあります。 現在は「docetaxel(DXL)」とステロイド。 あるいはestramustine phosphateとの併用療法が「mitoxantrone」とステロイドの併用に比べて有意に生存率が改善したと報告されています。 しかし、生存期間の中央値で比較すると、予後の改善は2〜3カ月であり、今後さらに有効な治療法を研究する必要があります。 骨転移の疼痛緩和に放射線療法が有効 転移性前立腺がんにおいて、内分泌療法が有効である限りは骨転移の疼痛はあまり問題となりません。 しかし、内分泌療法に身体が慣れて効きにくくなった場合には、痛みのコントロールは非常に切実な問題です。 鎮痛薬、放射線、ステロイド、骨親和性放射性核種、硝酸ガリウムおよびビスフォスフォネートといった緩和医療のための多くの治療手段が実施されていますが、骨転移巣がそれほど多発でなく、痛む部位が比較的限局している時には外照射療法が極めて有用です。 外照射を受けた患者の80〜90%は疼痛緩和を得ることができ、50〜60%では完全に痛みが消失します。 ただし照射方法に関しては議論があります。 )ほどの単回照射と、30グレイほどの複数照射のどちらが良いかはまだ結論がついておらず、単回照射では後に再照射を必要とする頻度が高いとする報告もあります。 日本では、30グレイほどの複数回照射を施行する施設が多いようです。 がんの骨転移には、造骨代謝が活発になるタイプと、溶骨代謝が活発になって骨が減っていくタイプとがあります。 造骨代謝が活発になるタイプを造骨性転移と呼びます。 以前から、骨転移巣が多発で痛みを訴える場合、全身あるいは半身照射が用いられていますが、前立腺がんのように造骨性転移をきたすがんには、ストロンチウム89など放射性同位元素が有効とする報告もあります。 入院する必要もなく、外来で治療を行うことができます。 ストロンチウムとは多発性の骨転移の疼痛緩和に効果があるとされて、放射性医薬品として2008年秋に発売されています。 海外では20年以上前から使用されていたのですが、日本では安全管理や設備投資に対する医療機関への診療報酬がないためと言われています。 今後の制度が調整されることが望まれます。 ポイントまとめ• 前立腺がんの病期分類は、「TNM分類」と「グリソンスコア」(G)の数値で勘案し、2〜10の9段階に分類される。 6以下は低悪性度、7は中悪性度、8〜10は高悪性度となる。 前立腺がんは、骨へ転移することが多い特徴がある。 転移の有無は「骨シンチグラフィ」という検査で調べられる。 放射線療法が進歩し、前立腺全摘除術と並ぶ標準的治療法になった。 現在は前立腺だけに放射線を集中させる技術が開発され、「原体照射」や「IMRT(強度変調放 射線治療)」が行われている。 現在、欠陥のあった精巣摘出手術ではなく、ホルモン剤を注射して男性ホルモンのはたらきをブロックする内分泌療法が台頭している。 前立腺がんの再発には、PSAが再上昇する「PSA再発」、リンパ節などに転移が見られる「臨床的再発」がある。 PSA再発した場合は、アジュバント療法や放射線療法、内分泌療法で対応する。 どの症例に対して、どの治療法を選択するかは、いまだ論争がある。 前立腺がんが「再燃」した場合は、抗がん剤単剤または多剤併用療法による化学療法が試みられているが、効果があまり大きくないため、今後さらに有効な治療法を研究する必要がある。 転移性前立腺がんにおいて、骨転移がそれほど多発でなく、痛む部位が限局している場合には、放射線治療が有用。
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前立腺がんの転移しやすい場所や部位と症状や治療法、確率についても! 前立腺がんは、男性の生殖器のひとつである前立腺にがんができる病気で、年々日本でも発症率が高まっているので要注意の病気です。 そこで、前立腺がんで転移した場合の部位ごとの症状や治療法について見ていきましょう。 そのため、骨転移がある場合は、前立腺がん細胞が増えるのを抑える薬を注入する「ホルモン療法」という方法で治療を行い、これによって骨の痛みが解消されます。 そして、ホルモン療法を既に行っている患者には、症状の進行を抑える「ビスフォスフォネート製剤」という薬を投与するのですが、この薬は骨を破壊する細胞の働きを抑制する一方で、骨を生成する細胞にカルシウムを取り込ませて骨を固め、がんの増殖を防いでくれます。 そのため、まずはCT検査などでリンパ節の状態を確認し、転移が見つかった場合はホルモン療法でがんの進行を抑えるように治療します。 ただし、数年経過するとホルモン療法の効果が薄れ、がんがさらに他の部位に転移することもあるので、その場合は抗アンドロゲン剤を追加したり、他の治療法へ切り替えるなどの処置を行います。 前立腺がんの転移で末期の場合の余命も 前立腺がんでは、早期から転移をしやすいことをお伝えしてきましたが、他の臓器のがんでは、骨への転移は末期であることが多い中で、骨転移を起こしたからといって余命が短いということにはなりません。 ただ、リンパ節に転移すると、リンパの流れに乗って肺や肝臓へ遠隔転移をすることで予後が悪くなり、余命も短くなってしまいます。 そして、末期になると下半身のむくみ、腰椎や骨盤などに鈍い痛みや刺すような激しい痛みを自覚するなどの症状が現れ、この段階にくると余命は6ヶ月~1年と宣告されることが多いそうです。 スポンサーリンク 50歳を過ぎたら1年に1度のPSA検査を受けよう 前立腺がんは、初期に症状が全くないため、ある程度進行してから気づくことになり、特に骨転移による痛みを感じ、整形外科を受診してがんの疑いが現れることが多いそうです。 しかし稀に、整形外科に何度かかっても原因が特定されず、適切な治療が受けられないまま病気が進行し、下半身にむくみが現れるリンパ節転移の症状が現れて初めてがんが明らかになることもあるそうです。 したがって、そうならないためにも、ある程度の年齢の男性で、原因不明の痛みやしびれが現れた時には、前立腺がんの可能性を疑い、整形外科だけでなく、泌尿器科を受診するようにしましょう。 また、年に1度の人間ドックのオプションで、PSA検査を行うと、症状が現れる前にがんを発見することができ、手術治療で完治も難しくないため、オススメです。 まとめ いかがでしたでしょうか? 今回は、前立腺がんの転移しやすい場所や部位と確率、また、余命についても詳しくお伝えしました。 そして、骨転移では骨盤の痛みや麻痺、しびれ、病的な骨折が増えて、リンパ節転移だと下半身のむくみなどが生じるので、ホルモン療法などを行って生活の質を下げない治療法を行うのでした。 それから、骨転移だけでなくリンパ節にも転移し末期の症状の場合の余命は半年~1年以内と言われることが多いので、そうならないためにも年に1度はPSA検査を受け、症状が現れる前に対処すると良いとのことです。 尚、最近では遺伝子レベルでがんの発症率を調べる遺伝子検査も身近になってきたので、気になる方は早いうちに行ってみてはいかがでしょうか。
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がん研有明病院の前立腺がん診療の特徴 現在わが国において急増している前立腺がんは、その病期により多彩な病態があり、様々な治療が行われています。 命にかかわるような進行癌から、治療の必要のない小さな早期がんまで、その病期に応じた過不足のない治療を行うことが、前立腺がんの治療において重要です。 早期がんには機能温存と癌の根治の両立を目指した低侵襲治療を積極的に行っております。 一方進行がんに対しては、手術、放射線治療、内分泌療法を組み合わせた集学的治療を行い、癌の長期抑制を目指しております。 がん専門病院として、複数の低侵襲手術、放射線治療が可能な体制を整えております。 当科には多くの前立腺がんの患者さんが来院されますが、多くの治療選択肢のなかから、患者さんの希望に沿った治療を選んで頂くようにしています。 これまでの多数の前立腺がんの治療経験を生かして、一人一人の患者さんに適切で丁寧な治療を提供するように心がけております。 当科の特徴 前立腺がんの治療成績 早期がんには手術、放射線治療 小線源か外照射もしくは両者の併用 もしくは無治療経過観察(PSA監視療法)を施行し、局所進行がんには手術か外照射のいずれかに一時的ホルモン治療を加えた併用療法を施行しています。 手術と放射線の選択には患者さんの意向も考慮しますが、最近では早期がんや限局がんの増加に伴い手術と強度変調放射線治療(IMRT)を行う患者さんが増える傾向にあります。 手術後のがん特異的生存率を下に示します。 前立腺癌のhigh-risk症例においてもがん特異的生存率は5年で97. 前立腺がんについての知識 早期がん 無症状です。 ただし、移行域 内腺部 に発生し、早期より症状を呈する前立腺肥大症という病気が、がんにしばしば合併して発生するので、その場合は次に述べるような症状がみられます。 局所進行がん 前立腺肥大症と同様な症状がみられます。 すなわち、前立腺が尿道を圧迫するため、頻尿 尿の回数が多い、特に夜間 、尿が出にくい、尿線が細く時間がかかる、タラタラ垂れる、尿線が中絶する、等の症状が見られます。 このほか、がんが尿道、射精管、勃起神経に浸潤すると血尿、血精液 精液が赤い 、インポテンス ED 等の症状も見られます。 進行転移がん 前立腺がんはリンパ節と骨 特に脊柱と骨盤骨 に転移しやすいがんです。 リンパ節に転移すると下肢のむくみ、骨に転移すると痛みや下半身の麻痺が生じることがあります。 診断 血中PSA 前立腺特異抗原 測定 腫瘍マーカーとして、現在、最も有用なものです。 少量の血液を検査するだけの簡便な方法です。 確定的ではありませんが、PSAは前立腺がんのスクリーニング、診断はもちろん、がんの進行度の推定、治療効果の判定、再発の診断、そして予後の予測にも役立ちます。 直腸指診 古くから行なわれている診断法です。 前立腺は直腸に接していますので、外側の辺縁域に好発するがんは、ある程度の大きさになれば直腸から指で診断することが可能です。 MRI検査 近年急速に進化している画像検査です。 最新のMRIの使用により、高い精度で前立腺がんの描出が可能です。 生検検査 以上の3つの検査で前立腺がんの存在を疑うことができますが、確定診断のためには前立腺の組織の一部を採取し、がん細胞の存在を病理学的に証明することが必要です。 経直腸エコーで前立腺を観察しながら、バイオプティガンという優れた生検器具を使用し、組織を採取します。 通常、多部位生検といって10本以上の組織を採取するため短期入院、麻酔(局所、腰椎あるいは全身麻酔)が必要です。 当院では診断精度を高めるため、通常の経直腸的生検(6本)に加え、経会陰的にも組織を採取します(8本、計14本)。 合併症は血尿、肛門出血、血精液症などの軽度のものがほとんどですが、まれに急性前立腺炎を併発する場合があり、その場合には抗生物質による点滴治療が必要な場合があります。 また生検施行前に診断がほぼ確実で数本組織を採取すれば診断確定がなされる場合には、外来にて生検検査を施行することもあります。 病期診断 生検検査でがんと診断が確定したら、次に行うことは病気の進行度の診断です。 治療法の決定に必須の検査です。 病期診断法 1. 原発巣の進行度診断 直腸診、経直腸エコー、MRIなどで診断します。 リンパ節転移の診断 腹部CT、MRI、腹部エコーなどで診断します。 骨転移の診断 骨シンチグラム、単純X線写真、CT、MRIなどで診断します。 肺、肝転移などの診断 単純X線写真、CTなどで診断します。 前立腺がんの病期 ステージ 病期A 前立腺肥大症に対する手術の結果、偶然発見されたがん 病期B 限局がん、すなわちがんが前立腺の中におさまっている場合 病期C がんが前立腺の被膜を超えて周囲脂肪組織、精嚢もしくは膀胱頚部に浸潤している場合 病期D がんがリンパ節や骨、肺、肝などの遠隔臓器に転移している場合 治療法 以下に述べるようにいろいろな方法があります。 がんの進行度、患者さんの全身状態と意向を考慮して治療法を決定します。 外科療法 放射線療法 1. 外照射 当院ではリニアックを用いたを行なっています。 がんの状態に応じて36回または39回、約7-8週間の通院治療をおこなっています。 適応は主にステージA〜Cとなります。 小線源治療(組織内照射) ヨウ素125シード線源による前立腺がん密封小線源治療を行っています。 全身麻酔で治療を行っています。 4日間の入院 個室 が必要です。 ホルモン治療 初回ホルモン治療にはLHRHアゴニスト 注射 、手術により両側の睾丸 精巣 を摘除する外科的去勢、抗男性ホルモン アンチアンドロゲン 剤の内服があります。 これらを併用する場合もあります。 全身療法ですから転移のあるステージDが適応となります。 局所進行がん ステージC には放射線治療と9ヶ月間のホルモン治療による併用治療をしばしば行ないます。 欧米のガイドラインでは2〜3年の長期ホルモン治療が奨められています。 経過観察 なんら治療せずに厳重に経過観察のみを行なう方法です。 治療法にはそれぞれ副作用が必ず伴いますから、現在の生活の質を大切にしたい場合、がんが微少で病理学的悪性度が低い場合、症状のない超高齢者の場合などが適応となります。 多くは3-6ヶ月毎のPSA採血による経過観察が中心です。 病状の進行が心配される場合にはもちろん治療を開始します 化学療法 内分泌(ホルモン)療法の効果を認めなくなった前立腺がんは去勢(内分泌療法)抵抗性前立腺がん castration-resistant prostate cancer: CRPC と呼ばれて、抗がん剤の適応となります。 現在ドセタキセル、カバジタキセルという2つの抗がん剤が保険適応となっています。 参考文献• Yuasa T, Yamamoto S, Urakami S, Fukui I, Yonese J. Denosumab: a new option in the treatment of bone metastases from urological cancers. OncoTargets and Therapy. 2012; 5;221-9. Ito M, Saito K, Yasuda Y, Sukegawa G, Kubo Y, Numao N, Kitsukawa S, Urakami S, Yuasa T, Yamamoto S, Yonese J, Fukui I. Prognostic Impact of C-reactive Protein for Determining Overall Survival of Patients With Castration-resistant Prostate Cancer Treated With Docetaxel. Urology. 2011;78:1131-5. Yuasa T, Maita S, Tsuchiya N, Ma Z, Narita S, Horikawa Y, Yamamoto S, Yonese J, Fukui I, Takahashi S, Hatake K, Habuchi T. Relationship between bone mineral density and androgen-deprivation therapy in Japanese prostate cancer patients. Urology 2010; 75, 1131-7. Yuasa T. Editorial Comment to docetaxel-based combination chemotherapy with zoledronic acid and prednisone in hormone refractory prostate cancer: Factors predicting response and survival. Int J Urol. 2009;16: 731-2. Fujii Y, Yonese J, Kawakami S, Yamamoto S, Okubo Y, Fukui I. Equivalent and sufficient effects of leuprolide acetate and goserelin acetate to suppress serum testosterone levels in patients with prostate cancer. BJU Int. 2008 May;101 9 :1096-100. Narita N, Yuasa T, Tsuchiya N, Kumazawa T, Narita S, Inoue T, Ma Z, Saito M, Horikawa Y, Satoh S, Ogawa O, Habuchi T. A genetic polymorphism of the osteoprotegerin gene is associated with an increased risk of advanced prostate cancer. BMC Cancer. 8: 224, 2008. Wang W, Yuasa T, Tsuchiya N, Maita S, Kumazawa T, Inoue T, Saito M, Ma Z, Obara T, Tsuruta H, Satoh S, Habuchi T. Bone mineral density in Japanese prostate cancer patients under androgen-deprivation therapy. Endocr Relat Cancer. 2008; 15: 943-52. Yuasa T, Kimura S, Ashihara E, Habuchi T, Maekawa T. Zoledronic acid —a multiplicity of anti-cancer action-. Current Medicinal Chemistry 14:2126-35, 2007. 再発の診断と治療 再発にはPSA再発と臨床的再発の2つがあります。 PSA再発 治療を行い、正常化した血中PSA値が再び上昇してきた場合です。 限局がん ステージA、B では臨床的再発 リンパ節や骨への転移など が見られる数ヶ月ないし数年前からみられます。 PSA再発に対する標準的治療法はまだ確立していません。 経過観察、放射線、ホルモン治療、化学療法などが状況(根治療法前のがんの悪性度や進行度、およびPSA上昇速度など)に応じて考えられます。 臨床的再発 限局がんでは治療後に局所再発や遠隔転移が新たに出現した場合、進行がんでは治療により落ち着いていた病巣が再び増大したり、新しい転移巣が見られた場合です。 ほとんどの場合、PSAの再上昇を伴います。 治療はやはり状況に応じていろいろあります。 治療の副作用と対策 手術 インポテンス ED と尿失禁が主なものです。 EDは勃起神経温存手術により防止できる可能性がありますが、がんが大きい場合や広がっている場合は非常に危険です。 放射線療法 1. 外照射 治療中に見られる急性期の副作用と治療後数年以上経過してから見られる晩期の副作用があります。 治療後半から尿が近い、出にくいなどの排尿障害がしばしば見られます。 これは一過性で、治療が終われば2〜4週程度で改善します。 晩期合併症としては放射線性膀胱炎や直腸炎による血尿、血便や痛みなどです。 痔のひどい人は直腸、肛門の副作用が強くみられるようです。 直腸出血が繰り返す場合や止血剤、安静で止まらない場合には直腸鏡的にレーザーを用いて止血する場合もあります。 また、射精障害はほぼ必発で、EDも徐々に増えてきます。 小線源治療(組織内照射) 治療直後の排尿困難は外照射より高度で尿閉状態になることもあります。 排尿障害が強く出る場合があるので治療前に症状の強い方は注意が必要です。 ホルモン治療 薬剤がなんであれ、男性ホルモン欠落症状として、ED、ホットフラッシュ ほてり:カッと熱くなり汗が出ること 、筋力低下、骨粗鬆症、メタボリック症候群、うつ状態などいろいろ見られます。 女性ホルモン剤では血液凝固能の亢進、これに伴い心、血管系障害が起こることがあります。
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