ダイナミックプライシングとは 先日、ある飲食店のドアに掲示された貼り紙が、SNS上で話題となりました。 この飲食店のメニューは定食1種類のみですが、貼り紙には「本日の価格予測表」として「11時30分〜 1100円、12時1分〜 1500円」など、時間帯によって異なる価格が記載されていました。 混雑しそうな時間帯に価格を上げ、来店が少ない時間帯には価格を下げることで、訪れる顧客の数を調整し、店内での新型コロナウィルスの感染を避けることがねらいのようです。 この飲食店のように、商品やサービスの価格を需要と供給に基づいて変動させる手法を「 ダイナミックプライシング」といいます。 航空券やホテルなど、季節やイベントの有無によって商品・サービスの価格が変動する仕組みは古くから存在しており、とくに目新しいものではありません。 しかし、技術革新によって消費データをはじめ、あらゆる情報を即座に取得することが可能となった今、AIなどを使って需要予測を行い、より高頻度に商品やサービスの価格を変動させる動きが広がっています。 一方で、最近主流となっているのが、機械学習をもとに需要予測を行う方法です。 天気や近隣のイベントの有無、曜日など、考えうるあらゆる変数をもとにその時々で需要予測を行い、それをもとに価格を決定します。 Amazonはダイナミックプライシングを最も積極的に活用している企業のひとつです。 同社は競合他社の商品価格を基準とするだけではなく、過去の売れ行きなどのビックデータ分析から予測された商品の需要情報や、ユーザーの購買履歴などを考慮し、常に収益を最大化できる価格を商品に適用させています。 ご存知の方も多いと思いますが、Amazonでは1日に何度も商品の価格が変わります。 商品を購入した直後に、同じ商品を見ると、もう価格が変わっている、ということも珍しくはありません。 Amazonを筆頭に、ECでは激しい価格競争が繰り広げられています。 ECにおける価格競争は、リアル店舗にも広がっています。 ビックカメラは昨年、値札に電子ペーパーを使い、表示価格を随時変更するシステムを採用しました。 家電量販店はこれまでも、他店の動向を見ながら値札を常に差し替えるということを積極的に行ってきました。 しかし、値札の張り替えには人手がかかります。 値札を電子化することで、機動的に価格を変更することが可能になったため、常に変動するEC価格に合わせ、ほぼリアルタイムで店頭価格も変動させています。 その他、スポーツ業界やエンターテイメント業界などにもダイナミックプライシングは広がりを見せています。 国内のエンターテイメント施設では、ユニバーサルスタジオジャパンがいち早く採用し、注目を集めました。 スポーツ業界では、Jリーグやプロ野球の球団でもすでにダイナミックプライシングが採用されています。 ダイナミックプライシングが抱える課題 同じ商品・サービスの価格が時と場合によって変更されることに、それほど違和感を感じなくなってきている今日この頃ですが、ダイナミックプライシングは、企業が顧客の信頼を失うリスクもはらんでいます。 2019年11月に開催されたある音楽フェスは「日本初、ダイナミックプライシングで全席を販売」とうたってチケットを販売し、業界内外から注目を集めました。 しかし、チケット販売直後に1万円以上の価格で販売されていた席が、イベント開催直前には数千円で販売されたり、突然席種が変更されたりするなどの混乱が起き、SNSなどで大炎上してしまいました。 購入意欲が高いロイヤルカスタマーほど損をしたように感じてしまったことが炎上の原因でした。 このような価格設定では、顧客は到底納得することはできないでしょう。 ダイナミックプライシングは企業側が収益を最大化するための手法なので、価格を決定する企業側が圧倒的に有利な立場にあります。 したがって顧客が納得できるような理由が示されなかったり、顧客が理解できないほどの幅で価格が変動したりすると、顧客の信頼を失い、顧客が離れていく可能性があります。 商品やサービスの価格設定には、顧客の納得感や価格変動の背景にあるストーリーを丁寧に説明することが不可欠です。 AIの機械学習はどのようなデータを学習するかによって計算結果が大きく変わってきます。 収益を最大化しつつも、顧客が納得できるような価格を導き出すために、プライシングの担当者がこれまで積み上げてきた経験や勘をAIにどう学習させるかが、現状のダイナミックプライシングの大きな課題となっています。 社会の非効率を解消するダイナミックプライシング さて、ダイナミックプライシングは、交通渋滞や非効率な電力消費などの社会問題を解決する力も秘めています。 例えば高速道路の交通量を予測し、交通量の多い時間に高い料金を設定すれば、利用者に対して価格の安いタイミングでの移動をうながし混雑を緩和できる可能性があります。 アメリカのミネソタ州などではすでにダイナミックプライシングによる混雑緩和の効果が見られており、日本でも高速道路における実証実験が進められています。 また経済産業省は、2024年までに全国の5,000万世帯にスマートメーター(次世代型デジタル電力量計)を設置する計画を発表しています。 スマートメーターが取りつけられれば、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を活用して、30分単位での電気使用量を電力会社が把握できるようになります。 季節・時刻等による電力需要の変動を予測し、それをもとに電気料金を決めることができるようになるため、例えば夏場の需要の多い昼間には電気料金を高く設定し、需要の少ない深夜には安く設定することで、電力需要の逼迫を解消できるといわれています。 ダイナミックプライシングは、フードロスを削減する手段としても期待されています。 現在、スーパーマーケットなどでは、電子タグ(RFID)などを活用し、賞味・消費期限に応じて電子値札の表示の変更やSNSを使った顧客への通知を自動的に行う取り組みが進められています。 これは、商品に添付した電子タグに賞味・消費期限を記録しておき、棚に設置したリーダーで読み取ると、電子値札にその期限に応じた値下げ価格が自動的に表示されるというしくみです。 この情報をSNSと連動させれば、値引き情報の通知を受け取ったタイミングで顧客が来店し、商品を購入するという展開も考えられます。 価格は人の行動を決める大きなモチベーションになります。 このコロナ禍では、顧客を集めることと混雑を避けることを両立しなければならないという難しい状況にあります。 価格を変動させることで集客をコントロールするという方法が、今後さまざまな場面で積極的に展開されていくかもしれません。 ホテル・民泊業界で急成長中のインド発スタートアップOYO オヨ は、2019年9月にダイナミックプライシングの開発を行うデータサイエンス企業Danamica(ダナミカ)を約10億円で買収しました。 Danamicaは賃貸物件のダイナミックプライシングに特化した企業です。 OYOはダイナミックプライシングによって、不動産所有者の効率と収益性を向上するとともに、宿泊者も満足できる価格でのサービス提供を強みとしていくようです。 人々のニーズが個別化し、ビジネス環境が複雑化するなか、価格を設定するうえで考慮しなければならないポイントも非常に増えています。 企業の収益と顧客満足度を最大化するプライシングはとても難しく、多くの企業が価格設定に悩んでいます。 今後はプライシング専門のテック企業が増えていくかもしれません。 いずれにせよ、このダイナミックプライシングが人々にとってより身近なものになっていくことは間違いないでしょう。
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福岡ソフトバンクホークス株式会社(本社:福岡市中央区、代表取締役社長CEO:後藤芳光)は、福岡PayPayドーム(以下、PayPayドーム)にて開催される、ホークス主催オープン戦、及び公式戦全試合のチケットをダイナミックプライシング(価格変動制)で販売いたします。 ダイナミックプライシングとは、需要と供給に応じてリアルタイムで価格が変動するシステムで、2016年より一部日程・座席でダイナミックプライシングを採用したチケットの販売を開始し、段階的に対象日程や席種・席数を拡大し、取り組んできました。 この度、より多くのお客様にご満足頂ける価格でご購入いただけるよう、お客様のニーズで価格が変動するダイナミックプライシングの仕組みを全日程・全席種で導入いたします。 一部、会員向けの先行抽選販売や当日券は、従来通り試合日程によりチケット料金を5段階で設定したフレックスプライスでの販売となります。 今後も福岡ソフトバンクホークスは全てのお客様に楽しんでいただける世界一のエンターティンメント施設を目指して取り組んでまいります。 過去の販売実績データに加えて、リーグ内の順位や対戦成績、試合日時、席種、席位置、チケットの売れ行きなど多様なデータから、試合ごとの需要を AI 機械学習 により予測し、需要に応じて価格が変動する。 福岡ソフトバンクホークスでは、日本のプロスポーツ界で唯一、列位置や通路側・中席といった各座席単位で販売価格が15分単位で変動、さらに「360 度 3D マップビュー」座席からの眺めを体感してチケットを購入出来る。 ダイヤモンドステージ:11時~• プラチナステージ:12時~• ゴールドステージ:14時~• クラブホークス チケット割引について ホークス公式ファンクラブ「クラブホークス」会員の方がタカチケットで、チケットご予約・ご購入時の価格は下記の通りとなります。 抽選販売時:フレックスプライスのクラブホークス割引価格• 前売券の取り扱いはございません。
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ダイナミックプライシングは海外において、さまざまな企業が導入しています。 ダイナミックプライシングは近年日本でも導入する企業が増えており、導入することによっていろいろなメリットを得ることが可能です。 物の価格は担当者が市場需要や原価、仕入れ値などいろいろな情報を収集したり分析してから決定しますが、このダイナミックプライシングは市場需要により価格が変動する仕組みです。 ダイナミックプライシングとは ダイナミックプライシングはマーケティング手法の一つになります。 ダイナミックプライシングは市場動向に応じてさまざまな商品やサービスなどの価格を変えることです。 需要により価格を変動させることで、集客や利益などの向上に繋げるマーケティング手法になります。 例えばホテルの場合、平日とそれ以外では料金が変わることが多く、土日や祝祭日の方が人が多く利用するので料金を値上げするところが多いでしょう。 お正月やゴールデンウィークといった繁忙期に値上がりするケースがほとんどです。 需要が高まった時期に価格を上げると、多くの利益を得ることができます。 既にホテルやスポーツ、航空業界にいてこの方法は用いられていて、他社と差別化することができ利益の最大化を実現することが可能です。 ダイナミックプライシングの原理 ダイナミックプライシングの原理は単純です。 同じ商品やサービスに関して価格を変えて販売する方法で、原理として商品やサービスを高需要なら高くしたり、低需要なら安く提供するという発想になります。 クライアントの希望やニーズに応えながら、増収を図るものになります。 例えば旅行で利用する飛行機やホテルなどが同じでも、リゾート地の場合は夏は高くなり冬は安くなるのが一般的です。 夏に行ったり冬に行く以外に、休日に行ったり平日に行ったり、移動時間が長かったり短いなど需要の大きさによって影響される要素は多いでしょう。 商品やサービスの提供単位によっては需要の大きさが違うので、同じ商品やサービスを異なる値段で販売するのがこの方法です。 やり方はさまざまですが、第1段階では販売する前に一度価格を見直すことがあります。 商品やサービスの一律価格から、提供単位毎の価格に設定し直すという仕組みです。 第2段階では販売中において、第1段階で設定した値段に対し何度も見直しを行うことがあります。 売れ行きから販売する前に読み切れなかったいろいろな影響を踏まえて、見直すことにより予測精度を向上することが可能です。 適切な価格に設定することができ、日程により価格が異なるケースがあり、管理コストが膨らみますが得られる効果が大きくなる仕組みになります。 ダイナミックプライシングのメリット クライアントのメリットとして、需要が高まる時期に商品やサービスが値上がりしますが、需要が下がる時期になると値下がりする仕組みです。 需要が下がる時期にわざと購入することにより、安い金額で手に入れることができます。 コンサートなどで座席毎にチケット料金が変わるなら、見やすさか安さを取るか選択することができるでしょう。 企業のメリットとして、市場需要に合わせて値段に弾力性を持たすことができ、収益の最大化を図ることが可能です。 需要が高まる時期なら品質を変えなくても高額で売却することができ、需要が下がる時期なら価格を下げると購入者が増えるので在庫数を下げることができます。 ダイナミックプライシングのデメリット 市場需要に合わせるのでメリットが多いと思いがちですが、いくつかデメリットもあるので注意が必要です。 クライアントのデメリットとして、今まで定価で購入する商品価格が高騰するかもしれません。 お盆の帰省や連休中の旅行など、価格が高騰するタイミングにしかサービスを利用できないケースも多いです。 品質はそのままで値段だけがアップする仕組みになります。 企業のデメリットにはさまざまな要因を洗い出し市場需要を把握してからプライシングする必要があります。 要因として競合価格はもちろん、天候やイベント、SNSでの評判など多岐にわたるので計算が複雑です。 市場需要と照らし合わせたとしても値上げ額が大きいと、価格のつり上げになっていると消費者に何かしらの不信感を与えてしまうかもしれません。 ダイナミックプライシングの小売業と消費者への影響 小売業がこの手法を導入すると、企業にはいろいろなメリットやデメリットがあるでしょう。 需要が多過ぎる時、商品やサービスなどの価格を上げることにより利益を伸ばすメリットがあり、週末や繁忙期といった集客が見込める時期において値上げすると普段以上の利益を得ることが可能です。 反対に供給過多から集客が少なくなった時、価格を下げると集客を増やしたり利益を安定することができます。 価格の変更を行う場合、競合企業や市場などのリサーチが必要で、分析といったプロセスは欠かせません。 スタッフは本来の業務ができないようなケースになる可能性もあるでしょう。 ダイナミックプライシングを活用するとこのようなプロセスは省略することができ、スタッフの負担を軽減することができたり接客や陳列といった作業を行うことができます。 デメリットには導入にコストが発生するケースがあり、システム開発が必要になったり電子タグなどを導入することになるかもしれません。 導入はもちろん運用にもコストが発生していきます。 効果を発揮するには最適価格の精度が大切で、タイミングを見計らい最良の価格に変更しなければいけませんが、精度が悪いとクライアント離れになることもあるでしょう。 導入するにあたって消費者から理解を得ることは重要です。 消費者として定価で購入できていたアイテムが急に値上がりするので、戸惑ったり怒りを抱く人もいるでしょう。 消費者に不信感を与えると悪評が広がり、SNSを通じて拡散されるので常連のクライアントも失ってしまうリスクがあります。 スポーツ界でも注目 海外のスポーツ界において数年前からダイナミックプライシングを導入していて、現在アメリカの4大スポーツであるNFLやMLB、NBAやNHLなどのチケットはこのダイナミックプライシングによって決められた値段で販売しています。 従来スポーツ観戦のチケットの値段は一律でしたが、チケット販売に大きな革命をもたらしました。 多くのチームがチケット収益性が改善していて、市場環境や試合価値などを数値化していて統計学に基づきながら価格を決定する仕組みです。 さまざまな要素があり試合開催時期や天候、見やすい座席や連休、平日や土日、予告先発投手や引退試合などについて、消費者が購入を決める要素があります。 これらの要素を数値化し分析することによって、顧客満足度や利益が最大化する値段を決定する仕組みです。 一見すると特別試合はある程度お金を持っていないと見に行けないかもしれませんが、条件さえ合うと通常より安い価格で購入することができます。 対戦カードによっては価格が異なり、リアルタイムで価格が変動するチームもあります。 ダイナミックプライシングを導入することで、独自にカスタマイズするチームもあり、最適なチケット価格を決めることが可能です。 多くの企業で採用されているダイナミックプライシング アメリカでは既にスポーツ界以外にいろいろなサービスにおいて、ダイナミックプライシングが活用されていて、ドライバーが空き時間や自家用車を使うタクシーのようなサービスもその一つです。 混雑している時や深夜早朝の需給などに伴い、利用料金はリアルタイムで変化するようになります。 大手ECサイトでもこの方法を採用していて、競合や需給などに応じてリアルタイムにアレンジされる価格を設定し、企業は損失を抑えながら利益を最大化することが可能です。 日本のプロ野球でも採用していて、価格変動制のチケット販売を活用しています。 日本のサッカーリーグでも一部座席にこの方法を導入すると発表しており、収益アップが実証されると日本のスポーツ界への導入が進むでしょう。 電気料金をこの方法にする実験が行われていて、例えば真夏の昼間になると需要が増える時間帯における電気料金を高く設定し、消費者に対して節電を促す方法になります。 まとめ 航空やホテル業界はもちろん、近年ネット通販にダイナミックプライシングが導入される予定です。 小売業界においては今後多くの企業が導入すると言われています。 消費者の影響や反応などを予測してから、メリットやデメリットなどを理解し進めることが重要です。
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