天井亜雄。 天井亜雄(@Amai_Ao_RNP)

妹達

天井亜雄

スキルだけを見れば一流の科学者だが、とても人格は褒められた物ではない。 これだけではどんな人物かわからない? では言い方を変えよう。 しかしそれを一方通行に妨害されて失敗し、芳川と相撃ちになったのだ。 その後の消息は不明。 一方通行や芳川もその後の事で手一杯で天井の存在など忘れてしまっていたのだ。 一方通行達にとってもその程度存在。 それが今、深海棲艦の艤装をその体に取り込んだ姿で再び一方通行の前へと立ち塞がった。 [newpage] 食蜂や結標と相対した時の天井は、腕に深海棲艦の砲塔などを移植しただけの姿だった。 もちろん体全体に装甲は展開されていたし、身体機能は以前より飛躍的に向上していた。 それでも見た目は人のそれだった。 だが今、一方通行達の目の前にいる天井の姿は、およそ人間とは言い難かった。 艤装・・・と呼ぶべきものはおそらく多くの深海棲艦の艤装を掛け合わせたものなのだろう。 砲塔は至る所から突き出し、魚雷発射管も見え隠れしている。 基本となっているのはおそらく戦艦棲姫のであろう。 しかし本来二本のはずの腕は四本あり、爪は禍々しい鋭さを持っていた。 更に異質なのは、その艤装を装着している・・・・のではなく、まるで艤装に装着されているかのようなその出で立ちだ。 艤装と下半身は完全に融合しており、上半身のみが人の形を保っている。 その肌もまるで深海棲艦のように白く、それでいて目は何かに憑りつかれたかのように真っ赤に血走っている。 今までの深海兵士より更に深海棲艦へと・・・いや、もうそれは深海棲艦ですらない。 そこにいるのは、人でも深海棲艦でも、ましてや深海兵士ですらない。 そんな天井を見てあきつ丸たちは警戒よりも言い様のない恐怖のようなもので動けなくなる。 深海棲艦、そして深海兵士と戦ってきた彼女達だからこそわかる。 あれは違う。 何もかも。 あきつ丸達が動けない中、それでも前へと足を進める者がいた。 「・・・随分とまァ変わった格好してンなァ、天井クン?イメチェンか?失敗してンぞ」 「・・・・・・その名で呼ぶな」 「あ?」 「私は・・・・今その名を捨てた」 天井は笑う。 狂気の染まり、正気を失っているであろうその目を、一方通行はつまらないものを見る目をして続きを待つ。 そんな一方通行を見ながらも、その目に籠められた感情に気付かないまま天井は言葉を紡ぐ。 「私の名は・・・『木原』。 あの一族の一人として相応しい力を、私は得たのだ!!!そして今!!ここに!!私の研究の全てが結集した姿で!!この身を完全なる超越者としたのだ!!!」 『木原』は学園都市の一部の研究者たちの中では有名な一族。 その名は畏怖、畏敬、嫌悪など様々な感情によって注目されている。 しかし学園都市に集められるような優秀でありながら、どこかネジの外れている研究者達にとっては、その性格や行動よりも才能への憧憬の念が強いことは確かだった。 天井もそんな研究者の一人だった。 かつて一つの計画と実験に従事し、その両方を潰された後外部組織と手を組みテロを目論むも、それすら潰された。 プライドも、未来も、そして希望すら失った天井に残されたのは、研究者としての心だけだった。 それだけだったのなら、ただのマッドサイエンティストになるだけで済んだのだろう。 しかし彼の心に囁きかける『ある者』が現れた。 その囁きは、天井の中にくすぶり眠っていた一つの炎を燃え上がらせた。 復讐心という名の、黒く暗い炎を。 そしてその者から齎された技術を基に深海棲艦の艤装の研究を進め、陸軍にデータとその身を売り込んだ。 丁度海軍を出し抜く手立てを画策していた須郷はそれに飛びつき、すぐさま陸軍の研究機関総出で研究を進めた。 もちろんその主任の椅子には天井が座ることになった。 そこで天井は自らを科学の頂点である『木原』と名乗る。 自分こそがその名を名乗るに相応しいという自負が、天井にはあったのだ。 木原一族は木原脳幹の様な例外は存在するものの、基本的には血統に縛られている。 だが今は偶々血族という形を取っているが、たとえ今の木原の血族が全滅したとしても別の者達が木原を名乗り、科学を悪用することになるという。 世界に科学が存在する限り、『木原』も必ず現れる。 ならば自分が木原となることに問題など存在しないのだ。 その思考が、致命的に破綻していることに天井は気付けていなかった。 「『木原』・・・ねェ」 一方通行が呟く。 おそらくだが一方通行は学園都市でも有数の『木原経験者』だ。 言い方がおかしいかもしれないが、実際にそうなのだ。 様々な研究施設を盥回しにされた一方通行は学園都市の闇の研究にも深く関わっており、その中で木原数多にも出会い、再会し、殺し合った。 だからこそ木原という名には様々な感情が想起する。 だがそれも一瞬のことだった。 「さあ一方通行!!今度こそお前を殺す!!!もう貴様に私の研究の邪魔はさせん!!!」 「・・そォかい、それじゃァ」 一方通行の背中から、黒い何かが噴出する。 「今度こそ殺してやるよ」.

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【黒猫のウィズ】とあるコラボ四択問題まとめ

天井亜雄

スキルだけを見れば一流の科学者だが、とても人格は褒められた物ではない。 これだけではどんな人物かわからない? では言い方を変えよう。 しかしそれを一方通行に妨害されて失敗し、芳川と相撃ちになったのだ。 その後の消息は不明。 一方通行や芳川もその後の事で手一杯で天井の存在など忘れてしまっていたのだ。 一方通行達にとってもその程度存在。 それが今、深海棲艦の艤装をその体に取り込んだ姿で再び一方通行の前へと立ち塞がった。 [newpage] 食蜂や結標と相対した時の天井は、腕に深海棲艦の砲塔などを移植しただけの姿だった。 もちろん体全体に装甲は展開されていたし、身体機能は以前より飛躍的に向上していた。 それでも見た目は人のそれだった。 だが今、一方通行達の目の前にいる天井の姿は、およそ人間とは言い難かった。 艤装・・・と呼ぶべきものはおそらく多くの深海棲艦の艤装を掛け合わせたものなのだろう。 砲塔は至る所から突き出し、魚雷発射管も見え隠れしている。 基本となっているのはおそらく戦艦棲姫のであろう。 しかし本来二本のはずの腕は四本あり、爪は禍々しい鋭さを持っていた。 更に異質なのは、その艤装を装着している・・・・のではなく、まるで艤装に装着されているかのようなその出で立ちだ。 艤装と下半身は完全に融合しており、上半身のみが人の形を保っている。 その肌もまるで深海棲艦のように白く、それでいて目は何かに憑りつかれたかのように真っ赤に血走っている。 今までの深海兵士より更に深海棲艦へと・・・いや、もうそれは深海棲艦ですらない。 そこにいるのは、人でも深海棲艦でも、ましてや深海兵士ですらない。 そんな天井を見てあきつ丸たちは警戒よりも言い様のない恐怖のようなもので動けなくなる。 深海棲艦、そして深海兵士と戦ってきた彼女達だからこそわかる。 あれは違う。 何もかも。 あきつ丸達が動けない中、それでも前へと足を進める者がいた。 「・・・随分とまァ変わった格好してンなァ、天井クン?イメチェンか?失敗してンぞ」 「・・・・・・その名で呼ぶな」 「あ?」 「私は・・・・今その名を捨てた」 天井は笑う。 狂気の染まり、正気を失っているであろうその目を、一方通行はつまらないものを見る目をして続きを待つ。 そんな一方通行を見ながらも、その目に籠められた感情に気付かないまま天井は言葉を紡ぐ。 「私の名は・・・『木原』。 あの一族の一人として相応しい力を、私は得たのだ!!!そして今!!ここに!!私の研究の全てが結集した姿で!!この身を完全なる超越者としたのだ!!!」 『木原』は学園都市の一部の研究者たちの中では有名な一族。 その名は畏怖、畏敬、嫌悪など様々な感情によって注目されている。 しかし学園都市に集められるような優秀でありながら、どこかネジの外れている研究者達にとっては、その性格や行動よりも才能への憧憬の念が強いことは確かだった。 天井もそんな研究者の一人だった。 かつて一つの計画と実験に従事し、その両方を潰された後外部組織と手を組みテロを目論むも、それすら潰された。 プライドも、未来も、そして希望すら失った天井に残されたのは、研究者としての心だけだった。 それだけだったのなら、ただのマッドサイエンティストになるだけで済んだのだろう。 しかし彼の心に囁きかける『ある者』が現れた。 その囁きは、天井の中にくすぶり眠っていた一つの炎を燃え上がらせた。 復讐心という名の、黒く暗い炎を。 そしてその者から齎された技術を基に深海棲艦の艤装の研究を進め、陸軍にデータとその身を売り込んだ。 丁度海軍を出し抜く手立てを画策していた須郷はそれに飛びつき、すぐさま陸軍の研究機関総出で研究を進めた。 もちろんその主任の椅子には天井が座ることになった。 そこで天井は自らを科学の頂点である『木原』と名乗る。 自分こそがその名を名乗るに相応しいという自負が、天井にはあったのだ。 木原一族は木原脳幹の様な例外は存在するものの、基本的には血統に縛られている。 だが今は偶々血族という形を取っているが、たとえ今の木原の血族が全滅したとしても別の者達が木原を名乗り、科学を悪用することになるという。 世界に科学が存在する限り、『木原』も必ず現れる。 ならば自分が木原となることに問題など存在しないのだ。 その思考が、致命的に破綻していることに天井は気付けていなかった。 「『木原』・・・ねェ」 一方通行が呟く。 おそらくだが一方通行は学園都市でも有数の『木原経験者』だ。 言い方がおかしいかもしれないが、実際にそうなのだ。 様々な研究施設を盥回しにされた一方通行は学園都市の闇の研究にも深く関わっており、その中で木原数多にも出会い、再会し、殺し合った。 だからこそ木原という名には様々な感情が想起する。 だがそれも一瞬のことだった。 「さあ一方通行!!今度こそお前を殺す!!!もう貴様に私の研究の邪魔はさせん!!!」 「・・そォかい、それじゃァ」 一方通行の背中から、黒い何かが噴出する。 「今度こそ殺してやるよ」.

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#121 天井亜雄(ふくしゅうしゃ)

天井亜雄

朝ご飯ならぬ昼ご飯を食べた後、珱嗄はファミレスを出て街を『跳んで』いた。 背中には衰弱した打ち止め、背中に伝わる体温の高さから、非常に不味い状態なのは分かる。 それでも、珱嗄は彼女を今すぐに助けようとは思っていない。 何故なら、助ける義理も正義感も珱嗄には無いからだ。 だから、例え彼女が死のうが死ぬまいが、関係無い。 珱嗄は珱嗄の思惑の為だけに、彼女を利用する。 とりあえず、珱嗄はあのファミレスで見かけた白衣の研究員を探していた。 車に乗って早々に逃げて行ったが、そのナンバープレートは覚えている。 探す事は出来るのだ。 故に、珱嗄はビルからビル、建物から建物へと跳び移りながら、その車を探していた。 一応打ち止めに衝撃が行かない様に配慮はしてあるが、やはり安静にしておかないと何れ死ぬだろう。 そしてフロントガラスから見える研究員の焦った表情も見た。 どうやら、彼の目的は打ち止めの確保の様だ。 珱嗄はあの場所に居た不自然さと今の焦りからそう判断した。 そして、珱嗄はゆらりと笑って走行中の車のボンネットに、勢いよく着地した。 「ひっ!?」 「よー何処ぞの研究員A。 ちょっと付き合えよ」 「な、な………!?」 珱嗄を見て更に振るえる研究員。 天井亜雄は、学園都市のレベル5の第一位、一方通行を打倒した男、珱嗄を目の前に眼を見開いて青褪めたのだった。 奇しくもその研究所は、珱嗄が能力開発をした施設でもある。 といっても、この実験施設の本来の目的は、 絶対能力進化計画 レベル6シフト の研究。 故に、培養機やその為の設備は一通り揃っている。 「なンで俺はこンなトコに来ちまったンだか……」 やはり、冷たく突き放したとはいえ打ち止めの事は気になっていた様だ。 「チッ……」 一方通行は入り口を能力で破壊して入っていく。 そして、最奥に入るとそこには、珱嗄の能力開発を受け持った研究員。 芳川桔梗が居た。 彼女も実はあの実験の研究者の一人だったのだ。 そして、今は凍結した実験の後始末に追われている、という所だ。 「あらお帰り一方通行。 ドアを破壊しなくても君のIDはまだ90日程有効だから」 「遅ェよ」 「え、私がここで何をしてるか?」 「聞いてねェよ」 「実験が凍結したから後始末よ。 他の奴らは此処で働いていたキャリアを失いたいらしいから、どこか消えたけどね」 「だから聞いてねェって」 「手伝えよ。 この私を手伝えよ」 「お前キャラ崩壊してンぞオイ」 「ちょっと前に人を振り回す子の能力開発を受け持ってね。 見習ってみたの」 「……まさかな」 一方通行は珱嗄を思い浮かべたが、すぐに思考を掻き消した。 そして、幾つもある棚から培養機についての資料と妹達のスペックデータを手に取っていく。 「クローンの培養機一式と検体調整用の資料貰ってくぞ。 理由は聞くな」 「でも敢えて聞いちゃう私異端?」 「ホントムカつくなオイ」 「でもどうして気付いたの? 今彼女達の人格データのバグを洗い出している所なのに……いや、正確にはウイルスかしら」 「なンの話だ」 芳川は少し俯く様にして話し始めた。 その姿には既にふざけた雰囲気は消えている。 まずはめんどくせぇ下準備から」 その頃、珱嗄は天井亜雄の車の中で、打ち止めを寝かせていた。 しかも、原作同様にパソコンと電子パッチで繋いでウイルスの管理をしている。 「ほ、本当に協力してくれるんだな?」 「それより、さっきの話は本当だろうな?」 「あ、ああ」 珱嗄は先程、天井亜雄を捕まえて打ち止めの状態について詳しく聞いていた。 曰く、打ち止めはミサカネットワークを統率する司令塔の役割を持つ個体だということ。 曰く、打ち止めを介してミサカネットワークにウイルスを流し込もうとしているということ。 曰く、その結果防衛本能として打ち止めが培養機から逃げ出したということ。 曰く、そのウイルスは上位命令文としてミサカ全員に伝わり、その命令を強制的に聞かせるというものであること。 曰く、その命令の内容は、民間人に対する無差別攻撃だということ。 曰く、自分は学園都市外に待機している組織に匿われる予定だということ。 とまぁ学園都市を崩壊に導く計画が天井主導で進んでいるようだった。 そこで、珱嗄は良い事を思い付いたとばかりに天井に協力を申し込んだ。 天井はそれを呑んだ。 何故なら、ほかならぬ打ち止めは珱嗄の背中にいるのだから。 「なぁっ……!? がっ、ぐ……がぁああ!?」 いきなり攻撃され、ハンドルに身体を打つ天井。 幸い、そこまでダメージは無いが、動く事が出来なかった。 そして、珱嗄はハンドルを取って車を乗っ取る。 「じゃあね、天井ちゃん。 お前の計画は俺がちゃぁんと利用して、破綻させて、破壊して、崩壊させてやるから、安心して潰れてると良い」 珱嗄はそう言い残して、もう一発手刀を落とした。 「ぐ……ぁああ………!」 天井亜雄は珱嗄の笑みと言葉を頭の中で半濁し、絶望の表情で意識を失った。 その理由は、先程珱嗄が聞いていた話を芳川桔梗から聞いたからだ。 この事態を解決するには、必要機材を用いてウイルスを取り除くか、打ち止めを殺して処分するかの二つだけ。 そこで芳川はこの研究室でそのウイルスを取り除くプログラムを構築するので、一方通行に打ち止めの確保を依頼したのだ。 一方通行はそこで、打ち止めを処分するか、助けるかの選択を迫られた。 そして選んだのだ。 打ち止めを『救う』選択を 「こンな所で役に立つとはなァ……オトモダチは大切にってかァ?」 一方通行が打ち止めと別れた時、その場にはもう一人、珱嗄がいた。 故に、打ち止めを確保するには彼女の動向を知る必要がある。 ならば、その後も一緒に居た珱嗄に聞くのが一番だろう。 一方通行は奇しくも携帯の中に入っている珱嗄の電話番号にコールした。 『はいよー、どうしたアセロラ』 「聞きてェ事がある」 『打ち止めちゃんの事かな? 何、やっぱりさみしくなっちゃった? あはは、このロリコンめぇ~』 コール一回で応答した珱嗄は察しは良いモノの、やはりお茶らけてきた。 「おふざけはいい。 アイツは今何処にいンだ。 オマエと一緒にいンのか?」 『いや、あの後天井亜雄とかいう胡散臭くてみみっちい白衣のオジサンが来たんで、引き渡したけど?』 「何? ……そいつは今何処に?」 『知らね。 でもまだ第七学区にいるんじゃないかな。 そんなに時間は経ってないし』 「そォかよ。 悪いな、こっちは急用だ。 切るぞ」 『そうかい。 じゃあ一つだけ言っとくぞ、 一方通行 アクセラレータ 』 珱嗄がアセロラではなく、ちゃんとした名称で彼を呼ぶ。 そのことで一方通行は通話を切らずに次の言葉を待った。 この間も走り続けるが、珱嗄の言葉は聞き逃さないとばかりに耳に集中する。 「あァ……」 通話を切る。 珱嗄は全て分かっていた。 この状況も、一方通行の行動の目的も、通話してきた訳も。 だからこそ一方通行にそう言ったのだ。 逃げてばかりで救おうともしない憶病な彼に、遠回しな言い方で、逃げるなよと。 ほんの少しだけ、背中を押された気がした。 ほんの少しだけ、やれる気がした。 ちゃんと救えると、自分にも出来るのだと、そう思えた。 そして、こうして動く事を決めた時からよぎる疑問が、再度浮かび上がってくる。 「救えるか? ハッ、俺を誰だと思ってやがる………!」 一方通行は地面を蹴る。 能力が今までにない位に調子が良い。 今までにない位に思考がクリアだ。 ふっきれた様な表情を無意識に浮かべる一方通行は、少しだけ、自分の目指すモノに近づいた気がした。 車内には電極が付いた満身創痍の打ち止めの姿と、首に手を当てながら首を回す天井亜雄の姿があった。 珱嗄の姿は、何処にもない。 「……どうすれば良いか……」 「はぁ………はぁ……」 「! ……ウイルス発動まで何とか保ってくれ……」 天井亜雄は、本来ならこの時点で学園都市の外へと逃亡していた筈だった。 計画は珱嗄と接触した時に破綻し、この時点で既にボロボロに破壊されていた。 だが、まだ手は残っている。 ウイルスさえ発動出来れば、後は混乱に乗じて逃げればいいのだ。 あらゆる 向き ベクトル を操る能力者、 一方通行 アクセラレータ。 天井亜雄の計画は、音を立てて崩壊していく。 この時点で彼に一方通行から逃れる手段は無い。 珱嗄の言った通り、珱嗄に会って破綻し、珱嗄に気絶させられ破壊され、一方通行によって崩壊する。 どんな予知だと思う。 「このっ……!」 天井亜雄はアクセルを踏み、車を一方通行に向かって発進させる。 「ガッ!?」 「あン? 随分と簡単に気絶すンだなァ……まァいいか」 天井亜雄はその衝撃で気を失ったのか、ハンドルに凭れる様にして動かなくなった。 そして、一方通行は壊れた車のドアを開き、中に居た打ち止めを確保する。 そして、少しだけ息づいた。 そして、芳川に電話を掛ける。 「オイ芳川。 ガキは確保した。 こっからどォする? ……ってオイ、なんかガキの頭に電極みてェなモンがひっついてんだが……コレは剥がさねェ方がいいのか?」 『ああ、それは妹達用の身体検査キットだわ。 剥がしても問題ないわね』 「BC稼働率ってのは?」 『それは打ち止めの脳細胞の稼働率ね。 とりあえず、今そっちに機材を持って向かってるから、そのまま待機してて』 「あァ、分かった。 だが、ウイルスコードの解析は終わってンのか?」 『8割方。 打ち止めが身体をがくがくと痙攣させながら訳の分からない言葉の羅列を叫び始めたのだ。 彼女を……処分しなさい』 芳川の言葉に、一方通行は歯を食いしばる。 救えない、また殺すしかない。 こんな仕組まれた様な結末に、怒りすら湧いてきた。 「クソッたれがァァアアア!!!」 だが、そんな中で、一方通行の携帯が震えた。 見れば、それはメールだった。 しかも、珱嗄からの。 携帯を操作してメールを開く。 通話中故に返信は出来ないが、内容は見る事が出来るのだ。 『ちょっとさ、暇だから打ち止めちゃん連れて来いよ。 ジェンガしようぜ。 場所はお前ん家な』 こんな状況で、どんなメールだと思った。 だが、珱嗄のこの文は、暗に一方通行が打ち止めをちゃんと救ってくると心から信じているようではないか。 無敵である珱嗄から、このような信頼を寄せられるのは、中々どうして、誇らしかった。 故に、思い付いた。 救えるかもしれない、自身の能力なら出来るかもしれない唯一の一手。 「確か脳内の電気信号さえ操れれば、 学習装置 テスタメント が無くてもこのガキの人格データを弄る事が出来るんだよな?」 『それはそうだけど……まさか、貴方自身が 学習装置 テスタメント の代わりをするつもり!? 無理よ、貴方の能力でも!』 「出来るさ。 反射が出来たんだ、その先の操作が出来てもおかしくはねェだろ」 一方通行はそう言って携帯を投げ捨てた。 そして、研究所から持って来ていた打ち止めがウイルスに感染する以前の人格データをその最高の頭脳で記憶する。 「……此処までやるンだ。 やっぱり無理でしたじゃ許さねェぞ、クソガキ」 一方通行は打ち止めの額に手を当てて、自身を纏っていた反射を解除する。 そして脳内の電気信号を操る事に全能力をフル稼働させた。 このままいけば、なんとかなる勢いだった。 だが 「こ、の……やめろ……!」 天井亜雄が、起き上がった。 その手に持つのは、人差し指一本で人を殺せる拳銃。 そして、それは反射を解除している今の一方通行を殺すには十分過ぎる凶器だった。 「ンな………!」 焦る一方通行。 今は集中していて反射に回せる演算など出来ない。 打たれれば一瞬で死んでしまう。 といっても、今手を放せば、打ち止めは修正されないまま身体が拒否反応を起こして精神が死んでしまう。 撃鉄が落ち、銃口が火を噴く。 一方通行はそれでも手を放さずに、コードの削除を急ぐ。 そして、その打ち止めの額には、まだ、一方通行の手の平が当てられていた。 一方通行は自身を覆う反射膜の感じ取り、閉じていた瞳を開く。 そして、自身に向けられていた銃口を見た。 確かに銃口からは硝煙が出ており、発砲があった事が分かる。 だが、その銃口からは銃弾は出て来なかった。 一方通行は驚愕に眼を見開く。 そして、天井亜雄は首の辺りに手を当てると、ベリベリっとその顔を『取り外した』。 そして、その覆面の下から出て来たのは、先程メールを送ってきた珱嗄。 銃口から出て来たのは、なんと小さなジェンガだった。 「オマエ……」 「でだ、 一方通行 アクセラレータ。 お前の手で打ち止めちゃんが救われたようだけど、気分はどうだ?」 珱嗄は分かりきった様に呆然とする一方通行に笑い掛ける。 すると、一方通行はため息を吐いた後、自然な笑みを浮かべてこう言った。 「ったく……とりあえず一発殴らせろ。 この野郎」 その言葉の裏には、確かに誰かを救った喜びが、秘められていた。 珱嗄はそれを感じ取り、舌を出していつも通りの調子で返した。 「やなこった」.

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