蝶が硬くなって、軟化しなければならない方はへ・・・。 蝶に針を刺す まず、蝶が十分やわらかいことを確認しましょう。 当日採ってきた蝶でも、小さなシジミチョウなどは採集地から帰ってくる間に乾燥してしまうことがあります。 触角などが固まっていないかどうかを確認します。 この時触角を折ってしまわないように気をつけます。 冷凍庫で保管していた蝶の場合でも同じです。 冷凍庫に入れている間に乾燥してしまうこともありますので注意しましょう。 蝶が十分やわらかいことを確認した後、蝶の胸部の真ん中に虫ピンを「直角」に刺します。 「直角」にしなければならないのは、これがずれると、この後展翅に大きな影響を与えるからです(翅を広げるときに、無理な角度になり、根元から折れてしまう)。 出来るだけ正確に、前と横から注意しながら刺しましょう。 刺し損なったときは、抜いて刺し直せばいいのですが、あまり何回も刺し直すと蝶が傷つくので気をつけましょう。 蝶の体を横から見て、頭が上がりすぎていないかどうかなどもチェックしましょう。 標本のできばえは、 この最初の針の刺し方が大変重要ですので、出来るだけ丁寧に刺す様に心がけます。 右のようにまっすぐ差すことが大事。 蝶を展翅板の中央に刺す これも、展翅板に対して直角にさして調整しましょう。 針を展翅板に刺した後は、蝶の高さを展翅板に合わせて上下に調整します。 高さを調整するときは、翅を触らず、ピンセットなどで胸部を動かしましょう。 刺した後に、色々な方向から見てまっすぐになっているかどうかをよく確認します。 大型のタテハチョウやアゲハチョウの場合、翅をあげているうちに針が前倒しになってしまうことがあります。 これを防ぐために最初からやや後ろに傾くように針を刺す方法もありますが、経験や練習が必要です。 蝶の体が展翅版に対してまっすぐになっていることは、きれいに展翅するにはとても重要なことです。 頭が下がっていたり、傾いていたりしていないか、よく確認しておきましょう。 展翅テープで翅を押さえる 蝶の翅を広げて、展翅テープ(パラフィン紙や透明フィルムなど)で押さえ、まち針で仮留めしておきます。 このとき、展翅テープは、展翅板ときちんと平行になるように注意しましょう(写真は透明フィルムを利用しています)。 展翅テープが斜めになった場合、最後の方に展翅する蝶にテープが被さったり、翅を押さえきれないほど外にはみ出てしまったりします。 テープを蝶の翅の下から持ち上げる時、テープで蝶の翅を傷つけないように気をつけましょう。 蝶の翅を整える まずは、前翅から。 右利きの場合は、左翅から始めるとやりやすい。 前翅をそろえたら、後翅へ。 常に全体のバランスを見て、調整しながら進める。 後翅を両方そろえたら、もう一度全体のバランスを見て調整する。 触角をそろえて、完成。 決まりはありませんが、右利きの人は左側から、左利きの人は右側から蝶の翅の整形するといいでしょう。 前翅を両方整形し、そのあと後翅を調整すると、展翅しやすいです。 後翅の上げ具合は個人によって、好みが違いますので、図鑑などを見て参考にしながら、調整してください。 (左前翅・左後翅・右前翅・右後翅の順でも、やりやすいのがベストです。 常に全体のバランスをを調整しながら、展翅しましょう。 ) ここで気を付けるべき点は、後翅が下がったままの状態で前翅を上げすぎないことです。 蝶の翅は、前翅が後翅の上に重なるようになっていますが、前翅を上げすぎると、後翅が、前翅の上に出てしまうことがあります。 この様なときは、そのまま無理に直そうとしないで、一度蝶を展翅テープをはずして後翅を元に戻してから、最初からやり直しましょう。 翅を動かす時は、翅脈針、またはまち針で動かします。 の太い脈に針を引っかけ、翅を引っ張り上げます。 ひっかける場所は、蝶の種類によって様々ですが、できるだけ太くて、翅が破れない場所を選びます。 展翅テープで覆われ、この場所を使えない場合は、翅の基部の脈を使って翅を動かすこともできます(動画参照)。 翅を動かすと、蝶の体が動きますので、常にに体がまっすぐになるようにしましょう(きれいな標本を作るなら、このことは重要なポイントです)。 体が斜めになっていると、左右の翅の高さがそろわなくなります。 下の図は、簡単な説明です。 緑の点は、仮止め、赤の点は本止めです。 留め針は沢山使うのがきれいな標本を作るこつです。 まず、翅を開けて仮止めしておく。 右利きの人は左、左利きの人は右側の前翅から整えます。 反対側の前翅を整えます。 前翅の下縁がまっすぐになる様にします。 体もまっすぐに。 後翅を整えます。 反対側の後翅を整える。 触角をそろえて、出来上がり。 翅を上げる時、針の動きは下の図のように弧を描くように動かします。 また、翅の根元のほうの太い翅脈を引っ掛けて動かすことも出来ます。 常に翅の同じ場所に針があれば、 右の図のようにカーブを描いて動くはずです。 翅の整形がおわったら、色々な方向から見て左右対称かどうか確認しましょう。 大型の蝶で整形の過程で虫ピンが前倒しになってしまった場合、整形が終わった後、両方の翅の根元のほうを押さえながら針をそっと抜いて展翅版に刺しなおすことも出来ます。 小型の蝶の場合、この様なことは起こりにくいですが、万が一針が傾いてしまった場合は、展翅をし直すのが無難です。
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標本は、きちんとしたデータを標本と一緒に保存することによって、その蝶の価値が出てきます。 蝶の標本を作るときは、 展翅板(てんしばん)という板に、蝶の翅の形を整えて、パラフィン紙や専用の展翅テープなどで押さえて乾燥させて作ります。 これを「 展翅(てんし)する」といいます。 蝶の標本には学術的価値があります。 まず、種の同定に使うことができます。 自宅から離れた場所などで自分が知らない蝶を採集した場合、それを持ち帰り標本にしてから、図鑑などと見比べて種類を調べることができます。 特に外国で採集した蝶などは生きたまま日本国内に持ち帰ることはできませんので、唯一の手段となります。 蝶の種類を調べるのに採集しないで、撮影しておくという方法もありますが、写真や記憶ではどうしても正確に同定できない種類がいますので限界があります。 また、自分で調べても分からない時は、その標本を他の人に見てもらうことも出来ます。 この他に、標本は長期間保存できるという利点があります。 標本を保存しておくことにより、体の仕組みなどを後でさらに詳しく調べる、などといったことができます。 「普通種だと思っていたのが、よく調べてみると実は新種だった」ということは、時々あることです。 最近進んでいるDNAの解析などもこれに含まれます。 私がサンディエゴで採集した蝶の一種は、ある年大規模な山火事によりその生息地がほとんど燃えてなくなってしまいました。 その時に採集した蝶の標本を、大学などに送りDNAを解析したりしました。 最近は100年以上経った標本でも、ある程度DNAを解析することができるようになりました。 標本に最も価値を与えるのは、それにつけるラベルです。 標本のラベルに種類名や採集地、採集時期を記すことで、その蝶の分布や発生時期をまとめることができます。 ある蝶の種類を調べる人が、色々な人が所有している標本のデータをまとめれば、その蝶の発生時期や分布などを把握することができますし、またそのデータが自分が求めている種類のデータであることを、その標本を見ることで確認することもできます。 さらに、知らない土地に行った時、もしそこの博物館などに地元で採集された蝶の標本があれば、そのラベルを見ることによって、いつ頃どんな種類を見ることが出来るのかが調べられます。 ラベルには将来標本を見た人が、同じ場所に行けるように詳しく書くことが望ましいです。 市町村の名前は将来変わることもあり得ますので、山や湖、川など地形の情報を含めると、後の研究者が助かります。 人によっては、ただ標本を集めることを目的にしている人もいます。 この場合、学術的な収集ではなく、いわゆる「コレクション」として集めることとなります。 色々な蝶を揃えるのも、発見があったりして楽しいものです。 また、飾りとして標本を作ると言うこともあります。 ただ集める人でも、一種のみ、又はその仲間をひたすら集める人もいます。 ギフチョウのように が現れる種類は特にこのようなコレクターが多いようです。 複数の標本を並べることによって、各個体の特徴が見え、また、その種の基本となる部分も見えてきます(参照)。 ただしこの場合、採りすぎには気を付けた方がよいでしょう。 人それぞれに色々な集め方がありますので、自分の目的を明確にして、目的にそって標本を作っていきましょう。 因みに私は、このホームページを完成させるために、「全ての種類を集める」を目標にして、日々いろいろな標本を集めています(小学生の頃から、図鑑を作りたくて、標本を集め続けています)。 せっかく採集した蝶ですから、標本は大切に保管しておきましょう。 蝶の標本は、保存状況がよければ、半永久的に持ちます。 ではまず、標本を作るのに必要な道具をそろえましょう。 針 針は蝶の胴体に刺す 「昆虫針(こんちゅうばり)」と、展翅をするときに羽を押さえるのに必要な 「留め針」が必要です。 「昆虫針」は専門店で販売されているものを購入することをお勧めします。 粗悪な昆虫針は、あとで錆びたりして、せっかくの標本を台無しにしてしまうときがあります。 昆虫針の種類は、日本製の「志賀」や海外製の「ナイロンヘッド」などがあります。 黒くて目立たず、また、頭が大きくて持ちやすい針もありますし、ステンレス製でしっかりしたものもあります。 針は色々な太さがあるので、蝶の大きさにあった針を使用します。 基本的に小さい号数ほど、針が細くなります。 また、昆虫針には 有頭針(ゆうとうしん)と 無頭針(むとうしん)があります。 無頭針のほうが、目立ちませんが、標本の整理などをするときは有頭針のほうが指に引っかかり、取り扱いやすいです。 私の場合、針の細さは次のように使い分けています。 また、メーカーによって長さも変わることに注意してください。 「留め針」は細くて丈夫なステンレス製のものを選びます。 あまり太い針だと、展翅板に大きな穴を開けて傷をつけてしまいます。 また、鉄製など錆びる針は、時々展翅板に刺さったまま錆びて、抜けにくくなることがあります。 通常留め針には「まち針」が使用されます。 標本を作るときは、沢山の留め針を使用するので、千本ぐらい用意しておくのが良いでしょう。 展翅板 展翅板(てんしばん)は桐(きり)などで出来ている製品を、専門店で買って使用することもできますし(夏だと時々デパートなどで見かけます)、自分で材料を買ってきて作ることも可能です。 急に外出先で展翅する必要になったときは、発泡スチロールや段ボールなどで代替もできます。 展翅版を選ぶときに気をつけるのは、板の幅と溝の幅です。 板の幅はできるだけ蝶の翅より大きいものを選びます。 蝶の翅が展翅板から飛び出してしまうと、翅の先が反ったり下がったりして、見苦しくなることがありますし、間違えて翅を傷つけてしまうことがあります。 溝の幅は蝶の体にできるだけ近いものを選びます。 体が大きいけど翅の小さい蝶、体は小さいけど翅が大きい蝶など色々といますので、よく見てから購入しましょう。 色々なサイズをそろえておくと便利です。 複数の展翅版をそろえるときは、展翅版の高さにも気をつけましょう。 高さがばらばらだと、標本箱に入れたときの蝶の高さもばらばらになってしまいます。 一般的に傾斜した展翅板は、 (蝶を採ってきて、そのやわらかい状態で展翅する場合)、そして平らの展翅板は (一度乾かした蝶を軟化してから展翅する場合)や裏面展翅に使用されます。 傾斜板を使うのは、生展翅した場合、展翅後に翅が下がってくる事がよくあるからです。 最近はペフ板のものがほとんどです。 コルクは昆虫針を刺した後しっかり固定してくれますが、針の抜き刺しの時にやや難があります。 しっかり刺さらず、蝶の体の高さを揃えるのに少し苦労します。 一方ペフ板は刺しやすい一方、展翅の途中で針が動いてしまうことがあります。 特に翅が上げにくい時などは、展翅が終わった後に標本が前方に傾いていたなどといったことがよくおこります。 最近はいろいろな展翅テープが発売されていますので、色々と試して自分にあった展翅テープを探しましょう。 透明フィルムのものは展翅しているときも蝶を楽しめますが、製品によっては鱗粉がはがれてしまう物もあるので注意が必要です。 展翅テープが無く、何か他のものを代用するときは、トレーシングペーパーの様なできるだけ薄く、蝶の鱗粉がとれにくい素材ものを選びます。 普通紙は蝶を展翅しているときに翅が見えませんし、翅が破れたり、鱗粉がはがれてしまったりしてしまうので、お勧めできません。 前に一度、ケーキを作るときに使うワックスペーパーを使用したときがありましたが、蝶の鱗粉が沢山ワックスペーパーにくっついてはがれてしまったことがありますので、気をつけた方がいいみたいです。 標本箱 展翅した蝶が乾いたら、蝶の標本を標本箱に入れましょう。 標本箱は、湿気と害虫が入らないものであれば、基本的にどんな箱でもかまいません。 もっとも普及しているものは 「ドイツ箱」といって、ガラス蓋の桐で出来た、博物館などで見ることが出来る標本箱です。 専門店に行けば、たいてい取り扱っていますし、インターネット経由の購入もできます(トップページの広告を参照してください)。 ドイツ箱は手製のため、蓋の閉まる方向が決まっていますので閉めるときに気を付けましょう。 大抵蓋と本体に番号やマークがついていますので、それらが同じ場所に来るようにして蓋を閉めます。 当然、別のドイツ箱の蓋をもう一つのドイツ箱の蓋に使用することは出来ません。 また、密封度が高いので、開けるときも注意しましょう。 急いで蓋を開けると、急に空気が箱の中に入ってきて、蝶の翅を壊してしまうことがあります。 開けるときはゆっくりと、そっと開けるように心がけてください。 ドイツ箱もできるだけ品質のいいものを使用しましょう。 品質の悪いものの中には、時間が経つと下のペフ板がはがれたり、横の白いシートがはがれてきたり、蓋が緩んできたりするものがあります。 蝶を持ち上げたり、翅を開いたりするときは先のとがっていないピンセットが無難です。 一方、触角などの整形などには、先のとがっているピンセットがとてもやりやすいです。 ピンセットはちゃんと弾力があってしっかり開き、なおかつ腰が柔らかくて閉じるのに力があまりいらないものが使いやすいです。 翅脈針で翅を動かした後に、まち針でとめます。 そのまままち針などで代用できます。 私はまち針を使ってしまいます。 甲虫の場合は、体の硬さをそろえるときに使用します。
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・ピンセット(割りばし、竹串など) ・木工用ボンド(透明になる接着剤)、ガーゼ、ハサミ ・平均台 Pic. 1 使用するもの 所要時間 ・制作:1時間(慣れたらもっと早くなります) ・乾燥:1~2週間 作り方 1. 虫体をほぐす 標本を作るとき、 虫の体が固まっていると、うまく 形を整えられません。 また、固まった体に無理な力をかけると、 折れたりして虫体を傷つけてしまいます。 これを避けるために、 ぬるま湯に虫の体を数分間つけて柔らかくします。 この作業を 軟化(なんか)といいます。 (虫が死んで数日経過したくらいなら、この工程は飛ばしても問題ないことが多いです。 ) 軟化の方法 1 準備 まず、小さい 容器にガーゼをしき、そこに ぬるま湯をかけます。 その上に虫の 胴体部分を乗せて、 5分ほど待ちます。 このとき、 容器にラップをして湿気が逃げないようにすると、さらに効果的です。 2 軟化したか確認する 時間がたったら虫を手に取り、羽の付け根や触角の 関節がほぐれているかを確認します。 羽の付け根や触角を少し動かしてみて、動くようならOKです。 虫を容器から取り出し、キッチンペーパーなどで 余分な水気を吸いとりましょう。 時間がたったら、再度 2 へ戻ります。 2. 虫に昆虫針を刺す まずは昆虫の体に昆虫針を刺します。 刺す場所は決まっていて、 胸部の背中側の真ん中に刺します。 向きは、背中側の真上から 虫体と針が垂直になるように刺し、そのままおなか側まで貫通させます。 Pic. 2 昆虫針の刺し方 1 針を刺す深さも決まっています。 チョウやガの場合は、 羽が展翅板に乗る高さまで刺します。 Pic. 3 昆虫針の刺し方 2 3. 展翅板に取り付ける チョウやガの標本を作るときは、 展翅板(てんしばん)という器具を使います。 展翅板の両サイドには、板がついています。 ここで 羽の向きを整えます。 真ん中のミゾは、虫の胴体が入るスペースです。 底にはウレタンフォームが敷いてあって、針を刺せるようになっています。 Pic. 4 展翅板 まずは、 展翅テープを取り付けます。 展翅台の先頭部分に玉針等で固定します。 展翅テープをピンと伸ばしときに外れてしまわないよう、しっかり取り付けます。 私は針を刺す部分を数回巻いて、破れにくくします。 さらに両面テープで台に貼り付け、そこに針を刺して固定しています。 展翅テープには、 水平方向に線が入ったものがあります。 線があると 羽の向きがわかりやすく、簡単にきれいに展翅できます。 展翅テープがない場合は、 つるつるして半透明な紙を代わりに使いましょう。 身近な例だとクッキングシートが近いです。 展翅板の板幅よりも少し細く切り、展翅テープと同じ方法で取り付けます。 次に、1.で虫を刺した針を展翅板中央のミゾに刺します。 このとき、虫の体が 前後・左右に傾かないように注意しましょう。 前後に傾いていると、羽を 水平に整えられません。 左右に傾いていても、羽を胴体に対して 左右対称に整えられないため、きれいな標本が作れません。 展翅板に虫が取り付けられました。 これで準備完了です。 Pic. 5 展翅板に取り付けた状態 4. 羽を整える 羽の向きを整えます。 この作業を 展翅(てんし)といいます。 チョウやガの標本を作るときに中心となる作業です。 1 羽を開く 羽を開き、展翅テープで羽を押さえます。 羽が閉じている場合は、針やピンセットを羽のすきまに入れ、左右に開きます。 羽が固くて左右対称に開かないときは、片方ずつ開いて、展翅テープを載せていきましょう。 Pic. 6 展翅テープの下に羽を開いた状態 2 右羽の位置を整える まずは右羽の展翅から始めます。 写真のように、 針を羽にとおっている筋にひっかけて、すこしずつ上へずらしていきます。 この筋を 翅脈(しみゃく) といいます。 Pic. 7 翅脈に針をひっかけて羽を整える ずらす高さは「 上羽の下側が、水平になるまで」が目安です。 どのくらいまで持ち上げたらいいか分からないときは、 図鑑の絵や写真を参考にしてください。 羽を持ちあげることができたら、羽から 少しだけ離れた場所に玉針を刺します。 展翅テープごと玉針で留めることで、展翅板とテープの間に 羽を挟んで、固定することができます。 羽を動かすときは 柄付き針があると、とても作業がしやすいです。 柄付き針を持っていなくても、 細い針をシャーペンの芯の代わりにセットして、代用できます。 3 左羽の位置を整える 次に左羽を展翅します。 右利きの人は、 展翅板ごと前後ろを反対に回転させ、さかさまの状態にします。 こうすることで、左羽の展翅も 利き手側でできます。 5. 触角を整える 触角の向きを整えます。 触角は、 細くデリケートな器官です。 無理な力がかかると、いとも 簡単に折れてしまいます。 柄付き針やピンセットを使って、慎重に 向きや開き具合を整えましょう。 慣れていない人や器用さに自信のない人には難しい作業だと思います。 折ってしまいそうな時は、無理せずに次のステップへ進みましょう。 触角の位置を調節したら、元の形に戻らないように 針や紙片を使って固定します。 Pic. 8 触角を整える 展翅がおわりました。 Pic. 9 展翅完了 6. 乾燥させる 羽と触角を整え終わったら、そのまま 乾燥させます。 湿気がなくて、直射日光が当たらないところに置いて、乾燥するのを待ちましょう。 日陰で風通しがいい場所がベストですが、置き場所に困る場合は箱に乾燥剤と展翅板を一緒にいれて乾燥させる方法もあります。 乾燥時間の目安は、湿度や気温、虫の大きさにもよりますが 2週間くらいで大丈夫です。 時間に余裕のある方は、1か月程度乾燥さておいた方が無難です。 十分に乾燥させると、虫の体は カチコチに固まります。 この状態になれば、虫を展翅板から外しても大丈夫です。 7. 展翅板から取り外す 乾燥が終わったら、いよいよ展翅板から取り外します。 乾燥した 虫体はカチコチに固まっているので、ちょっとの力で 簡単に壊れてしまいます。 慎重に取り扱いましょう。 まずは 玉針や固定用の針をはずします。 次に、 展翅テープをはずします。 このとき、 テープの上に触角がある人は要注意です。 触角は折れやすいうえ 修復が大変なので、テープを横向きにスライドするなどして、慎重にテープを外しましょう。 最後に、昆虫針を持ち、標本を展翅板から引き抜きます。 おめでとう。 完成した 標本をいろんな角度から観察してみてみましょう。 羽の模様や色の変化、触角の形はどうなっていますか。 写真のエビガラスズメは腹部にエビの殻のような模様がついています。 体は毛深くて、モフモフしています。 Pic. 10 標本を観察してみよう 8. 完成した標本を標本箱に保管する 完成した標本は、 ラベルと一緒に標本箱に保管します。 ラベルには、 採集場所・採集年月日・採集者を 必ず記載します。 Fig. 1 ラベルの記載例 名前(種名)は 別のラベルに記載します。 書かなくても大丈夫ですが、せっかく出会った虫なので名前を調べてみましょう。 ちなみに、種名を書かなくてもいい理由の一例として、虫の名前が変わることがあげられます。 例えば、今まで同じだと思われていた種が、研究が進んだことで別種であると判明したケースなどが当てはまります。 ラベルは 昆虫針に一緒に刺して管理します。 こうして標本とラベルを一組にすることで、 標本とラベルの組み合わせがばらばらになるのを防ぎます。 ラベルと虫がセットになってはじめて、学術的な意味を持った 正式な標本の完成です。 9. メンテナンスをする 標本に異常がないか、定期的に状態を確認しましょう。 特に、標本箱に隙間があると、そこから 標本を食べる虫が進入することがあります。 大切な 標本を害虫から守るために、標本箱に 防虫剤も一緒に入れておきましょう。 防虫剤が減っているときは、新しいものに 取り換えます。 また、 湿気にも注意が必要です。 標本箱を開けるときは乾燥した日を選ぶといいです。 おわりに 今回はスズメガを例に、標本の作り方を説明しました。 展翅ができるようになると、チョウなどの標本も作ることができます。 また、作りや出来上がった標本を観察することで、いろいろな発見があると思います。 興味を持たれた方は、ぜひやってみてください。
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